新世紀エヴァンゲリオン 天才少年シンジ君(試作) 作:高橋ヒナタ
シャムシエル戦は次回。
「ミサトさん、ゴミ袋を用意してください」
あたしは今、碇司令がシンジ君を前にして
ああも冷や汗を流す理由を知った気がした。
こっちを見るシンジ君の表情はやはり笑顔なのだが
それを向けられて初めて分かった。
目がまるで笑っていないのだ。
「は、はいっ!今すぐ用意します!」
このシンジ君には勝てる気がしなかった。
ゴミ袋を探し出して彼に手渡す。
「さて…疲れるけどやりますか」
シンジ君に指示されながらゴミを片付けていく。
あたしもゴミの仕分けくらいはやるけど
シンジ君のそれはとても的確で素早かった。
あっという間に燃えるゴミ燃えないゴミ
カンとビン、ペットボトルと仕分けられていき
十数分もしないうちに新居のように綺麗に片付いた。
実を言えばあたしもここに越してきて
そんなに時間は経ってないんだけど。
「夕食の準備しますか。ミサトさんは既製品のほうを
テーブルに広げておいてください。」
買ってきた惣菜を並べ、冷凍食品をチンする。
ビールも追加で数本冷蔵庫から取り出しておく。
シンジ君の手元を覗き込んでみると
ジャガイモとソーセージ、玉ねぎを炒めている。
ドイツ料理でこの材料ならジャーマンポテトね。
あっちじゃシュペックなんとかって呼ばれてたけど。
隣にはキャベツとツナをドレッシングで和えたもの
これはザワークラウトかしら?
美味しそうな香りがキッチンに立ち込め
思わずヨダレがこぼれそうになる。
「さ、出来ましたよ。」
「う~ん美味しそうないい匂いだわ♪」
「「いただきます」」
ほっぺたが落ちるような味とはまさにこれのこと
そう思えるほどシンジ君の手料理は美味しかった。
ビールもさっそく2本目、ついつい進んでしまう。
これは彼も喜ぶだろう、まだ寝ているかも知れないが
もう1人の同居人にも声を掛けてみる。
「ペンペン~!起きてたら来なさ~い!」
「クエックエッ!」
ペタペタと音を立ててすっ飛んできた同居人。
「うわわっ、ひょっとしてペンギン…ですか!?」
「そうよー。新種の温泉ペンギン、ペンペンよ。」
ペンペンにジャーマンポテトとザワークラウトを
取り分けてあげると、物凄い勢いで食べ始める。
彼もシンジ君の料理は気に入ってくれたらしい。
ストローを器用に使ってビールを飲んでいく。
夕食を食べ終えたペンペンは自室である冷蔵庫から
お風呂セットを手に取るといつもよりテンション二割増で
脱衣所のほうへと駆け抜けていった。
「なんというか…凄い生態してますね、彼。」
さすがのシンジ君も驚いた表情をしている。
レアな表情ゲットしちゃったわ。
「あ、そういえばファーストとセカンドって
今どこにいるんですか?」
…確かエヴァパイロットと面会させろって碇司令に
要求してたわね。司令も一応首を縦に振ってたし
教えても別に大丈夫でしょ。
リツコは後でデータでまとめて渡すって言ってたけど
あたしもパイロットのデータは書類で持ってるから
シンジ君へファーストチルドレンのデータを手渡す。
「ファーストチルドレン、綾波レイよ。
セカンドは近いうちにドイツから来る予定だけど
彼女は明日の放課後は自宅にいると思うから。」
「なるほど…綾波レイとは明日会ってみます。
セカンドの方はドイツにいるのか。
近いうちに来るなら会った時に話せばいいかな」
「それとシンジ君、明日から中学校へ通ってもらうわ」
「ええっ!?」
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「ねェねェ碇さん、ちょっと聞きたいことあるんだけど」
「君があのロボットのパイロットってホント?」
シンジは登校早々クラスの面々に絡まれていた。
しかも最重要機密になっているハズのエヴァの情報が
既に中学生たちにまで漏れているとは
一体どういうことだろうか。
「ロボット…?なんのこと?僕ここへ越してきたばっかで
ほとんど何も知らないんだけどさ」
シンジはその質問にあえて違うと答えた。
エヴァに関する情報をこれ以上流す意味は無いし
間違いなくクラス中が大騒ぎになるだろう。
ただでさえ既に知っている内容の学び直しで
つまらないな、と思っていたのだ。
これ以上変に絡まれても厄介だ。
「まさかのボクっ娘!!」
「ボクっ娘美少女だなんて最高じゃないか!!」
「ねぇねぇ、彼氏とかいるのー?」
………どちらにせよ面倒事になるのは確実だったようだ。
ここで男だと言っても騒がれそうではあるが
どう答えても大騒ぎ確定、そんな雰囲気だった。
もうなるようにしかならないだろう。
「…いや、僕これでも男なんだけど。」
「ネットにしか存在しないハズのガチな男の娘や!!」
「帰国子女の天才美人男の娘だなんて!!」
「ドイツから来たって聞いたんだけどホント!?」
「あの…ちょっとええかー?…聞こえとらんなありゃ」
案の定大騒ぎしだしたクラスメートが迫る。
何か話をしたそうにこちらを見るジャージの少年を
横目に見つつ、質問の嵐を一つ一つ捌いていくのだった。
「よォ転校生。わざわざ来てくれてありがとうな」
シンジは昼休みにジャージの少年から呼ばれて
学校の校舎裏まで来ていた。彼の友人だろうか
カメラを持ったメガネの少年も一緒にいる。
「あのロボットのパイロットやないってホンマか?」
「あれ~おっかしいな…オレの調べじゃ確かに…」
「あー、騒ぎにはなりたくないって思って否定したけど
僕があのロボットのパイロットなのは事実だよ。」
シンジがエヴァパイロットだろうということが
学校中で噂されていた以上隠す意味はもはや無かった。
「やっぱりそうか!なぁ、エヴァについて教えてくれよ!
可能な範囲で構わないからさ!」
メガネの少年が凄まじい勢いで食いついてくる。
スーパーロボット系でも好きなんだろうか?
しかしジャージの少年はメガネの少年とは違って
興奮や驚きとは違う反応を返してきた。
「ホンマに助かったで!!妹を助けてくれて…
ホンマに…ありがとうな!」
どうやら前に助けたあの少女が彼の妹らしい。
学校に忘れ物を取りに戻っていたとかで
逃げ遅れてしまっていたらしい。
「鈴原トウジや、よろしくな。」
「相田ケンスケだ、よろしく!」
「知っての通り碇シンジだ、よろしくね。」
トウジと、そしてケンスケとも握手を交わす。
面倒だと思っていた中学校生活だったが
賑やかな友人も出来たし楽しくなりそうだ。
「しっかしお前、ホンマに野郎なんか?」
「分かるぞトウジ、正直信じられないよな。」
「あははっ、昔っから色んな人に言われるよ。」
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[第三新東京市市営住宅第22番団地6号棟、402号室]
シンジはミサトから受け取ったレイのプロフィールに
載っている彼女の住居へと向かっていた。
団地があるエリアは人通りがとても少なく
工事車両やクレーンの音だけが寂しく響いていた。
団地そのものもかなり古い造りなようで
壁面は塗装が剥げ、アスファルトの地面からは
かなりの量の雑草が顔を出している。
「こんなところに住んでるのか?14歳の少女が1人で…」
シンジ自身も海外にいた時は当然一人暮らしだったが
多くの街の人たちと交流しあって生活していたのだ。
[402 綾波レイ]
「"綾波"の表札だ…本当にここに住んでるんだな」
シンジはその表札を見てインターホンを鳴らす。
いや、鳴らそうとした。
何度か押しても音がならないのである。
「綾波さーん?いるーっ?」
扉をノックしてみるも反応が無い。
しかし留守なのかと思って一度ドアノブを捻ってみると
カギは掛かっていなかった。
水の流れる音が聞こえてきたことから
どうやら彼女はシャワー中らしい。
「しょうがない…少し待つか」
手に持っていたレジ袋を地面に置き
マンションの壁に寄りかかって考え事をする。
考えるのは彼女の安全性だ。
当然彼女もエヴァパイロットである以上は
保安諜報部のガードが付いているだろうが
誘拐しようと思えばいくらでもやりようがありそうだ。
シンジは帰ったらミサトに相談することを決めた。
「…碇くん?」
「うわっ!?綾波さんか、びっくりしたや…
家、上がってもいいかな?」
「どうぞ。」
いつの間にか綾波が外へ出てきていた。
いきなり扉を開けて出てきたもんだから驚いてしまった。
今日僕が訪ねることはミサトさん経由で
知っていたらしく家へ上げてくれた。
「サードチルドレン、碇シンジだ。よろしく。」
「綾波レイよ。」
とりあえず挨拶を交わしておく。
やけに感情の起伏が乏しい子だな、という印象だ。
写真から既に無表情だったから察してはいたが
まさかここまで反応が薄いとは驚きだ。
部屋もこの歳の女の子にしては余りにも質素というか
コンクリ打ちっぱなしはさすがに異色だ。
ぬいぐるみや少女漫画なんかも当然見当たらない。
キッチンはあったが調理道具はひとつも無いし
そもそも使われた形跡すら無かった。
とてつもない少食にしてもちょっとこれは…
正直ミサトさんとは別の意味でひどい環境だ。
「そうだ、これ、良かったら食べて。
そこらで買ったものだから大したもんじゃ無いけど…」
近くのコンビニで買ったお菓子と飲み物を手渡す。
パイロット同士情報交換するつもりだったし
あった方が良いだろうと思って買ったものだ。
「必要ないわ」
まさかの返事だった。遠慮がちに断るでもなく
キッパリと「要らない」と返ってきた。
日本人であれば普通は受け取っておきそうなものだが…
箱入り娘でもないなら世間知らずということか?
パイロット一筋ウン10年、他のことは一切興味ありません
そういうことなら有り得るだろうが。
「いいから貰っておいてよ。会ってくれてありがとう─
そんな意味合いのものだからさ。」
お菓子と飲み物はとりあえず受け取らせておく。
「…ところでさ、こんなところに住んでるのって
もしかして綾波さんの趣味だったりするの?」
「いいえ、碇司令に用意してもらったわ」
………あんのクソ親父が…また説教だな。
1を問えば0.1しか答えてくれないような綾波との会話に
四苦八苦しつつも同世代の少女がどんな生活をしているか
今綾波が置かれている環境がどれだけひどいのかを
ひとつひとつ教えていく。
話を聞いていくうちに分かったことだが
彼女は少食とかそういう次元ではなかった。
全て薬やサプリメントで済ませていたようで
そもそもロクな食べ物を全く食べていないらしい。
「おいしい…!碇くん、これは何!?」
コンビニで買ったアイスを食べさせてみると
目を輝かせて未知の食べ物の正体を問い詰めてくる。
正直ものすごく庇護欲が掻き立てられる。
「そうだなぁ…綾波さん、僕とミサトさんのウチに
引っ越ししない?料理は僕が作ることになってるし」
この提案に綾波は二つ返事で了承、
ミサトさんへすぐさま電話を掛けて
綾波の引っ越しの手続きを進めてもらった。
「碇くん、…ありが…と…う?」
最高かよ。
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「なぁ碇!頼むよ!これを着た写真も撮らせてくれ!」
オレは必死になって碇に写真のモデルを頼み込んだ。
実はかなり大変な状況になっているのだ。
「あのさぁ…"コレ"はちょっと…」
オレは昔から写真を撮るのが好きでよく撮っていたのだが
最近は小銭稼ぎのために、悪いなとは思いながらも
クラスの女子の写真を隠し撮りして
それを男子にこっそり販売していたりするのだ。
オレのところへ来る客はそんなに多くはなかった
当然多くの生徒には秘密でやってたからな。
だが碇が来てから状況が急変したんだ。
碇のヤツは帰国子女で天才で美人で…
美味しそうな弁当も作れると来ている。
とにかく多くの男子の性癖にクリーンヒットした。
その結果、男子生徒にそろって押しかけられて
他の在庫も含めてスッカラカンになってしまった。
「僕は確かに女装はしてるけど…あくまでも"男"だ。
スクール水着まで着るような変態じゃないんだよ!」
「そこをどうか頼む碇っ!けっこうな人数から
依頼されてるんだよ!」
すでにセーラー服やメイド服、チャイナ服とかの写真も
撮ってあるから在庫は十分稼げている。
しかし、碇が男の娘だと聞きつけた男子から
スクール水着姿の依頼が数多く来ているのだ。
「…うぬぬぬ…………」
碇はかなり悩んでいる。これはワンチャンあるか?
「…仕方ない。1回だけそれに付き合ってあげるよ。
どんな衣装でも用意してくれたら着てあげる。
ただし、これ以降は受け付けないと思ってくれ。」
「やったァ!ありがとう碇!恩に着るよ!」
さらに嬉しいことに碇はエヴァのパイロットスーツも
機能は一切教えない変わりに、って着てくれたのだ。
ボディラインの出るピッチリスーツとは…
胸元にティッシュを詰めさせておっぱいもバッチリ!
これは売れに売れそうだ。
「碇の写真、1枚ずつ全て買おう」
「シンジ君のパイロットスーツの頼むよ」
「じゃあオレは水着姿貰っちゃおうかな」
「毎度あり!」
予想通り碇の写真は飛ぶように売れ
オレのサイフは数日でパンパンになったのだった。
碇には感謝してもし切れないぜ。
…「学校中の男子の性癖を歪めた」なんて噂話は
聞かなかったことにしておこう。
………あとで碇にはなんか奢ってやるか。
つづく
レイがミサト宅へ引っ越しました。
シンジ君の隣の部屋…もとい物置が掃除されて
レイの部屋になりました。
さて、次回からシンジ君の天才っぷりを
少しずつ出していこうかと思います。
本領発揮はアスカが来てからかな。