夜叉の慟哭   作:大川原

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6話 狂気

すこし遡り19階層の邪馬台国

森の鳥達が騒ぎ出し、野生動物達が何かに怯えるように暴れ出した。

すこし前から18階層へ通ずる洞窟から異様な気配が出てき始め、嵐の防人達へと伝わった。

 

嶋「…何やら不穏な空気が漂っているな」

 

左近『…微カニ剣ヲ交エル音ガ』

 

嶋「…左近、少し開ける」

 

左近『行カレルノデスカ?』

 

嶋「…任務ではあったが、ベル殿達に迷惑をかけた、その贖罪をしたい」

 

左近『分カリマシタ、城ノ守護ハコノ左近ガ必ズヤ』

 

嶋「うむ恩に着る、螺役、着いて来い」

 

螺役『御意』

 

嶋は十名ほど引き連れ、18階層に赴いた、もしこの剣を交える音の中にベル殿達が居たら…世話になった恩返しをするのであれば今しかない。

18階層へ着くと目に入ったのは、異形の生物達がこの階層を今にも蹂躙せんとする光景だった、牛頭の魔物や龍も見受けられる、しかし嵐の防人達にとっては敵では無かった。

 

嶋「螺役、戦の合図だ」

 

法螺貝の戦合図が18階層に鳴り響く、戦闘をしていた冒険者達は19階層の入り口を見遣り、驚愕した。

まさかあの連中が来るとは。

 

嶋「ただ只管に異形の敵を蹂躙せよ、冒険者共には手出し無用、ただし攻撃されたならば反撃せよ」

 

「「「応っ!!」」」

 

様々な武器を手に持った嵐の防人が、魔物の群れに突っ込んだ。

薙刀が周りの敵を切り裂き、大太刀は牛頭の魔物の頭を落とす。

嶋も部下達の活躍に呼応するかの如く敵を討ち取った。

 

『クキキッ…』

 

魔物は嶋達の暴れっぷりに恐れをなし、一歩また一歩と下がり始めた。

しかし情け容赦ない攻撃が魔物達に降り注がれた。

嶋の二刀流は敵の急所を素早く切り裂く為に鍛錬された、脇差で硬い龍の首に傷をつけ、本差で斬り落としていった。

 

リュー(アレは…例の嵐の防人…?!まさか救援に…?)

 

拳骨でアルミラージは魔石ごと砕かれ、キラーアントの首はへし折られた。

鬼神の如く行われた戦いは物の数分で終わり、あたり一面には魔物のドロップアイテムと魔石しか散乱していなかった。

 

「あ、あいつら…例の19階層に住み着いた…」

 

『無礼な、貴様らが穴蔵に篭っておるのだろう』

 

リュー「…増援に感謝します、よろしければ助けてくれた理由をお聞かせ願いたい」

 

リューはまだこの光景が俄に信じ難く、嶋に理由を聞いてきた、確かに助けて貰う謂れなど無い。

 

嶋「…地上で世話になった者がいてな」

 

リュー「世話に?」

 

嶋「あぁ、心優しい少年であった、白髪で目の紅い…我々の任務とは言え、ヘスティアファミリアの彼らには迷惑をかけた、許しを乞うわけでは無い、任務であったからな、しかし迷惑をかけた事実には贖罪をしなければな…彼らは息災でやっているだろうか?」

 

思い出した、この男は以前酒場でロキ・ファミリアの団員と揉めた男だ、そして白髪で目の紅い少年…ベル・クラネルの事だろう。

 

リュー「…皆は元気です、私からも貴方が心配していたと伝えましょう」

 

嶋「恩に着る、さらばだ」

 

この件はオラリオにもすぐ広まり、嵐の防人に対する感情が二分した。

冒険者を殺戮した者達が、冒険者を助けた?憶測が憶測を呼び、噂話はついぞ絶えることは無かった。

ヘスティア・ファミリアの誤解はすぐに解け、また普段の生活に戻れた、豊穣の女主人でファミリアは宴会を行っており、その席の端でベルはリューから情報を聞いていた。

 

リュー「…事の経緯は以上です、嶋義貞は貴方達のことを心配していました」

 

ベル「嶋さんが…本当なんですか?!」

 

命「嶋殿…恩義を理由に他の冒険者を助けてくださったとは…」

 

事実を確認したくリューに詰め寄るベル・クラネル 、あまりの距離の近さに少し赤面してしまった。

 

リュー「え、えぇっ…事実です、あと…少々顔が近い…」

 

ベル「嶋さん…やっぱり良い人だったんだ…」

 

リュー「…はい、頬面で表情は見えませんでしたが、ベル殿達のことは本当に心配している様子でした」

 

また会って話をしてみたい、強さの秘訣や、邪馬台国での生活を聞いてみたかった。

 

ヴェルフ「…今回ばかりは、俺らの早合点だったかな」

 

リリ「…リリは悪いとは思っておりません」

 

ヴェルフ「別にお前が悪いことした訳じゃねぇ、あの場ではその判断が正しかった」

 

ベル「…リリ、あの時はごめん…僕何も考えずにまた…」

 

リリ「…ベル様のバカ、お人好し、女ったらし」

 

照れ隠しでリリは悪口なのか褒めてるのか分からない言葉を並べた、探し、リリ自身の不安はもうこれで無くなった。

 

シル「ベルさん、お料理お待ちしました♪」

 

リリ「何故ベル様の所にばかり料理を…?」

 

春姫「私も食べたいです…」

 

ベルの目の前にはシルの手料理が並んでいた、お陰で他の者は取りずらい事この上ない。

 

ベル「ハハ…みんなも食べてね…」

 

シル「酷い…!ベルさんの為に作ったのに…」

 

ベル「うえっ?!ちょちょちょ…!」

 

シル「冗談です♪皆さんで食べてくださいね?」

 

リリと春姫はさっとシルの料理を奪い取り、ベルに食べさぬが如く喫食した。

 

ベル「ぼ、僕のも残しといてね…」

 

18階層の冒険者を助けた嵐の防人達、本事案はギルドも封鎖の処置を改めて考え直す事案となった。

本当に味方なのか、或いは任務に従順であるだけなのか、ギルドとしてはこれ以上の答えが出せず、彼らと敵対しない事、城には侵入しない事を条件に19階層への立ち入り制限を解いた。

 

フィン「立ち入り制限の解除か、まだ早い気がしないでもないが…」

 

実際問題、まだ嵐の防人達に恨みを持った冒険者も多くいる、ファミリアの主力冒険者を容易く討伐され、戦闘力が格段に下がったファミリアも存在し、親しい者や愛する者を目の前で殺された冒険者も少なくはない。

 

リヴェリア「仇討ちのため侵入したとて、到底敵う相手では無いことは認識しているとは思うが…」

 

ガレス「復讐心に駆り立てられ、何処までも破滅に突き進む奴も中にはおる、さてどうなることやら…」

 

フィン「ファミリアにも制限を設けないといけないね、19階層に入ってもいいという御触れだが…18階層に留めさせよう、もし制限を破れば破門も辞さない」

 

リヴェリア「そんなに厳しくするのか…?」

 

フィン「団員を守る為ならなんだってするさ」

 

ロキ・ファミリアは当面ダンジョンへの遠征を取りやめ、実質休暇期間となった。

オラリオでトップクラスのファミリアがダンジョンに潜らなくなった為か、他の冒険者は今がランクアップのチャンスと中階層に殺到した。

 

アイズ「私は…ダンジョンに潜っちゃだめ…?」

 

リヴェリア「あぁ、ファミリアとしては19階層には行くなという制限が出たのは知ってると思うが…アイズを信用していない訳ではないが、もし何らかの間違いで嵐の防人と接敵して仕舞えば…」

 

アイズ「…私でも勝てない、よね?」

 

リヴェリア「それに、アイズはダンジョンに潜るのが好きだろう、今は休暇と思って地上で羽を伸ばしてはくれないか?」

 

アイズ「…でも…」

 

嵐の防人達は別に悪い事はしていないし、城に侵入しなければどうと言うことは無いはずだ、しかしリヴェリアの親心というか、それを目の当たりにしたアイズにはこの約束だけは破れそうになかった。

 

アイズ「分かった、暫くは地上で鍛錬するね」

 

リヴェリア「すまない、アイズ」

 

アイズ「ううん、リヴェリアこそありがとう…」

 

実の親子の如く抱擁し合う二人、今回ばかりはリヴェリアに従おう、説教だけじゃ済まない、リヴェリアに対する信頼までも失ってしまうとアイズは直感した。

 

アイズ「…でも、地上で何しようか…」

 

ダンジョンに潜る以外は、じゃが丸くんを食べるか武器の修理以外はする事が無かった。

 

アイズ「ベル…そうだ」

 

時間があれば考えているあの少年、会うならば今がそのタイミングではと思い、ヘスティア・ファミリアへ足を運んだ。

 

ヘスティア「…反対だね、たしかに嶋義貞はいい奴なのかも知れない、けどそれはあくまでも君達に対しての恩義だけだ」

 

ベル「神様…」

 

ベルは、嶋義貞にまた会うことを神ヘスティアに許可して貰おうと説得していた。

しかしヘスティアが聞いた19階層、些かきな臭い場所であった。

 

ヘスティア(生き残りの冒険者から聞いた話だと…斬り捨てられた朽ちた死体や、何者かに縛り上げられた死体があったという…森林や嶋義貞達がいる寺院に近づくに連れ多くなっていた…それってつまり…)

 

ヴェルフ「ベル、ちゃんと神様の話も聞け、確かに会いたい気持ちは分かるがな、時期尚早だ」

 

命「確かに…ほとぼりが本当に収まってからでも会うのは遅くないと思います…なんせ私たちが知りうる邪馬台国の情報がまだまだ少な過ぎる」

 

現在オラリオに伝わっている邪馬台国の確かな情報は、嵐の防人が女王卑弥呼を護っているだけの事であった。

19階層への立ち入りは解除されたものの、皆恐怖からか侵入していないのである。

 

ベル「だったら…僕たちが…」

 

ヘスティア「ダメだ、ベル君、厳しい言葉を使うけどあまり調子に乗るな、ロキファミリアの主力でさえもう容易くのされるのに、僕たちが万が一彼らと敵対することになれば、一瞬のうちに抹殺される」

 

ベル「…わかりました…」

 

何処までが嵐の防人のセーフゾーンなのか、それはベル自身もあまり分かっていない、その状態で近付けば、間違いなく最悪な事態になると神ヘスティアは踏んでいた。

ファミリアの全員から止められ、嶋義貞に会うことを断念したベル、しかし腑に落ちないのか、落ち着きなく街中をぶらぶらと歩いていた。

 

ベル(神様達はああ言ってるけど…そうしたら嶋さん達がまだ悪者みたいじゃないか…)

 

「…ベル、ベル?」

 

ベル(18階層のことも、ちゃんとみんなが知ってくれれば嶋さん達の誤解も…ぎょぶる?!」

 

突然、ほっぺたを両手で強い力で挟まれた。目の前には自分の頬を押さえたアイズが立っており、ベルは混乱した。

 

アイズ「…無視は…いや、かな…」

 

ベル「あああアイジュしゃんしゅみましぇん!!??」

 

アイズ「…考えごと、してたの?」

 

ベル「…ひゃ、ひゃい、あ、手、手ひゃなして…」

 

アイズ「あ、ごめん…」

 

やっと両頬から手が離れ、まともに喋れるようになった、若干押し潰されそうな程の圧力があったが、無かったことにしよう。

ベルが何か悩んでいる事を察したアイズは近くのベンチに腰掛け、相談に乗った。

 

ベル「…その、嶋さんにどうしても会いたくて」

 

アイズ「嶋義貞に…?」

 

ベルが会いたい気持ちは不思議でもない、18階層の事は地上でも常に流れている話題だ。

しかし潜って会いにいけばいいのに、何を悩んでいるのだろうか?

 

ベル「神様達が、反対しちゃって…ファミリアとしてはほとぼりが冷めるまでは待つって事でした…」

 

ロキ・ファミリアと同じであった、やはり19階層は何かある、あの鈍感のアイズでさえも察した。

気にはなるが今は潜らない方が身のためである。

 

アイズ「ベル…確かに感謝の気持ちは持つべきだけど、まだ潜らない方がいいと思うな…」

 

ベル「アイズさん…」

 

アイズ「嶋義貞はいい人だと思うけど…神ヘスティアが言う通り確かに19階層って何か違和感がある…」

 

ベル「何かって…」

 

アイズ「分からない、山の頂上から常に力を感じる…高ランクの冒険者から出るオーラみたいなのとかじゃなくて…神様以上の力…」

 

ベル「ア、アイズさん…大丈夫ですか?」

 

喋るにつれ、アイズの顔が真っ青になっていった。

邪馬台国とは何か、あの不死の戦士程の連中は誰を護り奉っているのか…アイズはそれを考えると次第に鳥肌が立っていた。

 

アイズ「とにかくダメ…!ベル!行っちゃダメ!」

 

ベル「え…ア、アイズさん…?!」

 

ベルの体を抱きしめ必死に説得をするアイズ、彼は深く関わりすぎた、もしベルが邪馬台国に行って仕舞えば、何か取り返しのつかない事態に襲われるのではと、アイズは心配していた。

 

ベル「…わ、分かりました、アイズさん、みんなに心配は掛けません」

 

アイズ「…ごめん、でも、本当に行っちゃダメだよ…?」

 

涙目で上目遣い、それが想い人から向けられて仕舞えばもう取り返しのつかない事態だ。

ベルは必死に自分自身を戒めさせる、アイズは幾分か落ち着いたようだ。

 

ベル(あんなに取り乱すなんて…確かに邪馬台国の話は聞いたけど、行ったことはない…)

 

アイズの忠告も虚しく、邪馬台国に対する好奇心が優ってきたベル・クラネル、口では行かないと言ったが、無意識に都合のいい同行者を探しにバベルの広場までやって来た。

ロキ・ファミリアやそのほか多くの派閥が潜らないと声明を出した手前、やはりダンジョンに潜る冒険者は少なかった。

潜っても1〜5階層までであった。

 

ベル(やっぱ、やめた方が良いのか…)

 

「おっ、ラビットフット!何してんだ?」

 

声を掛けてきたのはいつか18階層でゴライアスと戦った際、共に戦った冒険者であった、なんでもリヴィラの街再建の為に戻るらしい。

 

ベル「…あ、あの!」

 

「?」

 

 

ティオナ「ん?アレってアルゴノゥト君…?」

 

 

何事もなく、18階層に辿り着いたベルは同行者にお礼を言い、19階層へと足を踏み入れた。

眼前には穏やかな表情をした大きな石像が建ち並び、自然が広がる先に大きな和風の城と、山の頂上付近には寺院だろうか、厳かな建物が建っていた。

 

ベル「ここが…邪馬台国…!」

 

今までのダンジョンでは見たことのない建物と、そこには自然と野生動物の営みがあった。

嶋義貞に会いたい、その一心でベルは城へ足を運んだ。

城まではすぐと思っていたが、所々道が崩壊したり、橋が崩れている箇所もあった、前回侵入した冒険者達はよく辿り着けた物だとベルは感心した。

 

廃墟には昔ここに住人が住んでいたような生活感もあり、ベルにとって全てが新鮮であった。

しかし城に近づくに連れ、アイズが言っていた違和感というものが徐々に垣間見得てきた。

山は常に吹雪と暴風が吹き荒んでおり、その中心に何か護るべき物があるかの如く山頂を囲っていた。

兎に角あの城へ向かわなければ嶋には会えない。

 

ベル「す、凄いなぁ…ッヒィ?!」

 

城は通ずる切り通しの入り口に、遺体が杭に縛り付けられていた、泥の色をした衣服を纏い、頭には鉄製の兜が被られており、腰に巻かれているのは革製のベルトであろうか?

そのミイラ化した遺体は何かを見せしめるか如く晒しあげられていた。

 

ベル「こ、コレって…」

 

アイズが言っていた違和感、山頂から発せられるオーラ、もっと詳しく話を聞くべきだった。

ベルはを意を決し切り通しの道へ入った。

左右には蝋燭が立てられ、厳かな顔の像が建てられていた。

その足元には…

 

ベル「ウワァっ?!」

 

ベル(な、なんでこんなに人の骨が…?!)

 

夥しい数の人骨が散乱しており、死者が身につけていたであろう鎧や兜があちこちに刺さった杭に乗せられていた。

 

ベル「ハッハッハッ…」

 

怖い、怖い、怖い…呼吸が速くなる。

 

ベル「こ、これ全て嵐の防人が…?」

 

そんな筈は、だって冒険者達を助けた嵐の防人達は…嶋義貞はこんなことをする人ではない。

 

ベル「し、嶋…嶋さん…!!」

 

髑髏を蹴ってしまいながらも切り通しの出口へ辿り着いた。

目の前に見える城門は固く閉ざされていた。

しかし視線を無数に感じる。

ここまできたら後には引けない、アイズさんの忠告も、神様の言う事も聞いていれば良かった。

 

ベル「し、嶋さん!!ベ、ベル・クラネルです!!」

 

釣鐘が大きな音を立てて鳴らされる、甲冑に身を固めた嵐の防人が、大鎚で釣鐘を鳴らしていた。すると嵐の防人達の声が聞こえ、大声を発していた、戦が始まる前の鬨の声…そういう風に聞こえた。

すると、一人の大男が姿を見せた。

手には大きな金棒を持ち、使い古されたのか新しい血や古い血がこびりついていた。

 

ベル「し、嶋さん…」

 

足が震えて動けない、男は金棒を振りながら近付いてきた。

 

左近『貴様ハ…シマ将軍ノ言ッテイタ少年ダナ』

 

喋った、すると獣のような唸りを発し、城門が開けられた。

門の中では嵐の防人達が整然と並び、まるで客を迎えるように他の武器を自身の眼前に掲げた。

 

左近『我ノ名ハ左近虎徹、シマ将軍ノ側近デアル、サアツイテマイレ』

 

ベル「は、はい…」

 

少し歩き、石造りの広間についた、有りとあらゆる場所に嵐の防人が並んでおり、もう恐怖以外の何物も感じなかった。

 

嶋「ベル殿…!よくぞ参られた!」

 

ベル「嶋さん…!嶋さん!!」

 

見知った顔がそこにいて、ベルは安心のあまり駆け寄った。

嶋の顔以外見えなかったので、近寄った時に気が付いた。

 

ベル「…嶋さん、なんでこの城って、こんなに人の骨が…」

 

嶋義貞の足元だけではない、自分の足元や嵐の防人の足元にも何かしらの骨が散らばっていた。

 

嶋「何故って、侵入者の骸に決まっているでは無いか、城や寺院に近づいた者達の骸だ、それよりもベル殿、我が城と寺院を案内しよう」

 

ベル「…はい…」

 

もうよっぽどの事では驚かなくなった。兎に角速く帰りたい、帰りたい。

城は劣化が進んでおり、所々の壁は崩れて外の景色が見えていた。

少し肌寒い。

 

嶋「ここの城は我々嵐の防人が詰めている場所でな、基本的にはあの山頂の寺院で女王卑弥呼の御身を守護している」

 

ベル「そ、そうなんですね…ッンブ!?」

 

凄まじい腐敗臭が立ち込めてきた。

何処からだ?嶋は気にする様子もなく寺院方面へと足を進めていた。

何か分からないが速く通り抜けよう、すると破れた障子の隙間から部屋の光景が見えた。

 

ベル「〜〜〜ッ?!???!!」

 

人の死体が山積みにされており、死体は天井にもぶら下げられていた。

コレが侵入した者の末路…?死体には新しめのものもあり、腐敗は激しいが冒険者の者であると背中の恩恵で確認できた。

 

嶋「…ベル殿?そんな所でどうなされた?」

 

ベル「こ、こ、この部屋…」

 

嶋「あぁ、侵入してきた者を監視する為の場所だ、まだ息がある者が逃げ出さぬようにしないと、まだ連れ立って城に侵入してしまうのでな」

 

ベル「し、嶋さん…僕…その帰りますねっっ?!!」

 

嶋「怖いか?ベル殿、しかし貴公らは我ら嵐の防人の任務に理解を示したではないか」

 

理解は示した、護るべき者を護るため…しかしコレは度を過ぎている。

ただの虐殺だ。

 

ベル「こ、こんなの…人のやる事じゃ…おかしいですよ!」

 

嶋「…貴公らは我々を不死の戦士と言った、とうに人としてではなく、嵐の防人として生きておるのだ、全てを見てもらうぞベル・クラネル 、貴様ら冒険者が侵入してきた邪馬台国を全て知って貰おう」

 

手を引かれ、寺院へと連れて行かれた、ベルはとうに恩義も、嶋や邪馬台国を知りたいという欲求も無くなり、ただ帰りたいという気持ちでいっぱいであった。

 

寺院への道は険しく、人を寄せ付けないような道であった。

嶋に手を掴まれていなければ即座に吹き飛ばされるような風が四六時中吹いていた。

 

ベル「っく、離してください…!嶋さん…良い人だと思ったのに!!」

 

嶋「ベル・クラネル、某こそ貴様には落胆した、恩義の為冒険者達を救い、ベル・クラネル達が息災であれば良かったのに、態々訪れて我々を異常者扱いとは」

 

ベル「でも…あの死体の中には冒険者も…」

 

嶋「侵入者だ、ベル・クラネル、あれば侵入者だった″物″だ」

 

嶋に手を引かれ続けながら、ある部屋にたどり着いた、部屋の真ん中には大きな石棺が鎮座してあり、部屋を囲うように大きな絵画が飾られていた。

 

ベル「炎を背にした…女性…?」

 

絵には炎を背にした女性、暴風が吹き荒ぶ山を登る女性、煌びやかな装飾を施した女性が手に持った甕をその女性の甕に注ぐ絵…そして太陽を背にした女性の絵が飾られていた。

嶋があることを言っていたのを思い出した、女王候補に選ばれた太陽の巫女ホシは自ら命を絶った、つまりこの絵は…

 

ベル「…最初の絵は女王候補を選別するための…そして選ばれた女性は…」

 

嶋「女王卑弥呼の魂、力、権力全てを与えられ、次代の女王卑弥呼となる」

 

ベル「その太陽の巫女ホシが命を絶って…次代は現れなかった…」

 

つまり、今の卑弥呼は幾千か幾百の年月を重ね、朽ゆく体に今もなを魂が取り残されている。

 

ベル「この山を取り巻く嵐も…島を取り囲んでいたという嵐も全て今の卑弥呼が…何故だ…」

 

嶋「ホシ様が命を絶たれたからおかしくなった、もういつの話かも思い出せんが」

 

ベル「次の代が現れることなく、長い年月を経て今に至る…可笑しいですよ…」

 

嶋「何が可笑しい?女王卑弥呼の御身を護るのが我々の勤めだ、そしてその石棺には先代の女王が今も眠っておられる、それらも護るのが我々の勤めだ」

 

ベル「…帰ります、多分僕は貴方の任務を理解できない…」

 

嶋「それは非常に困るな…ベル・クラネル、貴様は新たな防人としてここにおってもらわねば困る…!」

 

ベル「えっ…ウグッ」

 

ベルは鳩尾を殴られ、意識が途絶えた。

 

左近『シマ将軍…コレハ一体…』

 

嶋「新しい嵐の防人だ、地上にいる時にもしやとは思ったが、この少年は無限の強さを秘めている」

 

左近『デハ…冒険者ナルモノ達ヲ助ケタノモ…』

 

嶋「無論、ベルクラネルを誘き出す為の口実に過ぎぬ、斯様な無法者共への恩義など一つも持ち合わせてはいない」

 

ベルは完全に利用された。

新たな防人、それはベル・クラネルは嵐の防人になり、この邪馬台国で幾年も卑弥呼を守護しないといけないという事だ。

 

 




螺役とは法螺貝を吹く役目の人です

やはりオニはオニ、相容れない存在でありたい。
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