黎明の軌跡 Break the Nightmare   作:テッチー

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第13話 ヴァナディースの学衣

 バーゼル市への出張依頼は、サルバッドで知り合ったシェリド皇太子から受けたものだった。

 光る《ゲネシス》の反応もあって、アークライド解決事務所一同はバーゼルへと向かう。

 待っていたのは車好きとしては絶対に外せないモーターパビリオン――ではなく、共和国最大の導力器メーカーであるヴェルヌ社。

 そこで出会ったのはクルミとキャラメルヌガーのほろ苦い甘さと濃厚な味わいのエンガディーナ――ではなく、中性的な顔立ちをした銀髪の少年。

 市内を巡る最中に請け負うことになった4spgで、バーゼル理科大学のキャラハン教授のパワハラ疑惑を追う。

 その彼の研究室で目の当たりにしたのは、膨大なデータを扱う演算処理システムと、頻発する市内での導力端末の不具合の奇妙な符合。

 発覚するキャラハン教授と《アルマータ》との繋がり。浮上する“反応兵器”への可能性。

 しかしわずかに遅くキャラハンは命を奪われ――けれど己の意思を持って――1と0の世界へ――自らの人格をAIへと移行させていた。

 続く理科大、天文台におけるメルキオルとオランピアとの交戦。そこで銀髪の少年をかばったリゼットの負傷。

 その果てに突き止めた一連の出来事の真相。

 反応兵器の作成を止めるために、キャラハンと同一化した巨大アサルトフレームとの闘い。その激闘の果てにキャラハンは消え、彼の遺した数式は三高弟の一人であるL・ハミルトンが正しく受け継ぐこととなる。

 そして銀髪の少年――カトル・サリシオンはアークライド解決事務所へ、技術顧問として身を寄せることになったのだった。

「くそ、まだ頭が痛え……」

 《幻夢の手記》の⑫番に基づき、カトルが俺に雇用されるまでの記憶が拡張されている。

 その記憶拡張に伴う頭痛に襲われたのは学院長室でのこと。そこからけっこう時間は経ったはずだが、今回はまだズキズキと頭蓋の内側が痛む。記憶の圧迫だろうか、回数を重ねるごとにひどくなっている気がする。

「つらそうだが……大丈夫か、ヴァン」

 こめかみを押さえるヴァンを、リィンが案じた。

 教壇に立つヴァンは、生徒用の机に座るリィンをじろりとにらんだ。

「ヴァン教官だ、シュバルツァー」

「え、まあ、そうだが」

「なんだぁ、その腑抜けた返事は。お前は廊下に立っていろ。水の溜まったバケツを両手に持ってな!」

「バ、バケツ? 今時は軍事系の学校でもそんなことしないぞ!?」

 抗弁してくるリィンに、隣の席のクロウが掃除用具入れから取ってきたバケツを押しつけた。その顔はにやついている。

「おいおい、リィン君。アークライド教官のご指示に背くのか? 言われた通りにしろよ」

「くっ、クロウ……!」

 学校エリア《ブライト総合学院》の主格者は、学院長であるレン・ブライト。

 彼女の望みはまだわからないが、下手な行動をして知らずの内にルールから逸脱してしまうのはまずい。ひとまずは与えられた役割に従いつつ、エリア攻略の足掛かりを見つけていくのがセオリーだ。

「ヴァン教官! クロウ君が机の下で《ARCUS》をいじってました!」

「あっ、お前! 道連れにしようとすんじゃねえ!」

「なんだと。アームブラストも廊下で立ってろ! お前は表面張力ギリギリまで熱湯を入れたバケツを頭に乗せておけ!」

「はあああ!?」

 バケツを手に、仲良く廊下へ向かうリィンとクロウ。やっぱり納得いかないのか、ヴァンの前を通り過ぎる前に小声で不満を訴えてくる。

「現教官職として言わせてもらうと、そういうペナルティで勉学の機会を奪うというのはどうかと……」

「つーかバケツとか古いんだよ、テンプレか」

「よくわかった。二人とも立ってる時間、三十分延長だ」

 すごすごと出ていく二人。廊下から小競り合う声が聞こえてくる。

 教職なんざ俺に縁のないものと思っていたが、やってみるとそれなりに楽しいじゃねえか。

 ヴァンの恰好はダークグレーのスーツにネクタイ、そしてインテリっぽい眼鏡だ。

 カジノの時と同じだった。仕組みは不明だが、エリア攻略が始まると、その場に応じた衣服に変わるのだ。ただし自動で変更されるのは、なぜかカルバード組だけだが。

 教室に残るのはユーシス、マキアス、エマ、エリオットの囚われている四人と、ラウラ、フィー、ミリアムの解放されている三人。

「さっそく授業を始める。科目は社会(裏)な。教科書の37ページを、レーグニッツが読んでくれ」

「はい。『社会の光と闇においては、実は闇の占める割合の方が多く、その勢力も細分化されている。またマフィアなどの一部は警察上層部との癒着もあり、腐りゆく組織の温床と成り果て――』」

 マキアスが文章を読み上げる。内容に違和感はないらしい。

 しかしシュバルツァーたちめ。俺の何が古いだ、テンプレだ。

「おい、ちびっこ二人! 俺の授業中に寝てんな!」

 ミリアムとフィーに向かって、ヴァンは鋭くチョークを投げた。

 

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《★――第13話 ヴァナディースの学衣――★》

 

 

 レンまでもが《ロア=ヘルヘイム》に取り込まれ、さらには主格者であることには驚かされた。彼女は自分の先輩だ。

 アニエスはふと疑問に思った。

「あれ……そういえばレン先輩、いつもの姿と同じような……?」

 確か《幻夢の手記》の⑧番には【《ロア=ヘルヘイム》に囚われし者たちの姿と記憶は、各々が広範囲に、かつ同時に縁を繋いだ時期――クロスベル再事変の年代(七耀暦1207年)に固定される】とあったはずだ。

 しかしレンの背格好は、一年前ではなく普段出会っている1208年とまったく変わりがない。

 どういうことだろう。なぜ彼女だけ。何かの法則が違うのか。

 このエリアを開放すれば、大きな真実が一つ明かされる気がする。

「アニエスさ……アニエス先生。見つかりましたか?」

 後ろからクローゼに声をかけられる。

「ああ、いえ。少し考え事をしていたもので。もう少し奥に進んで――」

「あ! ダメですよ!」

 雑多な獣道をかきわけようとしたアニエスを、クローゼが焦って止めた。

「今、アニエス先生の服はその……ね?」

「そうでした……」

 突如として変わったアニエスの服装は、肌に張り付くようなピチピチスーツ。胸元など当たり前のようにばっくり開いているし、さらにはミニスカートとロングブーツを繋ぐ扇情的なガーターベルトである。そしてピンクフレームの眼鏡だ。

 

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 カジノでのバニーガールに続いて、私はどんな立ち位置にされているのだろう。

 ホントにみんなの視線が痛かった。ヴァンさんは「あー、今回はそういうアレなのか」とコメントにならないコメントをしてエレインさんに睨まれてたし。

 合流したばかりのカトル君は、ただ視線をそらし続けて、一度も目を合わせてくれなかったし。

 とにもかくにもこの服装だから、あまりうかつに動くと色んなところが見えてしまうのだ。

「捜索は私たちがメインでしますから、後ろの方にいてください。ね、先生?」

 天使。リベールの王太女は天使だと、アニエスは確信した。

 自分が配属されたクラスは、リベール組。幸いアーロンのようなデリカシーに欠けた男性はおらず、この格好に同情はされど、いかがわしい目を向けてくる者はいなかった。

 後方でいいと言われはしたが、やはり先生役として何かをしなくては。

「いませんね……」

 本音を言えば見つけたくはないのだが。

 アニエスたちが訪れているのはジェニス王立学園“区画”の裏手に出現していた雑木林である。そこでクラス総出の虫取りをしていた。

 “囚われ”はエステルとヨシュア。それ以外のクローゼ、ジン、アガット、オリヴァルト、シェラザードは解放されている。

 虫探しはエステルの望みだ。でっかいカブトムシが欲しいのだとか。

 レンを主格者と断定した以上、エリア解放にあたってエステルの希望を叶える必要はない。重要なのはレンの望みである。

 しかしそのレンが言ったのだ。“生徒たちとの信頼関係を作れ”と。

 エステルの願いを受ける行為がその信頼関係の構築に繋がるならば、それも含めてレンの望みの枠の内だと言える。

 エステルが自分の生徒であるからには、虫取り一つもおろそかにできないという事情があった。

 他のメンバーも雑木林に散開して、カブトムシを探している。一体どんな授業だ。

「はあ、カブトムシなんて簡単に見つかるのかな……え゛」

 一歩二歩と落ち葉を踏み入った先、大きなクヌギの木の幹にそれはいた。

 ちょうどアニエスの胸の高さほどだ。甲皮を黄金に輝せる、それこそ子犬くらいのサイズのカブトムシが、樹液をすすっている。

 叫びたい衝動をこらえて、無言で合図を出す。すぐに全員が集まってきた。

「うわっ、ヤバっ」

 そう言ったシェラザードの感想が全てだった。

「ジンさん、いっちゃって」

「お、俺がか? すごい嫌なんだが」

 シェラザードに背を押され、しぶしぶジンが巨大カブトムシに近づこうとして、

「アニエス先生、捕まえて」

 エステルがさらりと言った。

 そう、生徒の願いは叶えなくてはならない。

「どうぞ、アニエス先生」

 すっとジンが道を開けた。道場の師範に最大の敬意を払うような、完璧に美しいお辞儀だった。

 嘘でしょう。え、捕まえるんですかこれ。素手で? 無理でしょう、ムリムリ。民間人の危機を助けるのが遊撃士じゃないんですか。なんで遊撃士が民間人に危機を丸投げしてくるんです?

 しかし逃げ道はなかった。

 じりじりと接近。涙目。がんばって私。アークライド解決事務所のバイト一号の矜持を胸に抱いて。

「ふっ、ふっ、ふう!」

 一気に両サイドからがしっと掴んで、木の幹から引きはがす。

 ずしっと重い。暴れるゴールドカブト。足がギチギチと音を立ててうごめく。これもう虫じゃなくて魔獣の域ですよ。

「たっ、たった、助けて下さい! 虫かご、虫かご! は、羽が今にも開きそうなんです! 早くっ! ああああ!」

「よっしゃ、よくやった!」

 猪用の檻の罠を改造して作った大きな虫かごに、アガットがカブトムシを押し込む。即施錠。捕獲完了だ。

「いやー、みんなお疲れ様だ。これでエステル君も満足してくれただろう」

「何もやってないオリビエが、俺たちをねぎらうんじゃねえ……ん? なんの音だ」

 ただならぬ雰囲気に、アガットが重剣の柄に手をかけた。

 バキバキと木々を倒しながら、雑木林の奥から新たに姿を見せたのはまたしても黄金カブトムシ。

 ただし大きさが今捕まえたものとは比較にならない。装甲車と同等の巨躯。そしておそらく怒っていらっしゃる雰囲気だ。

 アニエスの頬から汗がしたたる。

「もしかして虫かごに入れたカブトムシのご親族の方でしょうか……?」

「わっ、大きい! このカブトムシも欲しいわ!」

 エステルが言った。言ってしまった、望みを。

 撤退しようとしていた足を止め、固まる一同。

「や、やるしかありません。皆さん、戦闘準備して下さい。捕獲するにしても動けなくさせないと無理です」

 魔導杖を背から抜くアニエス。アガットは重剣、ジンは拳、オリヴァルトは銃、クローゼは細剣を構えた。シェラザードは後方でアーツ支援だ。

 怒れるカブトムシが角をぶん回す。それだけで大木の数本が薙ぎ払われた。

 ジンが身を低くして、特攻する。

「俺が発勁を打ち込む! 甲皮の奥まで衝撃を与えればダメージも通るだろう。行くぞ、シャードブースト!」

「え?」

 シャードブースト?

 ジンはそう言った。そして彼の持っている戦術オーブメントは確かに《Xipha》だった。

 おかしい。囚われていた彼らの姿、記憶はクロスベル再事変の年代に固定される。その頃には《Xipha》はまだ存在していない。実際、今シェラザードがアーツ駆動に使っているのは《ARCUS》だ。

 持っているはずも、呼び出せるはずも、扱えるはずもないのに。

「ジンさん……?」

 

 ●

 

 どうも眼鏡は標準装備らしかった。

 世の先生方の全てが眼鏡をかけているわけではないのに――と、リゼットは思う。

 かくいうそのリゼットの恰好は、アニエスとは逆の路線というべきか、清楚な女教師という出で立ちだった。純白のブラウスに、ひざ下までのタイトスカート。なぜか腿上までのサイドスリットは入っていたが。

「はい、皆様。とても素晴らしいですね」

 生徒たちの間をコツコツと歩きながら、リゼットは満足気にうなずいた。

「美しい姿勢は淑女の基本です。歩行、座位、作業時、食事など、いついかなる時も正しく背すじを伸ばしましょう」

 頭の上に本を横積みに乗せて、その状態でティーカップの紅茶を飲む訓練である。

 教え子は四人。

 アルフィンとエリゼはお手の物といった様子で、涼しい顔でティーカップを空にしている。

 意外にもデュバリィもクリアしていた。所作も丁寧で、もしかしたら元は良家の出身だったのかもしれない。

「さすがとしか言いようがありません。わたくしが淑女の手ほどきをするなどおこがましい限りで――」

 バサバサっと、一人の頭から本が床に落ちる。慌てて拾おうとして、紅茶までこぼしてしまっていた。

「大丈夫です。落ち着いてください、セドリーヌ様」

「すみません――って、誰がセドリーヌですか!」

 ぷんすかと怒るセドリックの頭に、アルフィンが追加の本を乗せた。

「がんばって、セドリーヌ。エリア攻略のためには必要なことなのよ」

「本当かな……。だって教え子たちと信頼関係を作れって言っても、僕らのクラスは夢に囚われてる人っていないし、授業なんてやる意味あるの?」

「またセドリーヌったらそんなことを言って! 生徒という指定があって、学生服をわたくしたちが着た以上、主格者のレンさんの言葉にいったんは従うべき。そういう方針でしょう」

「わかってるよ。でも僕は男なんだし、淑女メニューからは外して専用のプログラムを組んで欲しいなーって」

「もうもう! ここが聖アストライア区画なんだから、そこもリゼット先生が考慮して下さってのことじゃない。クラスの和を乱すのはダメよ、セドリーヌ」

「セドリーヌって言いたいだけだろ!」

 エリゼもくすくすと笑う。

「コツはうなじと背のラインを一本にすることですよ。次は私たちも支えますから頑張ってください。ね、セドリーヌさん?」

「エリゼさんまで……もういいけどさ」

「あら、あらあら? エリゼが言うとおとなしくなるの? どうして、ねえ、どうして?」

「うるっさいなあ! アルフィンはうるっさいんだよなあ!」

「はぁ、本当に仲のよろしいことで。……どことなくアイネスとエンネアにからかわれている時のわたくしを思い出すような」

 セドリックたちの掛け合いを眺めながら、デュバリィがぼそっとつぶやいた。

 微笑むリゼットは、おかわりの紅茶の準備に向かった。

 意味があるのかという、セドリックの疑問もわかるのだ。しかしおそらく意味はある。

 街エリアでは“人形兵器の殲滅”がリィンの望み。その手段は“戦闘”。

 城エリアでは“リィン・シュバルツァーを独り占めしたい”がアルフィンとセドリックの望み。その手段は“舞踏会、及び武闘会”。

 そう聞いている。であれば今回も、“生徒との信頼関係の構築”は手段であって、この後にそこから派生する本物の願いが待っている可能性が高い。

 今はとにかく、やるべきをやる。役割に準じるのは普段の業務と同じだ。

 頭上に本を重ねられ続けるセドリックを見ながら、リゼットはそう思った。

 

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 ●

 

 白衣をまとうカトル・サリシオンは黒板につらつらと数式を書き連ねていた。

「このように導力の流れには高低差が存在し、特定の条件下においては逆流も観測され――」

 11月7日だったはずだ。龍来(ロンライ)への慰安旅行が一週間を切り、必要なものを買いそろえて事務所に戻ったところ、そこで意識が白い何かに飲み込まれて途絶えた。

 そしてこの世界で目覚めた時、僕は見知らぬ校舎の廊下で倒れていた。

「――また七耀石には相性もあり、合成実験を行う際はその点にも注意しないといけません。特に火と水は反発する性質を持つため――」

 そこをレン・ブライトに発見され、教授然とした恰好に変えられてしまったのだ。

 訳の分からない異世界でヴァンたちに会えたのは僥倖だったが、まさか教師をやらされるとは。もっともこの白衣はヤン兄みたいだから、そこまでイヤじゃないのだけれど。

「そうそう、上位三属性に関しては今更説明する必要もないでしょうけど、上位というだけあっていくつか不可思議な現象も報告されていまして。古い遺跡なんかに行くと、空、幻、時属性が現界に干渉を――」

 ヴァンさんは8月にこの世界に取り込まれて、体感ではまだ数日しか経っていないらしい。僕は11月だけど、昨日も今日も彼には会っている。もちろんアニエスさん、フェリちゃん、アーロンさん、リゼットさんともだ。しかし誰も《ロア=ヘルヘイム》の事なんて、口にもしていなかった。

 時間軸がおかしいのか? 《幻夢の手記》とやらを後で見せてもらおう。何か矛盾点があれば、僕なら気づけるかもしれない。

「――さて、説明はこのくらいでいいかな。それじゃあ皆さん、実験器具の前に移動して……あれ?」

 数式の列が五段に差し掛かったあたりで、カトルはチョークを動かす手を止めた。

 自分に割り当てられたのは、トールズ第Ⅱ分校の実験室。

 分校Ⅶ組と呼ばれる彼らは、ユウナ、ミュゼ、クルト、アッシュ、アルティナだ。アッシュとアルティナだけは夢から覚めているとのことだったが。

「くっ、うっ? むぅ……?」

 クルトは目を血走らせて、数式の理解に全力を注いでいる。

 その横のユウナは頭からプッシューと蒸気を噴き上げて、白目をむいていた。

「うーん、もう少し凛々しいかも……」

 ミュゼはノートの隅に落書きをしている。どこぞの青年の似顔絵だ。『あい・らぶ・りぃん教官』と可愛らしい文字つきだった。

 囚われ組は仕方ないかもしれない。認識が通常ではないのだから。では彼らはどうだ。

 まずアッシュは寝ている。広げた教科書を顔に乗せ、さらには足をどっかりと机に乗せて。

 どうしよう、不良なんだけど。バーゼル理科大学ではお目にかかったことのないタイプなんだけど。

 そしてアルティナの傍らには《クラウ=ソラス》とかいう戦術殻が現れて、黒板をスキャンしていた。彼女は早々に理解を諦めて、相棒に演算を任せている。

「……難しかった……かな。どのくらいの難度がちょうどいいんだろう……?」

 ミュゼがユウナに話しかける。

「ねえねえ、ユウナさん。どうですか、リィン教官の絵」

「授業は真面目に受けなさいよね。いや、でも似てるわ……一枚書いて欲しいかも」

「これもありますよ。さっきまでのユウナさんの白目をむいた寝顔」

「はあ!? やめてよ! よだれとか垂らしてないし、その吹き出しの『アヘェ』ってのは何なのよ!?」

「盛りました」

「盛るな!」

 なんか女子二人が口論し始めた。

「んー、新任の教官もいいんですけど、やっぱりリィン教官じゃないと気持ちが入りませんね」

「まあ、それはあるかも。どこ行ったのかしら、リィン教官」

「不祥事で解雇とかでしょうか。教え子に手を出した的な」

「そんなことあるわけ――ないとは言い切れないけど」

「私になら手を出して下さってもいいのに……24時間365日、私の心と体はリィン教官のモノなのに。あ、ユウナさんは体だけですか?」

「心もよ! じゃなくて何言わすの、あんたはーっ! 違うし! 心()ってのはおかしいし!」

 どったばった。

 その諍いには目もくれず、クルトはアルティナに苦言を呈していた。

「《クラウ=ソラス》に演算を全て任せるというのはどうなんだ。やはり自分で理解をしなくては意味がないだろう」

「いいえ。あとで《クラウ=ソラス》からフィードバックを受けます。その方が効率的です」

「いや、僕が言いたいのはだな――」

 こちらはこちらで静かな口論。

 カトルはなんとか意識を自分に向けさせようとするも、ことごとく徒労に終わった。

 なにこれ、普通の学校ってこんななの? どうしたらいいの、グランマ……。

「はあー、静かにしやがれ、てめえら」

 場を仲裁したのは、今まで寝こけていたアッシュだった。

「いざこざは休み時間にやれよ。わかんなくてもいいから、まずはカトル教官の話を聞きやがれ」

 鶴の一声だった。全員が従い、正面を向く。

 まあ、それを言うなら君も昼寝は休憩時間にね、と言いたかったが。ともあれカトルは礼を述べた。

「あ、ありがとう。アッシュさん。現実世界じゃ学級委員長だったとか? なんてね」

「生徒会長だ」

「僕もそれくらいの冗談がすぐに言えたらな」

「一発で信じたヤツがいねえ数、また記録更新か……」

 

 ●

 

「整列して下さいっ」

 グラウンドで号令をかけると、クラスの生徒たちがフェリの前に並ぶ。

 ジャージ姿のフェリと同じく、生徒たちもジャージだ。それぞれでデザインは違うようだが。

「フェリちゃん教官。特務支援課、集合しました」

 ティオが言う。

 正規の特務支援課がロイド、ランディ、エリィ、ティオ。臨時メンバーがワジとノエルとなる。なお、“囚われ”はロイド、エリィ、ノエルの三名だ。

「じゃあ、ランニングでもします?」

「ええー」

 ブーイングが入った。

「おいおい、フェリ坊教官よ。他のにしようぜ。英気を養うための睡眠ってのはどうだ」

「フェリちゃん教官、僕はカジノフロアの立て直しに行きたいんだけど」

「フェリちゃん教官、私はミシュラムエリアの巡回を希望します」

 そのブーイングは本来サポートしてくれるはずの解放組からだった。逆に囚われ組は教官には従うものという認識が働いているのか、すでに準備運動をしている。

「困りました……ランディさんたちがあんまり言うこと聞いてくれない……」

 可愛がられはするものの、この年齢のせいか、警察学校の指導教官として扱ってくれないのだ。

 警察学校の雰囲気は知らないけれど、多分組織としての規律とか、猟兵でいうところの集団行動についても厳しく教えられるのかもしれない。

「猟兵……」

 何気なくジャージのポケットを探り、指先が何かに当たる。

 取り出してみると、それはノートだった。タイトルには『猟兵の心得。新兵教育編』と記されている。

 そういえば(アブ)が、新人には通過儀礼だと言ってよく怒鳴り散らしていた。今でも投げかけていた言葉の意味はほとんどわからないままだが。

 ノートを開いてみると、まさしくその手引書だった。

 うん、やれるかも。

「フェリ坊教官よー、とりあえず宿舎に戻ろうぜ。射撃訓練ぐらいだったら付き合ってやっても――」

「黙っていろ、赤毛デク人形! 話しかけられた時以外に口を開くな!」

「うお!?」

 豹変のフェリに硬直するランディ以下四名。準備運動をやめ、ロイドたちも姿勢を正している。

「貴様らはゼムリア大陸でもっとも価値のないウジ虫だっ! ウジ虫が警察官を名乗るなどもっての他だ! 最下層の生命体共め、よく聞け! 私の使命は役立たずを刈り取ることだ!」

「な、なんて下品な言葉を。フェリちゃん、意味わかってます?」

「しゃべるなと言ったはずだぞっ、勇気あるコメディアンめ! お前の大好きなみっしぃとやらをクレーンで吊り上げて未来永劫の笑いものにしてやろうか!」

「ひいいい!」

 ティオが全身を戦慄に震わせた。

 フェリはまったく意味をわかっていないが、ノートの通りにまくしたて続けた。

「ワジとか言ったな、緑髪! 貴様の好きなものを言え!」

「ロイドです」

 その即答に、フェリはマニュアル通りに「はっ」と鼻で笑った。

「それは素晴らしいな。ロイドは貴様のこと嫌いだけどなっ!」

「そんなこと……」

 飄々としたワジに、しっかりダメージが入っている。完璧に急所を貫いた暴言だ。

「返事はどうした、ウジ虫!」

「う、はい」

「ふざけるな、大声出せ! ワジ虫と呼ばれたいか!」

「はい!」

 みんなが言うことを聞く。誰が入れてくれたノートかわからないけど、これならいける気がする。

「警察官の肩書を捨てて、心ない兵器となれ! 道徳は貴様らからもっとも縁遠い言葉と知れ! 交通違反は一片の慈悲なくさらし上げろ! 食い逃げはその場で射殺だ! 落とし物は落としたやつが悪いと追い返せ! 道を聞いてきたご年配には煉獄への片道切符をくれてやれ! 貴様らは仮初の平和に祈りを捧げる死の司祭だ!」

了解(ウーラ)っ!』

 踵を合わせて敬礼する特務支援課。もう誰も逆らわない。このノートすごいかも。わたしもみんなの役に立たなくちゃ。

 フェリは屈託のない笑顔で、その一文を読み上げた。

「えへへっ、泣いたり笑ったりできなくしてやるっ」

 

 ●

 

「くそっ、最悪だ。最悪だぜ」

 よりにもよってだ。なんでオレがこの学校なんだよ。

 場所は七耀教会。しかも見覚えがあるから、イーディス旧市街のだ。

「アーロンー、アーロン先生ー」

 前掛けのエプロンを引っ張ってくるのは、《モンマルト》の看板娘であるポーレット――その娘のユメだった。桃色の髪をふわふわと揺らして、アーロンを見上げている。

 ユメだけではない。ワンピースのベレー帽の少女はシーナだし、いかにも生意気盛りの少年はハリーだ。いずれも旧市街の子供たちである。ここは彼らが通う日曜学校だ。

「おやつまだー?」

「ああ? そんなもん用意してねえよ」

『ええー!?』

 あちらこちらから苦情が殺到する。

「だー、うるせえ! 桃饅頭なら作ってやっから、そっちで遊んで待ってやがれ。……いや、ユメ。ちょっと来い」

「なにー?」

 アーロンは腰をかがめてユメの顔をじぃっと見つめる。

 囚われているのか? それともイメージの人間か? 幻影の存在だとして、その見分け方は?

 解放されたエリアに取り残された囚われの人間は、そいつにだけ霧がまとわりついているからすぐわかる。

 しかし解放前のエリアでは、そもそもエリア全体に――屋内であっても――薄い霧が常に漂っているから、個人単位での判別ができない。

 ユメたちはどっちだ。こんな子供まで際限なく取り込まれているとしたら、抱える人数がどんどん増えてしまうことになる。

「ちょうどいい機会だな。見分ける方法があるか、試してやるか」

 ユメのほっぺをつまんで、びぃーっと引っ張ってみる。

「ひたい、ひたいよ。アーロン~」

「やっぱわかんねー」

 

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 ●

 

「皆さんのクラス担任となりましたエレイン・オークレールです。宜しくお願いします」

 新任の教師としてはパーフェクトの佇まいだった。

 びしっとスーツを着こなし、シャープな眼鏡を光らせ、もはや一分の隙も無い。

 教壇に立つエレインの前には、四人の生徒がいる。

 ヤンキーど真ん中のスカーレット。

 お嬢様スタイルの改造制服のシャロン。

 超絶ギャルのクレア。

 リーゼント不良のトヴァル。

 見事に校則違反だ。複雑な家庭環境やら凄絶なイジメやら、これはもう間違いなく全員が全員、触れれば爆発する何かを確実に抱えている。

「まさか着任初日から学級崩壊しているなんて……」

 でも授業はすごく真面目に聞いてくれた。

 

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 ●

 

 驚くべきことに《ロア=ヘルヘイム》に時間が流れるようになった。

 学校には朝に行き、夕方には帰るという認識が俺たちの大多数に生まれたから――というのはカトルの見解だ。

 見せかけの太陽が空に浮かび、夜になると暗くなって、朝になると明るくなるというサイクルが、あるいはシステムが夢の世界に発生したのだ。

 カルバード組は教官として通勤し、リベール、クロスベル、エレボニア組は学生として通学する。

 教官と生徒としての関係を取りつつ、レンの望みに関する情報を集めようと各自動き回り、しかし手がかりは依然として得られない。そんな生活が一週間ほど続いたある日。

「アーロン先生、エプロン似合ってますねえ」

 ニヤつきながら、ヴァンがアーロンをいじる。

「似合ってたまるかよ! くそ、なんでオレがガキ共のお守りなんざしなきゃならねえ。今すぐに脱ぎ捨ててやりてえんだが、学内にいる間はどうやっても脱げねえんだよな、これ……」

 アーロンが椅子の背もたれを軋ませる。

 昼休憩の職員室で、ヴァンたち教師勢は顔をそろえていた。

「とりあえず各クラスの進捗報告と行くか。俺の受け持ちはトールズⅦ組連中だ。まあ、問題なし。授業中に寝たり、菓子食ったりするやつはいるが、そんな程度だな。強いて言うならレーグニッツってやつのメガネがよく割れるくらいか」

 加えるなら、そのマキアスとユーシスとの小競り合いが絶えないことだが、まあ可愛いものだろう。エリオットとエマは優等生で従順なものだった。

 次はアーロン。

「言った通り、オレは日曜学校のガキ共のお守りな。普通に読み書き教えたりしてる。あと気になるのはユメとかがいるんだが、“囚われ”なのか“幻影”なのか、よくわからねえ」

 そこも曖昧になっているところではある。《ロア=ヘルヘイム》に囚われる条件だ。なぜ俺たち(・・・)なのかは、未だに明らかになっていない。

 そこが判明していない以上、ユメが囚われている可能性は否定しきれない。

 次はリゼット。

「わたくしは聖アストライア女学院で、僭越ながら淑女の嗜みのレクチャーを。といっても教えることなどほぼありませんが。今日にようやくセドリーヌ様が本乗せ紅茶飲みをクリアされました」

 大きな進展なし。だがセドリーヌってそんなやついたか?

 次はフェリ。

「わたしは警察学校の担当です。皆さん規律を守って下さいますし、大丈夫です」

 ここは問題なさそうだ。

 次はカトル。

「教師って大変だね……。みんなが騒ぐせいで色々と授業が脱線するんだけど、その度にアッシュさんが修正してくれるから助かってるよ」

 あのはねっ返りがサポートとは意外だ。案外と面倒見はいいのかもしれない。

 次はエレイン。

「クラスのコンセプトはわからないけど、多分留年クラスなんじゃないかしら。見た目はともかく、すごく真面目よ。“囚われ”がいないから、協力的なのが当たり前といえば当たり前だけど」

 最後はアニエス。

「連日、命賭けでカブトムシと戦っています」

「オーケー、アニエス。もう一度言ってくれ」

「カブトムシです。とにかく倒しに倒して、ようやく一族の長っぽいカブトムシを引き出すことに成功しました。ただ軽くビルの三階くらいの大きさで、しかも二足歩行するアサルトフレームと化してまして、カブトムシの名残はもはや角くらいしかないんですけど」

「……逃げたら?」

「エステルさんが捕まえたいっていうので……」

 誰しもが『リベール組を受け持たなくて良かった』と内心で胸を撫でおろす。

 アニエスは報告を続けた。

「それとあと二つ気になることが。一つはレン先輩が1208年の姿をしていることです。《幻夢の手記》の⑧番によれば《ロア=ヘルヘイム》に囚われた人たちの姿と記憶は、クロスベル再事変の年代――つまり1207年に固定される、とのことでしたよね。ですが先輩はアラミスの制服を着て、私の知るレン先輩の姿のままです」

「ああ、それは俺も気になっていた。なぜかレンにはその項目が適用されていない。……もう一つは?」

「ジンさんが《Xipha》を持っていました。ご本人に聞いてみたんですが、『何かおかしいか?』くらいで流されてしまって……」

「ふむ、そいつは確かに妙だな」

 レン・ブライト。俺たちと同じ1208年の姿。

 ジン・ヴァセック。所有しているはずのない《Xipha》を持つ。

 しかし俺たちと違って、二人とも《ロア=ヘルヘイム》には囚われていた。

 このルールからの“ずれ”はなんだ。この並びでエレインが囚われていなかったことも、今思えば違和感ではある。《幻夢の手記》に明かされていない項目が関係しているのか、あるいは――

「失礼します!」

 勢いよく開けられた扉と、元気のいい声によって、ヴァンたちのミーティングは中断される。

 生徒会長であるユウナ・クロフォードがやってきた。

「教官方はおそろいですか? ブライト学院長がお呼びですよ」

 

 

 ユウナの先導で、教官一同は再び学院長室に向かう。

「いらっしゃい。生徒たちとの信頼関係は築けたかしら?」

 室内に入るなり、さっそくレンはそう言った。ヴァンはうなずいて、

「一週間もあれば、そこそこには」

「それは何より。じゃあ、新任教師の皆さんにお願い事があるの」

 来た。主格者の望みだ。ごくりと息をのみ、皆が身構える。

「学院祭! あたしのクラスが絶対一位になりますから! がんばりましょうね、カトル教官!」

「え、学院祭?」

 ユウナが担任教官であるカトルに言い、レンは肩をすくめた。

「もう。せっかちな生徒会長ね。やる気があるのはいいことだけれど。でもまあ、そういうことよ。あなた達には来たる学院祭で、このブライト総合学院を盛り上げて欲しいのよ」

「盛り上げるって、つまりどうすりゃいいんだ?」

「それをあなた達が考えるんじゃない」

「丸投げかよ……」

 しかしそれこそが願いだというのなら、叶える他ない。緊急会議だ。

「どうします? クラスごとに出し物してみますか?」

「なら屋台とか良いんじゃねーか。クラス対抗の方が盛り上がるだろ」

 アニエスの提案に、意外と乗り気なアーロンである。

「理科大は発表会はあるけど、そういうのはなかったな……」

 カトルはいまいちイメージがつかめないらしい。

 そしてフェリも文化祭がよくわからないようで、リゼットが説明してあげていた。

「……文化祭ね、文化祭。思い出すわ」

 エレインがもの言いたげな目をヴァンに向けてくる。天井に視線を逃がしながら、ヴァンは考える。

 クラス対抗というアーロンの案は良さそうだ。勝敗がつく方が熱が入る。

 何かないか。……そうだ。

 《幻夢の手記》の㉛番【その者が当たり前に所有しているという認識があれば、それは《ロア=ヘルヘイム》に実体として呼び出すことができる他、すでに《ロア=ヘルヘイム》内に存在しているものを手元に移動することもできる】――このルールを利用すれば、限定的だが必要なものは手に入る。カトルの協力もあれば、工夫次第でやってやれないことはないんじゃないのか?

「俺たちはカルバード人だ。この利点を活かさない手はねえ。共和国に住む人間なら、必ず誰しもが触れる娯楽があるだろ。熱中するし、絶対盛り上がる」

 そこまで言うと、全員が気づいたようだった。

 俺たちカルバードチームが教師として主導で催しを作るなら、これ以外には考えられない。

「東方文化の粋を見せてやろうぜ。《ロア=ヘルヘイム》映画祭の開幕だ!」

 

 

 ――つづく――

 

 




《話末コラム①》※青色は解放済み、赤色は囚われ中。

担任 :ヴァン教官
教科 :裏社会
クラス:トールズ士官学院(旧Ⅶ組)
学衣 :トールズ士官学院の赤制服
生徒 :リィン、クロウ、フィー、ラウラ、ミリアム、エマ、マキアス、ユーシス、エリオット

担任 :アニエス先生
教科 :国語(実際は虫捕りしかやってない)
クラス:ジェニス王立学園
学衣 :ジェニス王立学園の制服(個々にカスタマイズ)
生徒 :クローディア、ジン、アガット、シェラザード、オリヴァルト、エステル、ヨシュア

担任:フェリちゃん教官
教科 :体育
クラス:クロスベル警察学校
学衣 :ジャージ(ノエルだけ半そで短パンの体操服)
生徒 :ランディ、ティオ、ワジ、ロイド、エリィ、ノエル

担任 :アーロン先生
教科 :お絵描き、文字書き、お遊戯全般
クラス:イーディス8区、旧市街日曜学校
学衣 :なし
生徒 :ユメ、シーナ、ハリー(いずれも囚われかは不明)

担任 :リゼット先生
教科 :礼儀、テーブルマナー、ダンス、一般教養
クラス:聖アストライア女学院
学衣 :聖アストライア女学院の制服(セドリックはズボン仕様、デュバリィはミニスカセーラー)
生徒 :エリゼ、アルフィン、デュバリィ、セドリック

担任 :カトル教官
教科 :導力学(バーゼル理科大学レベル)
クラス:トールズ士官学院 第Ⅱ分校
学衣 :トールズ士官学院 第Ⅱ分校の制服
生徒 :アッシュ、アルティナ、ユウナ、ミュゼ、クルト

担任 :エレイン先生
教科 :道徳、倫理
クラス:留年候補生クラス
学衣 :校則違反でしかない改造制服
生徒 :トヴァル、スカーレット、シャロン、クレア



《話末コラム②》

 フェリのポケットに入っていた“猟兵の心得。新兵教育編”はクルガ戦士団に所属している指導役が所持していた手帳。
 その人の名はアーメリア・ハートウーマン(♀)恰幅の良い45歳。容赦ないシゴキと罵倒は、入団した新団員たちを骨の髄から震い上がらせた。
 先の大戦で夫と子を失っており、クルガ戦士団に入ったのもその出来事が関係している。団員に厳しくするのは愛情の裏返しであり、皆が戦地から生きて帰って欲しいと願う団の母親的存在。
 団員からは畏敬の念を込めて、サージェント・ハートウーマンやママ軍曹の愛称で呼ばれる。
 我が子を思い出すのか、フェリには常に優しく、ポケットには彼女にあげるためのお菓子を常備。なお、兄のカシムはしごかれた経験あり。
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