聖遺物の守護者っていうありふれない職業で無敵。 作:気まぐれな富士山
黒ローブの闇術師、清水は困惑していた。
六万の軍勢を率いて、湖畔の町を襲撃し、豊穣の女神と呼ばれる自分の担任教師、畑山愛子を殺害する。
簡単すぎるミッションをクリアし、自分は魔人族に英雄として迎えられる。
今度こそ自分の力を認めて貰える、そう思っていたのに。
「なんなんだよ··········!これ!」
目の前に広がる光景は、カオスそのものだった。
縦横無尽に駆け巡るロボット。
空を飛ぶ人型。
轟音と共に鳴り響く機関銃。
ハンマーを振りかざす兎人族。
見たことの無い魔法。
異世界ファンタジーじゃない。SFの類だ。
「クソっ!取り敢えず撤退を·····!」
『おおっと!そうは問屋が卸さないぜ!』
「ひやぁぁ!」
『大人しくしてな!』
目の前に現れた謎のロボット。
人語を介し、自分に詰め寄ってくる。
『お前をウチのリーダーが探してる。少し来てもらうぜ!』
「っ!ちっ、近付くな!!」
咄嗟に闇魔術で洗脳した魔獣犬を差し向ける。が、
『おおっと!鈍すぎるぜ!』
真っ二つに切り裂かれてしまった。
『来てもらうって言っただろう?ま、無理矢理でも連れてくけどよ!』ガシッ
「は、離せ!」
機械の剛腕に捕まり、連れていかれた。
〜ウルの町 外壁〜
「で、どうしてこんなことを?」
周囲をロボットに囲まれ、尋問にかけられる。
「っ··········お前なんかに話すもんか!」
『話す気無いみたいだな。殺すか··········?』ジャキッ!
「ひぃぃぃ!」
「やめろハイド。··········もう一度聞く。清水。どうしてこんなことを?」
「··········お、俺を認めないのが悪いんだ!お前らが、俺の凄さを認めずに、勇者ばっかに注目しやがって!」
清水を突き動かした感情は、嫉妬だった。
人間とは、嫉妬に弱い種族だ。
嫉妬に狂った人間は何をするかわからない。
むしろ何でも成し得てしまう。
たとえそれが、クラスメイトへの裏切りだとしても。
「でも、魔人族は分かってくれたんだ!俺の強さを!俺の実力を!お前らと違ってな!」
「何に釣られた。何を餌にされた!」
「··········そこの先生を殺せば、英雄として受け入れると言われたんだ·····!ある意味、勇者よりも厄介な存在だからな。こんな町、すぐに消せるハズだった··········」
六万の大群を用いれば、その地には何も残らない。
ただ、相手が悪かっただけだった。
「なのに何だよ!ロボットなんか使いやがって!卑怯だぞ!」
『我々はオートボットだ。ロボットの様な見た目なだけであって、お前の想像するロボットとは違う。』
「卑怯ってよ。これは戦争だぜ?お前は俺たちの前に立ちはだかり、あまつさえ戦争を仕掛けた。卑怯も糞も無いだろう?」
「うるさい!クソっ··········!」
「··········清水くん。」
仲間を裏切り、仲間を殺しに来た清水。
しかし、そんなヤツにそっと寄り添う女神がいた。
「先生··········?」
「君の気持ちは、よく分かります。誰かに認められたいと思うその気持ちは、何も悪いことではありません。」
「····················」
「でも、もっと他に方法があったのは事実です。だれかを傷つけるのではなく、誰かを助けることで、君の力を認めてもらう方法があります。」
「··········もう、どうしようもないんだ。俺は、クラスメイトを裏切った··········魔人族もだ。もう、誰も受け入れてなんてくれない··········」
「先生がいます。誰が敵になっても、教師は生徒の味方です。絶対に。」
「··········本当に、裏切らないで、くれますか?」
「当然です。」
キッパリと先生は言い切った。
生徒を決して裏切らないという想い。
そして、もう生徒を死なせないという覚悟の現れだった。
しかし、世の中には何をしても変われない者も存在するものだ。
「隙あり!」ガバッ
「きゃぁ!」
「動くんじゃねえ!先生をぶっ殺すぞ!この針は毒針だ、刺したら死ぬぞ!」キラン
「清水·····お前··········」
「ヘッ!今の戦況からして、魔人族が勝つに決まってる!強い方につくのは当然だろ!」
クラスメイトを裏切り、恩情をかけてくれた恩師を裏切り。
「全く··········救えないな。」
「うるせぇ!これが俺の選んだ道だ!」
聞こえはいいが、やってる事はクズそのものだ。
「お前ら武器を置け!そこの厨二野郎2人はさっき持っていた銃を渡せ!」
「え〜?ヤダな··········ハジメは?」
「俺が武器を渡すメリットが無い。却下だ。」
「うるさい!さっさと渡せ!」
「··········はぁ、わかったよ。」
ここまで言っているのだ。渡してやろう。
「ほら。お望みの銃だぜ。」
「ちぇっ!さっさと渡せばいいんだ!」
長い銃身が宙を舞い、清水の胸に飛んでいく。
「ただし、俺専用だがな。」
「うぐっ!お、重い!」
「今だ!」
すかさずお付きの騎士達が清水を捕らえる。
「もう逃げられないぞ!悪党め!」
「ぐっ··········クソっ!!」
「し、清水くん··········」
「な、なぁ先生!助けてくれよ!俺の事信じるって言っただろ?なぁ〜ちょっとフザケただけじゃんか!信じてくれよ先生!」
「··········っ、拘束してください。」
騎士たちに縄で腕を結ばれ、完全に拘束される清水。
「お、おい!俺の事信じるって言っただろ!教師が嘘ついていいのかよ!」
「おい貴様!いい加減に··········!」
「清水くん!先生の目をよく見てください!」
小さな手で、力強く清水の顔を自分の方へ向ける。
「先生は、教師とは!生徒が悪い未来へ向かうのを正す職業です!生徒の言葉を鵜呑みにし、過信することではありません!!」
「っ··········」
「あまり先生を、舐めないでください!!」
その場にいる全員が固まった。
大人しく、可愛らしい外見からは予想も出来ない言葉が大声で放たれたのだ。
「··········これから貴方は、この国の法律によって裁かれます。元の世界に戻るまでの安全は先生が確保しますから、檻でも何処でも、そこで自分がした事を見直して、自分のした事を悔いて、十分反省してください··········!」
「ううっ··········!うわぁぁぁ!」
清水は急に泣き始めた。本気で裏切られたと思っているのだろう。そんなことは、経験したことがなかったから。
「でも清水くん。」
「う··········?」
「ちゃんと後悔して、ちゃんと反省したら、また戻ってきてください。」
しかし、そんな者であろうとも、その者の教師であり続ける。
そんな彼女の姿は、正しく女神であった。
「··········一件落着だな?」
「だな。さ、とっとと次の町に行くぞ··········」
これで、ここでの話は終わり。
次はどんな町に···············
という訳でもなく。
『ッ!危ない!!』
「避けて!」
ビュンッ!
「ああっ!」
「ぐふっ!」
先生と清水に奔る閃光。
遠距離からの攻撃である。
「先生!」
「野郎!どこだ!」
すると、少し奥の谷から飛竜が飛び立っていく。
「クソっ、逃がすか!」ドンッ!ドンッ!
ハジメの弾丸も空を切る。
「チッ、逃げられたか··········」
「先生!清水!しっかりしろ!」
「あ、あああ···············」
「な、なんで···············俺まで··········」
恐らく、清水諸共殺す予定だったのだろう。
急所は外れているが、両者出血が酷い。
「おい、先生!しっかりしろ!」
「に、西田、くん··········」
「喋らないでくれ!出血し過ぎると治せない!」
「に、西田·····!お、俺を、助けて··········!」
助けるべきは、愚者か。女神か。
「西田くん··········!私のことはいいから、清水くんを·····!」
「西田ァ·····!!」
2人を同時に助けることはできる。
しかし、果たしてこの愚者を、自分を信じた者さえ裏切ろうとした者を、助けていいのだろうか。
「俺は··········どうすれば···············」