新世紀エヴァンゲリオン 天才少年シンジ君(試作) 作:高橋ヒナタ
いつぞやの小話で立てたフラグを
ようやく回収する時がやってきました。
今回相当におふざけ気味です。
新世紀エヴァ2のあの冬月先生
そこにマリが加わったらどうなるのか…
小話とは言えないほど長いですが
私なりに描いてみたのでどうぞ。
──NERV本部、居住区画。
シンジはある人物に呼び出されてこの区画へやって来た。
ここは本部に勤務する職員に用意される所謂社員寮で
シンジも当初住む予定だったエリアである。
「ホントにこんなトコでいいのかよ…」
シンジが向かっているのはこの居住区画のなかでも特に
使われていないエリアだ。歩いていくにつれて人通りも
少なくなっていき、生活感も減っていく。
「この部屋だ…失礼しま~す」
居住区の奥の方まで辿り着いたシンジは待ち合わせの
部屋をようやく見つけて入室する。部屋は今までの
人気の無さから一転、どこか研究室の様な雰囲気を
漂わせる内装になっていた。
「待っていたよシンジ君!」
「いらっしゃ~いワンコ君♪」
待っていたのは冬月とマリだ。そして何故か彼らの目は
異様な程に鋭くこちらを見ている。
「さて…シンジ君には写真撮影に協力してもらう」
(あっ…マズいヤツだコレ!)
以前受けたユイからの警告と、ケンスケという前例から
シンジには2人が何を考えているのかが良く分かった。
まず間違いなく良からぬことを企んでいる。
(逃げ…れないヤツですねハイ)
シンジは思わず逃げ出したくなったが、2人の視線は
まるで獲物を狙うかのような目をしている。
とてもではないが逃げれそうに無い。
「ワンコ君、これを」
マリから紙袋を手渡される。ウォークインクローゼットが
あるからそれを使ってくれと言われたので、シンジは
クローゼットへ歩いていく。
(あれ?思ったより普通…?)
紙袋に入っていたのはピンクのシャツとタイトスカート
いつも自分が着ているような白衣、というセット。
ここNERVへ初めて来た時も似たような服装だったので
特に気にも留めることなく着替えていく。
「着替えてきましたよ~」
「おおっ!まさしくユイ君だよ!素晴らしい!」
「いいね~いいね~先輩が一足早く帰ってきたにゃ!」
カシャ!カシャカシャ!
普段と対して変わらないだろうに一体どこがいいのかと
聞いてみれば、これは母がよく着ていたセットのようで
冬月がポケットから取り出した写真にも今のシンジと
同じような服装の母ユイが写っていた。
「では、こちらへ来たまえ」
案内されたのは書類が置かれた普通の事務デスクだ。
イスに座って書類を眺めるように言われる。
「ああっ!在りし日がここへ蘇ったのだ!!」
「う~ん、大学時代を思い出すにゃ~♪」
カシャ!カシャ!
「バインダーを持ってここへ立ってくれ」
デスクの前へ来ると更に写真を何枚も取りまくる2人。
すでにシンジの頭の中は帰りたいで一杯だ。
「マリ君、頼むよ!」
「あいよ~♪」
シンジが再びデスクのイスに座ると、冬月が脇に立ち
デスク上の書類を覗き込むような素振りを見せる。
教え子の研究成果を見る教授というシチュエーションだ。
そしてそこをマリが手際よく撮影していく。
「冬月先生、今度はお願いしますね♪」
「任せてもらおうか!」
2人でバインダーを手に持ち、指を絡めて手を繋ぐ。
(こっ、これって恋人繋ぎじゃないか!)
マリがシンジとしたのはそう、恋人繋ぎである。
シンジがそれに顔を赤らめた瞬間を冬月は見逃さずに
素早くシャッターを切っていく。
「あぁっ最高だよユイ君!!…いやシンジ君!」
「一生モンの宝物だよ~これは♪」
写真を一頻り撮り終えた2人は撮った写真を確認して
ご満悦そうな表情を浮かべる。これでようやく終わりかと
思っていたシンジだったが、突然振り向いた2人に
さあ次だ!とまだまだ続くを宣言され軽く絶望する。
(もうなるようにしかならない…よな)
シンジ達は一度廊下へ出て、隣の部屋へと入る。
そこは先程の部屋とは違ってシックなカフェのような
内装が用意されていた。
「次はこれを来てもらうにゃ♪」
シンジは受け取った紙袋をクローゼットで開ける。
中に入っていたのは丁度この撮影セットに合うような
クラシカルタイプのメイド服だ。
パッと見でも分かるほど高級品であり、彼らがこの撮影に
どれだけの熱意を懸けているかが無駄に分かった。
「あぁ最高だよユイ君!!」
「さあこっちからこう、台本の通りにね!」
シンジは2人からコーヒーと紅茶を淹れるよう指示され
台本を手渡される。コーヒーも紅茶もインスタントだが
豆や茶葉はしっかりした物が使われているようだ。
「お待たせ致しました。ご主人様、お嬢様」
カシャカシャ!カシャカシャ!
シンジはそう言ってトレーに乗せたコーヒーと紅茶を
2人の座るテーブルへと置く。冬月の持っていたカメラは
ビデオカメラへ変わっており、録画ランプもしっかりと
点っている。
「お味は如何でしょう?」
「最高だよユイ君!」
「世界一美味しい味だよん先輩!」
2人が飲んでいるものは高価ながらも市販品なのだが
この状況こそが2人にとって最高の調味料らしい。
「ああ、ユイ君も飲んで構わんよ」
「うんうん、私たちはそれを眺めて飲むからさ!」
(一通り付き合うしかないかな、これは…)
シンジはそう思いながら自分用に淹れた紅茶を飲む。
すでに2人はシンジのことをユイ君、先輩、と呼んでおり
並大抵のショックでは戻ってくることはないだろう。
「母さんが戻ってきた時怒られますよ?」
「構わん構わん、元より覚悟のうえだとも!」
「私もそうだにゃ~!…怒られるのもいいかも~?」
2人は尋常ならざる覚悟でこの撮影に臨んでいるらしい。
シンジは最早この2人を止める術は自分には無いと確信し
最後まで付き合う覚悟を決めた。
続いてやってきた部屋はまさに撮影スタジオと言うべきか
背景スタンドや照明機材まで用意されていた。
今は真っ白の背景紙がスタンドにセットされている。
「今度はこれね♪順番に着てもらうからにゃ~」
シンジが手渡されたのはスクールボストンバッグだ。
今までとは違い何着分か入っているらしく、やや重い。
「…えっ!?何でコレ…大丈夫なのか!?」
シンジは中に入っていた物を見て、思わずスタジオへ戻り
バッグの中身は着ていいものなのかを2人に尋ねる。
「うんいいよ~予備だから」
「あぁいいだろう。万一の場合は私が責任を取ろう」
「いいのかよ…」
2人からあっさりOKが出たのでクローゼットへ戻る。
多分本人たちへの確認は取っていないのだろうが
ここで逃げようとしてもまず捕まってしまうだろう。
シンジは全ての責任を冬月に押し付けることを決意し
ボストンバッグの中身へ手を伸ばした。
「プラグスーツ…僕まで悪さしてる気分だよ全く…」
入っていたのは白と赤、ピンクの3枚のプラグスーツ。
見知った少女達のプラグスーツを着るという事態に
もの凄く気まずい気分になってくる。
シンジはまず、この状況の主犯の1人でもある少女マリの
ピンク色のスーツに袖を通した。
「お~お~お~!私のから着てくれたんだね!」
自分のスーツを着たシンジにマリは大興奮である。
冬月も悪くないとばかりに頷いている。
「ならば壁紙はこれになるかな」
冬月がスタンドを操作し、サーキットの背景紙が降りた。
マリからは台詞をメモした紙とモデルガンを手渡される。
シンジは銃を構えてセリフを言うが、恥ずかしさが抜けず
何度もマリに指摘を入れられやり直す。
「………的を~狙えば外さないよ~ん♪」
カシャ!カシャ!
マリが時々口ずさんでいた「グランプリの鷹」の
イントロを同じように口ずさみながら銃撃の構えを取ったシンジ。
「最ッ高!!!冬月先生!しっかり撮れてる!?」
「完璧だよマリ君!」
2人はご満悦のようである。
「次は…レイのかな」
クローゼットへ戻ってきたシンジはマリのスーツを脱ぎ
今度はレイのスーツを手に取る。仮にそれを知られても
レイなら気にすることもなく許してくれそうだ。
「どんなセリフ言わされるんだろ…」
レイのスーツを着てきたシンジを見て冬月がスタンドを
月が輝く夜景へと切り替えた。マリから手渡された紙に
書かれていたセリフを見てシンジは思い出した。
(ケンスケの映画のレイだこれ!)
シンジは思ったより余裕を持って演技を成功させた。
レイの様子は普段から見ていてイメージし易いのもあるが
何よりもセリフが恥ずかしいものではないからだった。
「……あなたは死なないわ、私が守るもの」
「「おお~っ!」」
カシャカシャ!
映画のレイと今のシンジが重なり、幻想的に見えた2人は
感動にも近い反応を示した。2人が満足したのを確認した
シンジはクローゼットへと戻る。
「さて、最後は………」
残ったのは赤色のプラグスーツ、アスカのスーツだ。
マリは大喜びだったし、レイなら許してくれそうだが
さすがにアスカがこれを知ったら激怒しそうである。
それを考慮し、せめて前者2人のスーツで時間を稼いで
ミサト辺りが来てくれないものかと期待したのだが
結果は無常、誰もここへは来ていない。
「ごめんアスカ!!僕は使徒よりあの2人が怖いんだ!」
シンジはここには居ないアスカへ最大級の謝罪を述べて
意を決して彼女のスーツに袖を通した。
「ふおぉ~っ!姫スーツのワンコ君!!!」
親しい人同士がコラボした今のシンジの姿にマリは
荒い鼻息をあげるほど大興奮だ。
「似合ってるじゃないかユイ君!」
冬月も満更でもない様子で感想を述べつつ壁紙を変える。
アスカと再会したオーバーザレインボーを思わせるような
クルーザーの甲板上から撮られた海の壁紙だ。
「ワンコ君にはこれを言ってもらうよん♪」
マリから手渡された紙に書かれているのはパッと見では
単なる罵倒のセリフ。しかしマリ曰くアスカと言えば
このセリフらしい。ドイツにいた頃からずっと
なんだかんだ言われ続けているセリフだそうだ。
(………分かる気がする)
シンジは目の前の少女の姿に思わず納得した。
マリのスーツの時ほどではないがこちらも苦戦した。
シンジは特に相手を罵倒したりする事など全く無かった
ため、イメージがしにくかったのだ。
「あ、あんたバカァ?」
「もっと相手を見下すような気分でっ!」
「堂々とするんだユイ君!」
だが、ふと気付く。目の前にいる2人へ抱いている感情を
そのまま表へ出してしまえばいいのではないか、と。
そう気付いたシンジは1発で撮影を成功させる──
「…あんたバカァ!?」
カシャカシャカシャ!
プラグスーツでの撮影をなんとか乗り切ったシンジは
いつもの白衣に着替えて2人の後へついて行く。
また隣の部屋へ移動するのかと思っていたが、行き先は
居住区内では無いらしい。
「さて、もうすぐ着くよ」
シンジはNERV本部に備え付けられたジムへとやってきた。
スポーツウェアで撮影でもするのだろうか、と
考えながら歩いていくが、向かっていく先を示す看板に
非常に嫌な予感が溢れ出す。
[屋内プール]
かつて友人に1度きりだと宣言して着たアレを、下手すれば
それより過激な物の可能性すらあるあの衣装が浮かぶ。
(これ…水着着せられるやつだよなぁ)
シンジにとって幸いだったのが、ジムへ入ってからは
人を1人も見かけていなかったことだ。
まるであらかじめ人避けがされたかと思うほどに
利用客の少ない時間ならこの事が露呈する心配は少ない。
「…さて最後だにゃん♪これ、着てねっ♪」
「監視カメラは切ってある。安心したまえ」
更衣室の前で手渡されたのは、青色のワンピース水着だ。
しかも、パッと見た限り布面積はかなり少ない。
シンジはもう目の前の2人がラミエルやサハクィエルより
恐ろしく見えていた。逃げる事などは許されないようだ。
「………ど、どうかな」
シンジは顔から蒸気が上がりそうになるほど顔を真っ赤に
しつつ、更衣室から恐る恐る2人の前へと姿を現す。
「うっひょぉ~~♪最高だにゃ先輩~~っ!!!」
「あぁ、あぁユイ君!エデンはここにあったのだ…!」
「……………」
カシャカシャカシャカシャ!
2人はビデオカメラもしっかり回しながら写真を連写し
己の目にもその光景を焼き付けていく。
2人のあまりの大興奮っぷりに、さっきまで真っ赤だった
顔も呆れの表情へと染まっていくシンジ。
「ぐふっ…!ユイ君…私は……」
バタッ!
ついに冬月が鼻血を吹いて倒れた。
マリも恍惚に浸っているのか動けずにいる。
「…ミサトさん?今本部にあるジムのプールにいます。
何も聞かずにここへ来てください。」
シンジは倒れた冬月を放っておく訳にもいかなかったので
ミサトへ連絡だけ入れると、最悪な気分を切り替えるべく
2人からカメラを奪い取ってプールへと飛び込んだ。
(…水に入ると今までの気分がスッキリするね)
連絡を受けて駆けつけたミサトは血まみれで倒れる冬月と
カメラを手に慌てるマリ、際どい水着で泳ぐシンジという
カオス過ぎる現場の有り様に驚愕した。
そして、いつもの白衣に着替えてきた無表情のシンジに
今日の夕食で最高級の料理とビールを用意するから
このことは黙っていてくれと言われたミサトは
何が何だか分からないまま納得するしかなかった。
もちろん、2人の持っていたカメラのデータは消し飛び
プールで撮影された映像と写真──シンジの水着姿は
他へ発覚することは無かったという。
後にミサトはこう語る─
「あの日ほど混乱したのはセカンドインパクト以来よ」
…と。
つづく?
冬月とマリが手を組めばきっと
こうなるかと思われる。
ミサトさんがあちら側なら…?
冬月先生が尊さに耐えきれずリタイアしたため
これ以上の被害?は出ずに済みました。
ちなみにパイスーまでに撮影された写真と動画は
ご丁寧にバックアップが取られていた模様。