聖遺物の守護者っていうありふれない職業で無敵。 作:気まぐれな富士山
突如、救助を求めギルドに飛び込んで来たのは、元クラスメイトの遠藤だった。
シンジは記憶を探り、彼の天職が暗殺者だったことを思い出す。
「なるほどねぇ。気配遮断のスキルで走って応援を呼びに来た、と。」
「ぼ…………僕が不甲斐ないせいで、皆がやられちゃうんだ!」
遠藤は語り始めた。
今現在、勇者チームがギリギリの戦闘状態にいると。
兵士が足りないから、今すぐ戦力な欲しいと。
そして、それを自分のせいだと自責の念を語った。
「そ、それより、お前ら南雲と西田だよな?なんだよ、その姿………ていうかなんでこんな所にいるんだ?」
「彼らは金ランクの冒険者だ。依頼を受けて私の所へ来たんだ。」
「金ランクって…………あっ!それなら、2人が助けてくれ!金ランクの冒険者なら、かなりの戦力になるはずだから…………」
遠藤が前を向いてみると、ミュウを膝に乗せてそっぽを向いているハジメと、ミュウと遊ぶシンジの姿があった。
「おーミュウどうだ?上手いか?お兄ちゃん特製歌舞伎揚げは。」
「おいしいの!ザクザクなの!」
「シンジのよりも、パパ特製のポップコーンの方が美味いよな〜ミュウ?」
「こっちもおいしいの!パクパクなの!」
「おっふ………最高だぜ。」
そんな様子の2人に憤りを覚えたのか、思い切り机を叩く遠藤。
「そんなことやってないで!こっちの話を聞けよ!」
「うわーん!パパー!」
「おい、こいつ今うちのミュウに八つ当たりしたか?」
「どうするハジメ?処す?処す?」
「わ、悪かったよ!とにかく話を………!」
「話なら聞いてた。ようするに、勇者チームがやべぇってことだろ。だが、俺たちが救援に向かう利益がねぇ。せめてなんかしらの報酬がないとな。」
「うぐっ、そ、それは……………」
「出せないんなら交渉決裂だ。アイツらがいなくても、俺たちは先に進むぜ。」
「シンジの言う通りだ。話は以上か?」
「ど、どうしろって…………」
さっきまで興奮していたのを尻目に意気消沈する遠藤。
なんとなく空気がしんみりとした時、部屋の静寂を破ったのは……………
「パパ、お兄ちゃん、助けてあげないの?」
「ミュウ……………」
「そ、そうだ!白崎は、どうするんだ!八重樫も!」
「あぁ………?」
「ひっ………だ、だって2人とも仲良かっただろ?か、借りを返さなくていいのかよ!」
いつも影が薄く、自己主張の少ないクラスメイトだった彼が、一丁前に啖呵を切って来たのだ。
「…………へぇ、やるじゃん。」
「え…………?」
「口は立派だったが、後は行動だけだな。その煽り文句買ってやるよ。」
「シンジ、どうする気だ?」
「俺はしずっ………八重樫と白崎に借りを返しに行く。アイツらが死ぬのは惜しい、ってのもあるが…………お前は行かなくてもいいぞ?俺一人でやれる。」
「…………だったら俺も行く。 俺も白崎には借りがあるからな。」
「それなら私達も。」
「もちろんです!」
「仕方ないのじゃな。」
「南雲……西田…………ありがとう!」
「事は一刻を争うんだろ?だったら、ハジメのパイルバンカーで下へ降りよう。ハジメたちが先に行って、俺はここの入口から下っていく。敵さんの逃げ場も無しってことだ。」
「うん。シンジの案に賛成。」
「そんじゃあ、白崎&八重樫への倍返し、+α勇者チーム救出作戦、スタートだ!」
「後から追いつくからよ。ミュウ!パパにしっかり着いてけよ!」
「わかったの!お兄ちゃんもまた後で!」
パイルバンカーで作った穴に落ちて行くハジメ一行。
それを尻目に、シンジはあるものを用意していた。
「えーと、これか。」
バイクのハンドル型のベルト。
そしてミニ信号機のようなガイアメモリ。
「さぁ、全てを…………振り切るぜ!」
『トライアル!』
「変……………身!!」
信号の音ともに鎧を纏い、色が変化していく。
最後の青信号とともに高い音が鳴り響き、シンジは突っ走った。
音速に近い速度を出す代わりに、防御の一切を捨て走る姿。
それこそが、仮面ライダーアクセル、トライアルフォーム!
「オラオラオラ!」
ものすごい速度で階層を爆走していく。
「ガァァ!!」
「邪魔だ!」
敵のモンスターは、振り切るか蹴り飛ばすかして超えていく。
通常、トライアルフォームは使用者のエネルギーに乗じてマキシマムドライブを発動した時、その速度は音速に達する。
しかし、シンジの膨大な魔力によってエネルギーを肩代わりしすることで、通常のマキシマムドライブ時に限りなく近い高速移動状態をキープすることが出来るのだ。
「ここからなら…………おっ。」キキッ!
何階層下りただろうか。
見覚えのある場所だ。ベヒーモスのいる第60階層まで通じているアーティファクトがあることを思い出した。
「これに触れば…………」
石に触れると突如ワープし、ベヒーモス一体とスケルトンの大群が現れる。
「こいつは、こうだ!」
トライアルを解除し、アクセルメモリにガイアメモリ強化ブースターを装着する。
『アクセル!アップグレード!』
「さらに向こうまで、振り切るぜ!」
『ブースター!』
体から蒸気を発しながら黄色い姿へ変化する。
「とっとと決めるぜ!」
『エンジン!マキシマムドライブ!』
「ハッ!」
高く飛び上がるのと同時に全身のエンジンブースターから炎を射出し、空中を飛行する。
専用武器、エンジンブレードにエンジンメモリを刺し、マキシマムドライブを放つ。
「ハァァァッ!」
道を塞ぐベヒーモスに突撃し、スケルトン達を無視して行く。
Aの形に切り込み、ベヒーモスを撃破する。
「よし!」
『トライアル!』
再びトライアルに変身し、走り出す。
「まだまだ、振り切るぜ!!」
目的の階層まで、もう少し。
「クソっ!どんだけ出てきやがるコイツら!」
「メルドさん!しっかりしてください!」
勇者チームは圧倒的な魔物の数に押されていた。
戦士長のメルドもやられ、香織は治癒に手一杯だ。
「攻撃来るぞ!」
「鈴!お願い!」
「ダメ………もう魔力が……!」
「まずい!」
防御約の谷口鈴の魔力が足りず、絶体絶命の危機に陥る。
「どいて!ここは聖域にて、神敵を通さず!聖絶!」
治癒師、白崎香織の咄嗟の判断でどうにか助かった。
「ッ………うっ………!」
「香織!大丈夫!?」
「雫ちゃん………うん。まだ、やれるよ!メルドさんの傷はとりあえず塞いだけど、動かさないで!」
強がってはいるが、かなりまずい状況だ。
ほとんどのメンバーの魔力が枯渇しており、次の攻撃を防ぐことは難しいかもしれない。
「ハッ!やるねぇ!でも、またまだ魔物はいるよ!」
キメラのような魔物を召喚し、ブレスを貯め始める。
「勇者といえど呆気なかったねぇ。さっさとその首を差し出しな!」
「クッ、ここまでか………!」
諦めかけた、その時。
天井から強烈な一撃が落ちてくる。
「な、なんだ!」
とんでもなく大きな棒。
何かに押し出されて飛び出てきたように、蒸気を発している。
「い、一体何が…………」
「全く、役に立たないな。勇者ってのは。」
さっきの一撃で出来た穴から、男が降りてくる。
続いて金髪の少女、兎人族の女性、和服の麗人、海人族の少女と続いて、ふわっと着地する。
「うわぁぁ!うげっ!」
最後に、救援を呼びに行った遠藤が情けなく落ちてくる。
「み、みんな…………助けを呼んできたぞぉ…………」
「遠藤!」
救援にざわめく勇者チームを無視しながら、状況を確認するハジメ一行。
「ユエ。勇者どもを守ってやってくれ。」
「任せて。」
「シアは俺と魔物の殲滅、ティオはミュウを守りながら援護を頼む。」
「任せるのじゃ。」
「はいなの〜!」
戦場が硬直し、ハジメたちが動き出す。
「チッ!誰だか知らないが、邪魔するならアンタらでも殺すよ!」
「ハッ、俺は邪魔者なら神だって殺す。お前は、俺の敵みたいだな。」
「そんなに強がるなら、この魔物の軍勢をどうにかしてみな!」
探り合いをしていると、道の奥からドドドという音が聞こえてくる。
「なんだ………!?この音!」
「これ、バイクじゃねぇか!?」
「やっと来たか。」
ものすごい速度で戦場を駆け巡り、青い何かが戦場の真ん中に現れた。
「あれ、ハジメたちの方が早かったか。」
「そりゃそうだろ。お前こそ、よく走ってこれたな。」
「トライアルを舐めんなよ?とんでもねぇスピードだからな?」
「アンタら、いい加減にしな!」
痺れを切らしたように魔物が襲ってくる。
「おっとっと、それならモードチェンジだ!」
『アクセル!』
トライアルを解除し、仮面ライダーアクセルの通常フォームに戻る。
「あ、アンタ一体なんなんだ!色がコロコロ変わりやがって!」
「俺に質問するな。」
「行くぞ、シンジ。」
「了解、振り切るぜ!」
走り出し、魔物の軍勢に切りかかる。
ハジメも愛銃のドンナーとシュラーゲンで応戦する。
「オラオラァッ!」
研ぎ澄まされたエンジンブレードの前に、脆い魔物たちは無力だった。
「まとめてやるぞ!」
『ヒート!』
ガイアメモリを切りかえ、ソウルメモリであるヒートメモリを差し込む。
「行くぜ!」
『マキシマムドライブ!』
バイクモードに自分の体を変形させ、体に炎を纏う。
「オラァァァッ!」
炎の塊となり、敵を蹴散らしていく。
「絶望がお前たちのゴールだ…………」
爆散していく魔物たち。
「す、すげぇ…………」
「ハジメ!そっちはどうだ!」
「もうすぐ終わる!」
敵を蹴散らしていると、親玉らしき褐色肌の魔人が怒りに震えている。
「ふざけるんじゃないよ…………!」
「おいおい、戦争しかけておきながらそりゃあねぇぜ?狩るか狩られるか、結局はそれだけだろ。」
「喧しい!こうなりゃヤケだよ!こいつを使うしかないか………!」
懐から何かを取り出そうとする。
「させない………!」
「待て、ユエ。」
「シンジ……?どうして止める?」
「魔人族がどの程度の魔術を有しているのか、図らせてもらおう。」
「ハッ、舐められたものだね………くらいな!」
取り出したのは謎の水晶。
中にはスノードームのように何か黒いものが渦巻いている。
「こいつは暗雲の水晶!お前たちの嫌な記憶を蘇らせ、魔物の肉を媒体に蘇らせる!」
「ッ!?まさか!」
黒い煙に巻かれて出てきたのは、仮面ライダーアクセルの宿敵にして、作中トップクラスの能力を有したドーパント…………
「ウェザー・ドーパント!?」
「ハハハハッ!トラウマみたいだねぇ!さあ、アンタは自分のトラウマに勝てるのかい!?」
「なんてこった…………」
思わず不満を零すシンジ。
「アイツ、なんなんですぅ!?」
「わからない…………でも、今まで見たことない性質の魔力…………!」
ウェザー・ドーパントは天候を掌で自在に操る。
能力だけなら、この場の誰よりも強い。
「さぁ、さぁさぁ!倒せるものなら倒してみなよ!」
「こいつぁ…………」
頭を抱えるように顔に手を当てるシンジ。
「シンジ…………」
「……………プッ!プハッ!アハハハッ、ハーッハッハッハ!!」
突如爆笑し始めるシンジ。
「な、何がおかしい!」
「いやぁ、まさか変身してるこのライダーのトラウマが出てくるとは、思いもしなかったぜ。」
「…………は?」
「おーっと、分からないそこの人に解説だ。聖遺物には精神が、魂が宿っているのさ。だからこの仮面ライダーアクセルのトラウマが蘇ったってわけ。まぁ、ソイツが相手なら手っ取り早いや。」
『トライアル!』
「アンタに見せてやるよ。トラウマは、超えるために存在しているとな!」
トライアルメモリを差し込み、再びトライアルフォームに変身する。
「変……………身!」
『トライアル!』
高い音ともに青いスリムな体に変身する。
「さぁ、振り切るぜ!」
「チッ!やっちまいな!」
手から雲を出し、落雷や台風といった現象を引き起こすウェザー・ドーパント。
しかし、トライアルフォームとなったシンジは余裕の表情だった。
「見せてやる!トライアルの真の力を!」
トライアルメモリをベルトから外し、変形させる。
『トライアル!マキシマムドライブ!』
「フッ!」
メモリのストップウォッチを起動し、高く弧を描くようにメモリを投げる。
「やれ!」
無数の雷がシンジを狙ってくる。
「無駄だぜ!」
全ての雷を躱しながらウェザー・ドーパントに辿り着き、一撃を当てる。
「ハッ!」
顎に一撃を当て、そして右へ、左へ蹴っていく。
その攻撃の速度はどんどん上がっていき、脚が分身するほどの速度が出る。
「ハッ!ハッ!ハッ!ハッ!」
青い脚がTの字を描き、ウェザー・ドーパントにダメージが溜まっていく。
「うぉぉぉぉぉ!!」
10秒ほど経過するのと同時に、メモリが落ちてくる。
「セリャァァァ!」
「な、なんてスピードだ…………」
「速すぎです!」
「目で追えない………どれほど防御を捨てたらあそこまでになるのか。」
「あれがアイツのフルスロットル、てことだな。」
メモリをキャッチし、ストップウォッチを止める。
『トライアル!マキシマムドライブ!』
「9.8秒!それがお前の絶望までのタイムだ!」
ウェザー・ドーパントは爆発し、魔物の肉片のみが残る。
変身が強制解除され、シンジの姿に戻る。
「やっぱり魔物は魔物だな。本物は、もっと強かったぜ?まぁ、戦ったことないけど。」
「ク、クッソォ!!」
確かに出てきたのは強力な魔物だったが、今回は相手が悪かったということだろう。
「取り敢えずお縄に着けよ。助かるかもよ?」
「はっ、どうせ殺すつもりだろう!」
「それはそっちの対応次第。決して裏切らないという誓いがあるなら見逃すさ。ただし、今のアンタにそんなものは欠片もないと思うけどね。」
ジリジリと距離を詰めていく。
「ッ…………!死にな!」
突如亜空から魔物が爪を振り下ろす。
しかし、数発の弾丸が3つの頭を穿いた。
「させるわけねぇだろ。」
「ナイスハジメ!流石俺の相棒だぜ!」
「ったく、食えねぇヤツだ。」
「クソッ、クソが!」
地団駄を踏み、悔しがる魔人族の女。
「なんだい………………なんなんだいアンタら!無尽蔵の魔力を持った半人に、吸血鬼族に竜人族!オマケに馬鹿の亜人に、あまつさえ人間ごときに!アンタら、本物の化け物だよ!」
「化け物、ねぇ。俺たちにとっちゃ褒め言葉さ。そんで最後の言葉にしては味気ねぇな。」
「覚えときな!いつかアタシの彼氏が、アンタらを殺す!」
「はいそれ減点。俺たちは神をも殺す。邪魔は許さない………………終わりか?それじゃあ、死にな。」
手に持ったエンジンソードを喉元に沿わす。
「止めろ西田!その人を殺すな!」
「シンジ、気にしなくていいぞ。」
「………………いや、お前がやってくれ。ハジメ。俺は…………そこの馬鹿を調教してくる。」
「分かった。」
「っ!?南雲!止めるんだ!」
引き金が引かれ、魔人族の女が殺される。
昂りを見せる天乃川の前にシンジが立ちはだかった。
「な……!なんてことを!」
「あのさぁ、お前今の自分の立場わかってんのかよ。天乃川。あの女はお前たちを皆殺しにしようとしたんだぞ?さらには、俺たちに刺客をしかけた。報復されるコイツが馬鹿だった…………ってことだろ。」
「あの人にも家族がいた!守る物のために戦っていたんだ!」
「それじゃあ、お前は何のために戦ってんだ?アイツが正義なら、お前は悪か?魔人族が正義なら、人間は悪か?」
「それは…………!!」
口ごもる天乃川。これが勇者とは思えないような情けない姿だった。
「ほら、答えられない。そんなんだからお前は大切な者を守れないのさ。」
「ぐっ……!!」
「おや、図星かな?全部言い当てられてしまったかなぁ?」
煽り口調で天乃川を挑発する。
まんまと乗せられるように、綺麗事を吐いた。
「でも…………それでも!人を殺すのは悪いことだ!決してしてはならないんだ!」
「………予想通り。全く、期待外れだぜ。」
「ちょっとシンジ!流石に言い過ぎじゃ…………!」
「情をかけて強くなれるのか。ソイツが…………魔人族を倒せるくらい強くなれるのか?雫。」
「それ、は………………」
「こっちは終わった。シンジ、行くぞ。」
「おう。…………とりあえず引き上げだ。戻るぞ。」
「……………………」
「またこんな所に…………何してるの、シンジ。」
「お、ユエか。いんや、なんでもないさ。こうして星を見上げたい時もあるのよ。」
「センチメンタル………………いや、シンジの場合は脆弱メンタル。」
「それ、うちの国では豆腐メンタルって言ってたわ。懐かしい。」
「トーフ……?なに、それ。」
「豆をどうこうするとな、こう、プルプルのものになるんだよ。日本古来の食事…………ソウルフードってやつだ。」
「とにかく、柔らかいメンタルって言う事ね。それなら、確かにシンジに合ってる。」
「おおう…………今日はやけに毒舌ですな。何かあったのかよ。やっぱ、白崎が入ったことか?」
大勢の知人の前で行われた白崎の公開プロポーズ。
振られた後にまさかの吹っ切れてチームに入るという展開。
今まさに、ハーレムが進行してるのである。
シンジ的には全くもって腹立たしい。
「何かあったのはそっちの方。あのダメ勇者のこと、気にかけてるんでしょう?」
「………………考え中。コメントは控えさせて頂く。」
「そう………………まあ、シンジの選択なら特段気にはしなくて良いと私は思ってる。」
「おや、俺はどこでそんな信頼を勝ち取ったんでしょうね?」
「一緒に旅をしてわかったけど、シンジには弱点がある。」
弱点と言われ、シンジも背筋が伸び、真面目な雰囲気が漂う。
「シンジは、優しすぎる。人を殺すことに躊躇が無いとは到底思えない。でも、ハジメはそんな優しいシンジを仲間として受け入れている。それはきっと、シンジが『妥協しない』ところだと思う。」
「妥協しない?どういうことだ?」
「優しさにも、厳しさにも、何事にもシンジは妥協しない。だから、全てにおいて強いし、全てにおいて弱い。長所であり短所。この世で最も突きづらい弱点。」
「………………そんなつもりは無かったんだがな。でもありがとう、お陰で覚悟が決まった。」
「どういたしまして。あなたのようなチームメイトを励ますことも、私の役目。」
「それ、愛の告白と受け取ってよろしい?」
「頭と踵をくっつけてみる?」
「菩薩峠くんじゃねーか!」
「……………それが、お前の決断か。シンジ。」
「おう。まぁ、時間はかからないと思うぜ。この世界のため、ひいては俺らが最短距離で帰るための必要事項だ。天乃川は俺が鍛え上げる。」
シンジの決断は、勇者である天乃川光輝を鍛え上げることだった。
勇者を鍛え上げ、民衆からの支持を得て、最終的に魔人族を倒す。
効率的といえば効率的だった。
「…………わかった。ただし、やるならキッチリやれよ。」
「おう。またな。」
ハジメ一行が車に乗ろうとした時、ミュウがこちらに寄ってくる。
「ミュウ。ちょっとの間寂しくなるけど、我慢しろよ。」
「パパたちがいるから、全然寂しくないの!」
「それはそれでお兄ちゃん傷ついちゃうな。SAN値がファンブルで発狂しちゃうぞ?」
「でも、お兄ちゃんと一緒にいたかったの……………また、会えるの?」
「……………あぁ、もちろん。ミュウが助けを呼べば、俺は世界のどこにいても君の元へ行くよ。」
「!お兄ちゃん、大好きなのー!」
小さい体で、シンジを強く抱きしめるミュウ。
「ッ!……………俺も大好きだよ、ミュウ。」
別れの挨拶をして、走り去る車から手を振られる。
「シンジさーん!また会いましょう!」
「シンジ!いつでも待っておるぞー!」
「アイツら………………うおぉぉぉ!!愛してるぞお前らー!!」
「チョロいですね。」
「チョロいのじゃ。」
チョロい男、シンジによるクラスメイト強化計画が始動した。