掌編小説集   作:深紅の瞳

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 タイトルの『掌編小説』ってのは『短編小説よりもさらに短い小説』って意味です。もともと『短編小説集』というタイトルにするつもりだったんですけど、他の人がそんな感じのタイトル使ってたので急遽、ネットで短編の類語を探して、こうなりました。
 昨日更新するつもりだったんですけど、書いてみると結構量が多くなったので予告よりも一日遅くなりました。すいません。
 僕はこの作品に限らず一日2000~3000字で投稿しています。分量的に今回は二日分くらいあるので、昨日何も更新しなかったんですけど、今回の分でチャラってことで。なので、今日は他の作品はもう投稿しません。明日以降またよろしく。
 それと今回の話は、ダンメモで2020年の冬にイベントストーリーとして公開された『迷酒舞う聖夜祭』を見ていると、より楽しめると思います。


Case 1 泥酔妖精

 普段ベルは本拠で【ファミリア】の皆と一緒に夜ご飯を食べる。しかし、今日は一人で『豊穣の女主人』に食べに来た。

 それには理由がある。

 それはリューさんとしっかり話をしたいからだ。

 僕は最近リューさんに避けられている。

 『豊穣の女主人』に来る度にリューさんは僕と顔を合わせようとせず、さも自然な動きでスタスタと厨房に引っ込んでしまうのだ。

 『深層』から帰ってきた後は普通に会話できていた。何だったら笑い合ってもいた。あの空が綺麗な高台の上で。

 僕はリューさんを怒らせるようなことをしてしまったのかもしれない。

 だからその辺のことも確かめるために、今日はリューさんと話をしようと思って来たのだ。

 僕が夜を一人で食べに行くことに反対していた神様やリリを説得してくれたヴェルフには感謝しないと。

 僕は早速店内に入るべく、扉を開けた。

 

「こんばんはー」

 

「おっ、白髪頭ニャ、オッスだニャー」

 

「アーニャさん、こんばんは」

 

 扉を開けてすぐの所に居たアーニャさんが挨拶してきたので僕も挨拶をする。

 そして僕はいつものカウンターの席についた。

 

「おっ、冒険者君じゃん。今シルは出掛けてるよ」

 

「ルノアさん、こんばんは。それと今日はシルさんに用があるわけではないんです」

 

 ルノアさんがシルさんの不在を伝えてきたので、僕はシルさんには用がないことを言う。

 

「えっ、違うの?あー、もしかしてリューに用があるの?」

 

「はい、そうです。すみません、呼んでもらっても良いですか?」

 

「いいよ!リュー、冒険者君があんたのこと呼んでるよ!」

 

 ルノアさんがリューさんを呼んでくれた。

 すると間もなくリューさんが厨房の方から出てきた。

 

「あっ、リューさん!こんばんはー」

 

「ッッ!!」

 

「えっ?……リューさん?」

 

 僕がリューさんに挨拶をすると、リューさんは顔を赤くして神速で厨房に戻ってしまった。

 本当に何をしたんだろう、僕。

 必死に原因を考えていると、クロエさんが話し掛けてきた。

 

「少年……やっぱりリューとヤってしまったニャ?」

 

「え……?」

 

「最近のリューの少年を見る度に逃げ去る行動を見るに……さては少年!リューにお尻を許してしまったニャ!?」

 

「何の話ですか!?絶対に欠片もかすって無いですよ!?」

 

 クロエさんの指摘を僕は強く否定する。

 確かに裸で抱き締め合ったけど、そこまではしてない。

 

「全く……これだからクロエは……いつまで経っても名探偵の助手止まりなんだニャ」

 

「おミャーにだけには言われたくないニャ」

 

 アーニャさんの言葉にクロエさんがキレて反論する。

 

「白髪頭、もうネタは上がってるニャ」

 

「あ、あの……」

 

「おミャー……リューがミア母ちゃんの料理をつまみ食いしたところを見てしまったニャ!?」

 

「……は、はい?」

 

 アーニャさんの予想の斜め上を行く推理に僕は返答に困った。

 

「そしてリューを脅して、あーんなことやこーんなことさせようと……」

 

「──吠えるな!!!」

 

「「フニャッッ!!」」

 

 するとリューさんが出てきて二人を手刀で黙らせた。

 

「あ、リューさん……」

 

「ご、誤解しないでください、ベル。あの二人の話は全てデタラメなので、真に受けないでください!」

 

「大丈夫ですよ。そもそも僕に見に覚えがありませんから。そんなことよりやっとリューさんと話せました。どうして今まで僕を避けていたんですか?」

 

「えっ?」

 

「あれからリューさん、僕を見ようとしないから……やっぱり僕、リューさんを怒らせるようなことをしちゃったんですか?」

 

「それは違うっ、貴方は何もしていない!……貴方が悪いわけでは……」

 

 次第に言葉が尻すぼみになったリューさんは、目を丸くする僕から視線を剥がし、己の足を見下ろした。そしてしばらくして口を開いた。

 

「私は……貴方を嫌っているわけではありません」

 

「そうなんですか……?」

 

「ただ、貴方の顔を直視することに堪えられないだけです」

 

「ナンデ!?」

 

 リューは聞き方によっては誤解を招く発言をしたことに気付いていない。

 

「……すいません、ベル」

 

「へ?」

 

「今回の件も含め、迷惑をかけてしまって。貴方に度重なる心労を与えてしまった。本当に、申し訳ありません……」

 

「あ、いえっ、大丈夫です!僕もリューさんに嫌われていないってわかって、ほっとしたというか、嬉しいというか……」

 

「……そうですか」

 

「はいっ」

 

「……」

 

「えっと、リューさん、一緒にご飯食べませんか?今日は僕以外のお客さんはあまり居ないようですし」

 

「それは……」

 

「良いよ、リュー。確かに今日は人少ないし、冒険者君と積もる話もあるんでしょ?ミアお母さんも今はちょうど出掛けてるし、一緒に食べてあげなよ」

 

「ルノア……」

 

「ミャーは納得出来ないニャ!少年の尻がリューに奪われるニャ!」

 

「リューだけずるいニャ!ミャーもサボるニャ!」

 

「お前達は昼間にサボっただろうが!!」

 

 駄々をこねる猫人(キャットピープル)二人をルノアが引っ張っていく。

 

「……じゃあ、リューさん、食べましょう」

 

「……えぇ、ルノアの言葉に甘えることにします」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────数十分後。

 

 僕とリューさんはご飯をほとんど食べ終わっていた。

 

「……もう食べ終わっちゃいますね」

 

「……はい、楽しい時間はあっという間に過ぎますね」

 

「ははは、リューさんが僕との会話を楽しいと思ってくれて嬉しいです。……あの、リューさん、お酒飲みませんか?」

 

「お酒を?……どうして?」

 

「以前、リューさん酔ったことありましたよね?」

 

「うっ!?それは!」

 

 以前リューは酔って色々やらかしたことがあるのだ。

 リューはその時のことを思い出し、羞恥で頬を染める。

 

「それで、僕が酔ったことないって言ったら、リューさん怒ったじゃないですか。なので、僕も今日は酔うまでお酒飲んでみようかなーなんて……」

 

 以前、リューが酔った時のことを後悔している時にベルが彼女を慰めようとした。

 しかし、逆にリューから

 

『貴方は酒に酔い、あの夜のワタシを上回る痴態を晒したことがあるのですか?』

 

 と聞かれ、ベルは

 

『いや……さすがにそれは……そもそも酔ったことがないし……』

 

 と答え、リューを怒らせたのだ。

 そういうこともあって、ベルはお酒を飲もうと思ったのだ。

 

「……分かりました。ベルも酔った所を私に見せてくれるんですね?」

 

「は、はい……お手柔らかに……」

 

 リューもあの時のことを思い出したのか、ベルにも恥ずかしい思いをしてもらおうと思ったので、ベルの提案に乗る。

 

「貴方だけが飲むのは流石に不公平だ。私もベルと同じ量を飲みます」

 

「えっ?大丈夫ですか?前みたいになってしまったら……」

 

「あれは神ソーマの作った酒が特別だっただけで、私は酒に弱いわけではありません!寧ろ普段あまり酒を飲まない貴方自身の心配をするべきでは?」

 

「そ、そうですね。じゃあ、飲みましょう。ルノアさーん!」

 

 こうして僕はリューさんと飲み比べをすることになったので、早速ルノアさんにお酒を頼んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────1時間後。

 

 リューさんは完全に酔ってしまい、何故か椅子に座っている僕の膝の上で、僕に横抱きされる姿勢のまま座り、僕の首に両腕を回して、僕に全身を預けてきていた。

 どうしてこうなった!?

 僕はこうなるまでの経緯を思い返す。

 あの後、僕とリューさんは一緒に飲んでいた。

 僕はお酒を何杯飲んでも全く酔うことはなかった。酒へのあまりの強さに僕自身もびっくりした程だ。

 一方、リューさんは次第に顔を赤くしていき、それにつれて僕に身体を密着させてきた。

 僕が引き剥がそうとすると

 

「……駄目ですか?」

 

 と、ある鈍色のヒューマンの少女を彷彿とさせる上目遣いをされて、あまりの可愛さに僕は断るに断れなかった。

 そして、最終的にこの姿勢に落ち着いたというわけだ。

 でも流石にそろそろまずい。

 客も少し前から増えてきていて、今も周りにいる客から好奇の目で見られている。

 そして何故かルノアさんやアーニャさん、クロエさんもこの状況を見てニヤニヤしているだけで、リューさんを止めようとしない。

 本当にどうしよう……。

 

「リューさん、離れてください。皆さんに見られてますよ!」

 

「何を言ってりゅんれんすか、ベル!私達は、『深層』でしゅら、裸で抱き合った、仲ではありましぇんか!」

 

「ちょお!?リューさん!」

 

 なんとかリューさんを離れさせようともう一度声をかけると、彼女は爆弾を投下してきた。

 周りからは

 

『あんな美少女と抱き合った?』

 

『裸でだと!』

 

『しかも深層で!?』

 

『怒りを通り越して尊敬するぞ!【白兎の脚(ラビット・フット)】!』

 

『ミャー達が心配して助けに向かってる時にナニしてるニャー!』

 

『ミャーの少年のお尻が、既にリューに奪われてたニャー!』

 

『えっ!?リュー、マジで!?』

 

 客である冒険者達の嫉妬や尊敬の眼差しが僕に突き刺さる。そして、アーニャさんやクロエさんは僕達が深層でやっていたことに怒っているようだ。ルノアさんも唖然としている。

 でも皆誤解してる!?裸で抱き合うって意味を別の意味で捉えている。僕はすぐに誤解を解くことにした。

 

「誤解ですよ!裸で抱き合うっていうのは」

 

「誤解ってどういうことれすか、ベル!あにゃたは、ワタシが全て諦めていたときに、ワタシを無理やり抱き締めて、(『闘技場(コロシアム)』の)中で(魔法を)爆発させたじゃないれすか!そこまでしてワタシをその気にさせたくしぇに……」

 

「リューさん、言い方!!大事な部分省いてますよ!」

 

 リューさんは僕の指摘を聞いていないらしく、僕に今まで以上に抱きついてくる。

 あー、駄目だ。全然話が通じない。分かってはいたけど、打つ手なしの絡み酒!

 ヤバイ……。周りからの視線が全て嫉妬になってる!?さっきまではまだ尊敬の視線もあったのに!?……無理もないか。さっきのリューさんの発言を聞いた人は僕が無理やりしたって思っただろうし。うぅぅぅ。

 

「ベル?どうして落ち込んでりゅんでしゅか?……ワタシが元気をださしぇてあげましゅ……チュッ」

 

「……ムゥ!!」

 

 リューさんがいきなりキスしてきた!ナンデ!?しかも舌まで絡めてくる!!

 

「……ぷはー!リューさん、何で、いきなり、キスなんかを!」

 

 やっと口を離せたので、リューさんに問い詰める。

 

「ワタシとはイヤなんれすか?」

 

「いや、そういうわけでは、寧ろ嬉しいんですけど」

 

「嬉しいッッ!!チュッ」

 

「へ?……ムゥ!!」

 

 またキスを!?本当にどうしちゃったんですか、リューさーん!

 ってちょっと待って!今周りには他にも人がいるんだった!……あれ?皆固まってる?それにしては何かに怯えているような……。なんて思っていると後ろから低い声が聞こえてきた。

 

「──おい、馬鹿娘」

 

 ミアさんだ!?そうか何か用事で出掛けてるってルノアさんが言ってたし、帰ってきたんだ!って、リューさん?いつまで僕にキスしてるの!?早く離れないと!!

 

「アタシの店で何やってんだい?─────このアホンダラああああああああああああ!?」

 

 と言ってミアさんが拳を振り下ろす。恐らくというか絶対狙いはリューさんだ。僕は未だにキスをしてくるリューさんを突き飛ばし、そして

 

 ドゴン!!

 

 と、身代わりとして僕の頭に拳が下ろされた。

 

「~~~~~~~~~~~~~~」

 

 僕はあまりの痛さに床を転がって悶絶する。

 

「ベル!?大丈夫ですか!?」

 

 リューさんが僕に近寄って介抱してくる。

 

「ベルに何をす……………る?」

 

 そして僕を殴った張本人を咎めようとして、リューさんは今更ながらにミアさんがいることに気付き、酔いを冷ます。

 

「アタシの店であんなことしてくれたんだ。覚悟は出来てるんだろうね?」

 

「……」

 

「ミアさん!リューさんにお酒を飲ませたのは僕なんです!怒るなら僕を……」

 

 ミアさんの言葉に顔を真っ青にするリューさん。

 僕はなんとかリューさんを助けようとするが

 

「坊主?あんたも被害者だろ?ならそこの馬鹿娘を庇う必要は無い」

 

 ミアさんはあまり聞く耳を持たなそうだ。

 

「で、でも!……」

 

「ベルさ~~~ん?」

 

「ッッ!!」

 

 それでもミアさんに抗議しようとした所で、背後から聞き覚えのあり過ぎる声が僕を咎めるように名を読んでくる。

 振り返るとシルさんがいた。

 そういえばシルさんも出掛けてるんだったな……。僕は半ば現実逃避しながら思う。

 

「ナニをしていたんですか?」

 

「な、何をって……」

 

 シルさん……笑顔だけど、全然目が笑ってない。

 

「酔ったリューに酷いことしてたんですか?」

 

「ち、ちがいますよ!?」

 

 流石に冤罪だ。僕は即座に否定する。

 

「それでも色々聞きたいことがありますし……アーニャ、クロエ、ルノア。ベルさんを私の部屋まで連れてきて?」

 

「「「イエス、マム!!」」」

 

「えっ?ちょっと、皆さん?」

 

 シルのお願いにアーニャ達は文句一つ言わずに従う。三人ともシルが凄く怒っていることに気付いたからだ。

 ベルはLv.4三人に引っ張られる。深層から帰ってから行ったステイタス更新で、同じくLv.4でありながらLv.5級のステイタスを持っているベルは振りほどこうと思えば出来ないこともないが、女性に乱暴なことは出来ないので大人しく連行される。

 

「じゃあベルさんは連れていきますので、ミアお母さんはリューをお願いしますね?」

 

「ああ、言われなくても分かっているよ」

 

「……シル」

 

「リュー、今回ばかりは私庇えないかな」

 

「……」

 

 シルの返事にリューは絶望する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、『豊穣の女主人』からは少年の悲鳴と少女に拳骨が落とされる音が響いたとか。

 

 

 




 今回の話は数日前に深夜テンションで思い付いたものなんですけど、大丈夫ですかね、これ?昼間に書いてる途中で不安になったんですけど。
 でもまあ、こんな感じでこれからやっていくつもりです。楽しんで戴けたらなと思います。
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