ユーネクテスvsマドロック1   作:トリケラプラス

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悪土の血脈

 ユーネクテスは数メートルを吹き飛び地面に落下する。痛みに耐えよろめきながらも立ち上がるユーネクテスが見たのは巨大な岩山。いや、そのように錯覚してしまうほどの威圧感を漂わせたマドロックだ。

 

 自身よりも小柄であるという事実を忘れさせるその迫力に一瞬、気後れするユーネクテス。その頃には相手は両腕を組み終わっている。忌まわしいハンマーの形状だ。

 

 「おおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉお!!」

 

 吠え自分を奮い立たせ再び蛇は泥岩へと挑みかかる。だが、

 

 その牙が届くより前。蛇は頭上から振り下ろされた大槌に叩き伏せられた。

 

 「———っ!」

 

 着弾点は左肩甲骨。尋常ではない衝撃で骨は砕け散り。その身も地へと墜ちる。その前に。下から振り上げられたマドロックの槌腕がユーネクテスの腹部をかちあげる。

 

 「————ぉ、あッ……」

 

 汗と唾液と、涙が飛散する。ユーネクテスの身もまたそれらの後を追うことになる。その前に横合いから胸骨へと打撃が入る。間髪入れず再び逆方向から打撃が入り衝撃が相殺される。宙で制止する彼女の身を振り下ろされた打撃で打ち倒し。掬い上げる打撃で浮かせ再び連打する。重撃が止まらない。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 「おごッ!?あッ、あぐ!うぇぁ……ぇァ……、ひぎッ……おッ……---ッ!---ッッ!!」

 

 暴虐の嵐に最早悲鳴すらも満足に上げられないユーネクテス。額は割れ流血が顔面を伝う。胴体は打撃されていない部分がなく皮膚は内出血で紫に染まり、あばらは全て折れ、背骨は軋み腕の骨折はより複雑になっている。それでも解放されない。

 

 悪土の血脈。これこそがマドロックが発動した最後の切り札の正体だった。完全に発動するまで一切の行動を封じられることを代償に、それを乗り切った後には常識外れの怪力と速度を使用者に与えるアーツ。一切行動を封じられると言っても発動までの間、彼女の身体は岩石のような堅牢さを得ると共に周囲の生物は泥に足をとられたように生命活動を停滞させられる。これがマウントポジションを取っていた際にユーネクテスが気付いた違和感の正体である。

 

 激痛に蝕まれた思考がユーネクテスにもたらしたのは違和感への気づきを遅らせただけではなかった。それよりもっと致命的なもの、判断の誤りだ。

 

 ソレを放った後はしばらく攻撃が叶わなくなるというリスクを振り切り、もっと早く烈震崩撃を放つことを決断していれば、もし彼女が違和感をもっと冷静に考えその正体の一端を掴んでいれが、彼女は勝利を掴んでいただろう。だがそれはもしもの話だ。彼女が勝利を掴む未来はとうに閉ざされていた。

 

 力なく宙に浮くユーネクテスの横っ腹を横薙ぎの槌が振り抜く。水きり石のような勢いで吹き飛ばされた彼女は何度も地面を跳ね。進行方向の岩を砕き、砕き。やがて壁面へと衝突し。ズルリと地面へと墜ちていった。

 

 「……終わったか」

 

 そう呟くとマドロックは額の汗を拭い。土煙が晴れたころを見計らい。倒れたユーネクテスを拾いに向かう。友人たちを侮辱したとはいえ。ここまで互いに死力を尽くして戦った相手だ。倒れたまま放置しておきたくはない。そのような思いから歩を進めると彼女はその先で信じられないものを見る。

 

 

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