ベルは現在謝罪の行脚を行なっていた、まずはギルド職員のエイナに会いに向かった、報告書の提出も兼ねて。
ベル「…」
エイナ「…」
ヘスティアの時程ではないが、沈黙の時間が長く続いた。
邪馬台国に行った冒険者としてギルドとしても興味を示していたが、エイナ・チュールに一蹴されそれぞれの業務に戻った。
エイナ「…まず、報告書の内容については確認しました、唯一邪馬台国の地をまともに踏んだ冒険者としてベル・クラネルは注目されていますが、まぁもう国自体に行ける事が無いので特別気にする必要は無いかと思います」
ベル「…すみません、エイナさん」
エイナ「何がですか?死地に赴く冒険者なんて沢山いますから、えぇ本当に、だから謝られても困ります」
相当怒ってるとかそんなレベルじゃ無い、最早業務上で受け答えする人としか認識されなくなった。
エイナ「しかし…ギルドとしては何も制限は出していません、ですので処罰等は無いものとして認識してください、それでは」
ベル「エ、エイナさん!!」
エイナ「……離して…っこのバカ…」
ベル「すみませんエイナさん…こんな言葉じゃ足りませんけど…僕エイナさんにも沢山心配かけて…」
ギルドとして打て得る範囲の手は打ったつもりではあるが、ベルが行方不明の時はやはりエイナの内心は穏やかでなく、方々のファミリアや酒場を個人的に捜索する程であった、なんせ普段から無茶ばかりするので一、二週間顔を出さないのはザラであったが、今回ばかりは本当にベルに対し並々ならぬ気持ちで心配をしていた。
エイナ「はぁ…ベル君が無茶するのもいつものことだけどね、今回ばかりはイレギュラーだったから…その邪馬台国に行って、帰ってこれる確証もなかったんだよ?それに嵐の防人という組織は強過ぎて危険だったのよ?」
ベル「…っ」
確かに、いま思えば19階層が移り変わり、邪馬台国へは行けたものの18階層へ帰れる保証など始めから無かったのだ、ロキファミリアの負傷者救護もフィンの指揮により小部隊入れ替わりで後送させていたと言う。
ベル「…でも、嶋義貞は…多分いい人でした、リューさんを助けてくれたし、リヴィラの街の人達も…」
エイナ「…それはベル君の気持ちだから否定しないけど、それでもホイホイついて行く理由にはなりません」
ベル「はい…」
エイナ「それに…ベル君が駆け込んだ時はホント大変だった、体調悪かったのに走ってくるから…」
ベル「それは本当に申し訳ありません…」
ある程度の談笑を交わし、エイナとの間の蟠りは無くなり、この件は落着した。
お次はロキ・ファミリアだ、アイズを巻き込んでしまった一件もあり胃がキリキリする。
番兵の前まで来たところ、ベルはアポ無しでも通せとの指示らしく恙無く中は入れた、団長の部屋にはフィンとリヴェリアがおり、それだけでもなんとも威圧的な感じであった。
フィン「やぁ、ベル・クラネル、話は概ねアイズ達から聞いた…座ってくれ」
ベル「はい…」
フィン「まず…今回の件に関してロキ・ファミリアから君に咎を与える事は無いとだけ言っておこう、言い方は悪いがアイズが勝手に突っ走っただけの事であり、ティオナ達も勝手な行動をしただけの事だ、言ってしまえば僕達は君に文句を言う謂れはない…まぁロキを諌めるのには苦労したけど」
ベル「申し訳ありません…アイズさんは僕を助けに来てくれて、と言ってもその時の記憶はないのですが…」
嵐の防人の時の記憶は朧げになっており、嶋義貞にミイラのような女性の前まで連れて行かれたのは覚えている、しかしそれ以降の記憶が無いのだ。
フィン「ふぅん…女王卑弥呼の力…目の当たりにしたわけでは無いが、嶋義貞を見ると信用できる、恐ろしい力だね」
ベル「はい…嵐の防人になった時の記憶はあまり覚えていないのですが…」
リヴェリア「…ベル・クラネル、今からする話は他言無用だ、守れるか?」
ベル「も、勿論です!」
リヴェリアは内容の些細を話した、救助に来たアイズを知らぬ存ぜぬと一蹴、終いにはその反応からアイズは自分の許嫁か妾なのかと問うた、最低だ。
ベル「え…っ」
いきなり伝えられた内容に戸惑い、そして自分の最低っぷりに吐き気がしてきた、リヴェリアはベルに気持ちを伝えた。
リヴェリア「ベル・クラネル、アイズは私の娘も同然だ、思春期もまともに迎える事が叶わなかった、保護者の身である私には弁論する余地もないが…どうかアイズをもう悲しませないで欲しい、互いに想いがあるのであれば…どうか伝えてあげて欲しい」
ベル「アイズさん…っ」
フィン「…アイズなら部屋にいるよ」
ベル「…す、すみませんっ!その!ちょっとそこまで!!」
脱兎の如く部屋を抜けだした、アイズに会うため、会って自分の想いをぶつける為に、しかしそこは詰めが甘いベル、部屋の場所を知らなかった。
ベル「あわわわ…アイズさんの部屋…部屋…」
キョロキョロしていると、団員から変な目で見られる、オラリオのアイドルでしかも同じファミリアの仲間だ、何処の馬の骨かも分からない奴に部屋を教える訳がない、すると突然首根っこを掴まれ、角に連れて行かれた。
ベル「ちょっ、なんです…」
ティオナ「し〜っ…アイズの部屋探してるんでしょ?こっち来て」
ベル「ティオナさん…!」
ティオナに連れられやっとこさアイズの部屋まで辿り着いた、邪馬台国から帰還した日から元気がない様子らしい。
ティオナ「ここがアイズの部屋、さっさと謝って想いぶつけてきなよ?」
ベル「は、はい…!」
自分の思っていたタイミングと大幅に違い、何を話せばと一瞬考えたが、伝えたい事など何を取り繕ったって一緒だと思い、覚悟を決めた。
ベル「…アイズさん、入ってもいいですか?」
『…っ?ベル?』
ドアをノックし、入室の許可を得た、そう言えば想い人の部屋に入るのは初めてであり、緊張感は喉まで沸き上がってきた。
アイズ「ベル、どうしたの?」
アイズは突然の訪問者に戸惑いを隠せなかった、今は一番会いたく無いがとても会いたかった相手だ、ベルの覚悟を決めた目を見て、叩き返す訳にもいかなかった。
ベル「僕が嵐の防人になった時、アイズさんは一番に駆けつけて…僕を救ってくれようとしました」
アイズ「…うん、でもベルはあまり覚えていないんじゃ…」
ベル「記憶は朧げです、それに知らなかった事もありました、しかし知らなかったで済まされない事を僕はしてしまった」
アイズは概ね察した、ベルの自分に対する発言の事だろう、許嫁やら妾やら、この話は素面のベルには到底言えるはずのない発言をした事に関してだろう。
アイズ「…とても悲しかった、普段のベルは絶対に言わない事だし…思っても無い事だと思ったから…」
ベル「思っても無いことじゃありません…!僕は…僕はアイズさんを…!」
アイズは一瞬だけ、いつだったかティオナに見せてもらった恋愛小説を思い出していた、そう言えばあの時の男の子は主人公である女の子にこんな感じで告白していた。
アイズ「…っ、ちょっ、ベル…!」
ベル「僕はアイズさんが好きです、いえ…愛しています!!僕は強くなりたい!アイズさんの英雄になりたい!!アイズさんを守れる存在になりたい!!!」
ベルの捲し立てる告白にアイズは思考停止していた、あのベルが?ウサギのようについてくる可愛らしかったベルが…いま一人の男として想いをぶつけてきた。
アイズ「…ベ、ベル…それは本心…かな?」
ベル「はい、これが僕の本心です、いつまで経っても変わる事ない気持ちです」
それにしては大分女の子と接しているのが多いが、今はこれがベルの本音であり、ずっと続いてた気持ちなのだろう。
ベル「いつか、アイズさんを守れる程強くなって、アイズさんの隣に立たれる存在になります!それまでどうか…」
アイズ「…ごめん、無理…かな…」
ベル「え…?」
振られた?告白をOKしてくれるとは微塵も思っていなかったが、まさか無理とまで言うとは、次はベルの頭が真っ白になった。
アイズを想い続けて長い事経ったが、今回で終わりなのだろう。
ベル「…そうですよね…僕なんかが…」
アイズ「…違う、そこまで待てないって事、今すぐ…隣に立って…一緒に強くなって…それで…」
ベル「…へ?」
アイズ「…そうだ、男は女を待たせちゃいけないって、リヴェリアも言ってた、だから今すぐ、隣に立って…それにもうベルは…私を守ってくれる程強いと思う」
顔を赤らめ、俯いたアイズはとても可愛らしく、今すぐにでも抱き着きたい衝動に駆られた、告白をOKしてもらい、しかも守ってくれるほど強いとまで言われた、ベルはもう混乱していた。
ベル「あっ、あっあの!それって…つまりOKって事ですか…?」
アイズ「…〜っつまりも何も…!今すぐ私の隣に立って…!」
想い人の可愛らしい姿は致命傷で、ベルは失神した。
後日、改めてファミリアを介しての話し合いが行われた、なんら影響はないだろうとの事で神同士のいざこざは無視され合意と合いなった、しかし神としても別に仲を引き裂くほど嫌ではなく、家族が幸せならそれで良いのが本心であった。
アイズとベルはいつもの稽古場で待ち合わせをしていた、今日は稽古でなく、街で買い物をしようと約束していた日だ。
精一杯おめかしした二人は互いに褒め合い、そして手を繋ぎ街へと繰り出した、剣姫と白兎の脚がカップルになった噂は、当日中にはオラリオ全土に広まっていた。
二人の仲はその後もずっと続き、互いは幸せに逢瀬を重ねた。
邪馬台国から帰還して数ヶ月後、ベルは夢を見ていた、ある女性とその仲間が島に流れ着き、友人を助けるため孤軍奮闘、女王卑弥呼の怨念を打ち払い、邪馬台国はその力を失った。
嵐の防人はみな女王卑弥呼の力を失い、一人また一人とその姿を灰へと変えていった、その夢に嶋義貞の姿は見当たらなかった。
風の噂でも聞く事のない邪馬台国、ベルの夢で失われた国は今もなお伝説の国として語り継がれている、オラリオでも、そして日本でも。
終わりです、ありがとうございました。