人形師の使い魔   作:アスラ

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筆が乗ったので投稿します。
想定以上にアンケートが拮抗しててびっくりしました。でも読者様にはそんなこと気にせず欲望のまま答えてほしいです。
閑話のシチュエーション募集も活動報告にてまだまだ受け付けていますのでよかったらどうぞ。


双貌塔イゼルマ:2

 橙子とアルスが双貌塔イゼルマに滞在し始め四日が経った。

 

 蒼崎橙子はバイロン卿に与えられた研究室に籠り、作業を続けていた。どうやらバイロン卿からの依頼はとても興味をそそられるものらしく、睡眠時と食事以外ではほとんどアルスと行動を共にすることはなかった。

 ただ突破口が見つかったらしく、研究室に籠り切りの日々は終わるようだ。今後は二人で過ごす時間をもっと取れるとのこと。

 対してアルスは手持無沙汰……という訳でもなく、複数の作業をこなしていた。

 そして、そのうちの一つが完了したので、現物を持って目的の人物と接見していた。

 

「ほう、これはこれは……」

 

 目的の人物──―バイロン卿が感嘆の声をあげる。

 彼の視線の先には等身大の人形が棺に納められていた。顔は精巧で、肌の質感と球体関節さえなければ本物の人間と見紛う出来栄えだ。

 しかし、ある一点だけ通常の人形とは異なる点があった。人形の手にあたる部分には、代わりに鋭利な刃が備え付けられているのだ。

 勘のいい者なら一目で正体を看破することだろう。

 そう、この人形は戦闘用の自動人形(オートマタ)なのだ。

 

「操作方法は事前に説明したとおりですが、このように書面で整えさせていただきました。メンテナンス方法も記載済みです」

 

 アルスは懐から紙束を取り出し、デスクへと置く。

 

「今から試運転しても構わないかね?」

 

 年甲斐もなくワクワクする様子でバイロン卿が質問する。

 

「調整済みですので問題ありませんが、談話室(ここ)では狭すぎでしょう。中庭で試されることをオススメします」

「ではその通りに」

 

 召使いに自動人形(オートマタ)を運ぶよう指示を出し、二人は中庭に移動する。

 

「では、お手並み拝見といこう」

 

 タン、とバイロン卿が杖を地面に突き、自動人形(オートマタ)に魔力を通す。

 すると閉じられた瞳が開き、ゆっくりと足を地面に降ろす。

 そして一歩、二歩と歩み始め……周囲に人気(ひとけ)がなくなったタイミングで、両手の刃を振り回し縦横無尽に駆け巡った。

 球体関節ならではの可動域を持って、跳ねる、薙ぐ、屈む、奔る……その様は剣舞を想起させた。

 スッ……と自動人形(オートマタ)を操縦するバイロン卿の横にアルスが並び立つ。その左手には複数の小石が握られており、バイロン卿に見せつける。

 それだけで操縦者は意図を理解したのか、ニヤリと笑いかけた。

 

 アルスの右手に小石が握られ、指弾の要領で弾き飛ばされる。向かう先は自動人形(オートマタ)だ。

 高速で飛翔する小石は後頭部へと一直線に向かう。このままでは直撃しダメージは免れない……が、当たる直前に自動人形(オートマタ)の刃によって弾かれる。

 その結果を見て、アルスは指弾を連射する。複数の小石がまたも襲い掛かるが、操縦者たるバイロン卿は落ち着いて全てはたき落とした。

 

「お見事」

 

 初めて操作する初心者とは思えない芸当に、アルスは感嘆の声をあげる。バリュエレータ派の中でも有力な一族の長、人形扱いに関してはお手のものという訳だ。

 

「いや、謙遜する訳ではないが、自動人形(オートマタ)の出来が良いのだ。私のイメージ通りに動作する。戦闘に耐えうる自動人形(オートマタ)はミス・アオザキ以外には作成できないと思っていたが……まさか君も作れるとはな」

 

 手放しの称賛に、アルスは「光栄です」と一礼する。

 そう。アルスがこなしていた作業の一つとは、自動人形(オートマタ)の作成だ。バイロン卿が橙子に依頼した内容の一つらしいが、彼女は現在本命作業の真っ最中で手が離せない。

 なので、比較的暇なアルスに橙子が作業を命じたという訳だ。

 

「ですが、一つ訂正を。橙子から薫陶を受けているとはいえ、俺ひとりで全てをこなせる訳ではありません。彼女が予め用意した型と術式を用いて初めて作成できるのです」

「それでも大半の魔術師は一端すら理解できないだろう。素直に称賛を受け取りたまえ」

 

 重ねての称賛に、アルスは再び一礼する。

 

「では俺はこれにて。約束の時間が迫っておりますので」

「よろしい。ミス・アオザキには満足したと伝えてくれ」

 

 自動人形(オートマタ)の操縦訓練するバイロン卿を尻目に、アルスは月の塔へと向かう。

 目指す場所は、織り手であるイスロー・セブナンの(もと)だ。

 

 

 ◇

 

 

 

 社交界が開かれる運びとなり、何が橙子とアルスを困らせたかと言うと、正装を準備していなかったことだ。

 事前に知らされなかったとはいえ、コート姿で出席する訳にもいかない。今更工房に取りに帰ることなど出来ず、二人はしょうがなく既製品で済ませようとしたところ、意外なところから待ったが掛かった。

 バイロン・バリュエレータ・イゼルマである。

 彼は二人を呼び止めると、ある人物を紹介した。

 その人物こそが、バイロン卿の共同研究者であり黄金姫・白銀姫のドレスを担当しているイスロー・セブナンだった。

 

「お披露目が近いというのに、余計な仕事を増やしてスマナイな」

「……いえ……これも仕事ですから」

 

 謝罪を気にすることもなく、イスローはアルスの身体の採寸を進める。

 

「だが、俺と橙子の正装を一か月で用意するのは骨が折れるだろう?」

「……問題ありません。……ディアドラ様とエステラ様のドレスは……仕立て終りました故……後は簡単な調整で済みます。……それに……服飾に用いる礼装を数多く取り揃えているので……作業時間は大幅に短縮することが可能です」

 

 なんてことはないとイスローは断言するが、フルオーダーがどれほどの負担を強いるかアルスは知っている。最低でも三か月はかかるものを一か月、加えて二着も製作するなど狂気の沙汰だ。

 

「……それに……マイオの薬もあります。……服用すれば……一時間の睡眠で事足りるようになります」

 

 事実、薬師であるマイオ・ブリシサン・クライネルスの手を借りてまで仕事を遂行しようとしている。訊けば彼とは幼馴染で、信頼を置いているからこその発言なのだろうが、アルスはより一層申し訳ない気持ちになる。

 

「そこまでやってくれるのならば、相応の謝礼は弾まないといけないな」

「……そんな……結構です。……バイロン卿から……無償でよいとお達しがありましたから……」

「服に魔術的要素を付与する必要ないからか?だが素材代も技術料も加味していないだろう」

「……しかし……」

「よし決めた、今決めた。これは決定事項だ」

 

 固辞するイスローを意図的に無視し、アルスは宣言する。

 

「近々君への謝礼として礼装を贈ろう。ああ、心配することはない。お守り程度の簡易的な物だ。バイロン卿に咎められることはないだろう。……そうだ、マイオくんも協力しているのならば、彼にも贈らなければ」

 

 ポンと手を叩き、アルスはぶつぶつと案を言葉にして頭を整理する。

 そんな自分の世界に閉じこもってしまったアルスに、イスローは困った様子で声をかける。

 

「……あの……ミスター」

「形状はどうしようか……。簡易的な物であればコンパクトサイズに収めた方が……」

「……ミスター!」

「おっと、スマナイなイスローくん。少し時間がかかりそうだ。安心してくれ、社交界までには渡せるはずだ」

「……それは問題ないですが……採寸がまだ終わっていません」

 

 シーン、と沈黙が場を支配する。

 

「……本当にスマナイ。続きをお願いできるかな」

「……気にしていませんから……」

 

 アルスは顔を羞恥に染め、イスローは粛々と採寸を再開した。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 時は流れ、時刻は夜九時。

 太陽も隠れ月が支配する時間に、橙子とアルスは自室のベッドに乗っていた。

 

「あぁ……ああ……ッ!」

 

 橙子はアルスに跨られ、彼の下で喘ぎ声をあげる。

 

「ほら、ここがいいんだろう?」

「あっ……そこ突かれると……」

 

 使い魔に弱い部分を重点的に攻められ、主の顔はどんどん紅潮していき……。

 

「だいぶ溜まっているようだからな。今日は強めにいくぞ」

「あぁ……イイ!そこ凄くイイ!」

 

 ついには涙を流すまで快楽で蕩けさせられ……。

 

「筋肉バッキバキだぞ。よくここまで酷使したな」

「あぁ~~効くぅ~~」

 

 橙子は全身の筋肉をほぐされた。

 

 

 

「やっぱりマッサージを受けるならアルスが一番ね」

「そりゃ橙子の身体は俺が一番よく知ってるからな」

 

 橙子は背伸びしながら、アルスにねぎらいの言葉をかける。

 

「しっかし、よほど難しい依頼だったようだな。菖蒲を作った時以来の硬さだったぞ」

「そうなの?私の所感としてはそれほどのものではなかったんだけど……」

「マッサージした俺が言うんだから間違いない。……まぁ、守秘義務もあるだろうから聞かないが、ともかくお疲れ様」

「ありがとう。明日には完了するし、後は社交界に出席して終わりね」

 

 むしろそっちが本命かも、と橙子は言う。

 黄金姫・白銀姫という美の集大成は彼女の琴線に大きく触れるものなのは間違いないだろう。イゼルマに対する借りがなくとも依頼を受けただろうと確信を得る程度には。

 

「だけど、このままというのも悩みものね……」

 

 しかし、人形師は頭を抱えてしまう。

 なまじ今までずっと行動し続けたせいだろうか、何もしないということに違和感を感じているのかもしれない。

 

「気にすることはないんじゃないか?こんな機会滅多にないだろうし、バカンスだと思ってのんびりするのもいい息抜きになると思うぞ」

「……それもそうね。せっかく正装を仕立ててもらえるんだし、バイロン卿の好意に甘えましょうか」

 

 橙子はパサリと服を脱ぐと、クローゼットにしまった寝間着を取り出す。むろん、ベッドとクローゼットは離れた位置にあるので道中はアルスに裸体を晒すことになる。

 だがアルスは動じなかった。彼女の裸体を見慣れているうえ、()()()()()()()をしたこともあるからだ。お互い、今更裸を見られて恥ずかしがるような初心(うぶ)ではない。

 

「そういえば、あなたレジーナに熱い視線向けられていたようだけど何かやったの?」

 

 アルス用の寝間着を渡しながら、橙子は質問した。

 

「いや、特になにもやっていないが……。そんな視線を向けられていたのか俺は」

「熱いと言っても、何か質問したいことがあるような雰囲気だったけどね。遠慮しているようだから、休憩中にでも話しかけてあげなさい。問題解決は早めの方がいいわ」

 

 橙子は着替え終わると、()()()()()()()へと潜り込む。

 

「ほら、早くこっちに来なさい。ここは旧き良き(時代遅れな)魔術師の屋敷だからテレビなんて上等なものはないわ。夜更かししてまでやることはないし、早めに寝ちゃいましょう」

「……そうだな。さっさと寝るか」

 

 アルスも寝間着に着替えると、橙子と隣り合うようベッドに潜り込む。

 

「おやすみアルス」

「おやすみ橙子」

 

 そして、部屋の灯りが消えたのだった。

 




初めてわざと勘違いさせるような描写をしてみましたけど上手くできていただろうか?
執筆して初めて解ったけど想像以上に難しかったです。

感想、評価、推薦、お待ちしております<m(__)m>

双貌塔イゼルマが終わりましたら閑話を挟んでいく予定ですが、その後に突入する原作をアンケートで決めたいと思います。

  • アルスが膨大な借金を背負う魔眼蒐集列車
  • フェイカーが原作以上に苦労する冠位決議
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