【本編完結】星をなくした子   作:フクブチョー

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悪魔の呪縛を求めたシンデレラ
互いに課した鎖はそれぞれの秘密を守るだろう
偽りの真実は現実以上の力を持ち始める
深淵があなたを見つめていることには気づかずに


99th take 発覚

 

 

 

 

 

 

正直、最初は痛かった。

 

貫かれる感覚。未体験の、身体の内側から奔る痛み。焼ける熱。そのどれもが人生初の体験で。痛みで身動きが取れなかった。

 

だけど、なぜかそれが凄く嬉しかった。

 

───アクアに傷つけられるの、初めて

 

今まで心は何度もグシャグシャにされてきたけど、身体的に傷つけられたのは初めてだった。アクアはいつも女には優しく、紳士的な接触を心がけていた。正論で殴られるロジハラはあっても、男の位置を利用するような事は一度もなかった。

 

そんなアイツが、私を傷つけた。これ以上なく直接的に。これ以上なく男の位置を利用して。

 

嬉しかった。今やっと、アクアの特別になれた気がした。

 

「アクア、好きにしていいよ。動いて。気持ちよくなって。私の身体、好きに使って」

 

痛みに震える私に気を遣って、ずっと動かないでいてくれた事はわかっていた。気を遣ってほしくなかった。好きに動いて欲しかった。私じゃなく、自分を最優先にして貰いたかった。

 

「あっ…!やっ……!」

 

たん、たん、たんと小気味良いリズムが刻まれる。時折アクアの手が、指が、舌が、私を撫でる。痛みが恥ずかしさと快感にかき消される。思わず腰がえび反りになった時、嬌声が上がっていることに気づいた。

 

───私、なんて声を……!

 

両手で口を覆う。抑えきれない声が漏れる。そして抑えた声の代わりか、両目から熱い雫が流れ落ちた。

 

「痛いか?」

「ちがうの。嬉しいの。貴方とこうできることを、ずっと待ってたから」

 

唇が合わさる。アクアの手が涙を掬い取り、華奢な腕は男を強く抱きしめた。

 

「アクア……アクアっ……!好き……好きよ」

 

一層身体が震える。最後の記憶は覆い被さったアクアの体の重みが心地よいことだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

食欲をそそる香りが、鼻腔をくすぐる。疲労と気だるさで沈んでいた意識がゆっくりと浮かび上がってくる。瞼を開くと寝る前には隣にあった男はおらず、シングルベッドに生まれたままの姿で横たわっていたのは自分1人だけだった。

 

───アイツは……

 

体を起こそうとすると、ずきりと下腹部が痛む。昨夜まで誰1人侵入を許したことのない場所を鋼鉄で貫かれた感覚が蘇った。同時に自分の痴態も。痛みと恥ずかしさで再び身体はベッドに沈んだ。

 

───あ……

 

再びいい匂いが鼻をくすぐる。リビングに繋がっているシステムキッチンへと目を向けるとようやく想い人を見つけた。蜂蜜色の髪の美少年はラフな部屋着のみを纏い、なにやらテキパキと作業をしている。彼が料理できることは知っていたが、実際に目にしたのは初めてだった。似合わないような、似合っているような。ちょっと笑ってしまう。少なくとも大衆は絶対に見ることのできない姿を目の当たりにできたことが嬉しかった。

 

───ホント、何やっても絵になるわね。アイツは

 

料理をするという日常に溢れている光景すら、この男にかかれば、まるで写真集のワンシーンに見えてしまう。あの熟練の手際を見れば尚更。

 

───私も料理できた方が良いかしら

 

14年以上仕事にしか集中していなかったため、仕事に関わるスキル以外全く身につけていない。アクアの努力は多角的で、広く浅くがモットー(常人から見れば充分深いが)。

 

自分の努力は狭く深い。演技以外のことは、殆ど何もできない。

 

───やっぱり私の努力って間違ってるのかな

 

アクアはもちろん、あかねだって自分より遥かに何でもできる。料理が上手なことも知ってるし、頭だって良い。勉強もできる。私も自分が馬鹿だとは思わないけど、多分テストで勝負したら負けるし、料理も掃除もあかねと比べたら子供同然。

 

狭く深く努力してきたはずの私が、あの2人に何もかも敵わない。

 

「───起きたか」

 

見られていることに気づいたのか。視線に敏感な若手No. 1俳優は星の瞳を少女へと向ける。気づかれたことに気づいた赤い髪の元生娘は照れくさそうに毛布で顔を隠した。

 

「おはよう」

「朝食、テキトーに作ってるけど、食えないものとか無いよな?トマト大丈夫?」

「トマト好き」

 

2人分を器に盛り付け終わり、テーブルに並べる。ミネラルウォーターのキャップを外し、一口飲んだ。

 

…………そんな姿も、生唾を飲み込んでしまうほど色っぽい。

 

「身体、大丈夫か?」

「…………あんまり」

「起きてシャワー浴びて来い。多少身体動かさないとほぐれるものもほぐれない」

「ねえ、アクア」

「ん?」

「起こして」

「…………ったく」

 

両手を大きく広げる。近づいてきたアクアの首に腕を回す。そのままシャワーを浴びるまで、ずっとくっついていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………美味しい」

「そりゃ良かった」

 

湯気の立つミネストローネを口にして、息を吐く。寒い朝に温かいスープが染み渡り、ホッとする。昨夜から……いや、あの病室からずっと続いていた緊張が、ようやく解けた気がした。

 

同時に少しの焦りと苛立ちも。

 

「アンタって料理いつ覚えたの?」

「片親だったし、妹いたし、生きるために必然……でもオレのなんか素人に毛が生えた程度だよ。まあイタリアンはマスターに教わったからちょっと自信あるけど」

 

マスターって誰だろうと考えて、すぐに思い至る。去年のクリスマスのジャズバーで紹介してもらった人だ。出してもらったジェノベーゼが凄く美味しかったのを覚えている。綺麗な人だった。

 

アクアが、敬意を払った敬語を話していた人だった。

 

「アンタってさ。料理とか家事とかできる女の方が好みだったりする?」

「今時どっちができてもいいとは思うが…まあ、最低限自分の身の回りくらいはできてた方が健康的で文化的なんじゃねーの?」

 

言葉の矢が心に刺さる。さっきまでとは別の意味でちょっと変な空気になってしまった。そのことにアクアも気づいたのか。リモコンを操作する。テレビの音が沈黙を破壊した。

 

『人気コミックが原作の実写映画【エンパイア】。若き日の皇帝とその影武者を一人二役で演じるのは若手No. 1俳優星野アクア──』

 

朝のニュースで取り上げられたエンタメは先日公開の実写映画についてだった。主役は別の役者が務めていたが、主役級と言っていい大きな役にアクアが抜擢されていた。アクアはこの一年で2ヶ月ほど日本にいなかったのは劇場版リバドルとこの映画の撮影が海外ロケだったためだ。

 

「リバドルといい、コレといい、売れたわねぇ。アンタ」

「今が旬の役者って事で呼ばれただけだ。漫画の実写映画は数字が計算しやすいからな」

「…………本当に、上手くなった」

 

東ブレの舞台以来、アクアの演技を生で見ていないが、映像でも十分にわかる。

 

役そのものが取り憑いたかのような演技力。画面を突き抜け、迫が伝わってくる表現力。脇役では使えなかった、周囲丸ごとの視線を自分に釘付けにするオーラ。全てが一年前とは比べ物にならない。トップに上り詰め、1年もの間トップの座に座り続け、磨き抜かれた星野アクアの才能。もはや若手という括りすら突き抜けたスターになっている。

 

「オレも観たぜ。B小町の新しいMV」

「っ、どうだった!?」

「うん、良かったよ。ちょっとダークな感じのコードだったけど、それが新鮮で。特に低音が綺麗で……有馬もああいう音出せるようになったんだって、感心した」

 

飛び上がりそうになる。にやけるのを抑えられない。この男はお世辞というものを絶対言わない。というか言えない。こと芸能に関しては尚更。そんな彼からの褒め言葉。嬉しくないはずがない。

 

「けど──」

 

この瞬間までは。

 

「けど、やっぱりルビーの方がインパクトはあったな。荒削りだが大胆で若々しく、瑞々しい。一年前は悪い意味でアイドルの教科書通りって感じだったけど、今はハツラツとしてる。自分だけのモチベーションを見つけて、それに向かって一生懸命。諸々のテクニックはお前の方が上だけど、小さく纏まってない。有馬もアイドルとしての型が出来てきてるけど、そのせいで幅が狭い。何やっても何歌っても小さく纏まっててつまらない。結構良い声してるんだし、何より培ってきた演技力もっと活かせ」

 

───こういうやつよね、アンタって

 

上がっていた心が一瞬で沈む。スラスラと語られる冷徹で的確で厳しく正しい評価。芸能の前では妹も恋人も私も他人もまるで関係なく平等で厳しい。耳に痛い正論は喧嘩になることも多くって。でもアクアは誰よりも才能がありながら、誰よりも自分に一番厳しく、何も反論出る事はなくて。

 

この男のこういうところが、嫌いで、好きだった。

 

私だって芸能界に14年以上居座ってきた。それなりに男と出会ったし、経験だって積んできた。

 

アクアより優しい人なんて沢山いた。私だけを甘やかしてくれそうな人だっていた。芸能に疎い男の方が私には合うんじゃないかって感じたこともあった。

 

でもやっぱり、アクアのことを忘れる事はできなかった。あの現場を見てしまっても、嫌いにはなれなかった。正直言って軽蔑した。嫌悪もした。けれどもう一つ、思ってしまった。

 

不知火フリルがいいなら、私だって──

 

あの現場を見てしまったからこそ、希望を持ってしまった。

 

「?食べないのか。冷めるぞ」

「…………食べるわよ」

 

こっちの気持ちを知ってか知らずか。多分知らないのだろう。本人からすれば心からのアドバイスを述べただけのはず。けれどアドバイスを求める側は大抵耳に痛い正論なんて欲していない。もっと自分を肯定してくれる甘く優しい言葉を求めているものだ。

 

───芸能、やめちゃおっかな

 

私がこの仕事をしている限り、アクアは正論パンチをやめないだろう。心から私の向上を願って耳に痛いアドバイスを続けるだろう。

 

しかし、仕事を取っ払ってしまえば、アクアは私のことをただの女の子として扱ってくれるかもしれない。

 

仕事が絡まなければアクアは基本的に女の子には優しい。培ったコミュニケーション能力で、相手が求める言葉を。欲している睦言を甘く囁いてくれる。そういうこともできる男だというのは、去年のクリスマス、あのバーでマスターに教えてもらった。

 

───仕事がなければ、私はアクアともっと上手く付き合えて……都合のいい女もやりやすいのかも……

 

ゾクっと背筋に寒気が奔る。テレビを見つめるアクアの目が変わった。どうでもいいものを見つめていた目から、鑑賞の目に。良いところも悪いところも全て見逃さないプロの目になったことを暗く輝く星の光が教えてくれた。

 

テレビに映っていたのは、同じくエンタメの話題。黒川あかねが出演している映画だった。

 

───嫌だ

 

私が仕事を辞めたら、アクアはこの目を二度と私に向けてくれなくなる。私のことをその他大勢の、アクアにガチ恋してる何万人もの女の1人としか見てくれなくなる。それは嫌だ。アクアが才能に甘いのは知ってる。自分が認める、あるいは想像以上の資質を秘めた人間をあいつは特別扱いすることも知っていた。だからこそアクアは私にもあの目を向けてくれたのだ。

 

あの目が見れなくなる。あの目を向けてもらえなくなる。それは絶対に嫌だった。

 

───わかったわよ

 

私はやめない。アイドルはともかく、少なくとも芸能はやめない。この世界に骨を埋める。その覚悟はする。そのためには耳に痛いアドバイスだって聞き続けよう。求めていない正論も受け入れよう。

 

「有馬、聞いてるか?」

「聞いてるわよ!炭酸水ちょうだい!」

 

気泡の放つ液体をコップに並々と注ぎ、一気に飲み干す。炭酸の刺激が自身を震わせる勢いのまま、コップをテーブルに叩きつけた。

 

「だったらこっちも言わせてもらうけどねぇ!アクア、この映画の演技だけど───」

 

それからしばらく、朝食は議論の時間となる。言うまでもなく、楽しい時間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で?関係持ったの?有馬さんと」

 

その日の夜。隠れ家とは別の、通常アクアが居を構えるマンションの一室で、アクアはフリルに今回の顛末を話していた。

 

「ほんと、あなたは困ったら女装か寝技のどっちか使うよね」

「秘密の共有と言ってくれ」

 

実際、寝技で女を黙らせたことなどない。関係を求めてくるのは大体女の方からで、断っている機会の方がほとんどなのだ。数多言い寄ってくる女たちの中で、断ってなお踏み込んできた例外は、フリルとあかねと有馬の3名だった。

 

「絆。あなたの父さんはほんと自由っていうか、目的のためなら手段を選ばない人だから。貴女の両親は私達だけだけど、母親が違う弟妹がこれからボコボコ出来るかもしれない。その時は仲良くしてあげてね。子供に罪はないから」

「余計なこと絆に言うな。幼少期の記憶って残るやつは残ってるもんらしいぞ。それに手段云々に関してはお前も人のこと言えねーだろうが」

「だからイヤミ言うぐらいで許してあげてる」

 

今回は半分私の責任でもあるし、と小声で続ける。鉄壁のセキュリティで守られているこのマンションから抜け出し、誰の目があるかわからない病院へ簡素な変装で訪れてしまった事は軽率だったと、フリル本人もわかっていた。嫉妬と憎悪と恋慕に狂い、周りが見えなくなるくらい夫を求めてしまった事も過ちだった。無論アクアにも非はあるが、尻拭いをしてもらったのは自分の方だと本気で思っている。

 

「……有馬さん、どこまで気づいてた?」

「オレとお前があかねに秘密で付き合ってるくらいまでだよ。オレたちの間に子供が産まれてるなんて、夢にも思ってないさ」

 

ホッと胸を撫で下ろす。自分が傷つけられる覚悟など、絆を産むと決めた時にとっくにしていたが、この子に傷が及ぶような事だけはなんとしても避けなければならなかった。

 

「有馬さんとは上手くやれそう?」

「…………微妙」

 

 

 

 

脳裏に蘇る、帰り際の有馬とのやり取り。一夜明け、自宅に戻る段になった時、玄関前でアイツが立ち尽くした。

 

『…………アクアも一緒に来ない?色々お返しにウチで泊まっていっても……』

『今のオレがスッピンで外出歩けるわけねーだろ。それに今回の件で事務所に1週間謹慎言い渡されてる。この瞬間もエントランスは監視されてるかもしれん。悪いが見送りはここまでにさせてもらうぜ』

 

芸能人のマスコミ対策の一つ。それは建物の出入りを1人で行うという事。

どこかから監視されて、写真を撮られるような状況になったとしても建物に入る瞬間と出る瞬間が1人であるなら、言い訳はいくらでも出来る。そしてよっぽどのことがない限り、マスコミ連中は建物内に入ってくることまではしない。そこそこセキュリティがしっかりしてるマンションなら尚更だ。鉢合わせの危険もあるし、下手をすれば彼らが犯罪者扱いされる。

 

エントランスには必ず1人で。それはアクアが関わる女たちに徹底させていることの一つだった。

 

『タクシーは呼んでやったから気をつけて帰れよ、有馬』

『有馬……』

 

不満そうに唇を尖らせる。何が気に入らないのか、疑問符が湧き上がるが、その答えはすぐに出た。

 

『アンタってあかねもルビーもメムも下の名前で呼ぶのに』

『メムの下の名前は──だろ』

『うるさい余計なチャチャ入れないで……なんで私だけ苗字呼びなの?』

『特別意識してない。お前だってオレのこと苗字で呼んだことねーだろ。それと一緒だ』

『私達これからも人の目を忍んで会うわけじゃん。その時私もアンタも普通に名前呼ぶだけなら周りの人に身バレするかもしれないでしょ』

『…………』

 

言いたい事は幾つかあったが、飲み込む。遮る段階でもない。

 

『これからは2人だけの名前で呼び合いましょうよ。それなら人前で聞かれても大丈夫だし、内緒話もしやすいじゃない』

『べつに良いけど。じゃあなんて呼ぶんだよ』

『……………………あーくん、とか』

 

躊躇いながら、頬を紅く染めながら、紡がれた愛称は、少し背筋がむず痒くなるものだった。

 

『まあ、好きに呼べ』

『うん、あーくん』

『お前のことはなんで呼べば良い?』

『それはあーくんが考えてよ』

『なんでもいいか?』

『あーくんが考えたものなら』

『じゃあ、かーちゃん』

『却下』

『なんでも良くねーじゃん』

『かーちゃんなんて嫌に決まってるでしょ!私はあーくんのお母さんじゃないのよ!』

『じゃあ、かなちゃん』

『ありきたり!もっと特別感が欲しい!』

『重曹ちゃん』

『絶対嫌!最近ネットとかでも重曹ちゃん本名なんだっけとか言われるんだから!』

『なんでも良くねーじゃん…』

 

と言っても難しい。アクアやフリルと違って、有馬の名前は普通で、特別感は出しにくい。なら独自で考えるしかないのだが、二文字しかない名前は捻るのも難しい。

 

───なら苗字を捻るか……

 

『マリア』

『へ?』

『有馬を逆から読んで、マリア。これなら人前でも大丈夫だろ』

『マリア……まりあ……私の愛称……マリア』

『嫌か?』

 

あの時のあいつの嬉しそうな顔は、よく覚えている。正直余計なことをしてしまったかもしれないと思った。

 

一度蜜の味を知ってしまった女が、二度目を求めないなんてこと、あり得ないと知っていたはずなのに。

 

『はっ。相変わらずセンスが中2くさいわね!まあ作詞家なんてみんな中2拗らせたようなやつばっかだけど!』

『全作詞家敵に回したぞお前』

『今まで出たものの中じゃ一番マシだから受け入れてあげるけど!あーくんのセンス理解してあげられるのなんて私ぐらいなんだからね!』

『わかったわかった。いいからもう帰れ。オレも暇じゃねーんだから』

『そういえば昨日からなんか書いてたわね。何やってたの?』

『お前の言う中2拗らせた作業だよ』

『?』

『詳しくは秘密。まあいずれ必ず話すよ』

『…………わかった』

 

今度こそ玄関の扉を開き、外へ出る。万が一にも誰かに見られないために、一歩下がった。

 

『またね、あーくん』

『またな、マリア』

 

 

 

 

───愛称で呼び合うのはやり過ぎだった

 

「なんだかんだ特別扱いが一番喜ぶからねー、女の子は」

 

内縁の妻に心を読まれるのにもこの一年ですっかり慣れてしまった。

 

「ま、最低限スキャンダル対策してくれてたみたいで安心したかな」

「そりゃこの一年でその手の対策叩き込まれまくったし。お前とのことで警戒24時間解いてねーし……有馬は微妙くさかったが」

「役者畑の人はそういうの甘いんだよね」

 

でもシマカンのマンションから出てった時、遮二無二走りまくったらしいし。その後タクシーにも乗ったらしいから、まあ尾行されてたとしても撒けてるだろうし、万が一撒けてなくても、言いがかりはつけられないように対策した。少なくともオレは。

 

───問題は……

 

プライベート用のスマホが鳴る。寝ている絆を起こさないために別室へと向かおうとする。フリルも心得たもので一度頷き、人差し指を唇の前に一本立てた。

 

「───もしもし」

『あーくん!どうしようどうしよう!?私やっちゃった!ううん、ほんとは何もやってない!あーくんとしかしてない!信じて!』

「わかった、マリア。信じてる。信じてるから、まずは落ち着け。落ち着いて、何があったか話せ」

『写真、撮られちゃった!シマカンさんと2人で、マンションに入るところ!』

 

嫌な予感が的中したことに、星をなくした子は心の中で大きくため息を吐いた。

 

 

 




最後まで読んで頂きありがとうございます。
スキャンダル発覚。アクアとのではありません。シマカンとのです。移籍したアクアがこのスキャンダルに関わることになったのはこういう経緯でした。本誌では独力で立ち直った重曹ちゃんでしたが、拙作ではメンゴしたことによりアクアへの依存度が上がってます。


以下本誌ネタバレ








アクアの幸せのために手段を選ばない本誌のあかね。
あかね自身が幸せになるためになんでもする拙作のあかね。
アクアの幸せのために自分の恋を諦めた本誌の重曹ちゃん。
恋を諦められず、深みにハマっていく拙作の重曹ちゃん。
いつでもどこでもゴーイングマイウェイで自分が最優先の本誌のフリル。
ゴーイングマイウェイなのは変わらないけど最優先は絆とアクアである拙作のフリル。

…………ほんと見事に対比になってますね、本誌と拙作。意識して描いてはいますが。拙作のタイトルこそリバーシ・アイドルにするべきだったかもと思う今日この頃です。本誌も拙作もみんな幸せになって欲しいです。拙作のアクアだけは別ですが。
それでは励みになりますので、感想、評価よろしくお願いします。面白かったの一言でも頂ければモチベーション爆上がりです。時間がかかっても感想には必ず返信します。
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