エリア6、衛生エリアに昇格して5年、ブリタニア軍は撤退し、傀儡国家として新政府を樹立するまでに至っていた。
しかし、そのエリア6が突如として反旗を翻したのである。衛生エリア昇格を機に、かなりの数の兵器を提供していたため、エリア6の反乱はブリタニア本国にとってかなり厄介なものとなっていた。
血の紋章事件以来、ナイトオブラウンズの座は、マリアンヌからナイトブワンを継承したザクセンと、ナイトオブファイブのビスマルクのみとなっていた。
もっとも、血の紋章事件以来エリアでの反乱は各地で6回発生したが、どれも一週間もしない内に抑えられている。そのたびに黒い悪魔を見たと現地の兵士たちの間で噂になっているが、その実態はだれも知らない。
KMFグラスゴーを量産体制を整えつつあるブリタニアだが、実際には裏で試作機が運用されていたことは、ブリタニアの中でもほんの一握りの者しか知らない。
その主任研究開発者がマルドルであったが、マルドルはグラスゴーの基本設計を作り上げるまでに3つの機体を作り上げた。その内の一つがナイトメアフレーム、ガノンドロフ、そしてもう一つが、ギャラハッド、そしてもう一つ、ガノンドロフに匹敵するナイトメアフレームがあった。
そもそもKMF研究で最も難点とされていたのが、汎用性の低さである。あまりにも機体性能が高すぎて、常人では動かす事ができなかったのである。
試作機に比べ、KMFグラスゴーは基本操作も単純で、素人でも少しマニュアルを読めば動かせ、3日程度の訓練で基本戦闘が可能であり、量産のしやすい機体であった。
だから、第4世代KMFであるグラスゴーが発表されるまで世界では、KMFは実戦投入できる代物ではないというのが共通認識だった。
エリア6、サンタカタリナではブラジル解放軍が、侵攻してきたブリタニア軍を蹴散らしていた。
「サンタカタリナで敵主力部隊と我が軍が衝突の末、敵軍敗走とのことです。」
「はっはっはっは!ブリタニア人め、我らブラジル解放軍の力、思い知らせてやろう!」
前線では、ブリタニア軍がブラジル解放軍の前に苦戦を強いられていた。
「くそ、ブラジルの連中め!!我々の提供した長距離砲を...!!」
ブリタニア軍は自らが提供した長距離野戦法に苦戦し、前線を押し上げるどころかむしろ押し返されていた。ブリタニア軍の士気は下がり、ブラジル軍のゲリラ戦法にも苦戦していた。
「よし、このまま押し切れ!」
高い威力を誇る長距離砲の前にブリタニア軍の陸上戦力は次々と破れていった。制空権も、ブラジル解放軍の新型航空機、NS-5000によって奪われていた。
ブリタニア軍の大西洋艦隊が援軍に駆け付けるのも間に合わず、殆ど壊滅状態に陥っていた。ブラジル解放軍はそのまま敗残兵を狩りながら、一気に海岸付近までブリタニア軍を追い詰めていった。
しかしその時、ブラジル解放軍の前に白いKMFが現れる。
「なんだあれは...?」
その機体は、ナイトオブファイブ、ビスマルク・バルトシュタインの専用機、ギャラハッドであった。ただでさえ巨大な機体よりもでかい背中の大剣を抜き、ブラジル解放軍めがけて突撃してきた。
「うわぁぁぁぁぁ!!」
ブラジル解放軍の前線部隊は次々と蹴散らされていき、それに合わせて敗走していたブリタニア軍の兵士たちも息を吹き返し、攻勢に転じた。
ブラジル解放軍の戦車や装甲車両はギャラハッドによって次々と破壊されていったが、そこへ長距離砲が飛んでくる。
ギャラハッドは長距離砲をかわし、当たりはしないものの、前線の敵を撃破するので手一杯で長距離砲の破壊は困難だった。
その後もブラジル解放軍を撃破するも、長距離砲と装甲部隊の波状攻撃によって戦局はなかなか変化がみられなかった。
ブラジル解放軍と一進一退の攻防が続く中、状況が一変する。その時は何の前触れもなく突然訪れた。
ブラジル解放軍とブリタニア軍の一進一退攻防が続く中、上空を一瞬黒い影が覆う。だがそんな事には誰も気が付かなかった。
ブラジル解放軍とブリタニア軍が戦う主戦場のはるか後方では、ブラジル解放軍がブリタニア製の長距離砲を間断なく打ち続けていた。
「うてぇ!!」
轟音が鳴り響き、長距離砲の巨大な薬莢が飛び出す。そして次弾を装填すると、すぐにブリタニア軍目掛けて発射した。
「次弾装填よーし!!うて...。」
長距離砲の指揮官が射撃の支持を言い終える前に、長距離砲の一機が爆散した。
「何事だぁっ...!?」
「大佐、あれを…!!」
解放軍の指揮官や兵士たちは上空を見つめた。太陽を背に、そのナイトメアは突如として現れた。そしてその機体を兵士たちは見た時、死を予感した。
そのナイトメアは、長距離砲一機を破壊するとそのままそこを通過して飛び去った。その後も、兵士たちは恐怖に怯え、動くことができなかった。
主戦場では、長距離砲がやんだのをビスマルクが確認していた。
「どうやら長距離砲は止んだようだ…。者ども今だ!一気に突撃せよ!」
ビスマルクの号令で崩壊していたブリタニア軍は突撃を仕掛ける。解放軍は長距離砲が止み、ブリタニア軍が勢いを取り戻したことで士気が失われ、次々と撤退しはじめた。
「おい、下がるな!!下がるものは撃つぞ!!」
解放軍の戦車に乗っていた指揮官には目もくれず、兵士たちは後退を始めた。そして指揮官の下へギャラハッドが切り込み、一瞬で戦車を破壊した
前線が崩壊したことを知った解放軍の本拠地は混乱していた。
「なぜ長距離砲は射撃しないのだ。」
「それが、通信にだれも応じず…。もしかすると逃げ出したのかもしれません。」
「ええい、逃げるもなにもあそこは主戦場から遠く離れた場所ではないか、何から逃げたというのだ!」
解放軍のリーダーが苛立ちを見せていると、突如敵襲の報告が入る。
「大変です!ここサンタカタリナ中央区に敵機が!!」
「なに?空軍はなにをやっている!!」
「それが...、全機破壊された模様です。」
「馬鹿な…。」
解放軍のリーダーたちが混乱する中、爆発音とともにリーダーたちの行政府の天井がこじ開けられた。
「な、なんだこれは!まさか、ナイトメア…!!」
行政府は爆発した。ほどなくしてリーダーの死とともに戦闘は終了した。
ブリタニアの大西洋艦隊が到着するころには、既にブラジル解放軍はすべて降伏し、各地の主要都市はブリタニア軍に抑えられていた。
ブラジル解放軍の息の根を一瞬で終わらせたその漆黒のナイトメアは、ラウンズの旗艦、アルカディアに収容された。
ナイトメアフレーム、オベリスク。マルドルが創り上げた三つの機体の一つである。
アルカディアの格納庫には、そのナイトメアの前で待つビスマルクの姿があった。
機体のコックピットが開き、出てきたのはナイトオブワン、ザクセンだった。
「ザクセン様、お疲れの所申し訳ありませんが、グラヌンティウス提督からすぐに参るようにとお達しがありました。」
「そうか、すぐ行くとしよう。」
ザクセンとビスマルクはブリタニア海軍のグラヌンティウス元帥のもとへ向かった。
「すまぬな、急用とはいえ休む時間もない間に呼び出して。」
「いえ、元帥閣下のご命令とあらばいついかなる時でも駆けつけましょう。」
「ふんっ、心にもない事を…。冗談はさておき、お前たちも知ってはいると思うが、皇帝陛下が日本の侵攻を決定された。」
「ほう、思っていたより随分と早いですな。」
「明後日の午前10時には最後通牒が発せられる。まぁ最後通牒とはいっても、はなから交渉する気などないがな。」
「気に入りませんな。少し脅せば脆弱な日本政府がすぐに輸出規制など撤廃するだろうに。」
「はっはっはっは、それはわしも同じく思うところがある。だが今回はそれだけではない。おぬしらは知っていると思うが、皇帝陛下は政よりも例のおかしな世界にご執心じゃ。今回の日本侵攻も表向きはサクラダイトを巡る対立が原因だと殆どの者が考えておるが、真実は異なる。例の遺跡、あれの一つが日本にあるからだ。だが、単にそれだけの理由ならわざわざ開戦をここまで急ぐ必要もない。それはなぜか...、お前は知っておろう。」
「ご冗談を...、私はナイトオブラウンズの一員でこそありますが、出は平民。皇帝陛下の身の回りの事などなにも…。」
「よく言うわ...、今は亡き皇妃マリアンヌも元は平民であったろうが。」
「マリアンヌ様と私では比べようもないでしょう…。」
「それはどうかな…?お主はマリアンヌに一度も勝った事がないと聞くが、もし恋仲であったとしたら話はかわる...。」
グラヌンティウス元帥の話を遮るようにして、ビスマルクがグラヌンティウスの喉元に剣を突きつけた。
「グラヌンティウス元帥閣下、それ以上ザクセン様を愚弄するようならば、この場で首を斬る!」
ビスマルクの言葉を聞いたザクセンとグラヌンティウスは笑い出す。その様子をみたビスマルクは顔色一つ変えず、グラヌンティウスに剣を突きつけていたままだった。
「ビスマルク、剣を下ろせ。」
ザクセンに言われ、ビスマルクは剣を納める。
「面白い弟子をもったものよのぉ、ザクセン。」
「無礼をお許しください元帥閣下。彼もまだまだ若いゆえ。」
「はっはっはっ、お前とマリアンヌが私の下へやってきた時の事を思い出すわい...。まぁ、マリアンヌは変わってしまったがな...。」
「...。」
「ザクセン、お前は変わらずあの頃のままのようで安心し...。」
「元帥閣下。」
ザクセンはグラヌンティウスを睨みつけた。その塞がれた両目で。
「すまんすまん...、つい昔話をしたくなってのぉ...。わしももう歳だな。」
ザクセンとビスマルクはグラヌンティウスから日本侵攻作戦の概要の説明を受け、その後本国に戻った。
「ザクセン様、旗艦アルカディアでの件、出過ぎた真似をしました。お許しください。」
ビスマルクは首都ペンドラゴンに到着するなり、ザクセンに謝罪した。しかしそれをザクセンは笑顔で気にするなと一言だけ述べ、お咎めはなかった。
「それよりビスマルク。お前には探してもらいたい連中がいるのだが、行ってくれるか?」
ザクセンはそう言って写真を数枚ビスマルクに手渡した。
日本侵攻作戦に伴い、ブリタニア軍は量産した大量のKMFグラスゴーを強襲揚陸艦に搭載しはじめた。ブリタニア軍は陸軍兵力60万、グラスゴー5千機、戦車400、装甲車両4千、補給車両8千、攻撃ヘリ300機。
海軍兵力は海兵隊を含む30万、旗艦アルカディアを中心とした総数200隻からなる大艦隊に加え、航空機900機を用意した。ブリタニアによる侵攻作戦において、過去最大規模の動員である。
ブリタニア軍の総司令はグラヌンティウス元帥が任命され、各方面の上陸師団も編成された。グラヌンティウスは師団を各地方から上陸させ、地方占領後に首都東京へ総攻撃を仕掛ける作戦を計画した。そして、ザクセンとビスマルクには好きな時に戦場に来るようにとだけ指示した。ただし、戦争が終わる前にという条件付きで。
ペンドラゴン大学では、機密情報局によってマルドルの研究所やオフィスが封鎖されていた。マルドルの研究室の生徒だったロイドとラクシャ―タの二人は、大学のカフェテリアでぼーっとしていた。
ただ何を話す訳でもなく、どこか上の空の二人は、おのおの違う方向を向いて同じ席に座っていた。
そこへ、一人の女性がキャリーケースを引っ張って走ってやってくる。
「ラクシャ―タ先ぱーい!」
「セシル?あんたどうしてここに?」
「いやぁ、マルドル博士が辞職されたって聞いて...、それでEUから戻ってきました!」
「あんたなんでそれを…、ってまさか…!」
ラクシャ―タはセシルの話を聞いてロイドの方をギロっと睨む。するとロイドは慌てて言い訳を始めた。
「一応教えてあげないとと思ってさ、だってセシル君だってマルドル博士に1年とはいえお世話になってたわけだし...。」
「ふーん、あんたが人の気遣いなんてするとは意外ね。」
ラクシャ―タはそう言ってセシルの方を見た。するとセシルは本当の事をなんの躊躇いもなく話し始めた。
「え、違うじゃないですかロイド先輩!マルドル博士がいなくなって研究が立ち行かなくなったからって...。」
「え、そうだったっけ...?あはは、ここの所糖分が不足してたから記憶力が...。」
ロイドが恐る恐るラクシャ―タの方を見ると、ラクシャ―タが腕を組んでロイドを見下ろしていた。
「本当にあんたってやつは...。この子がお願いされたらなんでも聞いちゃう子だって分かってるでしょ!留学に行ったばかりのこの子を呼び戻すなんて信じらんないんだけど!」
「えっと、一応本当の事というか、研究が立ち行かなくなったのは事実であって...。」
「研究もなにも、研究室が封鎖されちゃってんだからセシルが手伝いに来たところで関係ないじゃない!」
「えっと、研究室が封鎖ってどういう事ですか?」
セシルの質問に、ロイドとラクシャ―タは一時休戦して、EUに留学中だったセシルに事情を説明した。
「そういう訳だから、あたしたちにも詳しくはわかんないけど、とにかく博士がいなくなってから国の連中が研究室を封鎖しちゃってさ。博士がどこに行ったのかもわかんないし、八方塞がりってわけ。」
「かれこれ5日、科学者人生でかつてないほど暇で無駄な時間をここで過ごしてたってわけ。」
「そんなことが…。」
セシルは話を聞いていたが、いつの間にか注文していたたコーヒーと一緒に、バームクーヘンを食べはじめた。
「「いつの間に...。」」
「ところでさ、あんたどうしてセシルを呼んだわけ?本当に気を遣って呼んだの?」
「残念でした~、僕はそんな気遣いできる人じゃないんだなぁ。セシル君を呼んだのは実家にある研究所を使えると思ったからで...。」
「あんたってやつは…。本当にドン引きするほど研究オタクなのね...。」
「君にだけは言われたくないんだけど。」
二人が話していると、突然机をたたく音が聞こえた。そして二人が振り向くと、セシルが満面の笑みでロイドの顔を見ていた。
「あの、ロイド先輩?」
「ん?すごく嫌な予感がするんだけど...?」
その後、三人はセシルの研究所に向かうため、セシルの車の中にいた。後部座席に一人で座るロイドの顔は、セシルの天誅を受けて腫れまくっていた。
こればかりは仕方ない、なにしろセシルはEUに留学してまだ1か月たらずだったのに帰る羽目になったのだから。
「セシル、短かい間だったけどパリはどうだった?」
「そうですね、とても綺麗な街で、料理も美味しかったです!」
「いやいやそっちの話じゃなくてさぁ...。」
「ああ、KMF研究の事ですか?行く前から予想してた通り…もしかするとそれよりも…。」
「やっぱりと言わざるを得ないよねぇ。」
「EUでは第4世代はおろか、第3世代のKMFを作るのもままならい状況でした。」
「博士が作ったラウンズ様が乗るあの2機の機体、ギャラなんちゃらってやつともう一つの...。」
「オベリスクですか。」
「そうそれ、同じ第4世代のナイトメアフレームなのにあそこまでハイスペックの機体を作りあげるなんて、他の国の話を聞くと余計尊敬しちゃうよ。」
「機体もそうですが、未完成とはいえ、フロートシステムやブレイズルミナスまで作るなんて、さすが博士ですよ。」
二人が話していると、後ろからロイドがむくっと出てきてこう言った。
「そんな博士も、どこにいっちゃったのやら…。」
ロイドの言葉を聞いて、車内は突然静かになってしまった。そのまま三人とも口を開くことはなく、セシルの研究所まで沈黙が続いた。
セシルの実家にある研究所は、首都ペンドラゴンから離れた場所にある、田舎町にあった。セシルの実家は町工場をやっており、町工場の地下にセシルの父が使っていた古い研究所があった。
3人は到着するなり中に入ると、ものすごい埃と砂煙が研究所の中を覆っていた。
「あらららら...、これじゃあ研究なんてできたもんじゃないねぇ。」
「長い間、ごほっ…ごほっ、使ってなかったものですから…。私、掃除機とってきます!」
そして研究所の大掃除がはじまった。三人はマスクと頭にバンダナ、さらにエプロンを着けて研究所の掃除に取り掛かった。
ロイドは床をモップで掃除し、セシルは掃除機でそこら中に舞う埃をとり、ラクシャ―タは窓や机や機材などを拭いた。
そうして5時間かけて大掃除が終了し、研究所は見違えるほどにまで綺麗な状態になった。
「ふぅ、やっと終わりましたね。」
「こんなに働いたの、はじめてかも…。」
ロイドとセシルがくたびれて腰を下ろしていると、ラクシャ―タが研究所の入り口の方を見ていた。二人もラクシャ―タにつられて入り口の方を見ると、そこにはビスマルクの姿があった。
キャラクターをまとめたものを作ろうと思っていたのですが、ネタバレ要素が多すぎたのでもう少しはなしが進んでから出す事にしました。
今更何ですが、もう少し開戦までの時間を空けとけばよかったと少し後悔しています(笑)。もう少し清十郎の過去の話を入れたかったのですが、戦争が始まってからなんとかして入れようと思います。
少しだけネタバレになりますが、戦争が始まってからルルーシュとスザク、ナナリーの三人と、C.C.が出ます。
それと、ザクセンとビスマルクについてですが、ザクセンは両目が原作のビスマルクのように塞がっています。逆にビスマルクは目が塞がっておらず、更に髭もありません。原作で34歳と仮定して、この話は原作の7年前なので、今は27歳という設定です。ザクセンについてはマリアンヌと同い年で、マリアンヌが一年前に死んだので今31歳です。
あと、ラクシャ―タは原作より髪が短く、ミディアムくらいで、セシルは原作より長いです。これはコードギアスのEDテーマに挿入されていたラクシャ―タたちの過去の絵でそうだったので、なるようにしてなりました。EDの絵と違う点として、セシルはメガネをかけています。