アングルナージュの海流   作:凍り灯

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グルグルグルグル

回る回る。
僕の中でそれが回る。

グルグルギィ…ギギ

(きし)(きし)む。
絶えず軋んではそれでも回る。

やがてその広大な隙間に、あの時僕を(すく)い上げた"手"によって"何か"を挟み込まれる。
間もなく数えるのも億劫(おっくう)な回転の中に"それ"は消えていった。





やぁ(サリュー)















端的に言うとメールは"エレキモン"と"パタモン"をブチのめした。

「見事な腕前っ!」
「感服いたしました…!」
「是非とも弟子にして下さい!」
「是非にっ…是非に…!」

激しい喧嘩を繰り広げていると勘違いして、つい喧嘩両成敗をした結果がこれである。
ただの武者修行だったようで、そんなもんだからメールは"強者"として目を付けられてしまっていた。

メールは困惑した。
困惑したが、すぐさま取るべき行動を決めたようだ。

メールが頭を地面へ擦り付けようとする勢いの二匹の前へ出てしゃがみ込み、それぞれの肩に手を乗せる。
勢いよく顔を上げるエレキモンとパタモン。
顔は希望に溢れているではないか。

しかしそのせいで、メールの手がいつかのように黒ずんでいて、どこから出したのか小さな黒い円盤のようなものをプスリと二匹の両肩に刺したことに気が付かなかった。

「あっちに血気盛んな"ゴブリモン"がいたよ。是非とも戦ってやって欲しい」
「わかりました!行くぞパタモン!」
「必ずや打倒して見せましょう」

すると途端に、何もない荒野に向けて走り出す二匹。それを尻目にメールは言う。

「ずらかるぞクーラン。僕はしばらく()()()()()()()と関わりたくないんだ、お腹いっぱいだよ」
「クゥァア…」

クーランから一応の同意を得たメールはクーランに(またが)ってその場を後にしようとするも。

「お待ちをっ!しかと()()を果たしましたぞ!!お待ちをーっ!」
「エレキモン、空であればオレが追跡しよう…合流方法はいつものだ…!」
「承知!」
()()が悪いなぁ…!急げクーラン!」












『流浪のサガ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐぅ…!?」

「そのフェイントは悪くはないけどその後の踏み込みが少し足りないね、次」

「行きます…!」

 

メールは仰向けに転がされたエレキモンから視線を外し、待機していたパタモンへと目を向ける。

パタモンは短い四肢で地面を踏みしめると飛ばないまま素早くメールの回りを走り始める。

 

「早いね…相当走り込んだのかな」

 

メールはそう言いつつ、巻き起こる砂埃(すなぼこり)の前に自然体のまま立っている。

紺色のポンチョかは軽く開いた両腕によって鋭角な扇形(おうぎがた)(かたど)っていた。風によってそれが羽飾りと共にゆらゆら揺らめく。

 

数秒後、メールは後ろあたりの砂埃から飛び出した影に気が付く。

即座に振り向いて迎撃態勢。しかしそれはパタモンではなかった。

 

「何故俺を投げ飛ばす!?」

 

砂埃に紛れて放り込まれたエレキモンが文句を言いながら飛んでくる。そうは言いつつも、彼は流れのまま覚悟を決めたのか、空中でクジャクの羽のように広がる九本もの赤い尻尾を逆立てさせ、バチリと身体を帯電させた。

 

その瞬間にパタモンはメールの真後ろから地を()うように接近し、前後上下の逃げ場を無くすように挟み込んだ。

パタモンは身体を弾丸の如く加速させてメールの背中へと突進する。間違いなく、紺色のポンチョを(とら)えた。

 

そう、ポンチョだけしか捉えていなかった。

 

まるで闘牛士のマントように腕と身体の間の布の部分でパタモンが身体にぶつからない位置に誘導、そのまま包み込んで抱え込み、突撃の勢いのままにその場でくるりと一回転。回転終わりに目の前が真っ暗になっていたパタモンを斜め上へと解放、そう、ちょうど突っ込んできた帯電したエレキモンに。

 

「もうちょっとパタモンが突撃するタイミングを遅くできたら完璧だったかもね」

 

僕には多分当たらないけど。という言葉が続くのは、メールが口にしなくても痙攣(けいれん)しながら目を回したエレキモンとパタモンには分かった。

 

「…羽飾りに(かす)ることも出来ないとは…」

「よし。じゃぁ僕は行くから―――「お待ちをっ!」―――約束は"一度だけ手合わせをする"だよ」

 

エレキモンが仰向けのまま、ノックダウンしているパタモンを腹に乗せながら食い下がる。

 

「…エレキモン、これは俺たちがした約束で、これ以上は我儘(わがまま)にしかならない。それではだめだ」

「しかしっ…!」

 

フラフラと上体を起こしたパタモンはエレキモンを(たしな)める。

が、このパタモン。

 

「手合わせをしていただき感謝します…手合わせはもう要求しませんので付いて行ってもよろしいでしょうか?」

 

全く諦めていなかった。

 

「クォウ」

 

観客と化していたクーランは言う。

いっそただ働きさせる?

 

メールは、そこまで嫌がっていないクーランの返事を聞いて考える。

 

エレキモンとパタモンはどちらも武人タイプだが、その方向性が違う。

エレキモンは身も蓋もない言い方をすれば脳筋デジモンで、パタモンは手段を択ばない狩人デジモンだ。

闘いに対するアプローチの方向性が違うからこそ、この二匹は互いに足りない部分を(おぎな)い合い、高め合うことが出来るのか。

パタモンの意図は恐らく普段の生活から強さへのヒントを見つけようとしている。それが出来なくとも一緒にいればメールやクーランが戦う所が見られるかもしれない。あわよくば手合わせしたい。そんなところだろうか?

逆に言えば戦わないと満足できなさそうなエレキモンは段々と不満になっていくことだろう。

 

そうなればパタモンも、エレキモンに引っ張られてなんだかんだ僕から離れていきそうだ。メールはそう自分を納得させて二匹の同行を許可した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

□ □ □ □ □ □ □ □

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「彼らは?」

「ちょっと雑務を頼むために協力して貰ってるんだ」

「ふぎぎぎぎぎぎ」

「うごごごごごご」

 

サイボーグ型デジモンである"アンドロモン"の視線の先ではエレキモンとパタモンが大型の機材を元気に運んでいるところだった。

彼らの周囲にはベルトコンベアが幾つも走っており、絶えず何かの機械の部品がゆっくり流れてはどこかへ消えていく。二匹の進行速度はそのコンベアの速さにも届いていない。

 

「…大丈夫なのか?」

「筋肉が足りてないと考えると大丈夫じゃないね。でも最近は体が軽くなったように調子が良いって言ってたから」

「…そうか、あまり無茶をさせてやるなよ」

「それは心配無用さ…で、()()話だけれど…」

 

メールは本題について(たず)ねる。荷運びはついで。

 

「私はその話に乗ろうと思う」

「…いいのかい?」

「君への恩返しでもある。それに私は外に出るような(さが)ではない、だから適任であるとも思っている」

「ありがとう、本当に助かるよ。暫定(ざんてい)だけどそれで進めるよ…あぁそうだ、あの街に出す手紙はあるかい?」

「あぁ、これだ。毎度すまないな」

「それが仕事さ。というか君はもうちょっと手紙の書き方を学ぶべきだと思うよ?」

 

メールは彼の書いた手紙を思い出す。

それはどこかの座標が書いてあるのみなのだ。せっかくなのだから色々と先輩からのアドバイスでも書いてあげればいいのにとメールは思っている。

 

「中を見たのか?」

「―――今後とも"クーラン・メール"をよろしく!」

「別に構わないのだが…行ってしまったか…」

「お待ちをっ!メール殿!」

「俺たちを置いてかないでください…!止まってくれクーラン殿…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■ □ □ □ □ □ □ □

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Salut(サリュー)!調子はどうだい?」

「あぁ!メールとクーラン!よく来てくれたね。歓迎するよ…あれ?そっちのデジモンたちは?」

「こっちがエレキモン、こっちがパタモン。君と話してる途中に子育てを頼むために連れて来たんだ」

「え?」

「え?」

「本当かい?いやぁ助かるよ。ボタモンたちからはあまり長い間は目が離せなくてね」

 

目の前のグレイモンと戦う時はどうすれば勝つことが出来るか?そんなことを考えていたエレキモンとパタモンの両名は客人に興奮したボタモンの濁流(だくりゅう)に吞まれて消えていった。

 

「いつもの場所かい?」

「うん。ボクの家でやろうか」

 

 

―――――二匹に混ざってクーランまでもがボタモンたちに制圧されている頃に、話し合いも終盤(しゅばん)を迎えつつある。

 

「そっか…残念だけど、(いさぎよ)く諦めることにするよ」

「ごめんね?ボクもティラノモンから話は色々聞いてるけど…この故郷(大陸)を離れたくないんだ」

 

大分迷ったのだろう。それでもグレイモンは自分の意思でそれを決めた。

 

「元々無理強いはするつもりなかったから大丈夫さ」

「本当にごめんね?…皆が死んだこの場所からも、もう逃げたくないんだ」

難儀(なんぎ)な性格だねぇ。そういう所がティラノモンが気に入るところなんだろうけど…取り合えずまた何かあったら言ってよ。海流はいつまでもそこを流れているよ………というかこの話はまだまだ先だからね」

 

かつて(すす)で汚れた村は再生を果たしていた。ただし、住民のほとんどがボタモンなので以前とはサイズ感が大きく違う。

唯一このグレイモンが住まう住居だけが、かつての村の名残を残している。

 

「帰るよー集合ー!」

「母親の偉大さを知ったなパタモン…」

「また一つ成長したということだエレキモン…」

「クァァアォゥ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■ ■ □ □ □ □ □ □

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うーん悪いね。なんだかんだ常連も多いから例の話は断らせて欲しい」

 

古びた移動式の屋台。

そこの席に座る一人と二匹。一匹は…というよりクーランは大きすぎるのでその隣の空地にいる。

カウンターを挟んだ先には一匹のデジタマモンと、(ひげ)を綺麗に整えた"ナニモン"がいた。噂の弟子はどうやらそのデジモンらしい。

 

「まぁそうだよねぇ…ところで最近ナノモンは来た?」

「つい三日前に来たばかりだ…なんだ、前も聞いてたがまだ会えてないのかい」

 

三日前!すれすれなニアミスをしていることにメールは残念がる。

 

「あちゃーすれ違ったか。互いに定住しないから連絡とれないんだよ」

「ちゃっちゃとどこかに腰を降ろした方がいいぞ」

「まだ屋台を引っ張ってる君がそれを言うの?流れるのは僕の(さが)さ。きっと死ぬまでね」

「難儀な性格だねぇあんたも」

 

メールはデジタマモンのその言葉に思わず目も(しばたた)かせた。

 

「…どうしたんだ?」

「いやぁ最近僕が同じ言葉を言ったばかりだったからね」

「あんたは自覚してるタイプだろうけど、自分のことを認めるのは思った以上に難しいもんだ。それこそ本気で言ってくれる奴がいない限りはね」

 

デジタマモンのしみじみとした言葉に弟子のナニモンは内心驚いた。普段はナニモンにもデジタマモン自身にも厳しくしており、弱音や自嘲(じじょう)の言葉を吐いた所を見たことがなかったからだ。

そのナニモンの様子を見てメールは微笑ましそうに笑う。

 

「ふふ、君が言うと説得力が違うね」

「はははっ!違いない!へいお待ちっ!」

「待ってました!いただきまーす!」

「クォォァア!」

 

料理にがっつく一人と三匹。

内、成長期の二匹は果てしない衝撃を受けていた。

 

「何だこれ!?何だこれ!?ナンダこれ!?」

「うぅ、こんなに美味いものを食べたの初めてだ…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■ ■ ■ □ □ □ □ □

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの時もオタマモンかい?立派になったねぇ」

「その節はお世話になりましたゲコ」

 

ある"ゲコモン"とオタマモンの楽団が保有している日本城。

目の前のゲコモンはかつてナノモンと共に悩みを解決してあげたオタマモンが進化した姿だった。二足歩行のカエル型デジモンはメールたちの前で嬉しそうに首に巻かれた"ホーン"を撫でている。

 

「クゥオァ!」

「クーランとの鳴き声大決戦もまたやりたいゲコね」

「うん、今度にして欲しいかな」

「クゥォォォ…」

 

今は思ったほど時間がない。

それはゲコモンたちの練習の合間の休憩時間から話し合いの時間を捻出(ねんしゅつ)して貰っていたからだ。

休憩中とはいえ、休まずホーンや歌声を好き勝手に響かせるデジモンたちも多い。

 

(にぎ)やかな無秩序(むちつじょ)の中でメールは本命の話を始める。

 

「その話は皆で相談したゲコ。ほとんどが賛成しているゲコ!」

「それは良かった!でも反対派はどうするんだい」

 

チラリと後ろのゲコモンたちに目を向ければ、メールたちを良く思っていない視線が幾つかあるのが分かった。

それはほんの僅かだが、メールの持ち出した話に対する返答は総意ではないことを理解する。それは仕方のない事でもある。

 

全員が同じ意思を持つことはとても難しい事なのだ。

 

「無理に連れていくこともできないゲコ…楽団は他にもあるゲコから、そっちに移籍(いせき)するかもしれないゲコ…」

「…僕らのせいで不和を起こすくらいなら行かない選択肢もあると思うよ。判断は任せるけどね」

「ボクらにとって大事なのはインスピレーションゲコ。常に上を目指すために新しさを求めなければ衰退(すいたい)するゲコ!」

 

ゲコモンは興奮したように言う。このゲコモンはかなり乗り気なのだろう。

話に乗ってくれるのはありがたいが、それによる遺恨(いこん)は出来るだけ排除したいのがメールの本心だ。もう少し様子を見ておいた方が良いだろう。

 

「ごめんごめん…でも、なんで演歌なんだい?」

 

休憩中に好き勝手流されている音楽は…何故か全て演歌だった。

 

「いいじゃないですかメール殿。演歌好きですよ俺!」

「…俺はジャズの方が好きだな」

「エレキモンだから演歌じゃなくてロックかと思ってた…いや偏見(へんけん)だけど」

「クァアア!」

「え?和太鼓好きなの?わお、知らなかったな」

 

 

 

 

 

 

 

 

■ ■ ■ ■ □ □ □ □

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「勿論、協力させて下さい」

「助かるよ。最近色のいい返事を聞けてなくてね。まぁ簡単に行くとは思ってないけど」

「"千里の道も一歩から"ですよメール」

「わかってるよ。地道にやってくさ」

「クーランもいつも重い荷物をありがとうございます。それと新米のお二方も」

 

巨大なぬいぐるみ型のデジモン、"もんざえモン"がメールたちに笑いかける。

その目はいつでも嬉しそうであり、向けられた方もその表情に釣られそうになってしまう。

 

「クォァッ」

「いえっ!これくらい何ともありません!」

「思えば俺たちは重い物を持つ修行はしてこなかったな…足が短いから…これもまた修行」

 

今回もまた多くのおもちゃをこの作りかけの町へと運んでいた。

鮮やかな色の屋根の建物が並び、しかしそれらはまだ町と言うには数が少なすぎる。

 

せっせとエレキモンとパタモンがおもちゃを次々と運んでいくものの、彼が目指す理想の町の完成は遠い先だろう。

 

「まだまだ先は長そうだね」

「末永くお願いしますよ?始めてしまえば、後は終わらすだけです。最初の壁が一番厚いということを教えて貰いましたからね…是非ともナノモンにも会うことがあればよろしく言っていたとお伝えください」

 

巨大な黄色いくまのぬいぐるみはニッコリ笑う。

メールも表情は見えはしないが釣られて一緒に笑った。

 

「勿論。と言っても、そっちの方が早く会えそうな予感がしてるけどね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ナノモン。結局見つからなかったなぁ…」

「クォゥゥ…」

「まぁまだ時間はあるからゆっくり探すとしようか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■ ■ ■ ■ ■ ■ □ □

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――俺たちにその話を聞かせて…どうして欲しいんですか?」

「どうもしないよ。興味があればっていう話だからね」

 

クーランが空を泳ぐ。今は優雅(ゆうが)にゆっくりとした動きで、西日に目を細めながら。

その背に(またが)りながらメールは、クーランの左右に取り付けられているカバンにすっぽりと収まっているエレキモンとパタモンに話しかけている。

 

体に風を受けながら二匹は考える。このことを伝えられた意図を。

 

メールとクーランがここ数ヶ月の間に合って回っていたデジモンたちはかなりの量に上る。

上空の寒さ、氷の大地に凍えながら。或いは溶岩の、砂漠の暑さに干乾びながら、果ては海の底にまで。ガラスのカプセルに入れられた二匹は深海の恐ろしさに死を覚悟したものだ。

 

メールとクーランが、そして多くのデジモンが()()に関わっている。

数ヶ月共にしたとは言え、まだまだ出会ったばかりの自分たちが関わっていい事なのだろうか?

 

「意図なんてないさ」

 

思考を読んだようにメールが言う。

 

「そもそも僕個人の事情が多大に含まれててね?それに乗っかって色々やってしまおうとしたのが事の始まりだからね…望む者が流れ付けばいい、それでいいのさ」

 

メールは柔らかく微笑(ほほえ)んだ。被り物でその表情は(うかが)い知れないが、それでもエレキモンもパタモンもまるで母のような温かさをそこに感じた。

ややそれに戸惑いながらもパタモンは問いかける。

 

「…"移動手段"の話は本当なんですか…?」

 

さもありなん。きっと誰だって本当にできるのか疑うだろう。それほどに()()は突飛もないことなのだ。

クーランも、そしてメール自身もそんなことができると思っていなかった…()()()()()()()()()()()()

 

「実証済みだからね。勿論これからも色々とやらなくちゃいけないことはあるんだけど、大まかなシステム面はクリアしてるんだ、細かいとこはこれから…だからナノモンにも手伝ってほしかったんだけどあいつ見つからないからなぁ…どこほっつき歩いてんだろ」

「成程…!であれば辞退させていただきたい!」

「…!エレキモン…?」

 

一番乗り気になりそうだったエレキモンが勢いよく答える。

パタモンはそれを(いぶか)しんだが、メールはそれに対して柔らかな笑みを浮かべるだけだった。

 

「俺はまだまだ未熟です!誘っていただいたことは光栄ですが、俺はもっと強くなってから行きたいと思います!必ずメール殿を驚かせて見せますから!」

「…俺()()だろう、エレキモン?こいつが言うように、俺もこのまま流れに流されるままでいるわけにはいきません…!まだまだ世界は広いはずなのですから…!」

 

見返したい、期待に応えたい、まだまだ未知に挑みたい。

二匹のそれはどこか青臭く、子供っぽい。

 

それを聞いてメールは嬉しくなった。自分もそうだからだ。過去の自分であり、今の自分であり、未来の自分がそこにいる。

今ならティラノモンやグレイモン、そして弟子を取ったデジタマモンの気持ちも分かりそうな気がする。そう思えた。

 

「…クーラン?君の目は間違ってなかったみたいだね。彼らを連れて行って正解だったかもしれない…寂しかっただけだと思ってたよ?」

「………………」

「おいクーラン?」

 

 

旅は続く。

一緒にい過ぎたせいでこの決意が鈍らないようにと、エレキモンとパタモンは翌日すぐにメールとクーランの元を去っていった。

 

 

 

 

 

やがて武者修行をしているエレキモンとパタモンの話はふっつりと聞かなくなってしまう。

 

代わりに二匹の成熟期のデジモンが困ったデジモンを助けて回っているという噂が流れていた。

 

メールはそれを喜び、時たまその二匹の輪の中に一人と一匹が増えてる、なんて噂もあるそうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〇 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遅いっピよ」

「ごめんごめん」

「クォア」

 

 

「始めよっか」

 

 

 

 

 









何か始まるようです。


待ってる人がいるか疑問ですが、投降が遅れてしまって申し訳ないです!…忙しくて忘れてたという。
次話で一段落なので週末には投降しておきたいですね。いや、もう投降ボタン押すだけなんですけどね?



■メール
各地を空から海まで訪問中。
片っ端から"何か"のために声をかけて回っている。それだけでも数年かかっている。
エレキモンとパタモンを同行させたのは所謂流れでしかないが、それが悪いことではないということを十分に知っている。

■クーラン
最早水より空の方が泳いでいるのは間違いない。
いなくなったらいなくなったで寂しくなる症候群は再発し、旅のお供を求めた。
和太鼓好きなのはクーランでも叩けるから。ドラムじゃないのか…

■エレキモン
武者修行中のデジモン。脳筋系武人。つまり正面衝突万歳。
パタモンとの組手の途中に電撃を上空のクーランに誤射した。謝ろうと思ったら強者の風格を感じ取り、謝る前に手合わせを反射的に頼み込んだのでブチのめされた。
進化後は大分落ち着き、正義感の強いデジモンになっていった。

■パタモン
武者修行中のデジモン。狩人系武人。つまり勝てばよかろうなのだ。
進化後は大分落ち着き、より礼儀正しく誠実なデジモンになっていった。

■ゴブリモン
実は岩陰にたまたま居合わせた。
なので本当にエレキモンとパタモンにブチのめされている哀れなデジモン。
特にエレキモンに対して強いライバル意識を持つようになる。進化した後も、ずっと。

■ナノモン
研究のため引きこもり中。
愛のためナノです!

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