ハイスクールD×D  十二星座の使徒   作:ミニチュアコンセント

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4話 男の娘

授業参観の翌日。

 

俺たちオカ研は旧校舎の一角にある『開かずの教室』と言われている部屋に来ていた。

その部屋は『KEEP OUT』と書かれたテープが幾重に貼られており、呪術的な刻印も刻まれている。

 

「ここに部長のもう一人の『僧侶』がいるのか……」

 

そう、ここにはリアス部長のもう一人の僧侶がいるらしい。

話には聞いていたが、どういう奴かは分からない。

ただ、リアス部長、朱乃さん、木場、小猫は知ってるそうだ。

 

そもそもなぜ、その僧侶がこの部屋にいるのかというとその僧侶の能力が強すぎるため、リアス部長では扱いきれなかったそうだ。

それ故、今までここに封印していたらしい。

 

けど、唐揚げ君との一戦やコカビエルの一戦を通して悪魔のお偉いさん達から解禁の許可が降りたらしい。

 

「────扉を開けるわよ」

 

リアス部長が扉に手をかざすと刻印が消え去り、扉を開ける。

すると──────。

 

「イヤァァァァァアアアアアアッ!!」

 

とんでもない絶叫が聞こえてきた!

 

「な、なんだぁっ!?」

 

これには俺、ミラナ、イッセー、アーシア、ゼノヴィアが驚いていた。

リアス部長はというと、ため息をつき朱乃さんと共に中に入っていった。

 

『ごきげんよう。元気そうで良かったわ』

 

『な、な、何事なんですかぁぁぁ!?』

 

おいおい、狼狽しすぎだろう……。

 

『あらあら。封印が解けたのですよ? もうお外に出られるのです。さぁ、私達と一緒に出ましょう?』

 

いたわりを感じられる朱乃さんの声。

 

『いやですぅぅぅ! ここがいいですぅぅぅぅぅ! お外怖いぃぃぃぃ!!』

 

「おいおい、こりゃあ引きこもりってレベルじゃねぇぞ……」

 

「百歩譲って引きこもりだとしても……これは重症なんじゃ……」

 

俺とイッセーの呟きに木場は苦笑し、小猫はため息をつく。

 

ミラナが言う。

 

「……で、でもどんな子なのか……す、少し気になります」

 

まぁ、気になるっちゃ気になるけど……。

とりま入ってみるか。

 

俺たちは部屋の中に入り、中を見渡した。

中は薄暗くて可愛らしく装飾されている。

ぬいぐるみも多数あった。

 

……でもこの可愛らしい部屋に一つだけ異様なものが。

それは………部屋の中央にある棺桶。

 

 

……………は?

 

 

え……ちょ、いや……え?

なぜこの可愛らしい部屋に棺桶があるんだよ?

物騒だなオイ。

 

俺たちはリアス部長と朱乃さんの視線の方に移す。

そこには金髪で赤い双眸をした人形みたいな美少女だった!

それを見て、真っ先に興奮したのはやはりこいつだった。

 

「おおっ! 女の子! しかもアーシアに続く金髪美少女! 僧侶は金髪尽くしってことですか!」

 

「確かに美少女だな………」

 

俺が品定めするような目で見てると、横から頬を抓られる。

いたひれひゅ、ミラナひゃん……。

 

すると、突然リアス部長が驚愕の言葉を発する。

 

 

「この子は男の子よ?」

 

 

……………え?

 

 

リアス部長の言葉を聞いて全員耳を疑った。

驚きのあまりミラナが俺の頬から手を離したんだぜ?

助かったけどさ。

 

……ってそれよりもだ。

こんな美少女が……男?

いやいや、駒王学園の女子の制服着てるし女でしょ。

これのどこが男なのよ?

 

イッセーが言う。

 

「いやいやいや! どっからどう見ても女の子ですよ、部長! ………え? マジ?」

 

「女装趣味があるのですよ」

 

朱乃さんがニコニコ顔でそう平然と言ってくるが………。

女装趣味?

自分の趣味で着てるってことか?

女だから着てるわけじゃなくて?

 

しばらく沈黙がこの場を支配するが─────

 

「「ええぇぇぇぇぇぇえええええええっ!?」」

 

俺とイッセーの叫び声でかき消された。

 

こんなもんミラナ、アーシア、ゼノヴィアだって驚いてるわ!

叫び声は上げてないものの目を見開いてるんだぞ!

 

「ヒィィィィィッ!! ゴメンなさぁぁぁぁい!!」

 

金髪美少女───否!

女装野郎は俺とイッセーの声にびっくりして悲鳴をあげていた!

 

こんなの見せられたら誰でも女と勘違いするだろうがぁぁぁぁっ!

こいつの写真撮って町中で百人に『この子は女の子だと思いますか?』って質問すれば、百人全員が『はい』って答えんだろぉ!?

男女有無問わずで!

 

「引きこもりのくせになんで女装してんだよぉぉぉぉっ! 誰かに見せるわけでもねぇのに!」

 

イッセーの一言に女装男子が反論する。

 

「だ、だって女の子の服の方が可愛いんだもん」

 

「「もん、とか言うなぁぁぁぁ!」」

 

別に女装趣味があるのはそれでいいよ!

勝手にやってればいいさ!

けどな、その顔と服がマッチしてんだよ!

マッチしてるから余計に混乱する!

 

「人の夢と書いて、儚い」

 

「うまいな! けど、シャレにならないからやめろよ!?」

 

小猫の呟きに俺はそう返す。

 

はぁ……もういいわ。

とりあえず深呼吸して落ち着こ。

 

俺は何回か深呼吸して落ち着きを取り戻す。

 

その際、リアス部長が女装男子の頭を撫でながら言う。

 

「この子の名前はギャスパー・ヴラディ。私のもう一人の僧侶よ。そして、元人間と吸血鬼(ヴァンパイア)のハーフなの」

 

「吸血鬼って、こいつが!?」

 

その時、女装男子、ギャスパーから小さな牙がキラリと光った。

 

 

 

 

「と、と、ところでこの方たちは誰なんですか?」

 

ギャスパーが訊くとイッセー達は自己紹介する。

 

「俺は部長の唯一の兵士、兵藤一誠だ。気軽にイッセーって呼んでくれ」

 

「僧侶のアーシア・アルジェントです。よろしくお願いします」

 

「最近悪魔になった騎士のゼノヴィアだ。よろしく頼む」

 

イッセー達が自己紹介を終えたが、ギャスパーは「ヒィィィィ! 人がいっぱい増えてるぅぅぅぅ!」っと怖がっていた。

 

お前から訊いてきたくせになんで怖がってんだよ。

挨拶しただけじゃねぇか。

………もしや、こいつ過去になにかあったのか?

明らかにこの怖がり方は異常だ。

 

俺がそう考えているとギャスパーは俺とミラナに視線を移す。

 

「な、ならこちらの方たちは?」

 

「ん? ああ、俺の名は秋星晴人だ。リアス部長の眷属ではないがオカ研の部員ってことでよろしく頼む」

 

「……わ、私はミラナ・シャタロヴァです……っ。よ、よろしくお願いします……っ」

 

俺とミラナが自己紹介を終えると、朱乃さんが横合いから言ってくる。

 

「因みに、ハルト君は星王龍でもあるのですよ?」

 

朱乃さんの言葉を聞いたギャスパーは、しばらく間を開けてから徐々に目を見開いて──────

 

「ええぇぇぇぇぇぇぇえええええっ!?」

 

はい、案の定叫びました。

 

「せ、せ、星王龍ぅぅぅ!? 三大勢力の英雄と称されている龍じゃないですかぁぁぁ! そんな英雄がど、ど、どうしてここにいるんですかぁぁぁぁっ!」

 

「さっき言ったろ。オカ研の部員だって」

 

俺は若干ため息をつきながらギャスパーに言う。

 

「ギャスパー、お願いだから外に出ましょう? ね?」

 

リアス部長が優しく声をかけるが────

 

「お外怖いですぅぅぅぅ!! 僕はずっとここにいたいですぅぅぅぅ!!」

 

………やっぱなにかありそうだな。

 

俺が目を細めて見ていると、しびれを切らしたイッセーがギャスパーの腕をつかむ。

 

「ほら、部長が外に出ろって────」

 

「イヤァァァァァアアアアッ!!」

 

 

 

───────次の瞬間、この部屋の時間が止まった。

 

 

 

周囲は時間が止まったようにモノクロの風景になり、俺とリアス部長以外の動きが完全に停止させられていた。

時計を見ても針が動いてない。

 

すると、リアス部長が苦笑しながら言う。

 

「やっぱりハルトには効かないみたいね」

 

「こいつは………神器か?」

 

「ええ、そうよ。────『停止世界の邪眼(フォービトゥン・バロール・ビュー)』。それがギャスパーが持っている神器。視界に映した全ての物の時間を停止させることができるの。まぁ、停止の対象が強い場合は止めることができないみたいだけど」

 

リアス部長がギャスパーを見ながら呟く。

そして、当のギャスパーは部屋の隅に移動していた。

 

「なるほどねぇ……。まさか、リアス部長の眷属にイッセー、アーシア、木場以外に神器所有者がいたとは」

 

俺がそう言ったとき、停止の効果が切れたのか元の風景に戻る。

 

「ん? あれ?」

 

「おかしいです。何か今………」

 

「ああ、なにかされたのは確かだね」

 

「……い、今のは一体……?」

 

停止が解けた四人は驚いたり、困惑していた。

朱乃さん、木場、小猫はため息をつくだけだった。

なるほど、朱乃さん達は知ってたってわけか。

 

俺は困惑してるイッセー達に言う。

 

「お前達はギャスパーの神器の力によって停止させられていたんだよ」

 

俺の言葉に驚く四人。

 

「ギャスパーの神器!? じゃあ、ギャスパーは神器所有者ってことか!?」

 

「ああ、『停止世界の邪眼(フォービトゥン・バロール・ビュー)』というものらしい。自身の視界に映った物体の時間を止める代物だと」

 

「時間を止める!? んな無茶苦茶な……」

 

お前の神滅具も使い方次第では無茶苦茶だと思うがな。

あの赤い龍が封印されてるんだから。

 

「怒らないで! 怒らないで! ぶたないでくださぁぁぁぁいっ!」

 

「落ち着けって。時間を止められたぐらいでぶつわけねーだろ」

 

「…………ほ、本当ですか?」

 

「ああ。何かされたわけでもないしな」

 

けど、俺には効かなかったけどな。

 

……なんとなくだがギャスパーが封印されてた理由が分かった。

恐らく神器の力を制御できてないんだろう。

興奮状態になったり、パニックになったりすると発動させてしまうみたいだな。

 

俺がそう思っているとき、リアス部長が言う。

 

「それでね、イッセーとハルトにお願いがあるの」

 

「「お願い?」」

 

「私と朱乃はこれから会談の打ち合わせに行かないといけないの。だからその間あなた達にギャスパーの教育係を頼めないかしら?」

 

「了解っす!」

 

「まぁ、俺も構わないが」

 

会談の打ち合わせねぇ。

いろいろと大変だな。

 

「それと、祐斗。あなたも一緒に来てちょうだい。お兄様があなたの禁手について知りたいらしいのよ」

 

「わかりました。イッセー君、ハルト君、ギャスパー君のことは任せたよ」

 

「任せろ木場」

 

「任せとけ」

 

俺とイッセーがそう言うと、リアス部長、朱乃さん、木場は魔法陣で転移していった。

 

……さて、任せろとは言ったものの少し難しいな。

いろいろ問題はあるんだが、一番はこいつの性格なんだよな……。

いつの間にか段ボールの中に入ってるし。

 

「どうするよ、ハルト」

 

「う〜ん、一番の問題は性格なんだよな。こいつの性格をどうにかしないとな……」

 

俺がそう思案していると、ゼノヴィアが声をかけてくる。

 

「なら私に任せてくれ、ハルト、イッセー。私は幼い頃から吸血鬼と相対してきたからな。こういうのはお手の物だ」

 

段ボールに括り付けられた紐を引っ張りながらデュランダルを肩に担ぐ。

おいおい、お前ギャスパーを滅する気かよ……。

 

「ヒィィィィィッ! せ、せ、聖剣デュランダルの使い手だなんて嫌ですぅぅぅぅ! 滅せられるぅぅぅぅぅぅ!」

 

「悲鳴をあげるな、ヴァンパイア。なんなら、十字架と聖水を用いて、さらにニンニクもぶつけてあげようか?」

 

「ニンニクらめぇぇぇぇぇぇぇぇッ!」

 

ゼノヴィアはそのまま段ボール(ギャスパー)を外へズルズルと引きずっていった。

 

………なんか、可哀想に思えてきた。

 

「……だ、大丈夫なんでしょうか……?」

 

ミラナが心配そうな表情で俺に言ってくる。

 

「……大丈夫かどうかは分からんが……とりあえず様子を見るしかねぇな」

 

「……そ、そうですね」

 

俺たちはゼノヴィアの後を追っかけていった。

 

 

 

 

「イヤァァァァァァアアアアアアッ!!」

 

「ほら、走れ! もたもたしてるとデュランダルの餌食になるぞ!」

 

夕日に差しかかった時間帯、旧校舎の前でギャスパーがデュランダルを振り回しているゼノヴィアに追いかけ回されていた。

 

「……ゼ、ゼノヴィアさん……少し目が輝いてるような……」

 

「だよな。しかも、少し楽しげだしな」

 

そう、ゼノヴィアの目が輝いているんだ。

おまけに、楽しんでるようにも思える。

 

ゼノヴィアよ………お前、ギャスパーを使ってストレスを解消してるよな?

じゃなきゃ目を輝かせることはしないぞ。

 

俺がそう思っていると、イッセーが思い出したかのように言う。

 

「そういえば、ギャスパーって吸血鬼なんだろ? 太陽に当たっても大丈夫なのか?」

 

確かに。

吸血鬼って日の光に当たると皮膚がただれ落ちて、灰になるって言うイメージがあるけど………ギャスパーは普通に走り回ってるしなぁ。

 

「ギャー君はデイウォーカーと呼ばれる特殊な吸血鬼なので、日の光に当たっても行動はできます」

 

デイウォーカー。

初めて聞くな。

恐らく、ハーフだから日の光に当たっても行動できるんだろう。

 

「うぅ〜。もうダメですぅ〜! 一歩も動けないですぅぅぅ!」

 

おっと、遂にダウンしたか。

見た目通り軟弱だな。

 

地面に座り込むギャスパーに小猫が近づき、あるものを出す。

 

「ギャー君、疲れた体にはこれがいいよ」

 

「に、ニンニクぅぅぅ!?」

 

おお、ギャスパーがまた逃げ出したぞ。

まだ逃げる体力あんじゃねぇか。

 

つーか、小猫までギャスパーを追いかけ回したぞ。

あの小猫が誰かを弄るなんてな。

しかも笑顔で。

これはなかなかレアな光景だな。

 

すると、この場に訪問者が現れる。

 

「おー、やってるなオカ研」

 

「おっ、匙じゃん」

 

「よー、兵藤、秋星。解禁された引きこもりの眷属を見に来たぜ」

 

ギャスパーのことだな。

 

俺は匙に指差しして伝える。

 

「あー、あいつだ。今、小猫とゼノヴィアに追っかけ回されてる」

 

「どれどれ。───おおっ! 金髪美少女かよ!」

 

「女装野郎だがな」

 

俺が苦笑しながら言うと、匙は地に両手を着き、ガックリと項垂れる。

あーあ、こいつにもダメージが来たか。

 

「そりゃないぜ……こんな残酷な話があっていいものかよ………」

 

「分かる。その気持ちは十分にわかるぞ、匙よ!」

 

イッセーが匙の言ったことにうんうんと頷く。

 

まぁ、あの顔で女子の制服着るのは反則だな。

あれで男と知ったときのガッカリ感と絶望感が半端じゃない。

 

まぁ、それはともかく。

 

 

「で? お前は何しに来たんだよ、アザゼル」

 

「「「「「えっ!?」」」」」

 

俺の言葉に全員が驚き、動きを止める。

 

「気配は消していたんだがなぁ。やっぱお前さんにはバレちまうか」

 

「あれで気づかれないとでも? だったら俺のことをなめ過ぎだな」

 

アザゼルの登場により、場の空気が一変した。

イッセーは赤龍帝の籠手を出し、ゼノヴィアはデュランダルを構える。

匙も自身の左手に黒いトカゲみたいな物を出現させる。

 

あれが匙の神器か。

レオ・ダスタードの映像に映っていたな。

木場とイッセー達がエクスカリバーの探索中に、フリードと遭遇して戦闘に入ったときにあのような物が出現していた。

 

「お、おい兵藤、アザゼルってまさか!」

 

「マジだよ。実際、俺はこいつと何回も接触してる」

 

イッセーの言葉で警戒を更に強める匙。

 

そんな警戒しなくてもいいだろうに。

………って言っても無理があるか。

 

「やる気はねぇよ。ほら、構えを解けって。ハルトを除いて俺に勝てる奴がいないのはなんとなくでも分かるだろう? 散歩がてら聖魔剣使いを見に来ただけだ」

 

なるほど、木場がお目当てだったか。

けど、遅かったな。

 

「木場ならいないぞ。今サーゼクスに呼ばれてるからな」

 

「あらら、そりゃ残念だな」

 

アザゼルは頭をポリポリかき、残念そうにため息をつく。

 

「散歩がてらねぇ………ま〜たサボってんのか?」

 

俺が半分冗談で言うと、アザゼルは結構ガチめの声量で言う。

 

「んなわけねぇだろ! お前さん俺を何だと思ってんだよ!? こちとら一昨日まで椅子に縛られながら強制的に仕事させられてたんだぞぉぉぉぉぉぉっ! この隈見ればわかるだろうが!」

 

ああ、本当だ。

アザゼルの目に隈ができてる。

大体あいつが徹夜して仕事終わらせた後ってこうなるんだよな。

 

「あのとき、すっげー大変だったんだぞ!? 椅子に縛られてるからどこにも行けねぇし、おまけに部下共が終わるまで見張ってたんだからな!?」

 

へー、部下の堕天使共が見張ってたんか。

うん、その堕天使に栄誉を称えたいね。

 

「んなもんサボってたお前が悪い」

 

「んだと! この女誑し!」

 

「あ"あ"ん!? 俺は事実を言ったまでだ! それと女誑しはお前だろうが! この閃光と暗黒の(ブレイザー・シャイニング)───」

 

「だぁぁぁぁぁぁっ! 分かった! 分かったからそれを言うな!」

 

俺とアザゼルの言い争いにイッセー達は、きょとんとした表情を浮かべる。

それに気づいたアザゼルは一つ咳払いする。

 

「まぁ、雑談はここまでにして………そこのヴァンパイア」

 

アザゼルに呼ばれたギャスパーはビクッとする。

 

「『停止世界の邪眼』か。そいつは使いこなせないと害悪になる代物だ。神器の補助具で不足している要素を補えばいいと思うが……そういや、悪魔は神器の研究が進んでいなかったな。五感から発動する神器は持ち主のキャパシティが足りないと自然に動きだして危険極まりない」

 

おーおー、随分詳しいこって。

流石、神器オタク独身女誑しクソハゲガラス総督だな。

 

次にアザゼルは匙に視線を向ける。

 

「それは『黒い龍脈(アブソーブション・ライン)』だな。訓練するならそいつをヴァンパイアに接続して、余分なパワーを吸い取りつつ発動させるといい。そうすれば、暴走も少なく済むだろうさ」

 

「力を……吸い取る……?」

 

匙は自分の神器を見つめて言う。

 

へぇ~、あれは他者の力を吸い取れるんか。

 

「なんだ、知らなかったのか? そいつは五大龍王の一角、『黒邪の龍王(プリズン・ドラゴン)』ヴリトラの力を宿している。物体に接触し、その力を散らせる能力がある。短時間なら、他の者に接続させることも可能だ」

 

五大龍王。

書物で読んだことがある。

二天龍に継ぐほど力のあるドラゴン達。

神器に封印されている者もいるのか。

 

「ああ、そうだ。もっと手っ取り早い方法があるぞ。それは赤龍帝の血を飲むことだ。ヴァンパイアなんだし、一度やってみるといい。ま、後は自分たちでやってみろ」

 

アザゼルが踵を返し、帰ろうとするとイッセーがそれを止める。

 

「待てよ! なんで俺に正体を隠して接触してきた?」

 

「それはな……………俺の趣味だ」

 

フッと笑うとそのままアザゼルは、この場を去っていった。

 

そして俺は額に手を当て盛大にため息をついた。

 

 

 

 

場所は変わって体育館。

もう時刻的には夜になっているんだが、俺たちはギャスパーの訓練を行っている。

 

「本当に大丈夫なのか?」

 

「……は、はい。私だけ途中から抜けるのは……あれですから、さ…最後までいっしょにいます……」

 

遅くなるからミラナを先に家に帰そうとしたんだが、自分も終わるまで一緒にいるとのこと。

 

気持ちはありがたいけどなぁ………ミラナはこの中で唯一の人間だ。

俺たち異形の存在はまだ平気だが、授業もやってギャスパーの特訓にも付き合うとなると流石に疲れが出てくる。

体調を崩さなければいいが………。

 

「……無理はするなよ」

 

「はい」

 

笑顔でそう俺に言ってくる。

 

因みに、ギャスパーの訓練内容はイッセーが投げたバレーボールを神器で止めるというものだ。

ただ、アザゼルの言うとおり暴走させたら元も子もないから、匙の神器でギャスパーの力を散らしている。

頭にラインが繋がってるから不格好だがな。

 

「いくぞギャスパー!」

 

「は、はいぃぃぃ!」

 

イッセーがボールを投げる。

そして、ギャスパーはボール止めようと神器を発動させるが、

 

「またか」

 

視界に映した物全てを停止させてしまう。

だから、ミラナやアーシア、イッセー、匙、ゼノヴィア、小猫は停止させられている。

 

「おい、こら、逃げるな」

 

「な、なんで動けるんですかぁぁぁぁ!?」

 

「俺に効かないってこと忘れてるだろ」

 

そして、逃げるギャスパーを捕まえるのが俺の仕事。

 

 

 

 

そして、暫くの間何回も試したがやっぱり視界に映したもの全て止めてしまう。

 

そこで、イッセーがあることを思い出す。

 

「そういえば、アザゼルがもう一つ気になること言ってたな。俺の血を飲めばとか………」

 

「絶対嫌ですぅぅぅぅぅ!」

 

「だってお前、ヴァンパイアなんだろう?」

 

「血嫌いですぅぅぅぅ! 生臭いのダメぇぇぇぇぇ!」

 

お前、本当に吸血鬼か?

吸血鬼が血を嫌うって……んなもん聞いたことがねぇや。

 

「ヘタれヴァンパイア」

 

「うわぁぁぁぁん! 小猫ちゃんがいじめるぅぅぅ!」

 

しゃがみ込んで泣くギャスパー。

 

俺はそれを見てため息をつきながら言う。

 

「はぁ……。これはガチで大変だな………」

 

ミラナも俺の言ったことに苦笑する。

 

「アハハ………お疲れさまです」

 

自分も疲れてるであろうに……。

 

労りの言葉をかけてくれたミラナに感謝する俺であった。

 

 

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