【ヒト息子ソウル】原作・競馬ミリしらなので安価で進むしかないウマ娘生【転生】   作:やはりウマ娘二次創作界隈は魔境

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 だーかーらー! カイチョーアンチじゃねえって!(白目)
 主人公のコンセプトがこんなんだからカイチョー特攻付いてるだけで、別にカイチョーは何も悪くないんです。私は初めて担当したウマ娘であるカイチョーを信じていますよ!

 そして、ミタマガシャドクロのファンアートをいただいてしまいました! あらすじに載っけてあります! 是非ご覧くださいませ。ありがてえ……。

 PS.感想返しが追い付かない……こんなにたくさんの感想、ありがてえ。


サイドストーリー:2

 ・朝のひととき

 

 ヤエノムテキの朝は早い。

 早くに起きて日課である鍛錬をこなした後は、シャワーで汗を流して支度を始める。

 その際、朝に酷く弱いためなかなか起きない同室の後輩ウマ娘、ミタマガシャドクロを起こすことを忘れない。

 

 ボサボサになっていながらも艶やかで綺麗な長髪を気にもせず布団の上でぼうっとするミタマガシャドクロは、基本的にヤエノムテキが何もしなければ本当にそのまま制服に着替えて登校する。実際そうして登校してきた時には流石に彼女の正気を疑った。

 この一件以来、ミタマガシャドクロの生活態度を見兼ねたらしい寮長からそれとなく彼女に目をかけてやって欲しいと言われて。ヤエノムテキは先輩としての義務感とひと仕事任された責任感、そして生来の人の好さからミタマガシャドクロの世話をすることになった。

 

 昔は少しばかり粗暴であったヤエノムテキもまた大好きな祖母から身嗜みについて口うるさく言われた経験があるため、ある程度女子の支度には理解があったし、ミタマガシャドクロの世話はどこか犬の世話をするような感じがして、ヤエノムテキは割と今の生活を気に入っていた。

 

「できましたよ、ミタマさん」

「……ありがとう、ございます」

 

 綺麗な黒鹿毛を櫛で梳かしてやれば、ミタマガシャドクロは無表情ながらもぺこりと頭を下げた。

 その礼節を弁えた様は、祖父母から躾られた自分からしても見惚れるほどに丁寧で洗練された所作だ。そういうところはしっかりしているのに、こと生活に関してはだらしがないのは如何なものかと思いもするが、それはそれとする。

 

「来週ですね」

「……はい。この時を、待っていましたので」

 

 来週にはミタマガシャドクロが皐月賞に出走する。

 去年、自身も立ったクラシックの舞台。三冠の一つ目。そして、現状唯一であるヤエノムテキのG1勝ち星。

 同室であり、特に目をかけている後輩でもあるミタマガシャドクロは無事に弥生賞を八バ身差で突破し、今回圧倒的人気一位で挑むことになる。

 巷では彼女の無敗三冠を期待する声、そして自分達去年のクラシック世代と比べては些か見劣りするという心無い声が聞こえる。

 ヤエノムテキ自身、思うところはあった。

 しかし、当の本人が気にしていなさそうである為、特に何を言うことも無い。

 

「ミタマさん、調子はどうですか?」

「……調子、ですか?」

「はい。心体共に万全でなければクラシック三冠の道のりは険しいものとなるはずです」

 

 それはそれとして、後輩の一生に一度の晴れ舞台だ。様子が気になるのも当然というものであり。

 ミタマガシャドクロ自身、全く顔に出ないタイプなのもあって、ヤエノムテキはそれなりに彼女のことが心配なのであった。

 

「……良い、と思います。“とれーなー”さんがよく気にかけてくださっていますので。それに……」

「それに?」

 

 一度言葉を切ると、ミタマガシャドクロはヤエノムテキの瞳を見詰めて小さな口から言葉を紡いだ。

 

「……ヤエノさんが、いつもワタシを気にかけてくださいますから。きっと、大丈夫でしょう……ええ、抜かりなく、澱みなく」

「そうですか。それなら良かったです」

「……はい」

「当日は皆さんと応援に行きますから」

「……ありがとうございます。そう、お伝えください」

 

 彼女はこういうウマ娘だ。

 きっと大丈夫だろう。大丈夫のはずだ。

 ヤエノムテキは、それでも不安を覚えずにいられない自分に言い聞かせるように心の中で呟いた。

 

 

 ・皐月賞

 

 中山レース場はいつにも増して盛り上がりを見せていた。

 何を隠そう、ここまで常に後続に八バ身以上の差をつけて勝利を重ねてきた無敗のG1ウマ娘ミタマガシャドクロが出走するのだ。

 彼の皇帝シンボリルドルフ以来となる無敗の三冠、それを最初に成し遂げるのは彼女かもしれない。そんな期待から中山は例年の皐月賞とは少し違う、異様な熱気に包まれている。

 

 地下バ道。

 そこに本日の主役と言っても良いウマ娘、ミタマガシャドクロはいた。

 地下バ道を通り、出走するウマ娘達の幾人かに険しい顔をされながらも彼女は無表情で佇む。

 少しして、一人のウマ娘が現れた。

 

「待たせてすまないね、ミタマガシャドクロ」

「……」

 

 ミタマガシャドクロは表情ひとつ変えずにそのウマ娘と相対する。

 しかし、この場に彼女のトレーナーがいたのなら、きっと彼女の様子に驚いたことだろう。

 

「……シンボリ、ルドルフ……さん……」

「……今日はキミを激励しに来たんだ。あまり身構えないでくれ」

 

 結局のところ、ミタマガシャドクロにとってのシンボリルドルフは遥か頂上に君臨する存在でしかない。いや、ほとんどのウマ娘にとってそれは普遍の事実である。

 畏怖と敬意と憧憬と、それらの複雑極まりない感情の奔流を一身に集めて尚、皇帝シンボリルドルフはそれら全てを愛おしく思い受け止めることだろう。

 だが、ミタマガシャドクロの視線に含まれるソレは毛色が違う。

 

『────コウ、テイ……コウテイ……皇帝……!』

 

 そこに、否、その背後のソレがシンボリルドルフに向けるのは怨みだ。

 ターフを離れてもなお抑えきれず、たった一人のウマ娘の少女を媒体にしてこの世界に顕現する怨霊の憎悪だけが、今、シンボリルドルフに向けられていた。

 

『敗レロ、地ニ這イ蹲レ、夢ノ骸ヲ晒セ……!!』

「っ」

 

 こんなものが、目の前の少女のウマ娘としての生き甲斐を呪いに変えてしまっているのだとすれば。

 シンボリルドルフは堪えようのない憤りを覚えると同時、もしも彼女もまた己を恨んでいるならば、と考えずにはいられない。

 ただこの怨霊がシンボリルドルフに怨嗟の念を向けるならば構わない。それは、シンボリルドルフの罪だ。背負うべき十字架だ。

 

 だがもし、当人であるミタマガシャドクロがシンボリルドルフを恨んでいるとすれば?

 それは正に地獄だ。地獄と言う以外に何ら形容できる言葉の無い、シンボリルドルフというウマ娘の夢の跡である。

 全てのウマ娘の幸福を願い、ターフを走っておきながら、自分に恨みを抱く次世代のウマ娘が生まれているのだとすれば。

 

 乃ち、それは皇帝シンボリルドルフの道程の全否定に他ならないのだから。

 

「キミは、私を恨んでいるのか……!?」

「……」

 

 シンボリルドルフはそう問わずにはいられなかった。

 答えを聞かなければ、おかしくなってしまいそうで。見ないふりをしてきた後悔と焦燥、そして疑念という己の夢への侮辱がその身を焼き付くしてしまいそうで。

 

「答えてくれ、ミタマガシャドクロ!」

 

 声を荒げて問うシンボリルドルフに、ミタマガシャドクロは何も言わない。

 何を言う必要も無い。言葉にする意味が無い。それこそが答えなのだ。

 

「お願いだ……答えてくれ……」

 

 崩れ落ちそうなシンボリルドルフを見兼ねてか。

 ミタマガシャドクロは静かに口を開いた。

 

「……強いウマ娘は、己の夢にこそ真摯であろうとする。夢という甘い理想にのみ誠実で在らんと想う」

「っ」

「……その努力、研鑽、そして死闘と蹂躙をこそ理想を果たす為に何より正しいものであると肯定する」

「そ、そんなことは……」

 

 ことここに及んでは何を言うこともできはしないのだ。ただ、彼女の紡ぐ言の葉を受け取るしかない。

 それが鋭く研ぎ澄まされた刃であることを知りながら。

 

「……だから、ワタシ達がいる。怨恨に満ちた“たーふ”を駆け、その想いを受け継いで、強き者に引導を渡さんと刃を秘めるワタシ達が」

「キ、キミは、それで良いのか……!?」

「……はい、それで構いません。ワタシは、その為に走っているのですから」

 

 これ以上言うことはない。

 ミタマガシャドクロは背を向けてレース場へと歩み出す。

 

「……これから、“れーす”ですので。失礼致します」

「ぁ……」

 

 去り行く背中にかける言葉は見つからず。

 その背の夢の骸に手向ける花を、シンボリルドルフは持たなかった。




 皇帝の心に負荷掛け過ぎじゃない?:それはそう。でも仕方ない。きっと息子が光を見せてくれる。

 後半の語り:……?

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