ハイスクールD×D  十二星座の使徒   作:ミニチュアコンセント

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8話 希望の禁手

「リアス先輩、学園を大きな結界で覆っています。よほどのことがない限り外に被害は出ません」

 

匙がリアス部長に現状報告する。

 

ソーナ会長は自身の眷属を全員招集し、学園に結界を張り外に中で起きたことを漏らさないようにしている。

先程、副会長もやってきて結界の方に回ってもらっている。

 

しかし、相手はあのコカビエルだ。

こんな結界では心もとないが、無いよりはマシだろう。

 

「これはあくまで最小限に抑えるものです。正直言って、コカビエルが本気を出せば学園だけでなく、この町も崩壊するでしょう」

 

ソーナ会長が匙の説明に付け加える。

 

「ありがとう、ソーナ。後は私達がなんとかするわ」

 

「リアス、相手はケタ違いの化け物なのですよ?」

 

ソーナ会長の声を遮るようにリアス部長が言う。

 

「わかっているわ。だからこそお兄様に連絡するよう朱乃に言っておいたわ。………朱乃、お兄様はなんて?」

 

連絡をし終えた朱乃さんが言う。

 

「およそ一時間程度で到着するそうですわ」

 

「一時間………。わかりました。その間私達シトリー眷属は結界を張り続けて見せます」

 

ソーナ会長が決意を示す。

 

俺はミラナに言う。

 

「ミラナ、お前はアーシアといっしょに回復役に徹してくれ。それと、アーシアの護衛も頼む」

 

「は…はい!」

 

もう今更ミラナに戦うなって言っても無駄だからな。

それに、回復役も多い方がいいしな。

 

相手が相手だから少し本気でやった方がいいと思うんだが、下手すればここら一帯が更地なるんだよな……。

様子を見ながら戦ってみるか。

 

「さて、私達も行きましょう。皆、死んではだめよ。全員で生きてこの学園に通いましょう!」

 

「「「はい! 部長!」」」

 

イッセー達が気合いのこもった返事をする。

 

「さて、俺たちも行くか」

 

「……はい!」

 

俺とミラナも気合いを入れ、正門に足を踏み入れた。

 

 

 

 

正門から堂々と入り込み俺たちは、コカビエルたちの前に立ちはだかった。

 

目の前には、初老の男が魔法陣の中央に立っていた。

あいつがバルパーか。

 

そして、宙で椅子に座ってこちらを見下ろしているコカビエルの姿があった。

 

「これはいったい……」

 

疑問を口にするイッセー。

 

「四本のエクスカリバーを一つにするのだよ」

 

バルパーは笑みを浮かべながら答えた。

 

「バルパー、あとどれぐらいでエクスカリバーは統合できる?」

 

「五分もかからんよ、コカビエル」

 

「そうか、では、引き続き頼むぞ」

 

バルパーの答えを聞いたコカビエルは、リアス部長に視線を移す。

 

「サーゼクスは来るのか? それともセラフォルーか?」

 

「お兄様とレヴィアタン様に代わり、私達が相手になるわ!」

 

リアス部長がそう答えたとき、閃光が走り、体育館を吹き飛ばす。

 

体育館は跡形もなく消えた。

 

「つまらん。だが、余興にはなるか」

 

馬鹿デケェ光の槍だな。

 

レヴィのとは比べ物にならない光力の密度と大きさだ。

 

「せっかく来てくれたんだ。まずは俺のペットと遊んでもらおうか!」

 

コカビエルが指を鳴らすと複数の魔法陣が現れ、十メートルはある三つ首の犬が十体ほど出てきた。

 

おいおいこいつは……!

 

「────ケルベロスッ!」

 

「ギュオオオオオォォォォォォッッ!」

 

リアス部長が言うと、呼応するかのように咆哮をあげる。

 

「ハルト! あれ知ってるか!?」

 

イッセーが俺に尋ねる。

 

「ケルベロス────地獄の番犬と言う異名を持つ有名な魔物。お前も一度くらいは聞いたことがあるはずだ」

 

「あ、あれがそうなのかよ!?」

 

確か本来は、冥界に続く門の周辺に生息していると聞く。

それを人間界に持ち込むとはな。

 

俺はリアス部長達に言う。

 

「俺は左の奴らを相手する。リアス部長達は右の奴らを頼む」

 

「わかったわ。行くわよ、朱乃! 小猫!」

 

「「はい、部長!」」

 

リアス部長と朱乃さんが悪魔の翼を出す。

 

「イッセーは、サポートよ! 神器(セイクリッド・ギア)で高めたパワーを私達に譲渡してちょうだい!」

 

「はい、部長! 赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)!」

 

『Boost!』

 

イッセーは籠手を展開し、倍加をスタートさせた。

 

「ミラナは、アーシアといっしょに負傷者を回復させてくれ。それと同時にアーシアを守ってやってくれ」

 

「は…はい!」

 

ミラナは、アクエリアススイッチを取り出して押し、アクエリアス・ゾディアーツへと変身する。

 

早速一体のケルベロスが唸り声をあげながら俺に突っ込み炎を吐いてきた。

 

俺は炎を避け朽血刀を取り出し、ケルベロスの足元に潜り込み足を斬り落とす。

 

「ギャオオオオオァァァァァンッッ!」

 

足を斬り落とされたケルベロスは、絶叫をあげながらじたばたする。

 

「魔物だから炎は吐けるよな。だったらその能力貰うぞ」

 

俺は背中に跳び乗り朽血刀を突き刺す。

 

刀身から染み込むように血液を吸収する。

すると、ケルベロスはみるみるとしおれるように死んでいった。

 

俺は朽血刀を抜き、魔力弾でケルベロスを消し飛ばす。

 

「まずは一体」

 

仲間が倒されたからか、四体のケルベロスが咆哮を放ちながら俺に迫る。

 

そのうちの二体が三つ首から炎を吐き出す。

俺は(血を吸収した影響で)刀身が長くなった朽血刀に、炎を纏わせ横薙ぎに思いっきり振る。

 

炎が叩き斬られると同時に、ケルベロス二体の体が上下にずり落ちる。

 

これで三体目……!

 

残りの二体を始末しようとしたとき、俺の視界から消えていた。

 

辺りを見渡すと、アーシアとミラナに襲いかかっていた。

ミラナは何とか二体同時に応戦しているが、一瞬の隙をつかれ一体がアーシアに襲いかかる。

 

「アーシア!」

 

イッセーが焦りアーシアの元へ駆け出すが、突如アーシアとミラナを襲っていたケルベロスの首が斬り落とされる。

 

何事かと思いリアス部長達もその方向を向くと───

 

 

 

「遅くなりました、部長」

 

「加勢に来たぞ、グレモリー眷属」

 

 

 

そこには、魔剣を構える木場とエクスカリバーを構えるゼノヴィアの姿があった。

 

 

 

 

「ようやく来たか」

 

「遅ぇぞ、木場!」

 

「ハハハ、ごめん」

 

俺とイッセーの言葉に苦笑しながら返す。

 

「とりあえず遅れた分はきっちり働いてもらうぞ!」

 

「もちろんさ!」

 

そう言うと木場はケルベロスに斬りかかる。

騎士の俊足を活かし、ケルベロスを翻弄させながら倒していく。

 

ゼノヴィアも同様にケルベロスに斬りかかっていた。

 

「聖剣は魔物に無類のダメージを与える!」

 

そう言いケルベロスの胴体を切断すると、そのままケルベロスは塵になっていった。

 

魔物との相性抜群だな!

 

「私達も負けていられないわね! イッセー、パワーは溜まった?」

 

「はい!」

 

「なら、私と朱乃に譲渡してちょうだい!」

 

「了解です! 赤龍帝からの贈り物(ブーステッド・ギア・ギフト)!」

 

『Transfer!』

 

イッセーがリアス部長と朱乃さんに譲渡したその瞬間、二人に凄まじいオーラと魔力が溢れ出る。

 

「───いけるわ! 朱乃!」

 

「はい! 天雷よ、鳴り響け!」

 

朱乃さんが、天に手をかざすとケルベロス達の頭上に、極太の雷が落ちる。

 

「ハァッ!」

 

更にリアス部長の滅びの魔力が放たれ、ケルベロスは全滅する。

リアス部長は間髪入れずにコカビエルに対し、滅びの魔力を放った。

 

「消し飛びなさい!!」

 

するとコカビエルは、手を前に突き出し滅びの魔力を受け止め、上空へ逸らす。

 

「赤龍帝の力があればここまで力が引き上がるか。面白い! これは酷く面白いぞ!」

 

一人で哄笑をあげるコカビエル。

 

その時───

 

「───完成だ」

 

聞こえてきたバルパーの嬉々とした声。

 

神々しい光が校庭を覆う。

 

四本のエクスカリバーが一つになった。

 

神々しい光を放ちながら陣の中心に現れたのは、一体の異形の聖剣だった。

 

「エクスカリバーが一本になった光で、下の術式も完成した。あと二十分程度でこの町は崩壊するだろう。早く逃げることをオススメする」

 

『!?』

 

バルパーの言葉に全員が驚愕した。

 

この町が崩壊する!?

おいおい、冗談キツイぜ!

 

俺たちが焦っている中、木場がバルパーに近づいていく。

 

「バルパー・ガリレイ。僕は聖剣計画の生き残りだ。いや、正確にはあなたに殺された身だ。今は悪魔に転生したことで生き永らえている」

 

冷静な口調で言うが、言葉からはっきりと憎悪が感じ取れる。

 

「僕は死ぬわけにはいかなかった。死んでいった同士たちのために!」

 

木場が剣を構えてバルパーに斬りかかる!

 

だが、その上空からコカビエルが光の槍を木場に放とうとしていた!

 

マズい!

 

「避けろ木場ァ!」

 

 

ドオオォォォォォン!!

 

 

コカビエルの槍が木場を襲った。

 

間一髪で避けたから直撃はしてないが、攻撃の余波で木場はボロボロになってしまった。

 

「直撃は避けたか。すばしっこいやつだ」

 

すると、コカビエルがフリードを呼ぶ。

 

「フリード」

 

「はいな、ボス」

 

近くの木の後ろからフリードが出てくる。

 

「最後の余興だ。陣のエクスカリバーを使い、こいつらをまとめて始末してみせろ」

 

「ヘ〜イ。チョー素敵仕様になったエクスなカリバーちゃ〜ん。確かに拝領しましたでございます。さて、誰からヤっちゃいましょうかねぇ? いや、ここはハルトきゅんからヤっちゃいましょうか!」

 

フリードは下衆な笑みを見せながら、統合されたエクスカリバーを握った。

 

俺をご指名かよ……昔に色々あったからそのお返しってか?

 

つーかてめぇがきゅんとか呼ぶなや。

気色悪ぃ。

 

「うっ………」

 

木場が立ち上がろうとするが、すぐに膝をついてしまう。

 

「被験者の一人が脱走したとは聞いていたが、卑しくも悪魔に堕ちていたとは」

 

バルパーが木場に近づきながら語りかける。

 

「だが、君らには礼を言う。おかげで計画は完成したのだからな」

 

「………完成?」

 

「君たち被験者はエクスカリバーを扱える因子はなかった。そこで、私は一つの結論に至った。被験者から因子だけを抜き出せば良い、とな」

 

「っ!?」

 

バルパーの言葉に木場は目を見開く。

 

「そして、結晶化させることに成功したのだ。これはあの時の因子を結晶化したものだ。最後の一つになってしまったがね」

 

バルパーは懐から結晶のような物を取り出す。

 

あれが因子を結晶化したものだと?

 

「ヒャハハハハ! 俺以外の奴らは途中で因子に体がついていけなくなって死んじまったんだぜぇ! そう考えるとやっぱ俺はスペシャルなんすかねぇ」

 

すると、何かを察したのかゼノヴィアがボソリと呟く。

 

「聖剣使いが祝福を受けるとき、あのような物を体に入れられて因子の不足を補っていたと言う訳か」

 

バルパーが忌々しそうに言う。

 

「偽善者共め。私を異端として追放しておきながら、私の研究だけは利用しよって。どうせあのミカエルの事だ。被験者から因子を取り出しても殺してはいないだろうがな」

 

「………だったら、僕たちも殺す必要はなかった筈だ。なのにどうして………」

 

「お前たちは極秘計画の実験材料にすぎん。用済みとなれば廃棄するしかなかろう」

 

「僕たちはずっと役に立てると信じて耐えてきた……。それを廃棄………」

 

木場はなんとかその場を立ち上がるが、今の話を聞いて信じられないような目をしている。

 

それはそうだ。

役に立てると信じてきたのに、その結果が廃棄だからな……。

 

バルパーが木場の足元に結晶を投げる。

 

「欲しければくれてやる。今では更に精度の高い物を量産できる段階まで来ているからな」

 

木場は結晶を手に取り呆然と見つめる。

表情は悲哀に満ちていた。

 

その時だった。

 

結晶から淡い光を放ち、校庭を包み込むように広がった。

 

木場を囲むようにポツポツと光が湧き、人の形をとる。

 

あれは………聖剣計画で犠牲となった者たちか?

 

「この戦場に漂う様々な力が因子の球体から魂を解き放ったのですね」

 

と朱乃さんが俺たちに言う。

 

木場はそんな彼らを見る。

哀しそうな、懐かしそうな表情を浮かべていた。

 

「僕は……僕はッ! ………ずっと、ずっと思っていたんだ。僕が、僕だけが生きていていいのかって……。僕よりも生きたかった子がいた。僕よりも夢を持った子がいた。僕だけが平和な暮らしを過ごしていていいのかって………」

 

霊魂の少年の一人が微笑みながら何かを訴える。

 

口を動かしているが何を言ってるのか分からない。

それはイッセーも同じのようだ。

 

すると、ミラナが教えてくれた。

 

「『自分達のことはいい。君だけでも生きてくれ』。って言ってます……」

 

それが伝わったのか木場の両眼から涙が溢れ出る。

 

魂の少年少女達が一定のリズムで口をパクパクしだした。

 

「───聖歌」

 

アーシアがそう呟いた。

 

彼らは歌っている。

 

木場も涙を流しながら口ずさむ。

 

聖歌。

辛く苦しい人体実験が繰り返される中で、唯一夢と希望を保ち続けるために手にしたもの。

 

すると、彼らの魂が青白い輝きを放って木場を中心に眩しくなっていく。

 

『僕らは一人ではダメだった───』

 

『私たちは聖剣を扱える因子が足りなかった───』

 

『でも、皆が集まればきっと大丈夫───』

 

彼らの声が俺たちにも聞こえる。

 

彼らが歌っている聖歌はとても温かいものだった。

 

俺は手を胸に当てる。

胸の奥深く、深奥までも温められているように感じた。

 

俺は気づいたら、目から熱いもの───涙が出ていた。

 

それはイッセーもアーシアもミラナもそうだった。

 

『聖剣を受け入れるんだ───』

 

『怖くないよ───』

 

『たとえ、神がいなくても───』

 

『神が見ていなくても───』

 

『僕たちの心はいつだって───』

 

 

 

「『ひとつだ』」

 

 

 

彼らの魂が一つの大きな光となって木場を包み込んだ。

 

まさか……これは───。

 

その時、イッセーの左腕の籠手───否、ドライグの声が聞こえる。

 

『あの騎士は至った。所有者の想いが、願いが、この世界に漂う流れに逆らうほどの劇的な転じ方をしたとき、神器は至る。それこそが───』

 

俺はボソリと呟く。

 

「───禁手(バランス・ブレイカー)

 

 

 

闇夜の天を裂く光が木場を祝福しているかのように見えた。

 

 

 

 

[三人称 side]

 

 

時は遡り、木場が禁手に至る少し前。

 

人気のなくなった真夜中の駒王町を一人で歩いている人物がいた。

 

「うぅ……。この町にサジタリウス(星王龍)様のオーラが感知されたと聞いて訪れてみましたが……そう簡単には見つからないですね……」

 

その人物はガブリエルだった。

 

「やはり気のせいなのでしょうか………」

 

彼女はそう言いながらクロークを取り出す。

そのクロークを見るたびに当時の記憶がはっきりと脳内に浮かぶ。

 

 

 

『大丈夫か?』

 

 

 

自分が赤龍帝の炎にやられそうになった所を、彼が助けてくれた。

あれから数千年経っても彼の事を忘れたことはなかった。

 

「いえ……もう少しだけ……」

 

ガブリエルがもう一度捜そうとしたその時、とある方角を見つめる。

 

その方角は駒王学園があるところだ。

 

青白い輝きを発しており、更にうっすらとだが彼のオーラも感じ取ることができた。

 

「……サジタリウス様……?」

 

すると、彼女は決意を決めてうっすらと感じた彼のオーラを頼りに駒王学園へと向かった。

 

 

[三人称 side out]

 

 

 




アニメで木場の禁手の回を見たときは、思わず泣いてしまいました(ToT)
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