詳しくは活動報告をお読みください。
総合日間ランキング24位。ついにトップ30に入りました。
皆さまの応援のお陰です。この場を借りてお礼申し上げます。
ありがとうございます<m(__)m>
次はトップ10入りを狙います。
アルバの消滅を確認し、俺は構えを解いた。
……あ~~~、疲れた!
冥土の土産だからといって、切り札を見せるんじゃなかった。あれ使うと魔力がごっそり持っていかれるんだよね。それに少しでも気を抜けばとたんに暴発するような術式だから神経を使うこと使うこと。
以前術式操作に失敗し空に力を逃がした事があるが、その時は雨雲が一瞬で蹴散らされて焦った焦った。慌てて雨雲を再構成して神秘の隠匿は保たれたけど、あの時はまじで執行者が派遣されることを覚悟した。
さて、アルバを殺したし、橙子たちに合流するか。これ以上待たせると本当にどやされそうだし……おっ、空間が破られたな。
どうやら、橙子たちは上手くやってくれたようだ。小川マンション……荒耶宗蓮の身体が悲鳴を上げている。
非常識の死神が目覚めたのだ。
「選手交代っと。まぁ、俺は大分前に退場した身だけどな」
手頃な瓦礫石を拾い、
……どうやら橙子たちは一階に向けて移動しているようだ。おそらくここを脱出する為だろう。
ちょうどロビーに到着するタイミングだ。エレベーター前まで迎えに行こう。
荒耶の事は任せたぞ、式。
「アルスさん!」
「うぉっとぉ!」
エレベーターのドアが開いた瞬間、霧絵ちゃんが飛び込んできた。一瞬焦ったが、衝撃を吸収するように優しく受け止める。
「アルスさんだ……本物のアルスさんだ……ッ!」
「おいおい、さっきもこうやって抱きしめてあげたろ?」
「ごめんなさい……でも、別れてから、あのアルスさんが幻なんじゃないかって不安になっちゃって……」
えぐえぐ、とまた泣き出してしまう霧絵ちゃん。
まぁ、目の前で生首状態の俺が潰される瞬間目撃しちゃったからな。この件に方が付いたら、精一杯甘えさせてやろう。
霧絵ちゃんを抱きしめていると、後ろから橙子と、赤髪の少年を肩で支えている黒桐くんが現れる。
……んん?その少年、ちょっと身体の構成おかしくないか?筋肉や骨の他に歯車などの金属物質が混じってる。しかも、限界がかなり近い。
「橙子、その少年は……」
「お察しの通り、人形だよ。アルバが作ったものだろう。限界が近づいていたようだからルーンで保護している」
言って、橙子はチラリと俺の背後に視線を向ける。もちろん、誰もいない。
「用事は済ませたようだな」
「抜かりなく、な」
橙子には、別れる前に事情をパス経由で説明しておいた。さすがにあの名をみんなの前で喋る訳にはいかないからな。
「よし、それでは急いでここを出るぞ。式が荒耶の相手をしているとはいえ、やつの体内であることには変わりない。アルス、臙条を運んでやれ」
「了解」
黒桐くんから臙条と呼ばれた少年を受け取りさっと左肩に担ぐ。少し苦しいかもしれないが、両手が塞がらないようする為だ。我慢してくれ。
橙子を先頭に移動開始──―そのタイミングで、大きな振動に襲われる。同時に、天井や床に亀裂が走った。
くそ、原因は解らないがマンションが崩壊しようとしている。早くここを離れなければ!
「橙子、霧絵ちゃんを頼む!俺は黒桐くんを!」
「解った!」
空いている右肩に黒桐くんを担ぎ、橙子は霧絵ちゃんを横抱き……いわゆるお姫様抱っこで抱える。
そのまま、強化を施した足で東棟ロビーを駆け抜ける。目指すは中庭だ。ここから一番近い外はそこしかない。
道中、瓦礫が降ってくるがルーンで防御する。ここまで来たのだ。瓦礫による圧死など御免被る。
「ッ!アルス!」
一足先に中庭への出入り口を視認した橙子が叫ぶ。見ると、崩落した天井によって出入口が塞がれている。
「任せろッ!!」
全身を強化し、橙子を追い抜く。そして、瓦礫に向けてキックをお見舞いした。
轟音と共に、瓦礫を吹き飛ばしながら中庭へ着地。もちろん、両肩の二人には怪我一つないよう調整済みだ。
一息つき、安全を確認してから黒桐くんを下ろす。どうやら、崩壊は途中で止まったようだ。
「ッ!式!!」
遅れてやってきた橙子と霧絵ちゃんを迎えていると、弾かれた様に黒桐くんが飛び出した。行き先に目を向けると、式が眠るように横たわっていた。
そして、式から少し離れた位置に──―両腕を失った荒耶宗蓮が同じく横たわっていた。
「……死の蒐集家も、今度ばかりは終わりだろう」
「……霧絵ちゃん、臙条くんを頼む」
少年を下ろし、霧絵ちゃんに任せる。
そして、右足を強化で動かした代償に自力で歩けなくなった橙子を支えながら、かつての友へと歩を進めた。
「今回も失敗に終わったな、荒耶」
じろり、と目線が向けられる。
「蒼崎に……アルスか。アルバが蒼崎ではない何者かに処刑された事は察知していたが、まさかもうひとりいたとはな。私が殺したアルスは確かに本物だった……。ならば、おまえは作り物か」
「アルバといい、どうでもいい事に執着するんだな。まぁ、いいじゃないかそんな事。今更無意味な問答だ」
「確かに。ただ消滅を待つだけのこの身。いらぬ問答は無駄というもの」
すっ、と橙子が煙草を取り出す。俺は懐からジッポを取り出し火を点けた。
「酷い有様だな。わざわざマンションを建て、数々の死と苦しみを蒐集して体験する。意図的に地獄を作り上げ、遂には疑似的な固有結界まで構築した。……何故そこまでする。何がおまえをそこまで突き動かす」
「……理由など、とうに忘れた」
「呆れた。望みは無であり、発端ですら零。おまえは一体何者なんだろうね荒耶」
橙子は煙草に口を付けず、荒耶との対話に集中する。
それは東棟ロビーにて中断された、数年の隔たりを清算する問答の続きだった。人形師と死の蒐集家。二人の問答が粛々と続けられる。
その様子を、俺は黙って見守る。
兄弟子だった俺とは違い、彼女は荒耶の同期だ。ここで俺が口を挟むのは無粋というものだろう。
──―ふと、荒耶について考えをめぐらす。
思えば、やつは師匠の弟子の中でも一番の異端だった。
魔術師としてはお世辞にも及第点とは言えない腕前。しかし結界に関しては他の追随を許さない一点特化型。そんな歪なカタチをした魔術師が目指すのが根源。しかも次世代に託さず己の力のみで辿りつこうとしているのだ。
そんな荒耶を面白がって、師匠は弟子に迎い入れたんだっけな。
弟子になった後も、荒耶は落ち着くことはなかった。むしろ、その異端さに一層拍車がかかった。
ある時など、望みは何かという師匠の質問に荒耶はこう答えた。
『私は何も望まない』
その返答を聞いた時、身震いしたものだ。字面通りの意味ではないことはすぐに理解できた。言葉に込められた激情が全身を貫いていったからだ。
しかし、その激情の根源が何かはついぞ理解できなかった。後日橙子から真意を聞くまで、一切思いつくことはなかった。
結局、俺は弟弟子の理解者にはなれなかった。おそらく、荒耶の理解者になる事ができるのは橙子ただひとりだけなんだろう。だからこそ、やつは敵対者であるにも関わらず橙子を勧誘した。
ふと、荒耶の異変に気付く。吐血したかと思えば、左半身から灰となって消えてゆくのだ。
おそらく限界が来たのだろう。身体の三分の一を失ったまでか直死の魔眼による死を与えられたのだ。ここまで持ったのが奇跡なのだ。
橙子は一度も口にしなかった煙草を投げ捨てる。問答は終わり、ということだろう。
そして、最後に魔術師として荒耶宗蓮に問いかけた。
「アラヤ、何を求める」
「──―真の叡智を」
「アラヤ、何処に求める」
「──―ただ、己が内にのみ」
「アラヤ、何処を目指す」
一度目は問いかける事ができなかった質問に、荒耶は口を動かし答えようとする。
しかし、身体の崩壊が喉元にまで迫ってきた彼には発声することができなかった。
──―それでも、俺たちには答えが返ってきたような気がした。
──―知れた事。この矛盾した
荒耶の全身が灰と化し、風に乗って世界へと舞い散ってゆく。
その様子を観察しながら、橙子はもう一度煙草に火を点けた。
紫煙は、まるで弔いの線香のようだった。
その後の顛末を語ろう。
小川マンションから生還を果たした俺たちを待っていたのは後始末という名の隠蔽工作だった。
マンション一つを崩落させかけた魔術実験を時計塔が見逃すはずがなく、二週間もしないうちに工作部隊がやってきて証拠隠滅を図るだろう。
その時、俺たちの痕跡を発見されでもしたらとても面倒だ。大怪我を負った式を病院に運び、橙子たちを伽藍の堂に送り届けてからとんぼ返りで小川マンションへと向かった。
魔術の痕跡を消し、
隠蔽工作が終わった後も大変だ。前述したとおり式は病院へと運べたが、橙子はそうもいかない。
強化を施して走った際に粉砕骨折してしまったらしく、筋肉に散らばった骨を緊急手術で取り除いた後、霊薬などによる治療を施したら日が昇っていた。
俺の見立てでは、式は全治一週間。橙子は全治一ヶ月と言った所だろう。
そして、橙子の治療を終えた俺は最後の難関に直面した。
そう、臙条巴の身体だ。
こればかりは、俺にはどうすることもできなかった。霧絵ちゃんみたいに身体を人工品に置き換えようにも、元の人形の肉体が限界を迎えているせいで手術に耐えることができない。病魔に侵されていた霧絵ちゃん以上に衰弱しているのだ。
どうしようか悩んでいると、意外な所から救いの手が差し伸べられた。
なんと、橙子特性の素体人形を使ってもよいとお許しが出たのだ。
これに魂を移せば、魂に含まれた情報を元に肉体を再構築するという魔術師が聞けば卒倒するような代物だ。現代でこれを作れる人形師は橙子ひとりだけだろう。
という訳で、臙条巴は新たな肉体を得て伽藍の堂三人目の社員となった。
………………何故そうなる!?
次回、矛盾螺旋エピローグです。
矛盾螺旋編が終わった後、忘却録音編と殺人考察(後)編と続き空の境界編が終了。続いてロード・エルメロイⅡ世の事件簿編に移行しますが、矛盾螺旋、忘却録音、殺人考察(後)、これらのエピソードの間には約1か月ほどインターバルがあります。この間に閑話を入れるかどうかアンケートしたいと思います。
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矛盾螺旋と忘却録音の間に閑話入れろ
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忘却録音と殺人考察(後)の間に閑話入れろ
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どっちのインターバルにも閑話入れろ
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閑話いらねえ!早く事件簿編読みてえ!