新世紀エヴァンゲリオン 天才少年シンジ君(試作) 作:高橋ヒナタ
アラエル回後半です!
前々回から前回までの間、だいぶ空いてたのに
待ってました、なんて言ってくれる人がいるなんて
嬉しくてつい書く手が進んじゃいますね。
ほんと、ありがとうございます!
原作なら主要キャラの退場が始まるアラエル戦
続きをどうぞ!
『レイ!もう一歩前へっ!』
宇宙にいるアラエルから放たれる光に晒され
零号機がカタパルトの手前で力無く地面に膝をつく。
人の心を探っているのか、アラエルの光を浴びたレイは
意識へ流れ込んでくるノイズと酷い頭痛に苛まれ
零号機を動かす事にまで意識を割けなくなっていた。
(──これは…私の記憶?)
レイの脳裏に薄らといくつかの光景が浮かんでくる。
暗い地下の水槽に漂う
自分を通して
(シンジはっ…私を…受け入れてくれた…!)
心の奥底に封じ込めていた、
恐怖していたモノを浮き彫りにされていくような
曖昧ながらも心を蝕んでいくじくじくとした痛みに
レイは幸せな思い出を手繰り寄せて耐える。
(シンジは私に暖かい手を差し伸べてくれた)
何もかも知らなかった、色の無い人生を送っていたレイに
シンジは人の心の暖かさを教えてくれた。
そんな彼の手はいつ触れても何度触れても暖かいままで。
(真実を知っても…それは変わらなかった!)
それはレイの過去を──自分は
決して変わることはなかった。
徐々に心の痛みが増していく中でも、その暖かさを
思い出せばレイはいくらでも耐える事が出来た。
(………わたしたちは…わかり…あえる?)
ふと、レイの心に声が響く。
その声はレイの声にとてもよく似ていて──
(……使徒?)
(…シトとは…わかりあえない?)
ひとりぼっちを嘆くような、どこか寂しそうな声。
人の心を知ってしまったからこそ感じる「感情」に
その声の主は苛まれているようだった。
(…
人間と使徒が分かり合う道もきっとある、と
レイは母の様な暖かい声色で声の主へと告げる。
──己の瞳を紅色に淡く輝かせながら。
┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄
「っアスカ!」
「えぇ!守るわよ!」
突如行われた使徒の攻撃に、シンジとアスカは反応する。
すぐさまESVシールドのATフィールドを起動し
光線の中へと飛び込んで零号機の前に立ち塞がった。
「ぐっ…何かが…情報が流れ込んでくる?」
「嫌な事…思い出させてくれるじゃないの…!」
レイだけではなく、光の中へ飛び込んだ2人にも
アラエルの干渉は当然行われる。
何かの実験室、無数のケーブルが繋がれた
突然鳴り響くアラート、そして居なくなった母。
並ぶ喪服の人々、花が手向けられた墓標
ビジョンが流し込まれるかの様にフラッシュバックする
己の内に抱えていたモノたち。
(母さんは今も僕らと共に居る。戦ってくれている!)
(ママが…ATフィールドが!私達を守ってくれてる!)
しかし、
アラエルが無作為に引き摺り出す辛かった過去も
正面から見据え、受け入れることが出来ていた。
そして、子供たちの強い心に、意思に
「「ATフィールド全開ッ!!!」」
『綺麗…ATフィールド、ですよね?』
『ここまでクッキリ見えるなんて…』
初号機と2号機の前には、虹色に輝くATフィールドが2枚
肉眼でも確認出来るほど強くハッキリと現れ
アラエルの光のほとんどを遮断していた。
『零号機パイロットの精神汚染、止まりました!』
光から解放された事で、レイへの精神汚染も収まる。
緊張の糸が切れてしまったせいか今度は放心状態に陥り
未だ零号機は身動きが取れなかったが、そこへ
「零号機と綾波はワシらに任しときなッ!」
「トウジ!いいから早く運ぶっ!」
アラエルが可笑しな行動を取った時に備えて
少し離れていた場所で待機していた3号機と4号機が
零号機を抱えてカタパルトへ乗せたのだ。
初号機と2号機はATフィールドの維持に集中しており
5号機は再出撃に時間が掛かる。ここで自由に動けたのは
トウジ達だけだったため、まさに最高の判断と言えた。
「トウジ!ポジトロンライフルも頼めるっ?!」
零号機を運び終えた後も割と余裕を残していたシンジは
その場に残してあった大型ポジトロンライフルを
何とか解体して持っていけないかとトウジ達に問う。
射程自体は届く計算であるため、破壊されたりする前に
回収しておきたかった。
『鈴原君、ケーブルは切っても構わないわよ』
「よっしゃ!ほんなら行けるで!」
トウジは3号機にプログナイフを持たせると
ライフルに繋がっていたケーブルを特に躊躇いも無く
バッサバッサとぶった切り、あっという間に
ライフルをエヴァで持ち帰れる状態にしてしまった。
「トウジ、あんたねぇ…」
「切ってえぇ言うてるし…かまへんやろ」
確かにケーブルを切っても良いとは言っていたが
その扱いの雑さに少しばかり呆れたヒカリ。
ポジトロンライフル本体はヒカリが4号機に抱えさせ
カタパルトに乗って帰って行った。
今トウジに持たせたら本体まで壊しそう、とのこと。
「後は僕らだね」
「…一気に行くわよ!」
光線の遮断のため最後まで残っていたシンジとアスカは
ATフィールドを緩めると地を強く蹴って駆け出す。
降り注ぐ光の量が増えることで再度侵食が始まるが
2人にとってその程度は気にする程のものでも無かった。
『初号機、2号機共に回収完了!』
『使徒、攻撃を中止。動き有りません』
2機の乗ったカタパルトが地中へと消えていくと
アラエルも光の照射を止め、動きを見せなくなった。
┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄
──戦術作戦部作戦局第一課、作戦会議室。
「何か案はあるかしら?」
「「「……………」」」
ミサトの問いかけに回答を返す者は現れない。
これまでに何度か「まるで打つ手立ての無い相手」と
交戦し打ち勝って来たNERVだが、今回の相手アラエルも
相当に厄介な相手である事は疑いようも無かった。
「フィールド強度は10番目に匹敵──お手上げですよ」
以前サハクィエルに対して行ったように、アラエルにも
N2航空爆雷を用いての威力偵察が行われたが
爆雷は全てATフィールドで防がれ、偵察衛星の方も
ATフィールドによる質量攻撃で破壊されてしまい
まともな情報を収集することは出来ていなかった。
「唯一届く武装があるとしたら──」
ここでシンジは一つの可能性を挙げた。
現在までに攻撃への転用が提案されていながら
装備開発の難航で正式運用に至っていない
ある武装──ATフィールドによる攻撃を。
「…開発、難航してるんでしょ?」
「問題は山積みですけどアテはありますから」
乗り越えなければならない問題は色々あるが
大型ポジトロンライフルと同等の射程を持たせた
ATフィールドの射撃装置を用意出来れば
エヴァの持つフィールドでアラエルを撃破出来る
シンジはそう試算していた。
そして、NERV技術開発部にはその開発を手助けする
データや試作品がいくつも保管されている。
「力を貸しますよ、シンジ博士!」
「技術1課も総出でやりましょ」
シンジとリツコ、時田で武器の基礎設計を書き上げ
技術1課でエヴァやATフィールド関連の開発を
技術2課で武装や周辺機器の開発を行う事になった。
「シンジ君、コーヒー飲んでいかないかしら?」
「お、いいですね。景気づけの一杯に!」
「私もご馳走してもらいたい所だなぁ!」
恐らくは徹夜での作業になるだろう、とのことで
シンジ達3人は一度リツコの部屋へと立ち寄り
冷たいブラックコーヒーを飲んでいくことにした。
┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄
──翌朝。
「これが…試作型
「何とか完成したわね」
ミサト達の前で、20Xを更に大型化させた様な形の
大型スナイパーライフルが初号機に装備させられていく。
エヴァの生体パーツを流用して製造した特殊な弾丸へ
ATフィールドを付与し超高速で撃ち出す遠距離武器だ。
シンジ達と技術1課・2課がほぼ不眠不休で造り上げた
NERV技術開発部渾身の一作である。
『ウェポンラックの取り外し、開始します』
『ランチャー側各コネクタ解放を開始』
「僕は両腕が使えない訳だけど…今回は平気かな」
この試作型A.T.F.ランチャーは武器の構造上の問題で
ウェポンラックを取り外し、エヴァの腕を武器の内部へ
差し込み一体化させて使用する必要がある。
シンジはまだ左腕がリハビリ中なために動かせず
これを装備すると両腕の使用が封じられてしまうが
アラエルとの戦いでマニピュレーターを使うことは
ほとんど無いだろう。
『全コネクタ接続確認。神経接続開始』
『OS更新完了。情報リンク異常無し』
「しっかし…だいぶコスト掛かったわね」
「こればかりは仕方ないですよ」
ミサトはライフルへ向けていた視線を少し横へズラす。
そこには、初号機と同じように
2号機の姿があった。
「20を解体してたら終わってたわ」
実は設計段階の時点でアラエルを殲滅し切れない可能性が
少なからず残っているとMAGIによって指摘されていた。
しかし、短期間での出力向上には限界があるということで
20Xの開発元「試作20型ポジトロンライフル」を改造し
フィールド突破直後に追撃を加える方針を取ったのだ。
試作20型は現行の20Xと構造がそれほど変わらないため
技術2課総動員で改造を進めることで掛かる時間を
最小限に抑えることが出来ていた。
┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄
──NERV本部第1発令所。
「使徒の様子は!?」
新型武器の完成を確認し終えたミサトは全力ダッシュで
発令所へと舞い戻ると、使徒の様子を監視させていた
オペレーター達へ現状を尋ねる。
「いえ、あれ以降動きは有りません」
「現在は高度10,000km付近で停滞中です」
アラエルはエヴァ全機が撤退した直後に一度だけ
ATフィールドに近いエネルギー波を用いて
爆撃のような攻撃を行っていたが、それ以降は
ずっと沈黙を貫き通していた。
「油断は禁物よ。エヴァの準備を急がせて!」
「はい!」
今回、A.T.F.ランチャーを装備する初号機と2号機は
ATフィールドを
残る4機でアラエルによる精神汚染を防ぐ必要がある。
そのため防御役の4機にはフィールド偏向制御装置を
防壁特化型に調整を施して装備させる。
「LCL精神防壁、展開確認」
「逆流防止措置完了」
前日の交戦でアラエルの攻撃に精神汚染効果があると
判明しているため、エヴァ側へ施すことの出来る防護策が
一通り施されていく。
『初号機、A.T.F.ランチャー装備完了』
『2号機も完了したわ!』
『偏向制御機器の装着完了』
『専用OSセットアップ完了しました』
エヴァの装備も準備が着々と進められていく。
今回は第三新東京市の迎撃設備も、パレットライフル等の
汎用装備の用意も必要無い。たとえ一睡もしていなくとも
この程度の準備に手間取るNERV職員達では無かった。
「……では。護衛部隊、発進!」
『エヴァ零号機…行きます』
『鈴原トウジ!エヴァ3号機、行くでェッ!』
『ほ、洞木ヒカリ、4号機発進します!』
『真希波マリ、行っくよ~♪』
ゲンドウと目配せを交わして確認を取ったミサトから
作戦開始の
4機先行して発進する。
「続けて攻撃部隊発進!」
『行こう母さん。初号機行きます!』
『アスカ、行きまーすっ!』
少し間を置いて、ライフルを持った初号機と2号機が
先行した4機にほど近い位置へと出撃した。
┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄
『使徒、行動を再開!光線が来ます!』
エヴァの再出撃を感知したアラエルはすぐさま活動を再開
前日精神干渉を行ったからかは不明だが零号機の乗る
カタパルトの発進ゲートを狙って光線を照射する。
「………フィールド全開」
狙われたレイはどこか葛藤を抱えた様な表情のまま
ATフィールドを全開にして光線を減衰させる。
「…光線の狙いが変わるっ!?」
『初号機と2号機が出るわ!急いで!』
このまま光線を引き付けておければ攻撃役の2機が
フリーの状態で狙撃することが出来たのだが
零号機へ照射されていた光線が少しづつズレていき
初号機と2号機が射出されるカタパルトの方向へ向かう。
今回初号機と2号機がライフルを装備しているのは
ATフィールドの最大出力が最も高いからなのだが
その長所には、使徒にとって存在を感知しやすく
より
アラエルの興味は零号機よりも強力な存在である
初号機と2号機に移っていたのだ。
「─間に合ったにゃッ!」
「──させへんでッ!」
『初号機、2号機共に出撃しました!』
間一髪の所で近くに出撃していた5号機と3号機が間に合い
光線の効力が弱められていく。
「綾波さん、私達も!」
「…ええ」
少し遅れて零号機と4号機も駆けつけ、ATフィールドが
4重になって展開される。
弱まっていた光線はほとんど完全に遮断されていた。
「「A.T.F.ランチャー起動!」」
シンジとアスカはすぐさまランチャーを空へと構え
全システムを起動させる。
『フィールド展開誘導システム動作開始』
『弾丸へのフィールド固定開始します』
『射撃誘導の諸元、ランチャーへ入力』
武器の内部でエヴァから展開されたATフィールドを
弾丸へと固定しつつ、エヴァの生体組織が組み込まれた
砲身内部へもATフィールドを展開。
砲身は
そこへATフィールドを正確に展開するのは非常に難易度が
高いが、シンジもアスカも器用に展開させていく。
2人のATフィールド操作技術の高さが輝いていた。
『フィールド反発力、射撃位置まであと20』
『弾丸へのフィールド展開完了』
弾丸と砲身内部のATフィールドが干渉する事で発生する
強力な反発力が弾丸を超加速させ、弾丸のフィールドが
効力を失ってしまう前に目標へ命中させるのだ。
『射撃準備完了しました!』
『発射タイミングをパイロット両名へ譲渡』
「「了解!」」
ついにランチャーの全ての準備が整い、射撃可能となる。
少々時間は掛かってしまったが、アラエルの光線は
エヴァ4機分のATフィールドによって遮断されており
パイロット6人に精神汚染の兆候は無かった。
あとは狙いを定めるだけである。
ピピピピ………
照準が少しづつ合わせられていき───
ピーーーッ!!!
『撃てーッ!』
「「発射ッ!!!」」
バシューーーッッッ!!!
アラエルのコア目掛けて飛翔する。
『──目標消失!』
ATフィールドは地球の重力や自転の影響を受けること無く
文字通り真っ直ぐに飛び、アラエルへと直撃した。
一発目の弾丸がアラエルのATフィールドを粉々に粉砕し
無防備になったコアを二発目が貫いたのだ。
シンジ達の勝利を示すように、雲が払われた青空には
綺麗な十字の光が煌々と輝いていた。
──つづく。
第15の使徒アラエル、撃破です。
ロンギヌスの槍は使いませんでした。
今回使わせた「A.T.F.ランチャー」ですが
参考元はエヴァンゲリオンANIMAの
零号機F型装備の持つ「天使の背骨」です。
少々オーバーテクノロジーな気がしますが
そこはシンジ君補正ということで…。
次回は…恐らくアルミサエルかと。