新世紀エヴァンゲリオン 天才少年シンジ君(試作) 作:高橋ヒナタ
第10使徒サハクィエル戦です。
勿論新劇場版仕様。
キリがいい所で終わらせたので
文字数的に言えばちょっと短いです。
無人になった第三新東京市に3機のエヴァが立つ。
位置情報を撹乱している使徒の正確な落下予想地点を
割り出すために、使徒が観測可能な範囲へ現れるのを
待っているのだ。
それぞれのエヴァパイロットは作戦開始へ向けて
気持ちを整えていく。
(ママ…今回はちょっとムリさせちゃうかもしれない)
(………)
アスカはシンジがしていたというシンクロを試してみる。
まだ2号機から帰ってくる反応に変化はない。
(でも、アタシはこの街を守りたい。力を貸して!)
もう少し深くまでシンクロし、己の決意を2号機へ
母であろう存在へと伝えてみる。
(…いつでも見守っているわ)
(…っ!!!)
アスカにもついに聞こえたのだ。エヴァの、母の声が。
その時、2号機の四つのカメラアイは力強く輝いていた。
(これを倒せば使徒はあと7体ね)
(今回は強敵みたいだ。母さんの力、借りさせてもらうよ)
(お母さんに任せなさい!)
シンジは普通に母ユイと会話をしていた。
ゲンドウと和解した辺りからよりハッキリと
深い層までシンクロせずとも会話が出来ていた。
(そろそろ来るわ。構えて、シンジ!)
(うん!気合い入れていこう!)
頬を軽くはたいて気合いを入れたシンジに呼応するように
初号機はいつもより鋭い眼差しで空を見上げていた。
(シンジやアスカはエヴァと意思疎通が出来るのに…私は)
レイはややブルーな気分だった。シンジから教えられて
ずっと零号機と意思疎通しようと試みていたのだが
零号機からは反応が鈍いなどという次元ではなく
そもそも何も感じられなかったのだ。
(零号機の中は…少しさびしい)
やはり零号機からは何も返ってこない。
その無反応っぷりにレイは少し寂しさを覚えた。
零号機はどこか上の空かのように立ち尽くしていた。
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「なんかレイ、最近シンクロ率のブレが激しいわね」
今までかなり安定した数値を叩き出してきたレイが
最近になって不安定になったことを心配するミサト。
「きっとシンジ君が原因ね」
「エヴァと話せるっていうアレ?」
「レイは話せないらしいのよ」
作戦開始直前だというのに曇った表情のままのレイに
ミサトもリツコも不安を覚える。
「目標が観測可能範囲に入りました!距離3万!」
オペレーター青葉シゲルから、使徒接近の報が入る。
モニターには少し前にも見た黒い球体が映る。
ミサトはすぐにパイロット3人へ通信を繋ぎ
作戦が始まることを告げる。
「エヴァ全機、スタート位置!」
その指示にエヴァ3機がクラウチングスタートの姿勢を取り
続く発進の指示を待つ。
「2次的データはアテに出来ないわ。よって、これ以降の
判断は貴方達に委ねます。頼んだわよ3人とも!」
『『了解!』』
『………』
相変わらずレイが無言なのを気にしつつも、ミサトは遂に
あの指示を出す。
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『では、作戦開始。発進!』
「第10使徒サハクィエル」が雲を割って姿を現したことで
ついに戦闘の火蓋が切られる。
アンビリカルケーブルがパージされ、内部電源の表示に
10分という数字が映し出される。
そのタイムリミットが減り始めた瞬間、ダァンッ!と
地面を勢いよく蹴って初号機と2号機がサハクィエルの
落下予想地点を目指して走り始める。
「……………」
しかしなんと零号機は動き出さなかったのだ。
『レイ!?どうしてスタートしないの!?』
「…っ!いけない!」
ミサトの大声で思考の海から帰ってきたレイは
弾かれるように走り出した。
(…まだ間に合う!私が足を引っ張るわけにはいかない!)
『目標、距離2万5000!零号機のカバー範囲内です!』
シゲルの報告にレイは少しだけ安堵する。
スタートが遅れてしまったもののまだ間に合うのだ
零号機は降ってくるサハクィエルのもとへ全力疾走する。
「レイ!間に合いそう!?」
「えぇアスカ、間に合うわ!」
市街地を駆け抜け、鉄塔や川を飛び越えて3機のエヴァは
ひたすらサハクィエルのもとを目掛けて走り続ける。
──バリバリバリーンッ!
サハクィエルの様子が変化した。光すら歪めていた
表面の黒いATフィールドを自ら剥がし、虹色の縞模様を
持つ球体へ変化したのである。
『目標のATフィールド変質!軌道が大きく変わります!』
『意地でもここを持っていく気だわ!』
サハクィエルは下側へ展開したATフィールドを器用に
使って一気に軌道を変え、街の郊外へ落ちていく。
使徒はまだやってくるのだ。自分は始祖たる存在へは
たどり着けないだろうが、せめて後続にそれを託すため
第三新東京市をとにかく吹っ飛ばすことだけを
考えているようだった。
「アスカ、シンジ!私じゃ間に合わないわ!」
「くっそぉ!」
「このままだとマズイわ!」
『目標、増速していますッ!』
サハクィエルは軌道を変えたばかりではなく
受ける空気抵抗を減らすことで一気に加速したのだ。
『落下予想地点修正……ダメです、間に合いません…!』
シゲルの切羽詰まったような声が発令所に響く。
軌道を変え増速したサハクィエルは3機のエヴァすべてが
間に合わないような位置に落ちようとしている。
『被害規模再計算…巻き込まれるのは確定です…っ!』
絶望的な雰囲気がNERV本部発令所を包む。
色々手を打って、作戦の成功率はかなりの物になったのに
それをたった一つの行動でパーにされたのだ。
「まだだ!」
「諦めてたまるもんですか!」
しかしエヴァパイロットは諦めてはいなかった。
初号機と2号機から見て、サハクィエルは約120°ほど
逆の方へ落ちていこうとしていたので、2機は思いっきり
ブレーキをかけ、再び走り出す。
「レイ!ショットガンを!」
「っ!了解!」
レイがサハクィエルから一番遠くなったことを確認した
シンジはショットガンを持ってくるよう指示する。
これもシンジの立てた作戦のひとつだ。
使徒を受け止めることを最優先とするため武装を持たずに
全機一斉に走り出し、最も使徒から遠くなるエヴァが
途中で武器を取りに向かうことにしていたのだ。
「ママ!もっと飛ばすわよッ!」
「母さん!行くよッ!」
シンジとアスカはエヴァの中の母と力を合わせて加速し
音速を優に超えるスピードで使徒へ駆けていく。
凄まじいソニックブームが巻き起こり、辺りを更地へ
変えながら、サハクィエルを受け止めるべく
山すら超えて走り続ける。
『カバー範囲再計算、間に合います!』
『目標が再変形します!距離1万4000!』
地上へ近づいたサハクィエルはさらに変形する。
赤紫色の光を放ちながら球体の表面が裂けていき
左右5枚ずつ計10枚の翼のようなものを広げたのだ。
翼を持ったサイケデリックな目玉のような姿だ。
ついに第10使徒サハクィエルがその真の姿を現した。
『落下速度、変わりません!距離1万!』
体を大きく広げたにも関わらずその速度は落ちていない。
広がったサハクィエルの裏側からは触手のようなものが
キッチリと列を生して生えており、赤いオーラを放つ。
使徒特有のエネルギーで加速しているらしい。
「「ATフィールド全開ーッ!!!」」
ガキィィィーーーン!!!
初号機と2号機がサハクィエルの落下に間に合ったのだ。
2機と1体の間でATフィールドが干渉しあい、輝きが迸る。
辺りが虹色とも言える輝きに包まれていく。
「「フィールド偏向制御開始!」」
エヴァ全体を守るように展開していたATフィールドが
上側のみに一点集中展開される。フィールドに押されて
サハクィエルが少しだけ空へ押し返された。
「シンジ!アスカ!」
レイも2丁のショットガンを腰のアーマーに取り付けて
サハクィエルのもとへとたどり着いた。
「アタシが受け止める。シンジとレイでコアを!」
「分かった!」
「了解!」
初号機がフィールドから手を離すと2号機は少しだけ
大地へと沈み込む。速やかに決着を付けるべく
プログナイフへフィールドを纏わせると
サハクィエルのATフィールドへと突き立てる。
(ママ!アタシも耐える!もっと力を!)
『2号機のシンクロ率、97.9%に到達!!』
2号機の顔面の装甲が少しだけ上下に開いた。
空いた装甲の隙間からは、素体の瞳から発せられる
恐ろしく鋭い輝きが見えている。
「中から何か出てきたっ!?」
使徒の目玉模様の中心に穴が空き、中から人型のような
何かが出てきたのだ。サハクィエルは自分を受け止める
2号機の手へ自らも手を伸ばす。
「捕まってやるつもりなんてないわよ!」
アスカはこれを、使徒の腕を掴み返すことで回避する。
まだ余力があるのに敵の方から伸ばされた手をわざわざ
素直に受け止めてやる馬鹿はいないだろう。
「これでフィールドをッ!」
アスカがサハクィエルを受け止めている間にシンジは
プログナイフでサハクィエルのフィールドを破き
レイを人型の部分へよじ登らせる。コアはその人型の
付け根の部分にあるのだ。
ググッグッ……ドスッ!
アスカに掴まれていた使徒の腕が突然鋭いドリルのように
変化し、2号機の二の腕を貫いたのだ。
「ぐうぅぅッ!!!」
シンクロ率を高めていたアスカは痛みに悶え苦しむ。
が、あのまま使徒の手を受け止めていたら今頃は腕の中を
グチャグチャに掻き回される痛みを味わっていただろう。
それに比べれば温いハズだとアスカは耐える。
「これでトドメ…っ!?」
ズダァン!とショットガンを撃った零号機。しかしそれは
コアには命中していなかった。突然コアが動き出し人型の
付け根部分をグルグルと逃げ回り始めたのだ。
「シンジ!レイ!そろそろ時間がヤバいわよ!」
タイムリミットはすでに半分を切っている。
そこでシンジはナイフへのフィールド偏向を解除し
今度は腕に中和用のフィールドを展開する。
そして、ぬるりと使徒のフィールドをすり抜けた手で
コアを掴み取りにかかる。
「ぐうっ…捕らえたッ!」
ついに初号機の手がサハクィエルのコアをガッチリと
捕らえたのだ。
「くそッ…火傷するように熱い…ッ!」
使徒のコアは強力なエネルギーの源であるためか
素手で触っている初号機の腕は赤熱してきていた。
「今度こそ!トドメ!」
ズダァン!ズダァン!ズダァン!!
ショットガンをコアへ押し付けゼロ距離射撃を行う。
ズダァン!ズダァン!ズダァン!!
残弾全てを撃ち尽くした時コアはすでに割れかけだった。
レイは肩からプログナイフを取り出して追撃する。
「ッ!!!」
バキィッ!!!
サハクィエルのコアはついに砕け散った。
ズドォォォォーーーンッ!!!
トドメを刺されたサハクィエルは全身から色彩が抜けて
真っ黒になったかと思うと、その後大爆発を起こし
赤い体液の津波を引き起こして散っていった。
「はあっ…はあっ…やったわね、シンジ!レイ!」
「あぁ、ありがとう2人とも!」
「よかった…街が少しでも守れて…!」
赤い津波に揉まれつつも3人は喜びを分かちあった。
(私でも、2人の力になれるのね。今はこれでいいわ)
サハクィエルとの激戦をシンジやアスカと共に戦い抜いた
レイは自分がまだ戦えることに少し安堵し、エヴァとの
意思疎通はまたいつか実践すればいい、と気持ちを
改めていた。
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──南極。
セカンドインパクトの爆心地であり、生物の生きられぬ
地獄と化した赤い海が広がる死の世界だ。
そんな赤色に染まった南極の海を、NERVの輸送艦が
航行している。甲板上には布を被せられた長い棒状の
荷物が載せられていた。
「生命の存在が許されぬ死の世界…南極か。」
「原罪の穢れなき浄化された地…やはり少し不気味だな」
艦の外に広がる一面の赤い海を見てゲンドウはそう呟く。
シンジと出会う前であれば何とも思わなかったのだろうな
と考えながら。
『NERV本部より入電、第10使徒を殲滅したとのことです』
「そうか。ご苦労だったと伝えてくれ」
NERV本部との通信を終えるとゲンドウは甲板上にある
荷物へと目を向ける。その中身である"槍"は
人類補完計画の発動のキーとなる物なのである。
「絶望の槍ロンギヌス、そのオリジナル…か」
つづく
新旧から要素を引っ張ってきて
配役も色々入れ替えてみました。
零号機のコアの中身は色々言われてましたよね
私のところでもどうするか悩んだものですよ。
次回は…たぶん元マトリエル君。
貞本版はNERV停電がサハクィエル君の
直後にやってくるんですよ。
マトリエル本人は不在ですがね。