ハイスクールD×D 十二星座の使徒 作:ミニチュアコンセント
次の日の夜。
「ギャスパー、出てきてちょうだい。無理に行かせた私も悪かったわ」
『ふぇええええぇぇぇぇええええんっ!』
……どういうわけか旧校舎の自室で閉じこもって泣いているギャスパー。
………うん、何があった?
リアス部長とイッセーに呼ばれたから旧校舎に来た俺だが……現状を把握できてない。
「おい、イッセー。どういうことだよ? ギャスパーに何があった?」
「あぁ、実はさっきまで悪魔家業してたんだ。で、俺のお得意様の森沢さんって言う男性の所に一緒に行ったんだけど……その……森沢さんがギャスパーの姿を見たら………すんごい興奮しちまって………」
「あぁ、もういい……。その先は大体分かった……」
その森沢さんに怯えたギャスパーが、十中八九神器を発動させたんだろう。
ただでさえ対人恐怖症のギャスパーだ。
男の人が興奮したら…………なぁ。
リアス部長が言う。
「ギャスパーがこんな風になってしまったのは、ある事情のせいなの」
「「事情?」」
「ギャスパーの父親は名門の吸血鬼なのだけれど、母親の方は人間なの。吸血鬼は悪魔以上に血統を重んじる種族。当然ギャスパーは親兄弟であっても差別的な扱いを受けて育った。人間界に来ても化け物扱いされ、更に時間を止めるという厄介な力を授かって制御すらできないのだから怖がられ、忌み嫌われたのよ」
俺はリアス部長の話を聞いて、心の中でふつふつと怒りが湧いてきた。
………なんでギャスパーが血縁者から差別的な扱いを受けなきゃいけねぇんだよっ!
兄弟もそうだが、一番の問題はその親だ!
自分の本当の息子なのに差別的な扱いをするってどういう事だ!
……これを聞かれると他の奴らからは「そういうものだからしょうがない」とか「貴族のことを何もわかってない」とか言われるかもしれねぇけど、それでも俺は言わせてもらう。
血統がどうとか、貴族がどうとかそんなこと一切関係ない!
家族が……特に親は絶対そんなことしちゃならねぇんだよ!
どんな理由があろうとな!
『ぼ、僕……こんな力いらない! みんな停まっちゃうんだ! だから、みんな怖がる! 嫌がる! 僕だって嫌だ! もう友達を停めたくないよ………停まった大切な人の顔を見るのは………もう嫌だぁ!』
「……これでは『王』失格ね」
再び部屋ですすり泣くギャスパーの声を聞いて、肩を落とし落ち込むリアス部長。
いや、この件に関しては誰も悪くない。
「なぁ、リアス部長。リアス部長は会談の打ち合わせは終わったのか?」
俺がリアス部長に問うと、首を横に振る。
「いいえ、途中で抜けてきたのよ。ギャスパーのことが心配だもの……」
「なら、今は先にそっちを優先させるといい。ここは俺たちに任せろ」
「でも………」
リアス部長が言い淀むが、イッセーが俺の意見に頷き言う。
「そうっすよ、部長! ここは俺たちに任せてください。せっかくできた男子の後輩なんですから! 俺たちでなんとかします!」
「………分かったわ。二人共ギャスパーのこと、お願いね」
「はい!」
「おうよ!」
俺たちの勢いある返事を聞いて、リアス部長は微笑み頷いた。
リアス部長は心配そうにギャスパーがいる部屋を
俺とイッセーは互いの目を見合わせ頷いた。
どうやら考えていることは同じのようだな。
俺たちは扉の前にドカリと座り込み、イッセーが言う。
「ギャスパー! お前が出てくるまで俺たちはここを一歩も動かないからな!」
▽
一時間後。
クソぉ……なかなかに強情だな。
やっぱこっちから話しかけないと駄目か。
「なぁ、ギャスパー。……怖いか? 神器と俺たちが」
『…………』
俺は扉越しにギャスパーに話しかける。
「……俺も昔ギャスパーと似たような家庭環境に育った奴に会ったことがある」
「それ、ハルトの昔の話か?」
イッセーが言ったことに俺は頷く。
「まぁ、
『………その人がどうかしたんですか?』
おっ、よしよし、俺の話は聞いてくれてるみたいだな。
「そいつはギャスパーみたいに、力を怖がったりはしなかった。………いや、むしろ力に溺れていると言ったほうがいいな。そいつは力に溺れることとなった、とあるきっかけがある」
『とあるきっかけ?』
「………それは、そいつが唯一の家族と言えた妹が殺されてしまった事だ。…………実の親の手でな」
「『………っ!?』」
俺の言ったことに驚愕する、イッセーとギャスパー。
俺は話し続ける。
「その時に、神器の力に覚醒してな。怒り狂ったそいつは、自らの手で両親を殺害したんだ」
「………な、何だよそれ。自分の手で親を殺したって」
「その両親が最悪だったんだ。自分の子供に虐待していた程だったんだぞ? 因果応報と言えば因果応報だろうな。……そして、そいつはどんどん力に溺れていった。『妹を死なせてしまった』という後悔と激しい恨みがそいつをそうさせた。結局そいつは、力に溺れた末路として数十年後に凄惨な死を迎えてしまった」
『………そんな……とても悲しい人が居たなんて……僕知りませんでした』
「そりゃそうさ。ギャスパーとイッセーはまだ数十年しか生きてないだろ? 数千年生きている俺はいろんな人を見てきたからな。………それにだ、ギャスパー。何も神器の力を怖がっているのはお前だけじゃない」
俺がそこまで言うと、扉が少し開かれる。
「……そ、それは一体どういう……?」
「神器の力を怖がっているやつも俺は見てきたんだ。そうだろ? イッセー?」
俺はイッセーに視線を向ける。
俺につられてギャスパーもイッセーの方を見る。
「ははっ。ハルトにはお見通しってか。………ハルトの言う通りさギャスパー。俺にも最強のドラゴンが宿った神器を持っている。けど……正直言って怖いんだ。これを使うたびに体のどこかが違う何かになっていく感じがしてな……」
「……イッセー先輩も僕と同じ神器所有者で……その力に怖さを持っていたんですね……」
そう、神器を怖がっていたのはギャスパーだけじゃない。
イッセーもそうだし、ラヴィニアや鳶雄だって昔はそうだった。
それでも前に進めたのは仲間の存在があってこそだ。
「二人に言っておくけど、俺は別に力に怖さを持つことは何も悪いことじゃないと思っている」
「「!!」」
イッセーとギャスパーは驚いて俺の顔を見るが、俺は話を続ける。
「だってそうだろ? 力に怖さを持っているなら自然と仲間を頼る。まぁ、使わないという手もあるがそれだと自身の大切な物が守れない。結局は仲間に頼るんだ。そして、仲間のアドバイスとか受けて自身の力を徐々にコントロールしていく。いつまでも自身の力に怖がってちゃダメなのさ」
「ぼ、僕にもできるでしょうか………この力を使いこなすことが……」
「大丈夫さ。やろうと思えばできる。失敗してもいい。存分に仲間を頼れ。最初から一発でできるやつなんていねーんだよ。なぁ、イッセー」
「ああ、ハルトの言う通りだ! ギャスパー、俺たちを頼ってくれ。そして、俺と一緒に部長を支えようぜ!」
俺たちがそう言うと、ギャスパーの目から大量の涙が零れ落ちた。
「グスッ…………ハルト先輩………イッセー先輩……僕、もう一度頑張ってみますぅ!」
「おう! その意気だ!」
俺はギャスパーの頭を撫でながらそう言った。
▽
「それにしても時間を停める能力か。俺からしたら羨ましい限りなんだけどな」
「あー、それは分かる」
イッセーの言葉にうんうんと頷く俺。
時間を停めるなんて最早チートだろ。
戦ってる最中に、敵を停めてそのまま仕留めるとか。
……考えただけでもすげぇと思う。
「────っ」
俺たちの一言に、ギャスパーは心底驚いた表情を浮かべる。
「時間を停められるって最高じゃないか。俺がその神器を持っていたら、きっと、学園中の女子にいかがわしいことをしてたに違いない。これは断言できる! 廊下を匍匐前進しながらスカートの中を覗き見し放題! いや、部長や朱乃さんのおっぱいを揉むのもいいなぁ! うあー、妄想が止まらん!」
………さっきの感動雰囲気を見事にぶち壊してくれたな。
本当にギャスパーの神器がイッセーに宿ってたら、滅茶滅茶になるな。
これは断言できる。
「……お前、それミラナにやったらマジでブチ殺すからな」
俺がオーラを滾らせながらそう言うと、イッセーは若干慌てて言う。
「もしも! もしもの話だ! それに、ミラナちゃんにやるわけねぇだろ!? 俺はまだ死にたくねぇよ!」
「はぁ……まったく」
しかもそれをギャスパーの目の前で言うんじゃねぇよ。
「す、すごいです、イッセー先輩!」
「「へっ?」」
ギャスパーの言ったことに思わず間抜けな声を出す、俺とイッセー。
うん……どこにすごい要素があったんだ?
「伝説と呼ばれる力を持っていながら、そこまで卑猥に前向きになれるなんて、僕には到底及ばない思考回路です。イッセー先輩の煩悩って勇気に溢れてるんですね!」
煩悩に勇気もクソもあるかよ。
ギャスパー、お前もお前で少しおかしいな。
「そうだろうそうだろう! 要は使いようだ!」
「ぼ、僕もなんだか少しだけ勇気が湧いてきたような気がします!」
………よくわからんが、ギャスパーに勇気が湧いてきたならそれで良しとするか。
▽
「なぁ、ギャスパー。さっきから気になってたが、なんで段ボールの中に入ってんだ?」
「すみません、人と話すとき段ボールの中に居ると落ち着くんです」
と、申し訳なさそうに言う。
いや、俺が単に気になっただけだから別にいいんだけどよ。
まぁ、徐々に外に出していくか。
「あー、落ち着きますぅ。やっぱ段ボールの中だけが僕の心のオアシスですぅ」
落ち着く場所は人それぞれだからな。
しかし、段ボールの何処がいいんだ?
触り心地か?
それとも、匂いなのか?
いや、狭いから落ち着くというのもあるな。
まぁ、狭い場所なら逆に落ち着くしな。
「人と目を合わすのが嫌なら、これとかどうだ?」
イッセーが取り出したのは二つの穴を開けた紙袋。
それをギャスパーの頭に被せる。
「こ、これは……」
穴の開いた部分から赤い眼光がギラリと光る!
「どうですか〜? 似合いますか〜?」
そんでもって、ゾンビのようにノロノロと歩いて近づいてくる!
怖ぇよ!
チビっ子が見たら泣くわ!
こんなのただの変質者じゃねぇか!
「おい、イッセー。これどこぞのホラー映画に出てきそうな雰囲気だぞ……」
「あぁ、俺もここまでとは思ってなかった……。ギャスパー、俺は初めてお前をすごいって感じたよ」
「本当ですか? これをかぶれば僕も吸血鬼としてのハクがつくかも」
そいつはどうだろうな。
その後、会談の打ち合わせを終えた木場も顔を出しに来て、オカ研男子全員で女子会ならぬ男子会(猥談)を夜通し行った。