新世紀エヴァンゲリオン 天才少年シンジ君(試作)   作:高橋ヒナタ

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バタフライエフェクトに悩まされつつも
28話、書き終わりました…っ!
だいぶお待たせしちゃいましたね…。

ゼルエルくんの残した爪痕が
色々と見えてくる回です。
悪いことも、良いこともね。



最強が遺したもの

 

 

 

──NERV本部、第一発令所。

 

 

『特殊装甲板へ回す資材がまだ足りてない!』

「こっちからも余った資材を回しておくから使ってくれ」

 

『第4班と第13班から人員不足との連絡です』

「人員はここも足りてないんだ!他を当たってくれ!」

 

『来ている抗議文の対処はどうなってる?』

「あぁ、適当に返しておいたさ。非常事態だってな」

 

 

戦闘終了から一夜明け、被害の全貌が見えたことで

本格的な復旧作業が始まっていた。

第14使徒ゼルエルを辛くも撃破したシンジ達だったが

ゼルエルが残していった爪痕は非常に大きかったのだ。

 

 

 

「第三新東京市の迎撃設備はほぼ全滅ですね…」

 

目の前に並べられた被害状況の報告書を見てマヤが呟く。

ゼルエルが放った数発の怪光線の余波だけで

地上の迎撃設備は軒並み破壊されてしまっていた。

 

「装甲板復旧の目処は立ちそうか?」

 

「本当に復旧だけで手一杯、って感じですかね」

 

見事な大穴を開けられてしまった24層の特殊装甲板は

急ピッチで修復工事が行われているが、MAGIの試算では

次の使徒襲来までに間に合う可能性は47%ほどと

あまり期待できないような数値が提示されていた。

 

「シンジ君が動ければ少しはマシなんですけどね…」

 

シンジが左腕の精密検査でしばらく動けないために

最新型の装甲板も最終チェックが一時中断となってしまい

導入が見送りとなっていたのだ。

 

「本部用の人員と資材を追加で回すそうだ」

 

「しかし…それで本部はどうするんですか?」

 

シゲルの問いかけに冬月は渋い顔になる。

本部設備の方も衝撃でいくつか破損しているのだが

使徒迎撃を最優先とすべく本部へ回す人員や資材を

目一杯削って装甲板とエヴァの復旧へ回していたのだ。

 

「発令所の機能が生きているのは幸いかしらね」

 

リツコはゼルエルとの戦闘で発生しうる被害を想定した時

ここ第一発令所が落ちてもおかしくはないとしていたが

シンジ達の善戦により基本的な機能に大きな損傷は無く

今のままでも問題は無いとの判断が出ていた。

 

「エヴァの修復資材は初号機を優先します」

 

「損傷が1番酷いのは初号機だからな…」

 

エヴァの損傷は初号機が最も酷く、左腕損失に加えて

全身の内部組織が装甲板ごと切り裂かれているため

ヘイフリックの限界をギリギリ超えてしまっていたのだ。

 

「3号機もかなり酷いですが…」

 

初号機と共にゼルエルの懐へ飛び込んでいた3号機も

短い帯による集中攻撃に晒されていたため

四肢の欠損こそ無いもののかなりの修理が必要な状態だ。

 

「初号機を優先しましょ。…問題なのは2号機ね」

 

エヴァの獣化第2形態を解放しゼルエルを撃破した2号機は

戦闘直後にゼルエルを食らい、その後眠りに落ちるように

活動を停止した。プラグにアスカを乗せたままでだ。

しかしNERVを悩ませていたのはエースの不在よりも

2号機が新たに獲得した能力の処置についてだった。

 

「…S2機関、ですよね?」

 

スーパーソレノイド機関、略してS2機関。

圧倒的な力を持つ使徒たちの活動エネルギーの源であり

半永久的に稼働する未知の動力機関である。

 

「一番の問題はそれね。他にも色々あるけれど…」

 

プラグを排出させるために2号機を外部から起動させた時

体内に強いエネルギー反応が確認されていたのだ。

永久機関と言えば夢のようだが、僅かでも扱いを誤れば

以前の4号機のように大爆発を引き起こす超危険物だ。

2号機は今休眠状態にあるが扱いには難儀していた。

 

「委員会はうるさいだろうな」

 

「あぁ、碇共々呼び出しを食らったが問題は無いさ」

 

ゼーレからS2機関の件について呼び出しを受けていた

冬月とゲンドウだが「2号機が制御下でなかった」こと

「獣化第2形態が勝利の鍵だった」ことを理由にし

追求をはぐらかし続けていた。

 

「…アスカはそのうち帰ってくるでしょう」

 

2号機のエントリープラグにアスカの姿が無く、エヴァに

取り込まれている状態だろうとのことだったが

シンジという前例があったため、アスカがプラグ内に

取り残されていることについて問題視はされなかった。

 

「…お母さんに会えるといいですね」

 

アスカが2号機の中で母と会えれば、アスカも2号機も

更なるパワーアップを遂げることが出来るのだ。

事情を知る者達はむしろこの状況を好ましく思っていた。

 

 

 

┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄

 

 

 

(ここは…いつも見た向日葵畑だ…)

 

アスカは無限に広がる向日葵畑に立っていた。

幼い頃から、母を失ったあの時から何度も夢に見る

背の高い向日葵が無数に咲き誇る花畑だ。

 

(……アスカちゃん…ママをつかまえてごらん?)

 

(これは…ママの声…っ)

 

この向日葵畑へ消えていった母を探して歩き続けるも

周りを取り囲む向日葵に遮られ結局は見つけられない──

アスカにとっては一種のトラウマのような場所である。

 

(あたしは…2号機に乗ってたハズよね………なら!)

 

ほんの少し前まで2号機に乗っていたことを思い出した

アスカはトラウマを振り払って向日葵畑を歩き出す。

 

 

(………うふふ…さあどこにいるでしょう?)

 

再び母の声が聞こえてくる。

 

(声の聞こえる方向が分かる…!?)

 

向日葵の背丈は大人たちよりも高い程に育っているが

アスカには頭の中に響いてくる母の声がどちらから

聞こえてきているのかがハッキリと分かった。

 

 

 

(あれ、向日葵畑から抜けちゃった……?)

 

母の声を追って歩き続けたアスカは、向日葵畑を抜けて

美しい大草原へとやってきた。ざっと見渡してみるが

この草原は小さな木がぽつりぽつりと生えている程度で

青空と共に無限のように広がっていた。

 

 

 

(…人?…まさかっ!?)

 

大草原にぽつんと佇む1人の女性を見つけたアスカ。

その女性は自分と似た美しいブロンドのロングヘアで

黄色いワンピースを着ている。

2号機の中にいる人物でそんな見た目をしているとしたら

アスカの知っている人の中ではただ1人しかいない。

自らの母、惣流・キョウコ・ツェッペリンだ。

 

 

(………見つけたっ…やっと!)

 

 

アスカが女性の元へ駆け寄ると、彼女もアスカに気付き

くるりと振り向く。女性が浮かべる眩しい微笑みは

アスカの記憶の奥底にある母の微笑みそのものだった。

 

(やっと会えたわね、アスカちゃん)

 

(ママっ!ママぁっ!)

 

大粒の涙を流しながら母の胸に飛び込んだアスカ。

直接会うことは叶わないだろうと思っていた最愛の母との

再開にアスカはしばらく嬉し涙を流し続けていた。

 

 

 

 

 

(落ち着いたかしら?)

 

(ぐすっ…少し、落ち着いた)

 

ようやく落ち着いたアスカは改めて母の顔を見上げる。

その姿は幼い頃見た姿から全く変わっていなかった。

 

(2号機にかなり無理させちゃったわ…ごめんねママ)

 

(今回もよく頑張ったわね。立派だったわよアスカちゃん)

 

サハクィエル戦に続き2号機を大きく損傷させたことを

かなり気にしていたアスカだったが、母は特に気にもせず

アスカの活躍を大いに賞賛してくれていた。

 

(きっとまだ使徒は来る…その時は力を貸してくれる?)

 

(勿論よ♪ユイさんの初号機にも負けないくらいに

頑張っちゃうわよ~)

 

自分のためにこれ程まで張り切ってくれるのは嬉しいが

やり過ぎや盛大な空回りをしてしまわないだろうか、と

少し不安にもなったアスカであった。

 

 

 

(そういえば、シンジ君ってとっても素敵よね~)

 

(………)

 

やけにニコニコしながら話題を切り替えてきた母に

アスカは何とも言えない表情を浮かべる。

母が今浮かべている表情は最近よく見る表情──

自分たちをまとめている女上司がシンジ達相手によく

見せている表情であり、面倒事の予感しかしない。

 

(彼氏にいいんじゃないかしら♪)

 

(……はぁ、シンジには婚約者がいるんだって)

 

(あらそうだったの、残念だわ)

 

実際はシンジとレイは別に婚約している訳では無いが

天然でマイペースなところがある母を諦めさせるため

あえて「婚約者がいる」とアスカは言ったのだ。

毎回シンジとの仲を根掘り葉掘り聞かれても困る。

 

(せっかく会えたんだから色々お話していきましょ)

 

(まぁそうね、ここならゆっくりできるらしいし)

 

母と娘が楽しそうに語らう声は、流れるそよ風に乗って

無限に広がる草原にしばらくの間響き続けていた。

 

 

 

┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄

 

 

 

「シンジ君、左腕は動かせそう?」

 

看護師にそう聞かれ、シンジは左手へ意識を向けた。

 

 

 

「…ダメだ、動かせそうにないや」

 

目一杯力を込めようと意識してもシンジの左腕は

ピクリと動く程度でまともに動く状態では無かった。

 

高いシンクロ率を保った状態でエヴァが損傷すれば

フィードバックダメージは痛みだけにはとどまらない──

フル稼働をさせればパイロットにも相当の疲労が溜まるし

手足が切断されたりでもすればパイロットの脳は

自分の手足は無くなったものだと誤認してしまう。

 

「地道にリハビリしていくしか無さそうだなぁ…」

 

そう言いつつもシンジは自分のパソコンを取り出し

右手を上手く使ってNERVの現状を確認し始める。

 

「シンジ君、無理はしちゃダメですからね?」

 

「分かってます。本職はこっちじゃないですし」

 

心配する看護師に余裕はあるとの返事を返しながら

シンジはゼルエル戦の被害状況に目を通していく。

 

「初号機の左腕は…あとでシンクロテストするとして

穴空けられた装甲板を早いとこ直しておかないとなぁ。

コストカットしたい所だけど…うーん」

 

覚悟していたとはいえ想像以上に各所で被害が出ており

シンジは思わず頭を抱えそうになる。

特にあの装甲板は「使徒迎撃の際の最終防衛線」という

扱いであり、戦闘がジオフロントまでもつれ込むどころか

たった数発の怪光線で破られるなどとはシンジ自身も

想定すらして居なかったのだ。

 

「第三基部…メインシャフトの補強が必要かな。

そこに関しては元々あったプランを再利用出来そうだ」

 

MAGIも使徒再来に間に合うかは微妙と言っていたのを

思い出し、シンジは被害状況の整理を早めた。

 

 

 

「シンジ君、ちょっと…いいかしら?」

 

予定にない上官の訪問にシンジは一旦作業の手を止める。

声色からしてどうやら困り事を抱えているらしい。

 

「はい。大丈夫ですよ」

 

シンジは進めていた作業を保存して一旦切り上げると

扉から入ってくるミサトの方へ顔を向けた。

 

 

「シンジっ!」

「ぐえっ!?」

 

水色の髪の誰かが飛び込んできた事に気付いたその刹那

シンジは凄まじい衝撃と共にベッドへ叩きつけられた。

 

「………うぐっ…レイ?」

 

飛び込んで来たのは半泣き状態のレイだった。

 

「よかった…生きていてくれて…ぐすっ」

 

シンジがゼルエル戦後から数日間目を覚まさなかったうえ

左腕の精密検査を行っていた事もあって、レイはここ数日

シンジと会うことが出来ていなかったのだ。

 

「心配させてごめん、僕はちゃんと生きてるよ」

 

シンジはレイを抱きしめながら頭をそっと撫でる。

 

「暖かい…この暖かさ、好き」

 

就寝前と同じ抱擁にレイは少しずつ落ち着きを取り戻し

荒れていた呼吸も整っていった。

 

 

 

「ミサトさん、ここへ来た用事って?」

 

レイが落ち着いた所で、ミサトへここに来た理由について

なんとなく想像はつくが尋ねてみる。

 

「あ~それはね…」

 

ミサト曰くゼルエル戦後に行われたシンクロテストで

レイのシンクロ率が急落し、訓練にも集中できない状態が

ずっと続いていて一向に改善しないらしい。

他の作業は可能な限りバックアップを手配しておいたから

レイのメンタルケアを頼みたいとのことだった。

 

「2人にはしっかりと休暇を楽しんできてもらうわ。

レイが元気になるまでゆっくり休むこと、いいわね?」

 

有無を言わせぬミサトの表情にシンジは素直に頷いた。

そして、疲れてしまったのかぐっすりと眠るレイを見て

自分も一旦寝ることにしたシンジだった。

 

 

 

                      つづく




次回は多分アラエルさん。
その前に日常回挟むかも?

バタフライエフェクト、大きくなるのは
この先が本番なんですよね…
書きたいことはざっと纏まってますが
綺麗に収まるかどうかは分からん。

期待せずに待ってて下さいね。

追記:R18編 28.5話を投稿しました。
シンジとレイの"休暇"が気になる方は
そちらも併せてどうぞ。
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