新世紀エヴァンゲリオン 天才少年シンジ君(試作) 作:高橋ヒナタ
ちなみに「リウェト」という名前です。
発明の天使だそうな。
名前を変えた理由はすぐに分かるよ。
──月面。
「─また3番目とはね…。変わらないな、君は。」
月面に並べられた柩から少年が目を覚ます。
「………僕は1番目ではないのか…!?」
地球へ目を向けていた少年はある"変化"に驚きを見せた。
「今度こそ、君を救い出してみせるよ…!」
そして、決意を改めた少年はどこかへと歩いていった。
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「ん~こんなもんで合ってたかしら」
アスカが自宅のキッチンに立っている。
手に持っているのはケチャップとウスターソース。
これから作るものにかけるソースを作っているようだ。
まな板の上にはソーセージとおろしニンニクのチューブ、
カレー粉が置かれている。
「姫~♪お、姫が料理してるなんて珍しいね。
ワンコ君にでもご馳走すんの?」
突然自宅を訪ねてきたマリがアスカをからかうが
アスカはいつも通りの対応でそれを否定する。
「残念、シンジはこれを教えてくれた側。
むしろアタシが食べるために作ってるのよ。」
アスカは分量のメモとにらめっこしつつソースを作ると
フライパンで輪切りにしたソーセージを炒めはじめる。
「ひょっとしてカリーヴルスト!?私も食べていい?」
「……いいけどあんまし食べすぎないでよね」
ソーセージにはやや焦げ目がついてしまったが
しっかりと火が通ったことを確認し皿に取り出す。
ソースとカレー粉をかけてカリーヴルストの完成である。
「お~♪姫にしては上手く出来てるジャン!」
「"にしては"は余計よ」
そういうマリだったが、その味にずいぶんご満悦のようで
表情からして美味しいと言っている。
実はアスカは来日してから何度かシンジの所へ行き
郷土料理であるドイツ料理を教えてもらっていたのだ。
「ん、アタシにしては良く出来たかしらね」
ピンポーン
「アスカー!入るわよ!」
訪ねてきたのはミサトだった。手には書類を持っている。
NERVのロゴ付きのバインダーで挟んであるので
どうやらNERVに関係することで何か連絡があるようだ。
「お?お仕事かにゃ?」
「大正解よ」
ミサトが手渡してきたのはユーロNERVからの招集書で
アスカと2号機、それとマリを一旦こちらへ戻して欲しい
というものだった。
「ベタニアベース?モグモグ…北極にあるアレか」
ベタニアベースとは北極にあるNERVの研究施設である。
使徒封印用呪詛柱に囲まれているため使徒に関する研究が
ここで行われることもそう珍しくはない。
カリーヴルストをつまみながらミサトの持ってきた書類に
目を通していく2人。
「休眠中の使徒ぉ?この前みたいなヤツって訳ね」
永久凍土から発掘された使徒が休眠状態だったため
ベタニアベースへ運んで調査・研究をしているとのこと。
これから更に詳しい調査を行う予定になっているため
護衛としてそれぞれパリ支部とドイツ支部に所属していた
2号機と5号機を寄越してほしいとのことだった。
「随分上手に出来てるじゃないのアスカ!」
「あ、ちょっとミサト!何勝手に食べてんのよ!?」
アスカが1人で食べるつもりで少しだけ作っていた
カリーヴルストはマリに、そしてミサトにも食べられ
すでにかなり少なくなってしまっている。
「…アタシ達はそのベタニアベースへ行けばいいのね?」
「エヴァは向こうへ輸送してあるからヨロシクね~♪」
そう言ってミサトは帰っていった。
すっかり空っぽになってしまった目の前の皿を見て
アスカはもう一度作るか、と再びキッチンへ立った。
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──ベタニアベース。
「なんというかすっごい異様な雰囲気ね」
海の上に浮かんだ円形の人口大陸と、その縁に立てられた
無数の使徒封印用呪詛柱が特徴的だ。
アスカはマリとともに乗っている輸送ヘリの中から
ベタニアベースを眺めてそう呟いた。
「お待ちしておりました。すぐに実験を始めますので
エヴァ搭乗の準備をお願いします。」
ベタニアベースの職員に出迎えられ、2号機と5号機のいる
仮説ケイジへと案内される。
「うわぁお、ずいぶんデッカイの付けたね~」
「何よこれ。ローラースケート?」
2号機と5号機の脚部には増加装甲が付けられているのだが
何より2人の目を惹き付けたのはその"タイヤ"だ。
足の外側に大きなものが2輪、内側に小さなものが1輪
まるでローラースケートかのように付けられている。
「使徒封印監視用極地仕様化装備です。急造品ですがね」
両機のウェポンラックへ目を向ければ、仮説ケイジの
天井に貼られた架線へ向けてケーブルが1本伸びている。
架線との接続部分は架線をレールにして動くようで
これがベタニアベース内でのケーブル代わりらしい。
「…まぁいいわ。あの雪だるまほどじゃないし」
2号機の右腕には巨大な槍、簡易式ロンギヌスの槍が
持たされている。ケーブルが付いていない方の肩には
マゴロク・E・ソードが取り付けられていた。
5号機の左腕には、かつて初号機がシャムシエルに対して
使った大型ガトリング砲が固定されている。さらに
背中にはスナイパーライフルも装備されていた。
「さぁ~て!いよいよ初の実戦かにゃ~?」
マリはついにエヴァを本格的に動かせるということで
ワクワクを抑えきれないらしい。スキップしながら
5号機のエントリープラグへ向かっていった。
「エヴァ5号機、起動!」
「エヴァ2号機、起動!」
そして、両機の瞳に光が灯った。
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『エヴァ両機、起動しました。実験開始』
今回ベタニアベースで行われようとしているのは、使徒を
外部からコントロールすることが可能か調べるものだ。
『頚部エントリープラグ、接続』
使徒の首に埋め込まれたソケットのようなものに
エントリープラグが差し込まれる。
『擬似エントリーシステム、プログラム起動』
続けて使徒を制御し外部からの操作を可能にするため
擬似エントリーシステムを起動する。
『全制御装置、正常』
着々とシステムの立ち上げが進んでいく。
これが成功すれば使徒を使って使徒に立ち向かうという
新たな対抗策が手に入るのだ。ベタニアベースの職員は
固唾を呑んで実験を見守る。
(シンジだって使徒の制御は無理だろうって言ってたのに。
…成功なんてしないわよこんな実験。)
アスカはこの実験が成功するとは決して思っていなかった
使徒と戦ったからこそ分かることだが、あんな超常的な
存在をコントロールするなど無謀でしかない。
『臨界点まであと0.2、0.1──』
ビーッ!ビーッ!
今まさにコントロール下に入ろうかというその瞬間
ベタニアベースの管制室に突如警報が鳴り響く。
『システムが使徒側から侵食を受けています!』
擬似エントリーシステムが使徒に侵食され始めているのだ
パイロットにあたるものを取り込んでいることになるため
もしこれが人間だったら命はまず無いだろう。
『プログラムが…未知のものへ書き変わっていきます!』
さらに、システムに書かれていた行動制御のプログラムが
未知の言語によるプログラムへと書き換えられていく。
『使徒、活動を再開しますッ!』
プログラムが全て書き換えられた瞬間、使徒が覚醒する。
何かの頭蓋骨のような使徒の頭部の瞳が輝くと
ビームが照射され実験場の装甲板が破壊される。
空いた穴から使徒は外へ抜け出していった。
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『エヴァ両機、使徒を殲滅してくれ!』
「待ってました~♪」
「予想通りね」
ベタニアベースの内部は地下鉄のようになっており
それらがそれぞれの区画を繋いでいる。
先程までその地形の把握にエヴァを走らせていたが
使徒殲滅の指示が入ったことで2人は本格的に動き出す。
「さぁ~て!先行するよん、姫!」
「了解、すぐ向かうわ!」
使徒に近いマリが先に接触を図る。このトンネルは
この先で非常用シャッターが降りていて通れないが
使徒の反応はこちらへ真っ直ぐ向かってきている。
ドォォォォーンッ!
突如爆炎があがりシャッターが破壊される。
細い4本の足をカサカサと動かして出てきたその使徒は
2つ折りに丸められた濃緑と黄色のボディを持ち
それぞれの先端から骨のヘビのようなものが生えている。
「第9使徒リウェト」だ。
「いっくよ~ん♪」
ズダダダッ!と5号機のガトリング砲が火を噴く。
リウェトは嫌がるような素振りを見せてはいるものの
ダメージは通っていないようだ。
「ありゃ!?姫!そっち行ったよーっ!」
ガトリング砲を鬱陶しく思ったリウェトは壁に穴を開け
別の道へ入り込んで逃げていってしまう。
しかし、近くにアスカが来ていたので回り込んでもらう。
「ラジャー!対応するわ!」
ビシュイーーーンッ!
ビシュイーーーンッ!
「チョロいチョロい!」
リウェトは正面から迫る2号機へビームを何発も撃つが
アスカは側面の壁へ片足をつけて左右へと回避する。
「でやぁぁッ!」
ガキィーンッ!!
アスカが突き刺そうとした簡易ロンギヌスの槍を
ATフィールドを張りつつ体を捻って回避したリウェト。
「まずーっ!逃げられたわ!」
「私は先にアケロンへ出とくよん!」
リウェトは着実にベタニアベースの地上層アケロンへ
上がっていっている。それを察したマリは一足先に
アケロンへ出てリウェトを奇襲しにかかったのだ。
「逃げんじゃないわよっ!」
光の環を浮かべ、頭上の装甲板をくり抜いて地上へ
出ようとするリウェトにアスカは食らいつく。
リウェトはフラフラしながらもなお上昇していく。
ビシュイーーーンッ!
「はんっ!そんなの当たんないわよ!」
リウェトの頭部が不気味に蠢きビームを放ってくるが
アスカが今しがみついているのはリウェトの首元。
頭部を押さえ付けてバランスを取ってやれば簡単に
回避することができる。
「マリ!ヤツが地上に出るわ!」
「あいよ~!的を~狙えば外さないよ~ん♪」
マリはガトリング砲を取り外し、背中に持っていた
スナイパーライフルを装備する。
リウェトが装甲板をくり抜いた穴は見えているので
スコープを覗いて正確に狙いを定める。
ズダァーー…ンッ!
「マリ!まだ足んない!」
2号機がリウェトの首にしがみついている状況でも
正確に狙撃を決めて見せたマリだったが
頭部にあるリウェトのコアはまだ破壊し切れていない。
「大人しく寝てなさいっつーの!!」
アスカもマゴロクソードを抜き、リウェトのコアへと
突き立ててやる。コアへダメージを負ったリウェトは
フラフラとアケロンの地面へと落ちていく。
ビシュイーンッ!
ビシュイーンッ!
ビシュイーーンッ!
「ったく…鬱陶しいわね!」
ダメージを負いつつも2号機を振り落とし地面へ降りると
執拗にビームを2機のエヴァへ向けて放つリウェト。
コアの再生に意識を割いていたため威力は低いが
アスカ達からしてみればかなり厄介だ。
「姫!もいちど飛ばれる前に仕留めるよ!」
「マリ!合わせなさいよ!」
「合点承知ィ!」
リウェトに再生完了を許せばまず間違いなく飛び立たれ
恐ろしく面倒くさい戦いになるだろう。
2人はそれをさせないため、大きなチャンスが来るまで
可能な限りダメージを与え続ける。
「大人しくっ!捕まんなさいよっ!このっ!」
光の環を失い地面を駆けるリウェトに2号機が肉薄する。
リウェトは致命傷こそ貰っていないが、その体には
すでに無数の切り傷や弾着の跡が残っている。
「狙い撃つぜ~♪よっ!ほっ!はっ!」
5号機からも次々と弾丸が放たれ、リウェトを撃ち抜く。
アスカとマリの絶妙なコンビネーションによって
着実にリウェトの体力が削がれていく。
ビシュイーーーンッ!
「うあぁっ痛いなァ!でも、これなら!!」
リウェトの首が突然蠢いてマリの方へ振り向き、ビームが
5号機の右足に大きなダメージを与えた。しかしマリは
痛みなどものともせずに、こちらを向いたリウェトへ
華麗にカウンタースナイプを撃ち込んだのだ。
「ィよっしゃァ!!」
5号機の放った弾がコアへクリーンヒットする。
「ちょっ~と足止めさせてもらうにゃッ!」
大きく怯んだリウェトを地面へと叩き伏せたマリは
足でリウェトの首を押さえ付け、頭部の外殻を掴んで
コアを露出させる。
アスカはマゴロクソードを放り投げ、簡易ロンギヌスを
手に取るとリウェトのコア目掛けて突き刺す。
「これでラストォォォッ!!!」
ドォォォォーーーンッ!!!
コアに簡易ロンギヌスが深々と突き刺さったリウェトは
綺麗な十字の光を残して消し飛んだ。
『パターン青消失。お疲れ様です』
リウェトを殲滅したアスカとマリはすぐに帰路に着く。
最後の攻防での損傷率が高かった5号機はいちど
修復作業を受けにパリ支部へ向かうことになった。
そしてやはりマリは日本に戻るとのこと。
「シンジがね、カレイ買ったって言ってたからさ」
「あ~ムニエル?ワンコ君に教えてもらう訳ね」
日本へ戻る輸送ヘリの中では、日本へ戻って何をするかを
考える2人の少女の楽しそうな声が響いていた。
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「カシウスは手に入った。これで希望が揃う…!」
つづく
第9使徒リウェト、もとい第3の使徒登場回でした。
新世紀には居なかった子なのでね
独自(であろう)設定を色々盛り込んで書きました。
「擬似エントリーシステム」とは言ってしまえば
ダミーシステムのようなものです。
2号機と5号機の脚部に装備させられていたものは
装甲付きの巨大なローラースケートの様なもの。
エヴァパチではベタニアベース内を走ってましたが
今回は仮設5号機みたいなの付けました。
月で目覚めた少年は勿論「彼」です。
彼が何者なのかはそのうち。