それは経験という名の鎖の縛り
12時を過ぎたシンデレラを解き放つ魔法
あるとすれば、それはきっと──
芸能界で生きていける役者は大きく分けて2種類。
代えの効かない存在に成るか
使いやすい存在に馴らされるか
どちらになるのも容易なことではない。使いやすい存在に馴らされるとしても、芸能界という伏魔殿で消えずに生きていけるだけでその人は充分才能があると言える。
第一、芸能界で代えの効かない存在に成るなど、大御所でもそうそうできることではない。日本国民なら誰もが名前を知る大物俳優や司会者が不祥事を起こし、表舞台から消えることも芸能界ではしばしばある。が、すぐに代わりの人間が空いたポジションに収まり、何事もなかったかのように伏魔殿は運営を続ける。誰かが出なくなっても他の誰かが出てきて勝手に活躍する。芸能界とはそういうものだ。
しかし、スターと呼ばれる人間は限りなく前者に近い存在に成るよう努力をしている。芸能界で生きているのはたとえ現実に成れなかったとしても、本気でそこを目指している人間と、使いやすい存在に馴らされた人間の2種類だ。
不知火フリル、姫川大輝は前者。
黒川あかね、星野アクアは前者の成り掛け。
そして有馬かなは後者である。
───いつからだろう…
あんなに焦がれた貴女との共演。舞台のキャスティングが決まった時は、まだ残っていたと思う。
だって、貴方がいたから私はここにいて、貴方がいたから今の私がある。ずーーっと、ずーーーっと、何年も持ち続けていた想いだ。そう簡単に色褪せはしない。私の初期衝動にして、私の原点。私の第一歩は貴方への憧れだった。可愛くて、演技も上手で、大人相手でもハキハキ喋れる。貴方への憧憬が、私を引っ込み思案から踏み出させてくれた。
貴方と仲良くなりたくて。
貴方みたいになりたくて。
たくさん頑張った。見た目も変えた。オシャレも覚えた。本当に大好きだった。
初めて出会った、あの日までは。
5歳の時、初めて芸能界の闇に触れた。
かなちゃんと似た格好をした私に、大人は勘違いして、教えてくれた。
芸能界には形だけのオーディションがあるということを。
『知らないの?こういうのを───』
出来レースという言葉を5歳の頃に初めて知った。憧れだった貴方に教えてもらった。
『演技なんかどーでもいいの!!』
この世界は実力で回っているんじゃなかった。キラキラしたものだけで溢れてると思っていた世界が、薄暗く、ドス黒い物が蠢いていると知った。
『私はアンタみたいなのが一番嫌い』
貴方を真似して被った帽子を地面に叩きつけられる。
『私の真似なんかするな』
わからなかった。どうして本心でないことを言うのか。どうしてそんなに辛そうに、貴方が勝つと決まっているレースを走るのか。わからなかった。
だから、私は勉強した
人の心、心理学、コミュニケーションのハウツー。いろんな本を読んでたくさん勉強した。
だから、今なら貴方の気持ちが、少しわかる。
───怖かったんだよね?
ちょっとずつ減っていく仕事。離れていく人たち。お金になる仕事は演技以外にも沢山あって、そっちの方が大人は褒めてくれて。
自分を見て欲しかった。
必要とされたかった。
『人間なんて大概どっか病んでんだよ。役者なんてその典型。承認欲求拗らせたようなやつばっかだ』
以前、アクアくんが言っていた。どれだけ普通に見える人でも、どこかしら病んでる部分はある。フォロワー獲得に躍起になったり、飲食店で迷惑行為して世間の注目を集めようとしたり。大切なのは自分の病みと適切に付き合えているかどうかだと。
───かなちゃんは、誰かに自分を見て欲しかった。
だから言うの。星は一人じゃ輝けない、なんて。星を照らす存在になりたい、なんて。あんなに一人で輝いていた貴方が。その光を誰よりも知っていて、誰よりも持っているはずの貴方が、そんなことをインタビューで言っていたのを雑誌で見て、私の興味は少しずつ貴方から離れていったんだと思う。
それも仕方ないと思ってた。だってその方が遥かに楽で、正しい選択肢だ。周りと歩幅を合わせて、息を合わせて、周りから求められる仕事をこなして、皆と波風立てずに生きていく。間違ってない。正しい。仕方ないと思ってた。
───彼に出会うまでは
周りに合わせなくても、生きていける人がいる。
自分の目的のためなら、遠慮も妥協も一切しない。完璧を求めて、完璧を実現できる人間がいる。
身勝手で、自己中心的で、唯我独尊。けど圧倒的で、美しく、かっこよくて、凄い。神様みたいなあの人に出会ってしまった。
───やっぱり、違う。
今の貴方は間違っている。周りに合わせるんじゃない。周りに合わさせる。そういう演技をしなくちゃいけない。
それができなきゃ、あの人の隣に立つ資格はない。
───好きなんでしょ?かなちゃんも。アクアくんのこと。
私も女子だ。女の子が好きな人を見る目くらいわかる。
───でもあの人の隣に立つなら、ただ食べられるだけの女じゃダメ。
アクアくんに食べられ、アクアくんを食べる。お互いがお互いを貪れる存在にならなければ、アクアくんの隣に立つ資格はない。
その事をあかねは不知火フリルから嫌というほど教えられている。
───私じゃまだフリルちゃんの域にも、アクアくんの域にも達していないと思うけど。
それでもあの領域に足を踏み入れることを諦めてはいない。不可能だとも思わない。
───私は私が一番目立つように戦う。
思考の海から浮かび上がる。現実。ステージの上。眼前に立ちはだかる2名。鞘に収まったままの刀で【つるぎ】と【シース】の二人を相手取る。主人公の敵対勢力のボスに相応しい傲慢と実力を示すシーン。
『刀を抜きなさい!』
つるぎが啖呵を切る。鞘姫は氷の冷徹と無表情を持って、応えた。
『貴方の相手など、している暇はないのです』
『っ、バカにして!』
『刀鬼に、あの人は殺させません』
ブレイドと対峙する刀鬼の元へ行こうと前に出る。しかし、その行手を阻むように白髪の巫女が現れる。
『私は主様の盾。たとえ盟刀を無くそうと、その事実は変わりません!』
『…………勇敢ですね』
盟刀使いである自分に対して、通常の日本刀で向き合う。愚かとも言える行動を鞘姫は無表情のままに称賛した。
『ただの刀相手にこちらが抜くのも、無作法というもの』
流麗で、それでいてわざとらしくない動作で自身の盟刀を高く掲げる。その刀身は黒塗りの鞘に収めたままだった。
『このままで相手をしてあげましょう、剣巫の巫女』
鞘に納めたままの盟刀と、シースの刀がぶつかり合う。その立ち振る舞い。漏れる笑み。険しい眉の形。迫。不知火フリルと黒川あかねから発せられる全てが、ステージ上を食い荒らす。
観客達の視線を一身に集めるオーラを持った不知火フリル。主人公側のヒロインというのもあり、大抵の観衆はシースの側に立って観劇している。
対して【鞘姫】は敵側のヒロイン。氷の冷徹。威厳ある女王。あかねが役に憑依りこみ、没入すればするほど、ステージには強張りに近い緊張感が生まれる。
───油断すれば不知火フリルといえど…
喰われかねない。それほど今のあかねは極限の没入の中にいる。
おそらくは星野アクアのせいで。
───黒川あかねは、おそらく没入という意味では、自分を超える俳優に初めて出会った。
今まで役に潜り込むという点においては自分がナンバーワンだった。故に慢心ではないが、見えていないモノもあった。しかし突如として自分を超える才能に出会った。
そして人間とは才能に出会った時、取る行動は大きく分けて2通り。
自分では敵わないと諦めるか。
この人を超えると奮起するか。
黒川あかねの場合は後者だった。
向上に於いて、自分より上の存在というのは欠かせないとフリルは思う。
長年破られなかった100メートル走10秒台の壁が、突如として破られた時、後に続くものが何人も出てきたように。
フィギュアスケートにおいて、四回転ジャンプを跳ぶスケーターが一人現れると、続くスケーターが何人も出てきたように。
才能ある貪欲なものの進化は、具体的な強敵によって爆発する。
『はぁっ!!』
『っ!!』
フリルから気合いの声が上がる。この辺はシースの強みだ。戦う時に声が出せる。冷徹の女王である鞘姫では戦いの際、声を荒げることなど出来ない。
───今のはフリルの咄嗟の工夫だ
練習ではやってなかった。声を使って注目度を上げる。不知火フリルが長年を持って培ってきたテクニックの一つ。演技とは技術。それは間違いないのだが、そのアドリブにアクアは違和感を感じ取った。
───必死だな、フリル。演技中にあの手この手と使ってきてる。
誰もがやってる事だがフリルがやると違和感が出る。何も特別な事をしなくても注目を集められるカリスマを持った天才だから。
───らしくない、とか思ってる?アクア。
いつも飄々として、余裕があって、貴方のことをからかってる私を知る貴方なら今の私に違和感を感じてるのかもしれない。
───でもね。私はいつだって必死なんだよ?私は追われるカメだから
あのPVでアクアと出会った。ネットドラマで貴方の名前を知った。自ら近づき、育て、ここまできた。
───私は凡人。貴方は天才。私は怠けないカメだけど、貴方は怠けないウサギ。普通にやってたらあっという間に追い越される。事実、たった半年で貴方は私に追いつきつつある。
それは必死にもなるだろう。でも慌ててはいなかった。自分を超える才能なんていくらでも見てきたから。
───貴方は、貴方達は、まだ知らない。私にアドバンテージがあるとすれば、それは既にテッペンを知っている事。
アクアとあかね。そしてフリルとの間に最も差があるとすれば、それは経験値。あかねは舞台演劇がほとんど。アクアも実際に人前で演技をするのは数えるほど。
対してフリルの経験は膨大だ。日本の大御所が一斉に集う大河や朝ドラ。海外で賞を競うような映画にも出演してきた。だから彼女は知っている。
───この世界は、あるところまで行けば、天才の大渋滞
だからこそ天才の中で差をつけなければいけなくなる。天才の中で、自分にしかない商品価値が必要になる。
あかねの場合は、役に寄り添うこと。
有馬の場合は、脚本に寄り添うこと。
───アクアは、まだちょっとよくわかんないけど…
まだアクアは自分の哲学を見つけられていない。才能とカリスマだけでやっていけてしまっている。しかしそれだけではいつか頭打ちになる日が来る。この舞台で自身の哲学のきっかけくらいは掴んでほしいと思う。
───そして、私の場合は……
あかねと繰り広げる殺陣の中で、観客に視線を送る。誰でも良い。誰か一人の顔を視線で捉える。すると……
[今、不知火フリルと目が合った!]
観客と視線を合わせるテクニック。合ったと勘違いさせるテクニック。定期的に誰かの顔を見るだけで良い。そうすれば観客は目が合ったと思ってくれる。
不知火フリルが何年もかけて培ってきた技術。見ているだけでも、共演しているだけでも手に入れられない。アクアにすら教えていない技術。
───私は、大衆に寄り添う
皆が望む不知火フリルを。皆が見たい不知火フリルを演じる。高慢なら高慢な不知火フリル。健気なら健気な不知火フリル。演じ分けをしながらも、どこからしさが香る。外連味がある。見られている事を常に意識している。視点を自分の中ではなく、自分以外の全てに割り振っている。大衆に寄り添う。それが不知火フリルの哲学。
両巨頭、今の所五分。献身と傲慢。情熱と冷徹。正と負の芝居の攻防。ヒートアップするボルテージ。どんどん没入を深め、鋭さを増すあかねに対し、フリルは観客に飽きさせない工夫と技術を持って対峙する。手に汗握るとはまさにこの事。
───これだけ役者が入り乱れる中、誰もが平等のはずの場面で……
間違いなく、今はこの二人が主役だ。
時折あかねの視線が逸れる。シースではなく、つるぎを見つめる瞬間があった。観客からはわからないだろうが、舞台上にいればわかる。
───人を、試すような目
二人が織りなすダンス。その舞台に手招きするかのような視線。役者同士は動きで語り合える。有馬かなは黒川あかねからの招待状に気付けないほど、鈍な役者ではない。
───私もアンタ達と白黒………
踏み出そうとしたその瞬間、脳裏に過ぎる、絶望の闇。自分勝手に、演技力をひけらかした結果、どうなってしまったか。自身の経験が身体を縛る。結局経験に勝る武器はない。しかし同時に、経験より重い枷もまた、存在しない。
盟刀を持たないシース。鞘のままで戦う鞘姫。それでも武器の面で不利なシースが、つるぎと入れ替わり立ち替わりで戦ってもいい場面で、有馬はじりじりと、わざとらしくない範囲でその存在を引いた。
───意図はわかる。
前に出た黒川あかねと不知火フリル。その二人を引き立たせるために有馬かなが、一歩引く。東京ブレイド渋谷編において、表と裏でメインヒロインを張る二人の存在感を際立たせる。作品的には正解。脚本に寄り添う演技。ディレクション側からしたら、ありがたいだろう。コレほど使いやすい役者もいない。
───そう、コレが正しい。私の自我は要らない。作品が良くなるのがみんなの幸せ
───この期に及んで、まだ貴方は……
───敢えて否定しないけど、興味も失せたな
三者三様。それぞれの感想を持って、ヒロイン同士の戦いは終わりを迎える。主演組は一度下がり、準主役組の戦いへフォーカスが移る。アクア達は一度舞台裏へと引っ込んだ。
「…………嫌い」
嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い
「だいっきらい」
メイクが崩れるから何もしない。けどできるなら頭をかきむしりたい。カツラ外して、踏みつけて、地団駄踏みたい。
───なんでこの期に及んでそんな演技するの?貴方が真正面から、本気で演れる場面を作ってあげたのに、なんで引くの?舞台のため?脚本のため?仕事を失わないため?その全てを解決する方法があるのに、なんで一番正しい手段を取らないの?
これじゃ、私がただ目立ちたくて、ワガママやって、自分勝手に振る舞っただけじゃない。
───もういい。
もういい。終わらせよう。やっぱりあの時感じた失望は正しかった。かなちゃんのこと、どうでもいいと思ったあの感情は正しかった。もうあの人は完全に馴らされてしまったんだ。かなちゃんなりに戦ってるんだとは思う。けどもうあの人は私とは違う土俵の住人になってしまった。
「良かったな、今の」
ボトルが差し出される。顔を上げた先にいたのは、蜂蜜色の髪の美少年。自分の彼氏。
「フリル相手に引けをとってなかった。今のところ互角にやれてる。オレも、お前も。負けてない。姫川大輝にも、不知火フリルにも」
「アクアくん……」
「だってのに、随分不機嫌そうだな」
ドリンクを受け取りながら再び俯く。一度飲み物を口にすると、朗らかな笑顔で彼と向き合った。
「そんなことないよ。別に今の舞台に不満もない。かなちゃんが間違ってるとは私も思わないし。それに言ったでしょ?私、今はかなちゃんのこと、どうでもいいんだ。かなちゃんなんかより、今はアクアくんと──」
「お前にしては良く喋るな。それにオレは有馬の話なんか、一言もしてねーぞ?」
「……………………」
飲み物から口を離す。ほっそりとふしくれだったアクアくんの指が私の顎に添えられ、そっと上を向かされた。暗く輝く星の瞳が真っ直ぐにこちらを捉える。その暗さと輝きに吸い込まれそうになっていると、親指が私の口の中に入ってくる。指一本で彼は私の口内を愛撫した。
『おまえはいつもそう
何かを隠そうとすると途端に饒舌になる
それで私はお前の心根を知ってしまうのさ
そのよく動くお前の舌の裏側に
秘め事がじっと蹲っていることをね』
甘く、痺れるような声で紡がれる睦言。劇画調のセリフに背筋が震える。この声で、このオーラで迫られたら、耐えられる人間なんていないだろう。頬が上気し、目が潤む。このままキスされたとしても、裸にむかれて襲われたとしても、私は何も抵抗できない。そう確信できるほど、私はどうしようもなく、この状況に興奮してしまっていた。
口内から指が抜かれ、顎に添えられた指が離れる。あ、と声が出そうになる。鏡を見れば、きっと私はさぞかし物欲しそうな顔をしていることだろう。濡れた自身の親指をアクアくんが舐める。ゾクゾクと身体の中に寒気が駆け抜けた。
「虚栄心は人を饒舌にし、自尊心は人を寡黙にする」
「…………ショーペン・ハウアー」
「知ってたか、さすが」
一歩離れたアクアくんが、飲み物を再び口にする。もういつものアクアくんに戻っていた。
「人に合わせて、波風立てないよう和を保つってのがどれだけ難しいか、あかねももう知ってんだろ」
「それはっ……」
言い返そうとして、止まる。身をもって知っている。あの時、みんなと仲良くしようと心がけていたリアリティショーの時でさえ、私は皆に合わせることができなくて、あんな事になってしまった。
「それに、自分の気持ちを誤魔化すのにオレを使うのは気に入らないな。そういうことし続けてたらいつかほんとに本音がわからなくなるぞ」
───この人は、いつもそう
誰も見てないようで、誰よりも見ている。こちらの心を見透かし、見通し、容赦なく踏み込み、言い当てる。神様みたいだ。はるか高みからこちらを見下ろし、蜘蛛の糸を垂らす、神様みたいだ。
「不満があるならあるって言えばいいだろうが。ちなみにオレはあるぞ。今の有馬はつまらない。脚本や監督に寄り添ってるとか、演劇的には正しいとか知らんが、つまらない。それは間違いない」
星野アクアの「つまらない」。コレが出た時、アクアはどんなに正しいことでもやりたがらないことを、あかねはまだ知らなかった。
けど、何をする気かはなんとなくわかった。きっと救う気だ。かなちゃんを。かなちゃんから調整役を奪って、好きなようにやらせてあげるつもりなんだ。
私の時と同じように。
───でも、なんで?
私の時は、アクアくんにもメリットがあった。リアリティショーではわからないアクアくんの演技力。それを世間に公表する。フリルちゃんのおかげで上がっていた知名度に実力を上乗せし、一過性のバブルでなく、自らが本物の天才だと知らしめるチャンスだった。
けど、今回はそんなメリットはない。
ブレイド陣営のかなちゃんが活躍するような事をしてしまえば、アクアくんにとってはむしろデメリットになりかねない。舞台全体の出来は良くなるかもしれないし、私の望みは叶う。けれどアクアくんにとって良いことは一つもない。
───私が望んでいるから、っていうのもあるのかもしれないけど……
倒れた時、介抱してもらった事をアクアくんは借りだと思っているはず(私は全く思ってないが)。その借りを返すため。ゼロではないかもしれないが、それが全てとはとても思えない。
『オレは、恋愛がよくわからん』
───ねえ。アクアくん、それって……
アクアの「つまらない」を知らないあかねは、その先を言葉にはせず、胸の中にちくりとした痛みを伴ったまま、再び壇上へと向かった。
最後まで読んで頂き、ありがとうございます。ヒロインレースで大きく突き放されている重曹ちゃん。次回、凄まじい末脚を見せられるのか。そしてアクアの愛の形とは。
それでは励みになりますので、感想、評価よろしくお願いします。面白かったの一言でも頂ければモチベーション爆上がりです。時間がかかっても感想には必ず返信します