新世紀エヴァンゲリオン 天才少年シンジ君(試作) 作:高橋ヒナタ
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──NERV本部司令室。
「要塞都市の強化プランはどうだシンジ?」
「予定通りの進行だよ。新型装甲板への差し替えも順次」
シンジとゲンドウは次の使徒に備えて、本部や要塞都市の
迎撃設備などを徹底的に強化するプランを実行していた。
その強度は凄まじく、ラミエルの全力の加粒子砲でさえ
難なく受け止められるとの試算が出されているほどだ。
「N2バックパックに関しては?」
「うん、そっちも進めてあるよ。実験のデータ取りは
レイとリツコさんに頼んであるから後で聞いておいて。」
エヴァの電源まわりの強化も進めてあり、その稼働時間は
内部電源のみでも15分、N2リアクター内蔵バックパックで
実質無制限になるというレベルにまで達していたのだ。
「時田博士、マステマの完成度合いはどうだ?」
「N2ミサイル以外は今からでも使えますよ」
今ここに居ないリツコの代わりに時田が現状を答える。
新たに全領域兵器マステマとビゼンオサフネが実用化。
対フィールド特化型のプログダガーも開発されており
サキエル程度なら苦もなく退けられる戦力が揃っている。
「回してもらった予算で対人面も強化していますよ」
「資材の方もエヴァの余剰分を回させよう」
実はここNERV本部は人類の未来を担う組織としては
違和感が残る程侵入者要撃のための予算が下りないのだ。
今のところ大きな被害は以前あった停電くらいで
済んでいるが今後それ以上の被害が無いとは限らない。
ゲンドウはエヴァの修繕費などから浮いた分を一部
そういった対人設備の予算へと回していた。
「第3基部の方はどうする?僕としては欲しいとこかな」
「メインシャフト直上か…そうだな、予算を回そう。」
ここまでシンジとゲンドウが大きな被害も無く使徒を
撃退してきたためか、ゼーレはかなり機嫌が良いようで
使徒迎撃用の予算に関しては融通が利いたのだ。
「加持監察官、各支部の様子はどうだ?」
「これがデータを纏めた書類です。どうぞ」
「これは…」
加持から手渡された書類を見た一同は顔をしかめる。
そこに記載されていたのは9体の量産機の建造計画と
それとは別にエヴァの素体が4体分ドイツ支部へ極秘で
搬入されていたという報告だった。
「S2機関…厄介なことになりそうだね」
量産機に使われる動力源がなんとS2機関だというのだ。
シンジ達NERVはいずれゼーレに刃を向ける気でいるが
その場合、この量産機たちは倒さねばならないのだ。
ドイツに運び込まれた4体がどうなるかも気になる所だ。
「既存のエヴァの強化を急がねばな…」
「僕もしばらく働き詰めになりそうだなぁ」
「我々もお手伝いしますよ、シンジ博士」
司令室に集った面々は揃ってしかめっ面をしながらも
ゼーレと本格的に事を構える覚悟を決めなおす。
ピーッ、ピーッ
「私だ」
『旧小田原防衛線からの連絡が途絶えました』
ゲンドウの元へ突如入った連絡は、第三新東京市の東側の
旧小田原付近に敷かれた防衛線が壊滅したとの報だった。
「総員、第一種戦闘配置だ。我々も発令所へ向かう」
『了解』
「…第14使徒だね」
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「冬月、今戻った」
すでに本部のセンサーはパターン青を捉えており
エヴァの発進準備を含め着々と戦闘準備が進められる。
主モニターにはここへ向けて侵攻する使徒の姿が
ハッキリと映し出されている。
「最強の拒絶タイプ…破壊力は想像したくないな」
黒い帯を包帯のようにぐるぐる巻きにした繭のような体に
サキエルらとは少し違う恐ろしさを感じさせる様な形状の
仮面を付けただけという変わった風貌をした使徒──
「第14使徒ゼルエル」だ。
「通常攻撃には目もくれず、か」
冬月がそう言ったようにゼルエルは無数の迎撃設備や
国連軍の戦闘機からの砲撃に一切反応をしていない。
悠々と空を飛び侵攻する姿には覇気すらも感じられる。
カッ!!!
ズドォォォォーーーンッ!!!
ゼルエルの双眸が輝いたかと思ったその瞬間、要塞都市の
ど真ん中から凄まじい光の柱が立ち上る。同時に凄まじい
爆発も巻き起こり、迎撃設備はいとも容易く消し飛んだ。
ただの巻き添えだというのに被害は甚大だった。
しかし、NERV職員を震え上がらせたのはそちらではなく
ゼルエルが狙っていたものの損壊報告、第三新東京市と
ジオフロントを隔てる特殊装甲板の損壊報告だった。
「第1から第9番までの特殊装甲板、損壊!!」
「あれほど強化された装甲が一瞬で9枚も…!?」
1枚だけでも凄まじい防御能力のある強化型装甲板が
まとめて9枚も貫かれたのだ。信じられない程の高火力を
ゼルエルが有しているという何よりの証拠だった。
さらに言えば強化された装甲板はあと7枚しかない。
通常の装甲板もあと8枚残ってはいるがあの高火力では
下手すれば次で抜かれてしまう。
『時田さん!残った装甲板のPS層の電圧を最大に!!
ラミネート層の排熱へも電力を回してください!
そうすればまだ耐えられます!』
エヴァの配置を進めていたシンジから大声で通信が入る。
地上迎撃は間に合わないと見たミサトの指示を受けて
ジオフロントへのエヴァ展開を進めていたのだが
まだ準備が整っておらず、今侵入されると厄介なのだ。
「あ、あぁ!損壊した層のリアクターからも電力を回せ!
目いっぱいだ!」
カッ!!!
ズドォォォォーーーンッ!!!
時田の指示で装甲板の機能がフル稼働を開始した瞬間
ゼルエルの第二射が放たれた。
「特殊装甲板、第15番まで損壊!!」
装甲板は多少の余裕を残して耐えることが出来ていた。
もう一射されればジオフロントへの侵入を許してしまうが
シンジ達もエヴァの準備を整えることが出来ていた。
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「さてと、これで準備は整ったね」
地面にずらりと並べられたコンテナからそれぞれの武装を
取り出して装備した6人。近接戦闘を仕掛けることになる
初号機と2号機、3号機の背中にはN2バックパックが
取り付けられている。
「さぁて、顔出した瞬間ぶち抜いてやるにゃ♪」
「…撃ち抜く」
強敵を前にして昂っているのかマリはパレットライフルを
天井の都市へ向けて待ち構えている。
レイもそれに倣ってスナイパーライフルを構える。
「あないなヤツ、ワシらで何とか出来るんか?」
「ら、らしくないじゃない鈴原」
トウジとヒカリもそれぞれ武器を構えてはいるが
初陣で凄まじい強敵が現れたからかかなり緊張している。
そんな様子を見たアスカは2人へ声をかけた。
「ヒカリ、ジャージ、先輩パイロットの私から命令よ!」
「な、なんや惣流急に!」
"先輩からの命令"という普段よりさらに高圧的な口調で
指示が飛んできたことにトウジは驚いて聞き返したが
アスカから出された指示は2人を気遣ったものだった。
「死なないこと。いいわね?」
「お、おう、せやな」
「…うん、分かったよ惣流さん」
このやり取りで2人の緊張はほどよく解れていた。
トウジはスマッシュホークを、ヒカリは軽量型ESVと
ハンドガンを構え直す。
…ズドォォォォーーーンッ!
「来た!」
天井の都市から大爆発が起こり、ビル群がガラガラと
ジオフロントの大地へと落ちていく。
瓦礫が飛び散るなか、ついにゼルエルがジオフロントへと
顔を出した。巻きついていた黒い帯が解かれており
ヒラヒラと棚引いている。
『攻撃開始!』
ミサトの指示で6機が持つ遠距離武器が一斉に火を噴く。
スナイパーライフルが、パレットライフルが、バズーカが
ハンドガンが。無数の弾丸が雨あられのようにゼルエルへ
向かって飛んでいく。
「N2ミサイル、いっけぇッ!!!」
初号機の握るマステマからはN2ミサイルが発射される。
それに対してゼルエルが取った行動はATフィールドによる
防御。通常の弾丸ならあっさり弾き返せるだろうが
シンジが放ったN2ミサイルはそう簡単に防ぐことは
出来ないだろう。
──それが1枚であれば、だが。
「フィールドを複数枚!?」
ドォォォォーンッ!!!
ゼルエルはATフィールドをこちらへ押し出すようにして
複数枚展開して弾丸を弾き返しつつ、自身から離れた
場所でN2ミサイルを爆発させてみせたのだ。
「こんのォッ!」
「まだまだいくにゃッ!」
ライフルやバズーカを連射してもフィールドを押し返す
程度で無数に展開されたフィールドを破ることは
まるで出来ていなかった。
「アスカ!切り込もう!」
「了解!狙うはコアのみッ!」
遠距離武器が効かないと見るやいなやシンジとアスカは
近接武器に持ち替えてゼルエルへ突撃する。
ゼルエルは射撃を防御するのに気を取られているようで
初号機や2号機へ攻撃する様子は無い。
「うおぁーッ!」
「食らえーッ!」
磨きあげられた戦闘センスを活かして懐へ飛び込んだ2人。
初号機の持つマステマと2号機の持つビームグレイブが
ゼルエルのコアを捉えようとした瞬間だった。
ガキィンッ!!
「なっ!?コアを…ぐあっ!」
「防いた!?きゃぁっ!」
コアの両脇から生える爪のような部位を使ってガードし
ダメージを防いただけでなく、フィールドを瞬時に展開し
初号機と2号機を吹き飛ばして見せたのだ。
「帯が!ヤツの帯が巻き取られていくで!?」
迫り来る2機を弾き返したゼルエルは自らの黒い帯で
最も長い一対をくるくるとロール状に巻きとっていく。
攻撃のための行動だというのは何となく想像がつくが
それを一体どうやって攻撃に使うのかまではまるで
想像がつかなかった。
…バシュゥッ!!
「「!!!」」
巻き取りが終わった瞬間、零号機と5号機を目掛けて
その帯を打ち出したのだ。自分が狙われていることに
気付いたレイとマリはすぐにエヴァを回避させる。
「…ライフルが…!」
「いててっ…危ないことしてくれるにゃァ…」
零号機も5号機も回避には成功したが持っていた得物は
紙っぺらのように真っ二つにされ、零号機は左腕に
5号機は脇腹に浅くない切り傷を負っていた。
「まだ打つ気よ!」
ゼルエルは打ち出した帯を再び手元へ戻すと今度は
やけに動きが鈍い2機へ狙いを変更する。
「トウジ!委員長!避けろッ!!」
バシュゥッ!!
「のわ~ッ!?」
「ガードっ…あうぅっ!」
トウジはすんでのところで回避に成功し、ヒカリは
ESVシールドで受け止めることに成功していた。
しかし4号機は受け止めた時の衝撃でぶっ飛ばされてしまい
両肩のウェポンラックが破損し使えなくなっていた。
「今度はこれで行くか…にゃッ!」
「アタシも行くわ!」
アスカとマリがコンテナからサンダースピアを取り出し
ゼルエルへ向かって駆け出す。帯を使った攻撃には
多少なりともインターバルがあるため、2人であれば
それを回避しつつ突撃することが可能だった。
「援護するよアスカ!」
「私もいくわ」
突撃したマリとアスカに狙いが向かないようにシンジは
マステマの射撃で、レイは2丁のパレットライフルで
攻撃を行いゼルエルの気を引こうと動く。
「ワシも陽動行ったるで!」
3号機もスマッシュホークを両手に持って走り出し
アスカ達とは別の方向からゼルエルへ接近する。
これらの陽動は多少の効果を発揮したようで、ゼルエルは
その帯を誰に打ち込むべきか迷ったのか帯を使わずに
フィールドによる防御を選んだのだ。
「「フィールド中和効果全開!!」」
2号機と5号機がフィールド偏向を起動して飛び上がる。
「「うおりゃァァァーッ!!」」
ガキィィィーーーンッ!!!
ゼルエルはフィールドを一点集中させてガードしたが
エヴァ2機が全重量と落下エネルギーをかけた一撃は
凄まじい衝撃だったのか地面へとめり込んでいた。
「ゼロ距離ならばっ!」
「ペンシルロック!」
2機の両肩からニードルガンが発射され、計24発の弾丸が
ゼルエルのATフィールドに打ち込まれる。
「「!!」」
打ち込まれたニードルは全てフィールドで受け止められ
サンダースピアのバヨネットもフィールドを貫くことは
出来ていなかった。
そればかりか、ゼルエルはフィールドを器用に使い
2機を吹き飛ばそうと構えている。
「2度も食らってたまるもんですか…ッ!!」
「おわ~っ!?」
先程同じ攻撃を食らっていたアスカは間一髪で飛び退き
吹き飛ばされずに済んだが、マリは見事に吹き飛ばされ
ビルの瓦礫に叩きつけられてしまった。
「マリ!上ッ!!」
「……ヤバっ!?」
ゼルエルは追撃の手を止めようとはしない。
吹き飛ばされた5号機の上空へATフィールドを展開し
そのまま5号機へ振り下ろしたのだ。
マリは5号機をすぐに飛び退かせたことで
潰されるのは免れたが、先程まで5号機がいた所には
ぽっかりと大穴が開けられていた。
「くっ…やってくれるじゃないの」
「んにゃろ~何てヤツ…!」
ここまで何度か連携も交えてゼルエルへ攻撃しているが
ダメージを負ったのはエヴァ側のみであり、ゼルエルには
まだロクな傷すら付けられていなかった。
「取り敢えずあの帯を切り落としたい所だね…」
「そうは言うてもなセンセ、落とせるモンなんか?」
光線を使ってこないのには謎が残るものの、ゼルエルの
主な攻撃手段は帯を使った攻撃である。それを切って
封じてしまえればあとはフィールドを破るだけだ。
ただ、容易に実行出来る作戦とはとても言えなかった。
『さすがは力を司る使徒…僕がこのまま出ていっても
勝てるかどうか怪しいなぁ』
発令所のカヲルも難しい顔をしていた。彼が第1使徒と
同等の存在だといっても人の姿をとっているせいか
絶大な力を誇るゼルエルに勝てるとは限らないらしい。
「………仕方ないわね。マリ、"アレ"を使うわ」
6機がかりで傷1つつけられないというあまりの劣勢に
アスカは自身の持つ切り札を切る覚悟を決めていた。
つづく
ここまで6機がかりでノーダメージです。
決着は次回!
PS層とラミネート層…ええ、SEEDのアレです。
PS装甲は宇宙でしか作れないそうですが
擬似的な何やかんやで簡易版を作らせました。
ドイツ支部へ搬入された4機に関しては
正体判明はもう少し先になります。