つまり1日2話投稿してもいいってことだぁ~!
「それで、話ってなんだ、橙子」
時刻は午後七時。黒桐くんも上がり自宅に帰った後に、俺は工房に呼ばれた。なんでも重要な話があるらしい。
「アルス。両儀式という少女を知っているな」
「知っているも何も、黒桐くんから言葉巧みに聞き出した子だろ?で、興味持った橙子が担当の言語療法士としてもぐりこんだっていう」
「そうだ。その式についてのことなんだがな」
フーッ、と紫煙を吐く橙子。
「一目見てすぐ解ったよ。彼女はこちら側の人間だ。おまけに直死の魔眼持ちときた」
「直死の魔眼だと!?」
魔眼。それは外界から情報を得るための眼球を、逆に外界へと影響を及ぼせるように作り替えたもの。
有名どころで言えば魅了の魔眼や石化の魔眼があり、これらは全てランク付けされている。
魅了の魔眼は性能により左右されるが最高位でも『黄金』。石化の魔眼に至ってはその上の『宝石』に位置される。
しかし、橙子が言った直死の魔眼は『宝石』よりさらに上、『虹』に位置するものだ。もはや実在することすら疑われる代物だ。
「幸い、ケルト神話のバロールとは違い見ただけで死ぬということはなさそうだ。彼女は死を線というカタチで認識している。その線を断ち切れば、対象は死ぬというわけだ」
「そうか。それでもキツイのは変わりないだろうな。それほどの魔眼、制御しきれず視界に死が溢れるだろう」
「その通り。現に彼女、目覚めたあとに目を潰そうと手を押し当てたそうだ」
「それは……思い切りが良すぎるな」
「幸い、二年間の昏睡直後ということで未遂に終わったがね。それに、彼女の魔眼は正確に言えば淨眼の類でな。しかも呪詛の類でもあるから潰しても見えてしまう」
「それは難儀なものだな……それで、彼女になにをすればいいんだ?」
「おや、まだなにも言ってないが」
「何年一緒にいると思ってるんだ。それくらい解るさ」
こちらも懐から煙草を取り出し、ジッポで火をつけようとする。
が、何度点火しても火がつかない。どうやらオイル切れのようだ。
「すまん橙子。火をくれないか」
「まったく、仕方ないな。ほれ、こっちこい」
橙子が煙草を咥えたまま手招きする。歩み寄ると、彼女は無言で顔を近づけてくる。
俺は抵抗せず、口に咥えた煙草をそっと彼女の煙草に接触させた。
「おまえには、私がいない間、魔眼の訓練をしてもらいたい。彼女は発現したてのひよっこだ。一日でも早く制御してもらわないと困る」
「解った。それくらいならお安い御用だ」
「よろしく頼むぞ」
話は終わりだ、と言わんばかりに橙子は眼鏡をかけ紫煙をくゆらせる。どうやら冷たいトーコは終わりのようだ。
「真面目な話してるとお腹がすいちゃったわね。今日の晩御飯は何?」
「鮭が安かったんでな。鮭ときのこのバターホイル焼きだ」
「それは美味しそうね♪早く事務所に戻りましょう」
それから数日後、橙子はひとりの少女を伽藍の堂へと連れてきた。
着物の上に赤の革ジャン、それだけでも奇妙なのに、履物は編み上げブーツ。髪は烏の濡れ羽のように真っ黒で、ざっくばらんと切られたショートヘアはむしろ彼女のナイフのような雰囲気と相まって魅力的に映る。
そこまで確認して、ようやく彼女が誰なのか、以前二人に訊いた特徴から思い至る。
そうか、彼女が例の黒桐くんの大切な人か。
「紹介するぞ式。彼の名前はアルス。私の使い魔だ」
「よろしく」
スッと手を差し伸べる。
それに対し、彼女は憮然とこちらを見つめるのみだ。
奇妙な沈黙が場を支配する。
しかし、意外にもその沈黙を破ったのは、沈黙を作った張本人だった。
「おまえ強いんだな」
「……解るのかい?」
「もちろん。おまえもトウコと同じ魔術師と聞いたけど、むしろこちら側なんじゃないか?」
驚いた。一目で俺の本質を見抜くとは……。
事前情報の通り、彼女は本質を見抜く目を持っているのだろう。
「それで、トウコがいない間はおまえがオレの世話をするのか」
「その通り。基本的には橙子が魔眼の扱い方をレクチャーするが、彼女も本業がある身だ。手が離せないときもある」
「おまえはどうなんだ?トウコと同じ仕事をしていると聞いたが」
おっと、まさか彼女の口からそれが出てくるとは思わなかった。たぶん情報源は黒桐くんだな。
「俺は芸術家を自称しているが、むしろそれは副業みたいなものでね。本業は君と同じ荒事なんだ」
「へえ。なら、おまえはオレの先輩になるな」
「そうだよ、後輩ちゃん」
「ちゃん付けはよせ。呼び捨てでいい」
「了解、式」
改めて握手を求める。今度は素直に応じてくれた。
とその時、グゥ~とお腹が鳴る音が聞こえる。その元は、目の前にいる少女だ。
お腹が鳴ったことを自覚したのか、式は顔を真っ赤にしプルプル震える。その背後では、これまた同じく橙子が顔を真っ赤にプルプル震えていた。もっとも、前者は羞恥から、後者は笑いをこらえるためと違いがあるだろうが。
「ちょうどいい時間だし、お昼でも食べるか?」
「……不味かったら食わないからな」
羞恥心に悶えながらも、式は応答した。
不味いなら食わない、か。相当舌に自信があるようだが、俺にも料理の腕には自信がある。
なぜなら、橙子の食べる料理は全部俺が作ってるんだからな。
アルスくんも橙子さんと負けず劣らずヘビースモーカーです。
今回は文字数が2000文字ちょっとと少なめなので2回目の投稿と相成りました。
明日から1日1話投稿に戻します。
そうしなければストックがすぐに尽きてしまうからね、しょうがないね。
矛盾螺旋編が終わった後、忘却録音編と殺人考察(後)編と続き空の境界編が終了。続いてロード・エルメロイⅡ世の事件簿編に移行しますが、矛盾螺旋、忘却録音、殺人考察(後)、これらのエピソードの間には約1か月ほどインターバルがあります。この間に閑話を入れるかどうかアンケートしたいと思います。
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矛盾螺旋と忘却録音の間に閑話入れろ
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忘却録音と殺人考察(後)の間に閑話入れろ
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どっちのインターバルにも閑話入れろ
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閑話いらねえ!早く事件簿編読みてえ!