ユーネクテスvsマドロック1   作:トリケラプラス

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邂逅

♦ロドスの回廊を白の巨大な人影が進んでいた。マドロックだ。巨体に見合った重量は感じさせるものの目的を確かにしたその足取りは決して鈍重さを感じさせないものだった。

 

 「……失礼する」

 

 彼女はエンジニア部門の仕事部屋に辿り着くと一言断りを入れた後、悠然と入室する。

 

 室内は丁度昼休憩の時間であったが中の誰もが休憩を取らず作業に没頭している。 

 

 マドロックは扉から少し逸れた位置でキョロキョロと首を振ってそんな室内を眺めるとやがて目当てのものを見つけゆっくりと歩を進める。

 

 彼女の行く先は。

 

 「ユーネクテス。だな?今少し時間を取ってもらっていいだろうか」

 

 「…………」

 

 声をかけた先、ユーネクテスは巨大な鉄の兵器。アイアンハイドに対する改修作業を行っていた。その眼差しは真剣そのもので端正な顔立ちが黒く汚れても、火花で火傷を負っても全く意に介していない。汚れてなお緩まぬその輝きに”友人たち”と似たものを感じとったマドロックはしばし見惚れ。両者沈黙が続く。

 

 「…………」

 

 「…………」

 

 「…………はっ!そうだ、ユーネクテス。話を聞いてもらえないだろうか?ユーネクテス?」

 

 正気を取り戻し再び話しかけたマドロックだったが、深く集中しているせいかユーネクテスは一向に反応を返さない。

 

 「その……話を聞いてくれると嬉しい。あの……どうすれば……」

 

 作業に没頭するユーネクテスの周りを白のフルフェイスの巨体がおろおろと作業を邪魔しない程度に狼狽える様はどこか滑稽な様相を呈していた。

 

 (困った……全く気付いてくれる様子がない。かといって作業を邪魔するわけにもいかない。ここは出直すしかないか)

 

 「あれー?マドロックさんじゃない。なんでここに……ああ、この娘に用事かなー?」

 

 途方にくれ撤退の意志を決めつつあった彼女に声がかけられる。振りむいてみるとそこには彼女と同じサルカズの少女。カズデルボーイズトップ100の異名を自称するクロージャがそこにいた。

 

 「……ああ、実はそうなんだが。何度呼び掛けても反応がないんだ。作業の邪魔をするのも本意ではないし。出直すことにするよ」

 

「あーこのこ作業の時はいつもこうなんだ。こうなると何度呼び掛けても反応ないよ。でもやり様はあってねー」

 

 手を顎に当て悪戯っぽく笑ったと思うと。片手を口元に沿えユーネクテスの耳元に近づき囁く。

 

 「Lancet-2がユーネクテスをランチに誘いたー「わっほ~!Lancet-2姉様とランチ!直ぐに準備する!!」ムゴォ!?」

 

 クロージャが最後まで話終わる前に勢いよく振り返ったユーネクテスがその勢いでクロージャの顔面を打撃する。

 

 振り返ったユーネクテスはそこに目当ての人物?がいないことに訝しんだのか。口元に手を当て。

 

 「Lancet-2姉様がいない……先に食堂にいっているのか?む、クロージャ師匠。床に寝転がって何をしているのだ。疲れているのか?」

 

 「振りむいただけでこの威力。流石あたしの弟子……もう教えることはない……」

 

 その言葉にケロッとしていたユーネクテスもまた青ざめ倒れているクロージャを涙ながらに抱き起こす。

 

 「クロージャ師匠!そんな、そんなことを言わないでくれ……あなたにはまだまだ教えてもらいたいことが沢山あるんだ!」

 

 「師匠の屍を超えて進むのだよ……君は登り始めたばかりなんだから。この長く険しい技術坂を……とそうだこんなことやってる場合じゃなかった。ほら、ユーネクテスにお客さんが来てるんだよ」

 

 クロージャの紹介によってようやくユーネクテスは自身への来客の存在を知覚する。そこには助け船を貰えると思った矢先に放置されしょぼくれている白の巨人。マドロックがいた。どことなくその巨体も彼女の中身相応に小さく見えたのは気のせいだろう。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 「む、マドロックか。……そういえばこうして話すのは初めてだったな。私に何の用だ?」

 

 「ああ、実は君に頼みたいことが……助けて貰っておいてすまない。クロージャ、そう近くに寄られると話づらいのだが……」

 

 「だって話題の二人が何話すか気になるし~!ことによってはいいネタになりそー」

 

 「マスタークロージャ、ドクター様がお呼びです。購買の値段設定について早急に話があるとのことです」

 

 特ダネを前に舌なめずりするクロージャに冷や水を浴びせるようにいつのまにか彼女たちの直ぐ近くまで来ていた鋼の立方体、六輪作業プラットフォームCastle-3が出頭要請をかける。

 

 「ええ~?今いいところなんだよ~!ドクターにはキミから今日は忙しいっていっておいてよ~」

 

 「ドクターには首に縄をかけてでも連れて来るようにと言われていますので。本日は彼を連れてました」

 

 Castle-3がそういうと、物陰から現れたのは彼?と同じく機械の体を持ったモノTHRM-EXだった。中央に取り付けられたドームをちかちかとさせ宣告する言葉は一つ。

 

 「全量エネルギーアーツショック発生器スタンバイ!!」

 

 「わー!わかった!わかったよ!いけばいーんでしょー!?全くキミたちもどこでこんなあくどい真似を思いつくんだか。製作者の顔が見て見たいよ。じゃあ後のことは若いお二人に任せるとしましょうかね~。後でどんな話をしたのか教えてよ~」

 

 話してるうちにもCastle-3によってエンジニア部の部屋の外に運ばれていくクロージャ。彼女の声はみるみるうちに遠くなりやがて消えていく。

 

 「失礼しました!それではよい時間をお過ごしください!それでは!!」

 

 後に残っていた自爆未遂のTHRM-EXも退出しいよいよ二人きりになったことでようやくマドロックは本題を切り出す。

 

 ♦

 マドロックの話を腕組みして聴いていたユーネクテスは得心いったという構えを解くと彼女のほうへと向き直る。

 

 「つまりこういうことか……ロドスに流れる風聞をどういった形であれ収めるため、私とお前による一騎打ちの模擬戦を行いたいということか」

 

 「……ああ。私もこのままでは元部隊員たちに示しが付かない。もちろん君にはメリットのない話だということは理解している。気乗りがしないのであれば断ってもらって構わない」

 

 「いや、構わない。その話受けよう」

 

 ユーネクテスの快諾にマドロックは緊張を解き一気に朗らかな空気を漂わせる。顔は全く見えないがその表情が喜びで満ちているのは誰が見ても疑いようもなかった。

 

 「……!!本当か?ありがとう。感謝する……しかし、なぜだ?」

 

 「なに。幻影とはいえあの作戦ではお前の姿をしたものに手こずらされていてな。幻影がこれほどの強さを持っているならば本人はどれほどの強者であるかと興味があったんだ。だからお前からの話は好都合だった。だがいいのか?この戦いでお前が負ければお前の立場は……」

 

 「問題ない。結果が出ればどうあれ彼らも納得するだろう。……それに私が君に負けるとは考えていないからな」

 

 「ほう。言うじゃないか。ガヴィルでもない者が私に及ぶとも思えないが……」

 

 互いに放った挑発により両者の間で緊張が走る。睨み合う二人であったがそれは長く続かない。どちらともなく肩の力を抜き。

 

 「ドクターには私から後で話しておく。それじゃあ当日はよろしく頼む」

 

 「ああ、何から何まですまない。じゃあ私はこれで失礼する」

 

 話を纏め二人はそれぞれ自分のいるべき場所に戻っていく。その足取りは力強く、それでいて軽い。高揚を隠せないものであった。闘いの時は近い。   

 

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