【本編完結】星をなくした子   作:フクブチョー

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さだめに義務付けられた出会いと別れ
現実も空想も関わらず、容赦なく平等にもたらされる
最も強く、最も身近で、最も確実な運命
それは血の縁に結ばれた出会い


61st take 運命

 

 

 

 

 

 

 

 

女の子は誰でも、一度は王子様に憧れる。

 

童話、小説、映画、あらゆる場面で颯爽と現れる、ヒロインを救うヒーロー。白馬にまたがり、少女に手を差し伸べ、時に笑い、時に歌い、時に踊る。そんな理想の王子様の存在を、夢想する。

 

運命の出会いを、待っている。

 

しかし年齢を重ね、常識を備えていくうちにそんな幻想は消えていく。

 

現代日本に王子様など存在しないと学んだ時。人の二面性を知った時。ませた女の子の生々しい恋バナを聞いた時。現実を知るうちにかき消されていく幼く淡い想い。理想を追い求めることなどせず、手の届く範囲の出会いで満足し、ある程度釣り合いの取れる異性との出会いと別れを繰り返す。

 

ほとんどの人間が妥協の恋愛に追いついていく。

 

しかし、ごく稀に、一握りのさらにひとつまみほどの中に、運命と断言できるような出会いがある。身を焦がすほどに恋をしてしまう人がいる。童話や小説、映画などと比べても遜色ないと思ってしまうような。

 

この身が炎で悶えて、消えて、また灰の中から生まれ直すかのような、燃えるような恋をしてしまうことが。

 

 

───アクアくん

 

 

壇上、三千人以上の観衆が固唾を飲んで見守っている。六千以上の視線を一身に受ける。並の人間なら気後れしてしまう状況の中でも、いや、だからこそ誰よりも光り輝き、胸を張る主人公。

 

 

───アクアくんっ

 

 

身の丈ほどの太刀を自在に操り、風が、雷鳴が轟く。壇上で起こる森羅万象を支配しているかのように振る舞う、一等星。

 

 

───アクアくんっ!

 

 

『俺は東京を統一する唯一のクラスタを作り、この国の王になる!』

 

 

一つ演技をするたびに、一つセリフを口にするたびに、黒川あかねの全身に電気が走る。鳥肌が収まらず、快感にも似た寒気が背筋を震わせ続けた。

 

異常な没入。目の輝き。佇まい、見えている世界。全てがブレイドのものになっている。もしかしたら今アクアくんは客席など見えていないのかもしれない。六千以上の瞳が彼を凝視していることなど、意識の彼方なのかもしれない。それほどまでに、繊細で、緻密で、トリップに陥っている。

 

普通そんな繊細な没入など、演劇の世界では通用しないのだが、今アクアは全身を使った表現力で観客と演者の距離感を曖昧にしていた。

 

大袈裟だけど不自然じゃない。大きなリアクションだけどオーバーじゃない。服のたなびき。風に靡く髪。ありとあらゆる事象を全身で表現することによって、環境そのものを表現していた。

 

───あなたと出会えて、本当に良かった

 

キッカケは恋愛リアリティショー。その出演者の中でたった一人の同業者。記憶に新しい人だった。あのかなちゃんが出演してたドラマの共演者だったから。

 

あの時から、可能性は感じていた。

 

周りにも自分にも妥協しない、大人の都合とか企画の意図とか、分かった上で、汲み取った上で、周囲全て食い荒らした。脚本の悪いところ全てを飲み干し、自分が最も輝いた上で、かなちゃんに寄り添った。すごかった。そんなことができる人を直接見たのは二人目だった。

 

───周り全部、食べちゃう演技ができる人

 

全盛期のかなちゃんや、姫川さんみたいに。そんな可能性を感じさせる人だった。

 

実際には私の想像などはるかに超える天才だった。

 

リアリティショーで共演が始まってから、私はこの人に圧倒されっぱなしだった。あの不知火フリルと対等に渡り合うトーク力。慣れないネットバラエティで初めてMCを務めるにも関わらず、完璧に熟す視野の広さ。演技しかやってこなかった私はどんどん埋もれて、なんでもできるこの人はどんどん上へ上がっていった。

 

正直恨んだこともあった。妬んだことも。焦った時期もあった。その結果があの事故だった。

 

SNSで晒される非難の集中砲火。今思えば馬鹿らしいが、あの時は本当に人生終わったと思わされた。ネットの深淵を覗き込んで、その暗闇に取り込まれ、溺れていった。

 

もう疲れた。もがくのも足掻くのも飽きてしまって、あとはただ沈みゆくだけだった。あの嵐の夜、私の目の前は本当に真っ暗だった。

 

闇の中で私を照らした光は、スマホのディスプレイと、そこから流れた擬似音声だった。

 

「海に飛び込むことでしかお前を助けられないなら、その時は飛び込むさ。あかねを助けるためなら」

 

あの時、神様が舞い降りたと思った。王子様なんて小さな存在じゃない。死ねとしか言われなかったあの頃、私に生きろといってくれたこの人が、神様みたいだと思った。

 

あの時が、私にとって星野アクアが運命になった瞬間だった。

 

───だから、私にはシースの気持ちがよくわかる

 

盟刀が納められた里で、剣巫として厳格に育てられたシース。神託によって盟刀【風丸】の剣主の従者として生きることを義務付けられた少女。

 

不安も多くあっただろう。会った事もない人を主人としなければならない不安。主人となる人が善人か悪人かもわからない不安。感じないはずがない。重荷にならないはずがない。

 

里から出て、盟刀一本を背負い、魔都・東京へ行かなければならない理不尽。里からでも噂は聞いていた。治安は悪く、ゴロツキも横行し、クラスタ同士の諍いなど日常。暴行などの軽犯罪は当たり前。強盗、殺人なども決して珍しくない。そんな場所に少女が刀一本をぶら下げ、旅をしなければいけない恐怖。

剣巫として選ばれたことに誇りはあったし、自負もあった。風丸の剣主の従者として生きる自分の意味に不満を持った事もない。けれど同年代の少女達を羨ましく思う事もまた、揺るぎない事実だった。

 

───でも、そんなもの、吹き飛んじゃうよね

 

『君の、名前は?』

 

運命と出会った衝撃を前にしてしまえば。

 

彼と出会い、守り、守られ、旅をする。この人は本当にトラブルというものに愛されているようで、行く先々で様々な厄介ごとに巻き込まれた。

 

時に力で。時に利益で。時に義で。彼は解決に尽力した。

 

剣主が棟梁を務める盗賊集団を三人で撃ち倒したり、お金のために用心棒的な仕事をしたり、恩を受けた人に借りを返すため、剣を取る事もあった。

 

旅をして、仲間を増やし、また次のトラブルへと招かれる。あの運命の出会いから、日々は本当に目まぐるしく過ぎていき、息を吐く暇もない。正直ここまで過酷な旅になるとは思わなかった。

 

けれど、それでも───

 

『行こう!シース!』

 

───彼の言葉が、行動が、表情が、とてつもなく魅力的に映る

 

差し伸べられた手を握ることになんの躊躇も持つことはできず、手を取った彼はどこまでも縦横無尽に走り回る。

目を離せば消えてしまう、疾風のようなその背中を追いかける事が当たり前になり、人生となっていく。

 

───あなたと共にいると誓った。その先に待つのはきっと、栄光か破滅のどちらかだ。わかっている

 

けれど確信していた。私には勿体無いほどの歓喜と思い出をくれるのも、この人だけだと言うことを。

 

───あなたと出会って、まだ半年も経ってないけれど

 

断言できる。私とあなたは運命の出会いだったと。

 

「───スゲェな」

 

舞台袖からステージを見つめるアクアくんが小さく呟く。視線の先には鞘姫に扮する少女がいた。名前は不知火フリルと言う。アクアくんの親友で、私の恋敵だ。

 

何が凄いと言っているか、私にはよくわかる。

 

役者とは大きく分けて二種類に分類できる。役の内面に憑依りこむ没入型と、他者の目で見た役の解釈を演じる俯瞰型。前者は主観的アプローチから役を作りだし、後者は客観的アプローチから役作りをする。

 

私とアクアくんは没入型で、かなちゃんとフリルちゃんは俯瞰型。中でもフリルちゃんの俯瞰は精度の高さが尋常でなく、同世代では間違いなくトップ。俯瞰型の極みと呼べる演者だ。大衆が求める不知火フリルと言うものを誰よりも深く理解し、大衆の期待に応え続けるスーパースター。

 

そんな俯瞰型の木綿と言える人が今、没入型の演技をしていた。婚約者である刀鬼が自らに感情を隠し、強さを演じる行為に哀しみを感じている。

 

メソッド演技。自身の経験から感情を作る。俯瞰の役者はあまりやらない、私やアクアくんが得意とする演技法だ。

 

───これ、わかる人は理解っちゃうんじゃないかな

 

恋人に嘘をつかれた悲しさ。その感情を経験から作り出した。つまり彼女には恋人が、そうでなくても恋をしている人がいて、その人に嘘をつかれた経験がある、と。

 

無論その恋は過去形で、今はフリーという可能性だってあるけれど、彼女を少し深く知る人であれば当然知っているだろう。彼女が親友と呼び、恋愛リアリティショーでほとんど一緒に行動し、諦めていないと宣言している男性がいることは。

 

親友発言はともかく、恋を諦めていないというのはショー番組中でしか言っていなかったため、大衆は知らないだろうが、芸能関係者であればそこそこの人間が知っている。そして芸能界におけるスキャンダルの発覚は、身内からのリークがほとんど。

 

───これできっと、アクアくんとフリルちゃんの関係を怪しむ人は、絶対出てくる。

 

火のないところに煙を起こし、ガソリン撒いて山火事を起こすのが芸能界。火種があったらそれこそ燃え広がるのはあっという間。私でも身をもって知ってるその事を、あの不知火フリルが知らないはずはない。気づいてないはずがない。

 

───マスコミの視線を増やすと分かっていても、今まで成功を収めてきた自分のやり方を捨ててでも、この舞台で勝ちに来た

 

アクアくんが凄いと思うところはここだろう。フリルちゃんがメソッド演技をした事では決してない。あれは別に私やアクアくんの専売特許じゃない。やろうと思えば努力次第で誰でもできる事だ。

 

あの不知火フリルが、なりふり構わず、捨て身でこの舞台に臨んできた。

いま舞台上にいるのは鞘姫に扮した不知火フリルではない。もちろん不知火フリルらしさが全てなくなったわけでもない。いつもより薄くはなっているが、消えてはいない。不知火フリルしか持ち得ない、思わず注視視してしまう存在感、常にらしさが香る外連味、オーラ。それらを損なわず鞘姫が入り込み、黄金率の配分で融合した鞘姫なのだ。こういう役作りも出来るんだ、と関係者にアピールするには充分すぎる。新境地を開拓した彼女にはまたたくさんのオファーが舞い込んでくるに違いない。

 

怖いだろう。凄いと思ってしまうだろう。舞台から視線が外せなくなるだろう。舞台を見つめる彼の心情はよくわかる。

 

 

だからこそ気に入らなかった。

 

 

一挙手一投足に魅入るその視線が嫌だった。そんな視線を私以外に向けてほしくなかった。私だけにその目を向けて欲しかった。

 

───きっとアクアくんは思っているんだろうな。フリルちゃんとの出会いは、運命だったって。

 

親友と呼び合い、意気投合し、切磋琢磨する二人。以前フリルちゃんがアクアくんは自分が育てたって言ってたけど、それはフリルちゃんもそうなんだろうと今の舞台を見ていると思う。没入型の極みであるアクアくんから真似び、学び、実践している。二人の出会いは運命だったと言って、反論できる人はいない。

 

 

───私だって

 

 

今は多分私しか言えないけど、いつか必ず貴方にも言わせてみせる。思わせてみせる。私との出会いが、運命だったと。

 

 

───アクアくん

 

 

盗賊の剣主、キザミを倒すため、剣を取ったブレイド。流石にこの辺りの一大盗賊団なだけあり、三人で倒すことは困難だったため、新宿周辺の若者を集め、戦える者を選抜しての討伐となった。しかし強制で集められた者たちに戦意などなく、むしろ盗賊団から逃れるため、村を捨てようとしている若者たちだった。

 

このまま戦っても惨敗は必至。彼らを戦士に変える必要がある。

 

一堂に会した若者たちの前に、ブレイドが立った。

 

『この新宿から逃れようとしている者も多いと聞く。ならば俺はその望みを許す。なぜなら俺は臆病者と沓を並べる気はないからだ』

 

若者たちがざわつく。事実とはいえ、面と向かって臆病者と謗られた。苛立たない者の方がおかしいだろう。

 

『しかしながら諸君。諸君らの故郷であるこの新宿を捨て、生き残る事ができるのは諸君らだけだろう。君たちの母や力のない子供。老人たちは盗賊に虐げられ、賊の奴隷に身を落とす』

 

目を逸らしていた現実を突きつけられる。そうなる未来を薄々予想していたが、考えないふりをしていた事実を改めて認識させられた。

 

『逃げても生きられるのは諸君のみ。そして彼らを救えるのもここにいる諸君のみだ』

 

逃げ出すことに後ろめたさを覚える若者たち。しかし、戦いへの恐れも隠せない。進むも退くも地獄。立ち尽くす以外に彼らにできることはなかった。

 

『心に火を灯せ!新宿クラスタの勇士たちよ!』

 

淡々と現実を語る口調が突如変わる。まるで天の向こうまで轟くような透き通った声に熱が籠る。聞いているだけで力が沸いてくるかのような。そんな檄が、若者たちに叩きつけられた。

 

『今日という日から逃げ、生きる事ができたとしても!このままでは諸君らは似た窮地に立たされた時、逃げることしかできなくなる!だが今日という日を雄々しく戦い、生き残る事ができれば!諸君たちの心には決して消えない炎が生涯灯される事だろう!』

 

武器を持った手に力が籠る。逃亡に振り切っていた彼らの意思に迷いが生じる。彼らは今人生の岐路に立たされていることに気づいたのだ。窮地から逃げ続ける人生。家族や愛する者のために戦える人生。どちらを選ぶかを。

 

『くそぉ!やってやるよちくしょう!』

『ここで逃げたら永遠に逃げ続ける人生になっちまう!そんなのごめんだ!』

『そうだ!逃げられねぇ!女房も子供もいるんだ!』

『俺には母親が!』

『俺は来年には子供が産まれるんだ!』

 

口々に上る、戦いのための鼓舞。ブレイドが放った火は、確かに若者たちに届いていた。

 

『心の準備は整ったか!』

【おう!】

『今を生きる家族!そしてこれから生まれてくる家族を守るための戦いだ!』

【おう!】

『最後まで共に戦うぞ!新宿クラスタの勇士たちよ!』

【おう!】

『ならば諸君!進軍を!兄弟たちに盟刀の加護が在らんことを!!』

【うぉおおおおおおおお!!!!】

 

雄叫びに地が揺れる。ステアラの演出で本当に揺れる客席に座る観客達も胸を熱くしていた。雄々しく腕を天に掲げる者たちの先頭に立つのは、黒髪を総髪に結った青年。

 

『凄い。檄一つでこんなに士気を高めるなんて。それもさっきまで逃げ腰だった若者達を戦士に変えた…』

 

その様子を側近の位置で見ていたつるぎが感嘆のセリフを息と共にもらす。常にブレイドの隣に侍る少女は、主人の背中をキュッと握りしめた。

 

『ブレイド様』

 

───アクアくん

 

「あなただけが、私の生涯唯一の主人です」

 

自らの一生をかけて支えるに足る人であると心から受け入れる原作の名シーンの一つ。この時あかねはシースと完全にシンクロしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

物語は進んでいく。

 

ブレイド、シース、つるぎら一行は旅を続けながら盟刀を狙う敵や盟刀をもつ剣主達と戦い、勝利し、仲間を増やし、旅を続ける。少年漫画の王道展開が繰り広げられる。

 

その中の仲間の一人にキザミという鬼人がいた。新宿のゴロツキ共を纏め上げる小悪党の親玉。盟刀【晩成】の剣主である。

 

『おらおらぁ!怪我したくなきゃ雑魚は引っ込んでな!』

 

キザミ率いる盗賊団と新宿に住まう若者たちを味方に引き入れたブレイド一行。戦いが始まり、彼らの旅で初めての多人数対多人数の乱戦が繰り広げられた。

 

『散らばるな!俺とつるぎ以外は固まって戦え!』

『主様。背中はお任せください』

 

そして戦況はブレイド達へと傾き、ついに総大将であるキザミを追い詰めるにまで至る。

 

『お前ら、下がってろ。こういうのは言い訳の余地のねぇ形で叩きのめさねえといつまでも負けを認めねぇ』

 

多数対多数で始まった戦い。このまま棟梁のキザミを討ち取ってもなんら責められる謂れはない状況で、黒髪の剣士は眼帯の鬼人の一騎打ちを提案する。数合打ち合ったが自力の差、何より盟刀の格の差が如実に現れる。そう時間もかからず、決着となった。

 

『クソっ。つえーな、アンタ』

 

倒れたキザミは表情に悔しさを滲ませつつも、ニッと白い歯を見せた。

 

『俺もアンタの仲間にしてくれよ!アンタが王になったら、俺のポジションは将軍な!』

『ショーグン?』

『軍事を司る長の役職のことです』

『………にしては弱くねぇか?』

『まあ所詮ゴロツキの延長、お山の大将ですし』

『聞こえてんぞ!』

『彼自体は問題になりませんが引き連れてる人数はそこそこです。彼らを丸ごと配下にできるなら悪くないかと。現在最大派閥の渋谷クラスタも人数は相当なものとか。いかに盟刀使いといえど数の暴力に抗するのは難しいですから』

 

ましてブレイドは殺しはできるだけ避ける主義だ。盟刀使いが相手なら仕方がないと思っているが、普通人には基本的に不殺。盟刀使いには珍しい優しさ。性格も根明。こういった盗賊やゴロツキ集団は凄惨な末路を辿る事も多い。

 

『ちなみにこの辺りだと賊の処し方はどんなのだ?』

『面倒な場合は首を落とすのが普通です。都市の衛兵に首か耳を渡すと報奨金が出ます』

『…………そんなとこだよな』

 

ハアと一度息を吐くと

 

『…………俺は基本服従する人間は受け入れるし、俺が率いるクラスタも結構人が増えた。上に立つ人間に盟刀使いは欲しい。けど今のお前じゃショーグンには力量不足だ。もっと強くなれ』

『おう!言われなくても!』

 

こうしてブレイド陣営にも人数が増え、クラスタと呼べるだけの一団となり、東京内でも警戒されるクラスタの一つとなる。

 

しかし、そうなれば立ちはだかる敵も強敵が増えていく。

 

ブレイドは普通の刀の扱いに心得はあったが、盟刀に関しては全くの素人。今までは地力だけで倒せていたが、今後は盟刀の特性を強く活かす必要が出てくる。

 

『今までほとんど素の力で戦ってたのがおかしいのよ』

『主様、一旦クラスタの活動は休止。メンバーの面倒はキザミに任せ、私たち自身の向上に努めましょう。良い場所を知っています』

 

つるぎから指摘されたブレイドはシースの提案で東京内の中立地帯。渋谷と新宿の狭間にある深山【嵐峰】へと赴くことを決意する。

 

『おう、来たな。シースから聞いてる。とりあえずお前らはコレ持って修行しろ』

 

嵐峰へと到着したブレイド一行は山に住む刀鍛冶、スミスから一振りの剣を手渡される。

 

『【影打】。盟刀のなり損ないだ』

 

盟刀を作る技術自体は太古の昔に失われた。しかし再現しようとする刀鍛冶はいつの時代にもおり、その習作は相当数存在する。スミスが持っているのもそのうちの一つで、盟刀使いはこの影打で修行する事が必須となる。

 

『その影打が【握れる】ようになる頃にはお前らの盟刀もちったぁ力を引き出せるだろ。そっから先はテメェらの修練次第だ。しっかりやんな』

 

こうして始まった盟刀の修業だったのだが、すでに盟刀使いとしてある程度経験を積んでいたシースとつるぎの修業は結構順調だった。

 

『なるほど。鬼人の娘っ子の特性は速度だな。飛燕の力が握られている』

『剣の巫女は守りの力。花弁となる刀身が盾と刃両方の役割を果たす盟刀か』

『若造の方は……』

『ふぬぁああっ!!?』

 

思いっきり影打を握りしめるブレイドだったが、刀からは僅かにそよ風が感じられる程度のものだった。

 

『これはひどい』

『見るに堪えんな』

『ヘタ以前の問題だ』

『才能ないんじゃないか』

『ひどい、ひどすぎる』

『うるせぇっ!!』

 

刀鍛冶衆から下される容赦のない批評。そして思いっきり叩きつけられる影打。しばらくすったもんだのドタバタを繰り広げた後、ブレイドだけ特別メニューが課せられることとなった。

 

『くそっ、しょうがねえだろ。あいつらと違って俺は盟刀持ち出して短期間しか経ってねぇんだから』

 

元々基本スペックの高かったブレイドはこれまでの人生で苦労というものをあまりしてこなかった。そして今回、人生で初めて味わう苦難の壁に、悪戦苦闘の日々を過ごすこととなる。

 

『一ノ刃は出来たんだがな……それ以上の力を出そうとすると弾かれる……でも力で握っても意味ない感じするし、かといって緩めては本末転倒───だぁあああっ!どうすりゃいいんだぁっ』

『誰だこんな山奥で騒いでいる奴は。俺の修練の邪魔だ』

 

森に流れる川のほとりで頭を抱えていると、声が背後から届いてくる。振り返った先にいたのは目に眩しい金の髪をバックに纏めた、三本ツノの鬼人だった。

 

これが、ブレイドにとって二度目の人生を変える出会い。

 

東京最大勢力渋谷クラスタの長たる姫の懐刀。戦闘能力で言えば実質的なNo. 1に位置する鬼人【刀鬼】

急速に台頭を始めた新宿クラスタのトップ【ブレイド】

 

長きにわたる因縁を結ぶ二人の、最初の邂逅だった。

 

 

 




最後まで読んで頂き、ありがとうございます。
推しの子二次小説めっちゃ増えてて嬉しいです。どれも面白くて、筆者の頭では思いつかなかった設定もたくさんあって。やっぱ皆アイに生きてて欲しかったんだなぁってのがよくわかります。それでも拙作が一番面白いと言っていただける声もあって感激してます。大感謝です。一応拙作でもアイの救済案は考えているのですが、実現するか微妙。してもまだ先の話です。もう少しお待ちください。直前になればアンケートとか取る予定です。
舞台東京ブレイドは次話で第一幕影打編終了です。独自設定盛り込みまくってます。違和感なく読んでいただけていれば嬉しいのですが。しかし原作では数ページで終わった第一幕に三話かかるとは。第二幕一体どれだけかかるのか、筆者すら想像つきません。読者の方々に読んでてダレないよう頑張りますので、どうかお付き合いください。
それでは励みになりますので、感想、評価よろしくお願いします。面白かったの一言でも頂ければモチベーション爆上がりです。時間がかかっても感想には必ず返信します。
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