黎明の軌跡 Break the Nightmare   作:テッチー

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最終話 夢にて夢みて

善も悪も、生も死も超えたところを淡々と歩いてきた。

 

幸も不幸も無く、喜びも悲しみも無く、痛みと苦しみを感じる心もない。

 

白と黒の境界も、天と地の逆しまも、私には何一つ意味のないものになってしまった。

 

属さず、歩まず、どこから始まって、どこで終わるのだろう。世界はただ私を置いて回り続ける。

 

その時は夢だと思っていた。私の知る現世ではないのだと。

 

今になって思えば悪夢に違いなかった。

 

それはまだ、私の影に追いすがる。振り払ったつもりでも、穢れた泥は私の足首を掴んで離さない。

 

小さな私はうずくまる。悪夢に誘う死神の鎌に触れないように。

 

ずっと私は待っていた。いつか醒めない悪夢を祓ってくれる、その誰かを。

 

 

《――★最終話 夢にて夢みて★――》

 

 

「レン先輩!」

「下がれ、アニエス!」

 ヴァンはレンに駆け寄ろうとするアニエスを制した。

 《バルドルの箱》は自身から伸ばした光の帯をレンに絡みつかせている。一体化して彼女の思念を吸収しているのだろう。

 取りつかれたレンは、闇のドレスの上から光の羽衣をまとっているかのようだった。

 《バルドルの箱》がレンの影から何かを生み出した。

 重々しく這い()でたそれは、宙に浮かぶ黄金の歯車を核に黒霧を拡げ、見上げんばかりに巨大な人形兵器を形成する。

「なっ、こいつは!?」

「そ、れは……《パテル=マテル》よ」

 かろうじてレンは意識を保っていた。

「私の……過去の、象徴……。数少ない、大切な思い出。孤独な私の、唯一の寄る辺だった……」

 赤黒い装甲の《パテル=マテル=シャドウ》は、左右に大きく張り出たショルダーアーマーからレーザーを放った。

「ヴァンさん! 私の後ろに――うっ!?」

 高出力の熱線は、アニエスが張った障壁を容易く貫いた。攻撃は逸れたが、破砕痕が足元に深く刻まれる。

「チャージもなしにこれかよ。随分とふざけた威力じゃねえか」

「《パテル=マテル》は……かつて私が頼っていたもの。私を必ず守ってくれるって信じていたの。多分……依存していた」

「お前の認識で強化されてるんだな。お前が強く想えば想うほどに」

「……でもね、《パテル=マテル》はそんなんじゃない。そんなふうに触れるもの全てを拒絶するような禍々しさはない。お願い、ヴァンさん。“彼”を解放して。私、もう大丈夫だからって……そう伝えたい」

 レンは震える指先を前に伸ばした。

 ヴァンとアニエスの手のひらに、小さな光が灯る。

「あっ、《ゲネシス》!」

「俺の《Xipha》にもメアが戻ったみてえだな」

「先に言った通り、異質な力であるそれらを、《アンドヴァリの指輪》であなた達から奪っていたの。ごめんなさいね」

 だが今、その必要はなくなった。

 ヴァンは《Xipha》を、アニエスは《ゲネシス》を手にした。

 共鳴する光が波紋のように拡大し、世界の色が反転する。

 全てが制止した時の中で、幻光の妖精が自在に飛び回っていた。

「やっとお出ましか、メア公」

『だから公言うな! こっちは出たくても出られなかったんだからね!?』

 メアが腰に手を当て、プンプンと怒る。

「ヴァンさん、メアちゃんはこの状況を」

「そこだな。お前はどこまで理解してんだ?」

『どうせまた、厄介な場所で厄介なことに巻き込まれてるって感じでしょ』

「まあ、だいたい合ってますけど……」

「話が早くて助かるぜ。早いついでにもう一つ頼みたいんだが」

『了解してるわよ。さあ、アンタの意思を示しなさい』

 メアは二択を提示した。いつもの、聞き慣れたあの選択を。

 

『悪夢を纏う、纏わない?』

 

 ヴァンは拳を固めた。

 告げるべき言葉など、とうに決まっている。

 

「纏ってやる。さっさとやりやがれ」

 

 霊子装片の煌めきが渦を巻き、ヴァンの体を鎧のごとき鋼皮が覆っていく。青く、蒼く、(あおぐろ)く。

 魔装鬼(グレンデル)が、《ユグドラシル》に顕現した。

 己から発したものなのか、それとも別の何かなのか、それさえ判然としない叫びが黎明の樹を激震させる。

『アニエスはここにいろ』

 グレンデルと化したヴァンは、瞬時に《パテル=マテル》との間合いを侵略した。

『らあッ!』

 強烈なアッパーに続けて、遠心力を乗せた踵落としの連撃。《クイックブロウ》からの《ヘヴィスパイク》が、敵の装甲を一気に削る。

 ヴァンを睥睨する《パテル=マテル》が、鉄塊の拳を振り下ろした。

 凄まじい速さで迫る圧。避けるのは無理だ。相殺しかない。

 見、観、構、発勁。《劫吧崩拳》を頭上に放つ。

『うぐっ!?』

 衝突の衝撃に踵が床にめり込み、砕けた破片が視線の高さまで跳ね上がった。

 なんて馬鹿げた膂力だ。グレンデル形態でもこれほどのダメージを受けるのか。それほどまでにレンは、この《パテル=マテル》という存在を心の寄りどころにしていたのか。

 押し返そうとするヴァンを、《パテル=マテル》は両手でわしづかんだ。そのままメキメキと握りしめる。

『ぐああああっ!』

「ヴァンさん!」

 アニエスが《プレアデスレイ》を撃つ。だが分厚い装甲は攻撃を通さない。

 《パテル=マテル》はヴァンを力任せに投げ、アニエスの後ろの壁にまで叩きつけた。

 さらに無数の光弾が連射される。一発一発の威力は戦車砲より高い。

 射線上にはアニエスもいる。ヴァンは瓦礫から飛び出し、身を固くする彼女の前に立った。

 波動の咆哮。《ハウリングロア》が光弾を引き裂く。

 巻き上がる粉塵の向こう側で、《パテル=マテル》がショルダーアーマーを可変させ、二つの砲口をこちらに向けた。

 莫大なエネルギーが凝縮されていく。

『必ず打ち破る。信じて俺の後ろから動くなよ、アニエス』

「信じていますよ、最初から」

 ヴァンは両手を前に突き出した。青く輝く粒子が手の平に集まっていく。

 双方から放たれる極大の閃光。激突の中心で、赤と青の衝撃波が乱れ舞う。

 《パテル=マテル》の出力が増大した。《バスターキャノン》の威力が強まっていく。ヴァンの膝が折れかける。

 俺が押し負けたらアニエスも巻き添えになっちまう。させるか。絶対にさせねえ。足を踏みしめろ。

『おおおおっ!!』

 蒼光の奔流が荒れ狂う。

 相手のビーム光を気合で押し返し、ヴァンの《リミテッドブラスター》が《パテル=マテル》を呑み下した。

 胸部装甲を貫かれ、黄金の歯車を焼失させた《パテル=マテル》は、その巨体を瞬く間に霧散させていく。

「あっ、うぅ……!」

 《バルドルの箱》がレンから離れた。

 そこをアニエスが狙ったが、魔導杖から撃たれたレーザーを、箱は不規則な軌道で上へ、上へと避けていく。

 天井近くまで到達すると、《バルドルの箱》は不意に姿を消した。

『どこへ行きやがった……』

「《閉ざしの影檻(グレイプニル・シャドウ)》よ」

 憔悴のレンが、上を見上げていた。アニエスが駆け寄り、ふらつく体を支える。

「だ、大丈夫ですか、レン先輩!」

「私のことはいい。それよりも今言ったでしょ。《バルドルの箱》は上空に転移したわ」

『そいつは俺を排除するよりも、この世界を閉ざすのを優先したってことか?』

 箱に意識を集中して、レンはうなずいた。

「……そのようね。《閉ざしの影檻(グレイプニル・シャドウ)》ともリンクして、一気に檻の侵食を完了させるみたい。異物の排除じゃなくて、異物の隔離という手段を取るとは思わなかった。……私の詰めが甘かった。これじゃあもう……!」

『まだだ。――メア』

『なーによ?』

 ヴァンの呼びかけに再びメアが現れる。

『まだやれることがあんだろ?』

『やれること? アンタ、まさか』

『そうだ。もう一段階深く(・・)しろ』

『その意味、自分でわかって言ってんの?』

 メアはわずかな躊躇を見せた。

『ヴァン。アンタはあの力を何度も使ってきたわ。現実にはまだ(・・)使ってないけど、使ったという記憶と認識があるの。さっきのグレンデル化だって、すでにかなりの回数を重ねたものになってる。そうよね』

『記憶の拡張によってもたらされた経験の累積か。確かにその通りだが、腹はくくってる』

『……本当にいいの?』

『くどいぜ』

『なら、訊くわ』

 意味がわからないアニエスは、会話のたどり着く先を訝しんでいる。

 メアから静かな問いかけが響いた。

 

『夢から醒める、醒めない?』

 

 きっと俺は五年前のあの日、レンの手を引いただけで、その心には何も……何もできていなかったんだろう。

 今度こそ、お前の願いを叶えてやる。悪い夢は全部、全部終わらせてやる。

 

『ああ、醒めるぜ』

 

 ドクン、ドクンと脈打つ鼓動。己の内側から染み出すような“声”が重なり合う。

 

 By the Lead of Fragile Chain,I'm Existing Here――(か細き“鎖”を導に今ここに現界せん)

 

 I am Nightmare,I am Grendel Biting Myself,Go Break the Nightmare……!!(我は悪夢にして、また悪夢を喰い破る獣なり)

 

 人と魔の境界を曖昧にする“何か”が遠い地平で雄叫びを上げ、俺の魂へと確かに近づいてくる。

 ふざけんな。手綱はまだ俺の手の内だ。黙って力だけよこしやがれ……!

「ヴァンさん、待って! それはやめて下さい!」

 アニエスが俺に手を伸ばす。人ならざる息吹を彼女も肌で感じたらしい。

 だが変容はすでに始まっていた。

 (あおぐろ)く、から、(あおぐろ)く。

 全身の鋼皮は暗く染まり、鬼面の後ろに流れる長髪は、それまでの翡翠色ではなく黄金色に輝いた。

 

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「その姿は……」

『大丈夫だ、アニエス。お前はレンを支えていてくれ』

 そう、大丈夫。俺はまだ、俺のまま力を振るう。

 上方を見据えるヴァンは、腕を高く掲げた。

 シャードの輝きを巻き上げながら、白光の柱が立ち昇る。それは《ユグドラシル》の天井を穿ち、霧の空を貫き、《ロア=ヘルヘイム》の天頂へと至り、瞬く間に長大な剣を成した。

『叶えるぜ、お前の願いを』

「ありがとう」

 レンのまっすぐな視線を受け止める。

 やっぱり俺にはまっとうなやり方なんてできねえ。どこまで行っても裏解決屋(スプリガン)なんだよ。いつだって正道を歩くバニングスやシュバルツァーとは違う。

 俺には白でも黒でもなく、毒をもって毒を制するやり方しかできねえんだ。

 霧の狭間に迷い込み、灰色の世界に囚われた仔猫を救い出す。そのためなら――

『洸天……反照――っ!!』

 悪夢をまとって悪夢を壊す。それが俺の流儀だ。

 

 ●

 

 彼方の光景。天上から振り下ろされた一刀と共に、空の霧が両断されるのを見た。

「フィー!」

 サラの呼び声で、正面に視線が戻る。レグラムのど真ん中、ルトガーがバスターブレードを担いで突進してきていた。

 私の体躯で受けるのは自殺行為。だけど反応が遅れたせいで、初動も一瞬遅くなった。回避が間に合わない。

 サラが叫ぶ。

「さっき伝えたあれをやりなさい!」

「い、いや」

「死ぬわよ! やるのよ!」

「うっ、うう」

 迫り来るルトガー。

「お、お父さん、もうやめて!」

『今更泣き落としか!? らしくねえなァ!』

「ちがーう! それじゃないでしょ!」

 ルトガーは止まらず、サラからのリテイクが入る。

 効くの? 本当に? これで効果がなかったらサラを一生恨むよ。

「パパっ! これ以上フィーをいじめたら泣いちゃうんだから! ふぇえぇ」

『ぐぁッ……!』

 ずしゃあーっと足を滑らせたルトガーは、斬撃の軌道を逸らす。切先を地につけて、そのまま膝をついた。

「うそ、効いた?」

「ほら見なさい! ほーら見なさい! サラ・バレスタイン直伝“パパの活動を制止する娘の一撃”、略して――」

『いやいや、それじゃねえよ』

 剣を支えに立ち上がったルトガーは、しかしあっさりと柄を手放した。

「どういうこと?」

『霧の縛りが解けたらしいぜ。あー……上手く言えねえんだが“霧を晴らすものを倒せ”って役割が絶対じゃなくなったって感じだ』

「もう戦わなくていい?」

『おう』

 霧の縛りが解けた。それは《バルドルの箱》がミストマータに課していた制約がなくなったという意味だ。

 ならさっき空を裂いた光の剣は、きっと。

 見れば聖女像前で繰り広げられていたラウラとヴィクターの戦いも終わっていた。ラウラは勝ち切れなかったようだが。

「あれ? でもあっちはまだ戦ってるけど」

 教会の屋根の上で、エマとガイラーは未だ一進一退の攻防の最中だった。

『ああ、単に制約が消えただけだからよ。そりゃ自分の意思で戦い続けるヤツはいるだろうさ』

「なんでそんなに用務員さんの戦闘意欲が高いんだろ……」

『まあでも、直に終わる』

「え? あ……」

 ルトガーの体が黒い霧となって散っていく。

『俺たちをこの形に留めておける“何か”が力を失った。親が消えたら、子も消えるってこった』

「そっか。でもその理屈は違うかな」

 フィーはルトガーに抱きついた。

「お父さんがいなくなっても、残るものはあるよ」

『はっは、違いねえ』

 ルトガーはフィーを抱きしめた。

『健やかにな。俺はそれが一番嬉しい』

「うん」

『いくつか伝言を頼む。サラの嬢ちゃんには改めて礼を。フィーからも言っとけよ』

「気が向いたらね」

『ゼノとレオニダスには、フィーにつく悪い虫は殲滅するようにと』

「やだ」

『各地に散った団員たちに会うことがあれば、壮健でいろと』

「わかった」

 アイーダのことが頭によぎる。言うべきか? いや、言わなくていい。

 ルトガーの体が薄れていく。

「他には? 言い残すことはない?」

『そうだなあ……』

 消えかかった手の平が、強く頭を撫でる。

『パパ呼びも案外悪くなかったが、やっぱそっちじゃねえ』

「ん、私も同感。じゃあね、お父さん」

 

 ●

 

 トンファー同士が激しく衝突し合う。

 霧の縛りはもうない。それでもロイドとガイは、クロスベル市街を舞台に一騎打ちを続けていた。

『クロスベルはでっけえぞ! お前に守れんのか!?』

「守ってきたんだ、これまでも! これからだって!」

 仲間たちも、アリオスでさえも二人の間には割って入らなかった。

 ガイの体が少しずつ散り、黒い霧に戻りつつある。この時間が終わってしまう。

 俺はまだ、兄貴にぶつかっていたい……。

『お前の全部を乗っけて来い。受け止めてやるから』

「わかったみたいに言ってさ」

『わかってるんだよ、お前のことは』

 互いに距離を取る。双方が地を蹴る。目一杯にトンファーを引き絞り、最大の技を繰り出した。

 猛虎と獅子が吼える。

 膠着し、せめぎ合い、そしてロイドの一撃が通った。

 ガイのトンファーを砕き、黄金の歯車を破壊する寸前、しかしロイドは止まった。

 できないよ、兄ちゃん。偽物だってわかっていても、俺には。

「下がって、ロイド!」

 エリィが叫ぶ。

 間髪入れずにガイの手が伸びてきて、ロイドの頭をわしづかみ――わしゃわしゃとくせ毛を撫で回した。

『前言撤回。お前のこと、わかったつもりになってたみたいだ。強くなったなぁ』

「は、はあ!? やめてくれよ! もう子供じゃないんだ!」

 言いながらも、ロイドはその手を振り払うことはしなかった。

『クロスベルを守ってくれてありがとうな。特務支援課の面々もロイドをよろしく頼む。これで手のかかるやつだから、末長く支えてやってくれ』

『はい! お兄さん!』

 元気よく返事したのはエリィとランディだった。なぜか二人はにらみ合っている。

『ティオも元気でやれよ。みっしぃマスコット、大事にしてくれてて嬉しかったぜ』

「これは家宝にします。子孫代々受け継いで、御神体としてバニングス家に祀っていきますから」

『そ、そんなにか。うん……? バニングス家?』

 むふーと笑みを浮かべるティオに、エリィとランディが詰め寄る。

「ティオちゃん、今のどういう意味!?」

「聞き逃せねえぞ、ティオすけ!」

「私もそろそろ参戦しておくべきかと思いまして」

 ぎゃいぎゃい揉める三人。その間にもアリオスとガイの霧が散っていく。

『ははは、個性的なメンバーだな。ま、慕われてるようで何よりだ』

「ああ、いつだって頼りになる最高の仲間さ」

『さてと、そろそろか。何か……そうだな』

「言ってくれ、兄貴」

『セシルには、俺のことは踏ん切りをつけて早く前を向くようにと。セルゲイのおっさんには……まあ特にないな。それだけでいい』

「俺には?」

『今さらねえよ。お前は俺を超えちまった』

「俺はそう思ってないよ」

『じゃあ思える時が来たら思えばいい』

 ガイの手が頭から離れる。この感触を俺は忘れない。

『行こうぜ、アリオス。お前ももういいだろ』

『ああ』

『そういやさ。あの時の飲みに行くって約束、まだ果たしてなかったよな』

『……そうだったな。ずいぶん遅くなってしまったが……行くか?』

『へへっ、おうよ!』

 にっかりと笑ったガイは、アリオスと肩を組んだ。

 ロイドたちに背を向けて歩き出すと、彼らはクロスベルの景色に溶け込むようにして消えていった。

 

 ●

 

 《ゴライアス》の猛攻で、とうとうダブルセイバーが砕かれた。嘘だろ、ゼムリアストーン製だぞ。

『それで終いかよ、クロウ!』

「んなわけねーだろーが!」

 ヘイムダルの建物群の間で続く、クロウとヴァルカンの激闘。

 《ゴライアス》が残弾を全て撃ち尽くしてきた。おびただしい量の火線にさらされ、素手のオルディーネに防ぐ手段はなかった。

 連鎖する爆発。広範囲の家屋が大量に吹っ飛ぶ。

 爆炎と瓦礫を突き破って、クロウは特攻した。

 近接距離に踏み込み、オルディーネが《ゴライアス》の顔面を殴りつける。

「うおおおお!」

 殴打、蹴足、頭突きの応酬。泥臭い戦いだった。

 がっと両の手を組み合う。相手から圧をかけられ、ぎりぎりとオルディーネの肘関節に異音が軋んだ。

『このまま押し潰してやらあ!』

「はっ……!」

 やっぱお前は強いな。そんな俺の想いが、お前をより大きな壁として作っちまったのかな。

 けどな、あれから何年経ったと思ってる。思い出のお前に負けちまうほど、柔に生きてきたわけじゃねえよ。

「そうだろ、オルディーネ!」

『ぶつけてやれ、クロウの全てを!』

 胸部、肩部、脚部の装甲がスライドして拡張し、露わになった内部フレームに蒼い紋様が輝く。

 霊力(マナ)を瞬間解放することによる、蒼の騎神だけが有するブーストシステムだ。

 跳ね上がる膂力が組み合う《ゴライアス》の指を握り潰し、腕さえも圧砕した。

 まだだ。もう一撃。

 ぼろぼろになった拳を振り上げた時、がくんと急に《ゴライアス》が脱力した。

『ああ、くそ、時間切れか』

 ヴァルカンの悪態が聞こえた。

 出力を上げ過ぎてオーバーロードしたのか。いや、そうか。お前の最期はそうだった。それは俺の記憶の一番深くに刻まれた出来事。

『霧が払われちまったか。俺もお役御免ってことだな。ま……もう一度話せて良かったぜ。あばよ』

「何言ってんだ。俺はまだ、お前の顔も見てねえんだよ!」

 ゴライアスのコックピットハッチを、オルディーネが力づくで剥がし取る。

 核から降りたクロウは、オルディーネの腕を伝って《ゴライアス》の操縦席にまでたどり着いた。

「よう、相変わらずの強面(こわもて)だな」

『うるせえ』

 不機嫌そうな表情で、しかし挑発的な笑みを浮かべた彼は、自分の記憶にあるヴァルカンそのものだった。

『気が済んだなら、とっとと行っちまえよ。《ゴライアス》は爆発するぜ』

「やり残したことをやってからな」

『あ? お、おい!?』

 クロウはヴァルカンの腕を引いて、コックピットから引きずり出した。

 あの日、あの時、お前にやってやれなかったことだ。

『馬鹿か。俺の体はもう消えちまうんだ。意味ねえよ』

「消えるにしても、その操縦席の中では消えるな。《ゴライアス》の爆発では逝くな」

 これは俺のエゴなんだろう。今さら何かが変わるわけでもない。それでも。

『……そういやよ。戦う前に、俺に聞きたいことがあるとか言ってなかったか?』

「ああ……まあ、なんつーか、その……」

『早く言え。時間がねえってわかってんだろ』

「……たとえば俺が教官になるって言ったら、どう思う?」

『クロウが? 教官? トールズとかのか?』

「だー! やっぱ今のなし! ガラじゃねえっつか!」

『いいんじゃねえか。やれよ。教官』

 あっさりと、当然のようにヴァルカンは言った。

「は? いやいや、他人事だと思って適当なことを――」

『お前はこっちじゃねえ』

 胸にヴァルカンの拳が押し当てられる。

『そう言っておいたはずだぜ。そっち側の日の当たる世界にいろよ。何年かけてでもいいから戻れ』

「けどよ……」

『ギデオンもスカーレットも、生きてたらきっとそう言う』

「つかスカーレットは生きてるけどな。俺の思念が混じってるなら知ってるだろうが」

『はは、皇族の騎士様だってか? 人生ってのはわからんもんだぜ』

 ヴァルカンの体が黒い霧に変わっていく。

『これで本当にお別れだ。ま、どう転んでもいい。楽しくやれや。それが一番お前らしいと俺は思う』

「……ありがとよ」

 互いの手を叩き合わせる。それを最後にヴァルカンの姿は消えた。

 

 ●

 

 学校エリアのグラウンドに炎が吹き荒ぶ。

『ずいぶんと体が軽くなってやがる。これなら好きな相手と好きなように戦える! なあヨシュア!』

「戦闘狂は厄介極まりないな……!」

 ヨシュアは双剣でマクバーンを牽制する。彼とは結社時代からの顔見知りだ。

 霧の縛りは解けているが、マクバーンもオーレリアも戦闘を止めない。

 元来が交戦的な二人だ。霧を晴らす者が第一優先ではなくなり、“眼前にいる強者と戦う”に移行したのだろう。いずれにしても結果は同じだ。

 ユウナたちもオーレリア相手に奮戦している。荒れ果てたグラウンドは見る影もない。

 詳細不明ではあるものの、どうやらヴァンたちが目的を達成したようだ。

 転移で“夢の綻び”に帰還したいが、万が一ついてこられたらお終いだ。倒せないまでも、引き離しておかなくてはならない。

 誰が? どうやって?

「ヨシュア!」

 エステルの警戒の声。

 魔剣《アングバール》を振りかぶって、火炎を放つマクバーンが迫ってきた。

「くそっ、皮膚が焼けやがる……っ」

 アッシュがマクバーンに鎖を巻き付けた。しかし動きを止めることはできず、熱波の中で鎖が溶け落ちる。

 身を低くして、ヨシュアは回避を続けた。あんな相手とまともにやり合うのは馬鹿げている。どうにか不意打ちを当てれれば。

 エステルとアッシュが巧みに立ち回り、ヨシュアをマクバーンの死角に誘導した。

 二人ともさすがだ。この位置、このタイミングなら――

「っ!?」

 動揺が刃を止めた。

 背後、気配、これは。

「レーヴェ……!」

 レオンハルトのミストマータがヨシュアの後方に出現していた。まずい、ここで敵に加勢が入るなんて。

「馬鹿! 気を逸らすんじゃねえ!」

 アッシュの怒声で我に帰る。

 レーヴェに向けた意識と一瞬の目線。そのわずかな間にマクバーンはヨシュアに狙いを定めていた。

『つまんねぇ幕引きだな、オイ』

「やめろ!」

「アッシュ!?」

 武器を手放したアッシュが、ヨシュアをかばって前に飛び込んだ。

 刃筋を立てた灼熱の一閃。致命的な間合いだ。二人ごと両断する威力の斬撃が走った。

 しかし《アングバール》はヨシュアとアッシュの眼前で止まっていた。

 彼らの視界に銀色の髪が揺れる。

「え……」

「……あ」

 マクバーンの一撃を防いだのは、対となる魔剣《ケルンバイター》を携えたレーヴェだった。

『怪我はないか。ヨシュア、ヨハン』

 呆ける二人に彼は言う。

 戸惑い、疑い、だがすぐにヨシュアは思考を切り替えた。そういうことだったのかと理解した。

「エステルは分校チームに加勢して、オーレリア戦の突破口を開いてくれ。隙を見て“夢の綻び”への転移を。僕とアッシュとレーヴェでマクバーンを叩く」

「え、でも」

「大丈夫だから。ミストマータの黒霧は散り始めてる」

「……うん、わかった」

 レーヴェを横目に見ながら、エステルはユウナたちの元へ向かった。

「僕たちに協力してくれるんだろう、レーヴェ」

『ああ』

「どういうこった、コイツは。ミストマータの優先事項が解除されたってことなのかよ……?」

 アッシュは困惑している。

 霧の縛りが解けたのはそうだろう。シェラザードからの全体報告で、個体差はあれどミストマータの行動に大きな変化が現れているという。

 だがレーヴェに関しては、きっとそれだけじゃない。

 ノルドの氷の洞窟で、彼は攻撃をしてこなかった。

「そうさ、レーヴェは最後には必ず僕たちを守ってくれる。成長を導こうとしてくれる。絶対にだ」

 誰よりも強いその想いを、僕は抱いている。

 それはミストマータに課せられた役目よりも、遥かに強い気持ちだ。

 おそらく僕の記憶をベースに生成されたレーヴェは、その思念が色濃く影響しているのだろう。

 だからあの時、剣を手に攻撃の意思はありつつも、強力な自制がかかって僕たちに手を出せなかった。

 時折見せていたミストマータたちが抱える小さな矛盾は、思念の抽出元である自分たちの深い想いが原因だったのだ。

『レーヴェの阿保じゃねえか……! てめえとまたやり合えるなんざ最高だぜ!』

 哄笑を上げるマクバーンの炎が増大した。

 ヨシュアとアッシュとレーヴェの三人が――かつてのハーメルの遺児が肩を並べて応戦する。

 マクバーンを押し返しながら、レーヴェは言った。

『ヨハン。あの時、気づいてやれなくてすまなかった』

「ヨハン、ヨハンと……俺はアッシュだ! ラクウェルのアッシュ・カーバイドだ! 謝られることも、憐れまれることも何一つねえ!」

『……そうか、アッシュ。大きくなったんだな』

「まっとうな人生とは言えなかったかもしれねえが、おかげで出会えた連中もいるんでな」

『生きていて、楽しいか?』

「ああ。……ヨシュア兄ちゃんだっている。だから心配すんなよ、レーヴェ兄ちゃん」

『それが最後の心残りだった』

 強く踏み込んだレーヴェの斬り払いが、マクバーンを吹っ飛ばした。

『行け!』

 敵を引き離し、彼は叫んだ。離脱の隙を作ってくれたのだ。

 ヨシュアは声を詰まらせる。

 僕は一体何回、レーヴェにお別れを言わないといけないんだろう。さよならは、もう言わない。

 ヨシュアとアッシュは高々と腕をかかげる。それが自分たちの返答だった。

 レーヴェが笑った気がした。

 

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 ●

 

「……私は勝てませんでしたね」

 砕けたドライケルス像に背中を預けるルーファスは、自嘲気味にそう言った。

 真っ向勝負も、搦め手も、全てを出し尽くした。

 しかしオズボーンには届かなかった。遠い、この人は、どこまでも。

「ですが、チームとしてはどうやら私たちの勝ちのようだ」

 折れた剣を空に向ける。

 《ロア=ヘルヘイム》を覆っていた“黒き檻”が崩れ落ちていた。

 オズボーンは低い笑い声を漏らした。

『チームの勝利か。お前がそのような言葉を口にするとはな。レクターたちにも言ったことはあるまい』

「驚いていますよ、誰よりもこの私が。もしかしたら、ご子息らに変えられたのかもしれない」

『だとしても変化を受け入れたのはお前自身だろう』

「その変化が良いことだったのか、そうでなかったのか、私にはいまだにわからないのです」

『それはお前が決めることだ。この先も続くお前自身の人生の中で』

 オズボーンの体が黒い霧となり、少しずつ崩れていく。

 勝負は決した。今頃は他のエリアを守っていた者たちも、順に戦いを終えているのだろう。だが……

『残念か。私に勝てなかったことが』

「半分くらいは」

『半分?』

「あなたはずっと目標だった。これからも目標であり続けて欲しい。私が勝てば、それが終わってしまう」

『その執着こそを“囚われ”というのだ』

「そうかもしれませんね。けれど……」

 あなたを追いかけている内は、あなたとの関係が切れずにいられる。そう思う未練がましい自分がいる。

 血縁もなく、ただ父と呼び慕うだけの私には、あなたとの繋がりを証明できるものが何もない。

『リィンを頼む。魂の込もらぬ私が言うのは筋違いではあろうが』

「私などに頼られずとも、ご子息はこの先のいかなる壁をも乗り越えていくでしょう」

 私はリィン君が……羨ましい……のかもしれない。

 およそ私が持ち得ないものを持ち、何度打ちのめされても立ち上がり、まっすぐに歩んでいける彼が。

「最後に一つだけ教えて頂きたい。あなたにとって私はなんだったのですか?」

 聞かずにはいられなかった。たとえ自分の望む答えが返って来なくとも――

『誇りだ。もう一人の息子よ』

 指先が、震えた。

「……はは、自分で問うて虚しくなる。どうせ私の心がそう望んだから、霧人形がその思念を代弁しただけなのに」

『もう歯車は止まっている。お前の思いは私を形成しない。これは私の想いだ』

「またそんな。私が落胆しないように……そんなことを。あなたは、優しいから……」

 まったく理路整然としない。感情がごちゃまぜだった。

 胸に込み上げた熱いものが結露して、頬の上を流れていく。記憶にある限り、きっと初めてのそれは、頬を伝って足元に落ちた。

『早く“夢の綻び”に行くがいい。生きる世界を見つけたのなら、そこで生きていけ』

「あとほんの少しだけ、ここにいる許可を頂きたい。せめてあなたを見送るまで」

 

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 ●

 

 朽ち始めた《閉ざしの影檻(グレイプニル・シャドウ)》の残骸が、バラバラとヴァリマールの傍らを落下していく。

「ヴァンがやったのか……!?」

 上空2000アージュ。リィンはモニターに視線を走らせた。《ユグドラシル》を中心に霧が晴れつつある。

「アリサ、スカーレットさん! 〝夢の綻び”に帰還した方が良さそうだ! 戦線を離脱するぞ!」

『そうは言ってもね!』

 アリサの応答が地響きのような叫びにかき消された。

 《ニーズヘッグ》とは交戦中だ。

 《レイゼル雷閃式》も《ケストレル・レギンレイヴ》も、せっかく乗り移った背中から振り払われてしまっていた。

 できればこの場から離れたいが、執拗に狙ってくるからそれも容易ではない。

 その巨体が胸を張り出し、大きくのけ反った。

「ブレスだ! 警戒しろ!」

『ちょっと! 私はどうすればいいのよ!?』

 《レイゼル雷閃式》に単独飛行能力はない。《ケストレル・レギンレイヴ》の重力操作で、機体を浮かせてもらっている状態だ。

『全開で行くわ。あなたたちは最大の攻撃準備を』

 スカーレットが応じた直後、《ケストレル・レギンレイヴ》の胸部のコアが強い光を灯す。

 《ニーズヘッグ》がドラゴンブレスを放ってきた。

『ハウリング・グラビトン』

 《ケストレル・レギンレイヴ》から広範囲の超圧縮重力波が展開され、あらゆる物理現象を高密度に捻じ曲げていく。それは竜の息吹も例外ではなかった。

 大気の振動による空間伝達さえ遮断され、強制的に威力を減衰させられたドラゴンブレスはやがて消滅した。

『エネルギーを使い切ったわ! あとよろしく!』

『十分よ! ――フルストームモード雷閃』

 最後にスカーレットが作った“無重力の道”を通って、アリサは空を駆けた。

 ヴァルキリーブーストを連続で発動させて、稲妻の尾をたなびかせる《レイゼル雷閃式》が突撃する。

 リアクティブブラスター可変。同時に《ニーズヘッグ》の背に到達。

『出力120パーセント、サンダーネイル!』

 炸裂する雷神の大爪。

 天を引き裂くがごとき雷鳴の中で、霊力の輝きを乱舞させるヴァリマールが疾駆する。残像を置き去りにするほどの速度だった。

「決めるぞ、ヴァリマール!」

『行け、リィン!』

 《レイゼル雷閃式》が与えたダメージ箇所を寸分違わず捉え、

『終ノ太刀――暁!』

 重なる意思。蒼天に閃く刃。灰の騎神から繰り出される比類なき一刀。

 ついに鋼皮の奥に届いた。《ニーズヘッグ》は大きく失速し、巨躯をぐらつかせる。

 しかしまだ健在。まったく馬鹿げた生命力だ。だが今なら、

「今のうちに離脱する。二人は先に行ってくれ」

『了解、また元の世界でね。待ってるから』

『あー、サラの愚痴の続きを聞くことになるのね……』

 彼女らはよくわからないことを口走っていた。

 幾許か後退すると、二人は機体を放棄して、“夢の綻び”に転移したようだった。

 俺も行かないといけない。

「お別れだ、ヴァリマール」

『そうか。そなたに会えて良かった』

「またいつか、どこかで」

『応』

 

 ●

 

 操舵手がいなくなった《カレイジャス》はコントロールを失い、墜落軌道に入っている。

 その傾く飛行甲板の先端にエリゼが立っていた。

 《閉ざしの影檻(グレイプニル・シャドウ)》が砕け、エリア防衛班がアークライド事務所に帰還してくる中で、彼女は一人ここに転移してきていた。

「来なさい、テスタ=ロッサ」

 しなやかに手をかざし、その名を呼ぶ。

 エリゼの背後に燃え立つような赤い光が爆ぜ、緋の騎神が顕現した。

『久しぶりだな、エリゼ』

「……どうも」

 ぎこちない再会。エリゼは目を合わせようともせずに、《テスタ=ロッサ》の核に乗り移った。

 起動者を受け入れた核が脈動し、正面モニターに外界の光景を映し出す。

 《ユグドラシル》と、依然としてあの塔を守ろうとする《ニーズヘッグ》だ。

 すでにヴァリマールたちもいないのに、幻夢の黒竜は暴れ回っている。

 たとえどうあっても探し出して滅するつもりなのだろう、《ロア=ヘルヘイム》の害敵たる私たちを。

「《ニーズヘッグ》を倒します」

『それがエリゼの望みなら、そうしよう』

 ミストマータはもう夢の綻びには入れないようだが、《ニーズヘッグ》だけは別だ。

 あの質量で飛んでこられたら、入る入れないの話ではない。アークライド事務所エリアそのものが壊滅してしまう。

 墜としておかなくてはならない、あの黒竜だけは、確実に。

「ですが私の力だけでは到底足りません。あなたの力を足してもです」

『言いたいことはわかっている。そなたの意のままにするがいい』

 小さな声でエリゼはつぶやいた。

「……私はあなたのことが嫌いでした」

『私は、私のせいでエリゼを苦しめたことを悔いている。今さら詫びようもない。だが私は、私の起動者がエリゼで良かったと思っている』

「そうですか」

 気になっていた。たとえばヴァリマールは本当の召喚なのか、兄様による単なる再現なのか。

 今のテスタ=ロッサの言葉は、自分の中にまったくない台詞、想い、思念。

 であれば私の認識による再現ではない。そういうことなのだろう。

「でも私、最後のほうは……あなたのこと、そんなに嫌いじゃありませんでしたよ」

『それはもっとも有益な情報だ。感謝する』

「こちらこそ。では――」

 エリゼはしなやかに手をかざした。

「みんなを守るために、竜の呪いを今一度」

 

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 胸の奥に生じた疼きが、重く、深く、暗く、指先にまで広がっていく。

「うっ、ああああっ!」

 邪悪な猛毒が体内を巡る。爪で裂かれ、牙を突き立てられるような鋭い痛みが全身を蝕んだ。

 自らのものであるという認識なら、物でも現象でも呼び出せる。だからベルガルドさんは聖痕を、兄様は鬼の力を発動させることができた。

 私のこれ(・・)は忌むべきもの。自らのものなどと思ったことは一度たりともない。

 だけど一年もの間、己の魂に融合していた力。認めたくなくとも、もはや私とは切っても切り離せない。

『オオオオッ!!』

 テスタ=ロッサも雄叫びを上げていた。

 足元から火炎が揺らめき昇り、その姿が異形のものに組み変わっていく。

 熱を帯びた装甲は赤黒く変色し、足には太い鍵爪が伸びる。束ねた長髪にも似た白い放熱索がたなびくと、その背に一対の翼が広がった。羽先が幾重にも分かれた、禍々しく凶々しいドラゴンの両翼。

 《カレイジャス》の甲板から飛び立ち、《エンド・オブ・ヴァーミリオン》が再臨の咆哮を轟かせた。

「はあっ、はあ……やれた……!」

 エリゼの紺の髪は白銀に染まり、頬には漆黒の紋様が浮かび上がっている。

 暗黒竜《ゾロ=アグルーガ》の呪いの再現だ。

 《ニーズヘッグ》がこちらに気づいた。怒りの気を放ちながら、凄まじい勢いで迫ってくる。

『エ、リゼ。自我を保っていられる時間は、そう長くない……』

「わかっています。相手はパンタグリュエルに匹敵する巨体。3000度にも耐え得る強靭な皮膚。それじゃあ、まあ――」

 エリゼは《ニーズヘッグ》を見やった。

「10000度から行ってみましょうか」

 直径300アージュにも達する業火の柱が渦を巻いて屹立し、《ニーズヘッグ》を丸ごと呑み尽くす。

「兄様たちが体中につけた傷。致命傷ではなさそうですが、裂かれた皮膚でこの魔炎にどれほど耐えられるものでしょうか」

 さらに勢いを増す火焔の巨柱。煌々と爆ぜる熱波が、一帯の空を血のような赤に染めた。

 やがて炎の残滓の中で、黒焦げの消し炭と化した《ニーズヘッグ》が、直下のフヴェルゲルミル湖へと落ちていく。その落下を待たず、エリゼは生成した《エンド・オブ・ヴァーミリオン》の無数の武器で滅多刺しにした。

「黒竜としてどちらが格上かわかって頂けましたか? ふふ……あはははっ!」

 紅き終焉の魔王から、エリゼの無邪気な笑い声が響く。

 ああ、ダメだ。破壊衝動に身を任せるのが楽しくてたまらない。

 あの時と同じ。精神が闇に侵食されていく。私の心が違う何かに置き換わってしまう。早く再現の呪いを解いて戻らなくては。

「あ、そうだわ。その前にトヴァルさんのところに行かなくちゃ。緋の魔王に追いかけられたら、どんな反応をするか楽しみ……」

 どこにいるのかしら、私の大好きなトヴァルさんは。

 

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 ●

 

 グレンデル化が解けていく。

「ぐっ、《バルドルの箱》は……!?」

 力を使い果たしたヴァンは、片膝を突きながら顔を上げた。

 それはレンの手の中に戻っていた。銀色の盤面には深い亀裂が刻まれている。

「大丈夫よ。この傷から《バルドルの箱》が長年溜め込んできた思念が漏れ落ちている。もうミストマータを繋ぎ止める力もない。終わりよ、全て」

「全て、か」

「ええ。これでゼノさんとレオニダスさん、そしてジョルジュさんを囚えておく必要もなくなった。カルバードチームのみんなにも来てもらいましょう」

 ヴァンの傍らにフェリ、アーロン、リゼット、カトル、ジュディス、ベルガルドの六名が現れた。レンが転移で呼び寄せたらしい。

「む……景色が変わった?」

「あ、ヴァンさんにアニエスさん! それに……あれ、レンさん?」

 警戒するベルガルドの脇を抜けてきたフェリが、レンに気づいて足を止めた。

「あー、説明すると長くなっちまうんだが……」

「説明なんて必要ないわよ」

 レンがパチンと指を鳴らすと、アーロンたちに記憶の拡張が起きた。

 彼らは激しい頭痛にうめき、うずくまる。

「……なるほど、理解しました」

 最初に口を開いたのはリゼットだ。他の面々もふらつきながら立ち上がる。

「どう? ヴァンさんとアニエスが知ったことは、ここにいる皆も知ったわ」

「便利だな。その頭痛さえなければだが」

「こればかりは仕様だからね。さて、外の様子も見ておかないと」

 レンは“窓”を開いた。破鏡の力も弱まっているのか、映像はやや不安定だった。

 アークライド事務所エリアが映し出される。“夢の綻び”は健在だ。エレインたちが守り抜いてくれたのだ。

 そこに続々とエリア防衛班が帰還してくる。

 リベールチーム、クロスベルチーム、エレボニアチームのほとんどがそろった。

 遅れてルーファスが戻ってきた。次にリィンだ。トヴァルも帰ってきたが、死に物狂いの表情だった。それほどまでに激戦だったのだろうか。

「うん……これで全員ね。じゃあ開示しようかしら。ヴァンさん、《幻夢の手記》を出して」

 レンの一言で手記が輝き、文章が浮かび上がる。

 

㊸【《バルドルの箱》が失われた場合、《ロア=ヘルヘイム》も消滅する。そこに囚われていた全ての人間は夢から解放され、現実世界における各々の時間軸へと帰還する】

 

 “窓”が上空からの光景に切り替わる。ドーナッツ型をした円形の大地が、外側から削れるようにして消えていき、代わりに白い闇だけがそこに残った。

 街も、城も、テーマパークも、学校も、工房も、高原も、空でさえ。

 《ロア=ヘルヘイム》が――俺たちの夢が終わろうとしている。

「ていうか早くあたし達も“夢の綻び”に戻らないとやばいんじゃない!?」

「そ、そうだよね? この世界に取り残されちゃうかも……あ、ジョルジュさんと西風の人たちも回収しなきゃいけないんじゃ……」

 ジュディスとカトルは焦っていたが、レンはかぶりを振った。

「それなら心配いらないわ。あくまで“夢の綻び”は後付けの裏口だから。この《ユグドラシル》こそが現実と夢を繋ぐ正規の扉。ヴァンさんたちはともかく、リィンさんたちのような取り込まれた“囚われ”は、最初にこの塔を経由して、各エリアに振り分けられていたのよ」

 つまり《ロア=ヘルヘイム》が消える時、“夢の綻び”か“黎明の樹”のどちらかにいればいいということだったのか。

 ジョルジュと西風二人は、《ユグドラシル》のフロアで気絶中らしいから問題ない。

 ヴァンは“窓”に映るリィンたちを見た。アークライド事務所の前に集合して、落ち着かなさそうにしている。

 そりゃそうだ。霧を払ったのに、俺たちが帰還して来ないから心配しているんだろう。

「レン。この世界が消えるまで、まだ時間はあるか?」

「え? まあ、多少は」

「なら“夢の綻び”にいる全員に記憶の拡張を起こせ。あいつらだって真実を知る権利はあるだろ」

「ごもっともだけど……いえ、わかったわ」

 レンが意識を集中する。ほどなく映像の中の彼らが、一斉に頭を押さえてひざまずいた。

 これでいい。なぜかアガットだけはのたうち回っているが。

「アガットさんには特別にキッツいのお見舞いしておいたの」

「やめて差し上げろ」

「これでみんなが私の暗躍を知ったのね。怒られちゃうかしら……」

「んなわけねーだろ。見てみろよ」

「ん……」

 彼らは皆、《ユグドラシル》に向かって手を振っていた。

 レンに対する感謝と労いだ。

「な?」

「そうね。エステルだけは『帰ったらお尻ペンペンよ!』って怒ってるみたいだけど」

「まあ、姉貴としちゃ最初から力になってやりたかったんだろうよ。で、この後はどうなる? 元の時間軸ってことは、あいつらは1207年に帰るのか?」

「ううん。帰るのは1208(・・・・)年よ」

「は? そいつはどういう……」

「だから全員ヴァンさんたちと同じ1208年から来てるの。1207年から来た人なんて一人もいないわ」

「いや、だってよ。容姿も記憶も1207年じゃねえか。《幻夢の手記》の⑧番に記載が――」

「だってもなにも、その⑧番に記しておいたじゃない。【《ロア=ヘルヘイム》に囚われし者たちの姿と記憶は、各々が広範囲に、かつ同時に縁を繋いだ時期――クロスベルの再事変の年代(七耀歴1207年)に固定される】って。あくまでも固定。1207年から呼び込まれたなんて一言も書いてないでしょ」

「は? だったらなんでシュバルツァーにだけ1208年の記憶があるんだよ」

「リィンさんのユミル旅行の記憶は、たまたま1208年だと特定できた出来事だったというだけ。他にも現実世界の記憶がフラッシュバックしていた人はいたみたいだけど、それが1208年であることや、物事の前後関係がわかるようなものじゃなかったんでしょう」

「俺たちの思い込みかよ……。そういやお前が直近で印象的だった年代が、この世界に反映されてるっつー話だったか」

「そういうこと。各人で数時間程度の誤差はあるにしても、結局はヴァンさんの1208年8月27日が正時間軸よ。ああ、これも開示しておこうかしら」

 

⑰【《ロア=ヘルヘイム》における時間の流れは、現実世界のそれと連動していない】

 

「時間の連動はされていない……? この意味は?」

「異世界に滞在した数か月は、現実世界の一秒にも満たないの。まさしく夢の原理と一緒ね」

「てことは、戻ったらようやく現実の続きが始まるんだな」

「手記の項目も残るは一つ。最後の㊹番を開示するわ」

 

㊹【現実世界へ帰還する過程で、《ロア=ヘルヘイム》で得た記憶は完全に忘却される】

 

 予測していた一つではあった。

 アーロンが口を開く。

「持って帰れねえのか? なんの記憶も? 一つでも無理か?」

「残念ながら」

「くそっ!」

 レンがそう答えると、アーロンは悪態をついた。

「お前、どうしても覚えておきたいことがあんのか?」

「あ? ……決まってんだろ。当たり馬券のナンバーだっつーの。エレボニアで荒稼ぎするプランが台無しだ」

「そうかよ、お前らしいぜ」

 おそらくホアンやセイの――ラングポートの事件で命を失った友人たちのことだろう。

 アーロンはこれから(・・・・)起こるであろう未来を変えたかったのだ。フェリも複雑そうな顔をしている。

 アニエスが言った。

「でもこの《ロア=ヘルヘイム》での日々が、思い出が、出会いが、全て消え去ってしまうなんて……せっかく覚えた私の発勁も」

「それは永遠に忘れちまえ……」

 アーロンがげんなりとしている。

 レンはアニエスに言った。

「過ごした時間はなくならない。育んだ絆はなくならない。忘れてしまっても、必ずどこかには残る。それは些細な、けれど確かな影響として私たちを変えていくわ」

「どんなふうに……?」

「ここでお別れしても、この先、縁が繋がってまた出会えるかもしれない。どこかで出会った時に、理由もなくすぐに仲良くなれるかもしれない。本当なら乗り越えられなかったことも、無自覚の経験が支えとなって乗り越えられるかもしれない」

「レン先輩には今、何かが見えているんですか?」

「さあ。私も……私もね。いつか私が過去に囚われてしまう時、本当ならそれで終わりだったのだと思う。でも誰かの声で目覚めることができたのは、必ず助けてくれる誰かがいると今知ったから。だから声が届くまで耐えられたのだと思うの」

 彼女はいつの話をしているのだろう。まるで先の光景を視ているかのようだった。

「アニエス。元の世界に戻ったら《アンダルシア》に行きなさい。私の名前で予約しているものがあるから、それを受け取ってからアークライド事務所を訪ねるといいわ」

「え、でも、この会話もなかったことになるんですよね? だったら……」

「さっき言ったでしょう。無くなるんじゃなくて忘れるだけ。現実に戻る時に強く思いなさい。そうすれば自然と《アンダルシア》に足が向くはずよ」

 その時、〝夢の綻び”がたくさんの輝きに包まれた。

 煌めく虹色の光の中で、手を降る五十数人の姿が消えていく。

「先に行ったみてえだな。なら次は――」

 《ロア=ヘルヘイム》の大地は、もう《ユグドラシル》周辺しか残っていない。

 アニエスたちの足元からも光の粒が立ち昇る。

 俺たちも夢から醒める時だ。

「レン先輩、ヴァンさん。ありがとうございました。また向こうで会いましょう」

「わたし、色々な人と会えて楽しかったです!」

「ちっ、猛将列伝は持って帰りたかったがな。カルバードで買えんのか……?」

「わたくしもクレア様とシャロン様のおかげで、充実したメイド修行の日々でしたよ」

「FIOとXEROSの人間嫌いはリセットされるよね。はあ、そこだけは安心かも」

「えぇ……あたし、スキャンダルを繰り返さないとだめなの……?」

「しまったな。孫ズの面々に菓子を全部渡しておけば良かったか」

 ヴァンは拳を突き出した。

「じゃあな、お前ら! 未来で会おうぜ!」

 それぞれもまた拳を返し、共に霧の異世界を駆け抜けた仲間たちは消えていった。

 彼らを見送ったヴァンは、レンに向き直る。

「戻ったら、お前もここでの記憶はなくなるのか?」

「ええ。私も例外じゃない」

「最後にいくつか聞きたい」

「さっき言っていた明らかになってない三つの謎のこと?」

「そうだ」

 崩れ落ちる《ユグドラシル》の王の間で、二人は対峙した。

「なぜルーファスは〝囚われ”でありながら半覚醒していたのか。なぜレンが《王》に選ばれたのか。そして《バルドルの箱》が世界を閉ざそうとしていた理由は何なのか」

「それは……何なのかしらね?」

「この期に及んでごまかすなよ。その三つは繋がってる気がする」

「本当に知らないのよ。もう一度、《バルドルの箱》に聞いてみようとは思うわ。まだ私と話してくれたらいいのだけど」

 レンは自らの手にある箱を一瞥した。

「……お前もしかして、夢を見るのが怖いのか?」

「脈絡のない質問ね。でも、そう」

「………」

「今でも時々悪夢にうなされる。終わったはずの悪夢なのに、どこまでも私の影をつかんで離さない。満ち足りた自分の現状がいつ壊れてしまうのか、不意にどうしようもなく不安になる」

「じゃあ、お前の願いは……」

「幸せな世界の夢を見たかったのかもね」

「どうせなら、幸せな世界で夢を見ろよ」

「できるかしら、私に」

「できるさ、お前なら」

 光がヴァンを包み込んだ。

「っと……俺の番か。じゃあな」

「うん」

 まだ聞きたいことはあったが、どうやらタイムリミットだ。

 レンと《バルドルの箱》が最後に何か会話をしていたようだったが、二人の声はヴァンには聞こえなかった。

 視界が白く染まっていく――

 

 

 ●

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――ありがとう、私を助けてくれて

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ●

 

 

「……む」

 目を醒ます。顔にかけていた車雑誌がばさりと落ちた。

 いつものアークライド事務所の煤けた天井だ。

 《モンマルト》で朝食を取ったあと、リビングでうたた寝をしていたらしい。

 ベッド代わりのソファーから体を起こすと、ヴァンは応接テーブルの上の時計を見た。

 8月27日、10時06分。

「あー……何か妙な夢を……なんだっけか」

 ぼやけた頭を軽く振って、思考をしっかりさせる。

 なんだろうか。なぜか無性に愛車の様子を見に行きたい衝動に駆られる。俺のピックアップトラックは無事なのか。

「くそ、メチャクチャやりやがって、フェリのやつ……フェリ?」

 フェリって誰だ。

 口をついて出た覚えのない名前に戸惑う。そしてその名前自体も、すぐにおぼろげになっていく。

 その時、事務所の扉がノックされた。

 おぼつかない足取りでそこまで行き、ドアノブに手をかける。

 既視感。そうだ。この先にはフードをかぶった怪しい男が――

「……あ?」

 開いた扉の向こうには、ブロンド髪の少女が立っていた。不安そうな瞳が揺れている。

「えっと……まさかとは思うが、客か?」

「は、はいっ……!」

 いつか、どこかで出会ったその少女は俺を見つめて言った。その手に《アンダルシア》の晩夏限定ケーキの袋を下げて。

「こちらのアークライド解決事務所にお願いしたいことがあって伺いました」

 

 

 ――おわり(はじまり)――

 

【挿絵表示】

 

 

 

 




最終話までお付き合い頂きありがとうございます。

そもそも虹の軌跡シリーズは完結していて、続きを書くことはないと思っていました。
ですが黎の軌跡の終盤、レンが未だに過去に囚われていることを知りました。
「ああ……まだ抜け出せていないんだ」と悲しくなり、せめて自分の作品内でだけでも救えたら――と思ったのが《黎明の軌跡》の執筆の始まりでした。

しかし、しかしです。当然このストーリーを作り、連載を開始したのは黎の軌跡Ⅱ発売前だったわけですが、いざ黎Ⅱをプレイしたところ、ネメス島でレンのトラウマに言及した救済(?)イベントが出てきてしまいました。
しかもハーウッドのおじさんと、ちょっとアプローチの仕方が似てしまうという痛恨の一撃。

とはいえまた軌跡の世界を描く事ができて楽しかったです。ほぼ全員のメインキャラクターを出せましたしね。前作のクロウといい、助けたいと思うキャラがいると筆を取るのかもしれません。多分。
シナリオは大体ゲーム一本分くらいのボリュームでまとめてみましたが、このくらいが書きやすくてちょうどよかった気がします。

はてさて黎が始まる前の物語、《黎明の軌跡》はお楽しみ頂けたでしょうか。
長きに渡る《虹の軌跡》シリーズもこれにて閉幕。
再び幕を開けるかはまったくの未定ですが、ご感想、ご意見など頂けましたら今後の励みになります。

ちなみに《黎明の軌跡》は、エンディングまで読了済みの方を対象に、あともう一話だけ更新します。それが本当の意味での完結話となります。

では重ねて、最後までお付き合い頂きありがとうございました。またどこかでお会いできる日を!
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