新世紀エヴァンゲリオン 天才少年シンジ君(試作)   作:高橋ヒナタ

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アルミサエル戦、前半です。



対話

 

 

 

『ちょっとシンジ!可愛くなったじゃない!』

 

『本当はワンコちゃんなんじゃにゃいの~?』

 

『僕は男だからね!忘れないでくれよっ!?』

 

作戦開始前だと言うのに、NERV本部には妙に和やかな

気の抜けた雰囲気が漂っていた。

 

「でしょ!?シンちゃんったら本当に可愛いんだから!」

 

「男の子とは思えないです!妹に欲しいなぁ~」

 

先日シンジとレイのプラグスーツが新調されたのだが

作戦の最終確認を行った際に通信ウインドウへ

その可愛らしいプラグスーツ姿が映った事で

アスカ達他のエヴァパイロット達にもその姿が広まり

今のような雰囲気になっていたのだ。

 

その可愛さには男嫌いな(レズの気がある)マヤも絶賛し

ぜひ妹に欲しいとまで口にするほどであった。

 

 

「───総員!第一種戦闘配置だ!!!」

 

「「は、はいっ!」」

 

忘れてはならないが今は使徒戦の直前である。

 

 

 

「エヴァンゲリオン、発進!」

 

仕事モードへ戻ったミサトの号令で、エヴァ2号機を除く

5機のエヴァが大涌谷近くの発進ゲートへ向けて

射出された。

 

 

 

┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄

 

 

 

「今回は僕らが前衛だね」

 

「宜しく頼むよ、シンジ君」

 

初号機はマステマを、4号機は2挺のパレットライフルを

手に構え、アルミサエルの居る地点へと進行する。

 

今回エヴァ4号機にはヒカリではなくカヲルが乗っていた。

先日のシンクロテストの結果を受け、3号機か4号機の

パイロットを変えてみたらどうだとゲンドウから

提案され、ヒカリと交代で出撃していたのだ。

 

 

『エヴァ各機、配置に着きました』

 

中衛を務める3号機と5号機、後衛を務める零号機が

それぞれポジションに到着したことが

オペレーターによって報告される。

 

『今回は可能な限り接触は避けて応戦するのよ』

 

アルミサエルが行ってくると予想されるエヴァへの接触を

素早く回避出来るよう武装はやや遠距離の物を多めに

最も機動力のある初号機と4号機を前衛に据え

残る3機が中~遠距離から支援砲撃を行う──

これが今回の作戦の大まかな概要である。

 

『では…作戦開始!』

 

 

 

「お手並みを拝見させてもらうよ」

 

「さぁ、接敵といこう!」

 

初号機と4号機は更に歩みを進め、アルミサエルの姿を

視界へと捉える。

 

『…まだ反応は無いわね』

 

「フィールドの中和距離ではありますけど…」

 

多くの遠距離武装が届く距離まで2機は接近したが

アルミサエルに反応は無い。

 

 

『パターンの推移に変化はありません』

 

アルミサエルは使徒特有の波形"パターン青"と

波形パターンが特定出来ない"パターンオレンジ"が

交互に入れ替わるという異色の反応も示していた。

 

MAGIもアルミサエルの正体に対して回答不能を提示。

 

ミサトは前回に引き続き苦渋の決断としてエヴァを出し

それに対する反応を見ることにしていたのだ。

 

 

『…敢えて手を出すわよ』

 

それでもまだ変化を見せないアルミサエルに

ミサトが痺れを切らしかけた時──

 

「いえ、来るわ…!」

 

「そうだね!来るよシンジ君!」

 

 

アルミサエルはプラスミド状だった体の形状を変化させ

一本の紐状となると、シンジ達に突っ込んできたのだ。

 

「当たれッ!」

 

「僕らが勝たせてもらうよ!」

 

マステマ内蔵ガトリング砲、パレットライフル3挺

ショットガン2挺に実弾式スナイパーライフル

凄まじい量の弾丸がATフィールドを中和された

アルミサエルへと襲いかかる。

 

 

「…ダメだ、ライフルは効かない!」

 

ヒュンヒュンと飛び回るアルミサエルを撃っていた

カヲルはパレットライフルは手応えが無いと気付く。

 

「マステマもダメだ!」

 

シンジもアルミサエルの攻撃を躱しながらマステマの

ガトリング砲を叩き込むが、こちらもライフル同様

まるでダメージが通っていなかった。

 

『マヤ、使徒のATフィールドは?』

 

『…中和されています!…しかし…』

 

アルミサエルのATフィールドは中和範囲内にいない

零号機の分を除いても残るエヴァ4機のフィールドで

完全に中和され切っているとの観測結果が出ており

アルミサエル自身が非常に強固であるだけとの

結論が導き出される。

 

「う〜ん…かっっったいなぁ~…」

 

「ワシのもダメや!効いとらんっ!」

 

中衛の3号機と5号機から撃ち込まれるショットガンと

ライフルも当然効果は無い。

 

 

 

「こっちを試させてもらおうかな…っ!」

 

カヲルは足元を狙った攻撃を華麗に躱すと

肩のラックからデュアルソーを手に取り起動する。

 

「僕も行くよカヲル君!レイ、合わせて!」

 

「分かったわ!」

 

シンジも肩のラックから近接武器を──

ATフィールドを纏える様になったビゼンオサフネ改を

手に持って構える。

 

 

ギィィィーーーンッ!!!

 

アルミサエルの体とデュアルソーがぶつかり合い

凄まじい音と閃光が走る。

 

ガキィンッ!ガキィンッ!

 

ビゼンオサフネがアルミサエルへ打ち付けられる度に

鈍い金属音が辺りに響き渡る。

 

 

 

「くそっ…これも効かないのか」

 

「僕のもっ!…効いてる気配は無いみたいだっ!」

 

アルミサエルは近接武器すらも弾き返して見せたのだ。

デュアルソーはただひたすら煩い音を掻き鳴らすだけの

楽器と化し、ビゼンオサフネもアルミサエルにとって

なまくらなただの鉄の棒にしかなっていなかった。

 

しかし、厄介な点は防御力が高すぎるだけではなく──

 

 

「まずい、侵食型だ!シンジ君離れよう!」

 

「やっぱりそう来るか!」

 

アルミサエルは4号機のデュアルソーに切られながら

体の先端を伸ばし、デュアルソーを取り込み始めたのだ。

侵食が進んでいくにつれ、機械部品の集合体である筈の

デュアルソーの表面には血管の様なものが浮き出る。

 

ズズズズ…ッ

 

ゆっくりと、だが着実に侵食は4号機の手元目指して

デュアルソー伝いに登ってくる。

 

「くっ…どうする?」

 

カヲルはデュアルソーを手放しソニックグレイブへ

持ち替えるが、恐らくはこれも効かないだろう。

 

「レイ、ショットガンを貸してくれる?」

 

「今渡しに行くわ」

 

シンジも侵食され始めたビゼンオサフネから手を離し

レイが持て余していたショットガンを受け取りに行く。

 

 

「厄介になったもんだね」

 

「本気でやり合うと僕らの方が危ない」

 

アルミサエルはエヴァから奪い取ったデュアルソーと

ビゼンオサフネを振り回して襲ってくる様になった。

アルミサエルには効かなくとも、あの2つの武器は

エヴァにとっては致命傷にもなりうる。

 

「ちぃとでも足止めさせて貰うでっ!」

 

「ワンコ君に手出しはさせない…にゃッ!」

 

3号機、5号機からの支援砲撃で出来た隙に

素早く距離を取り、続く攻撃の回避へと移る。

 

「シンジ、これを──」

 

腰に懸架しているショットガンを手に取り

零号機が初号機の近くまで歩いてくる。

 

 

 

『レイッ!避けなさいッ!』

 

「っ!?」

 

 

 

両端で武器を操っているから侵食は来ない──

そんな油断が命取りだった。

 

「くっ…う…」

 

「レイ!早く脱出をっ!」

 

複数本へ分岐したアルミサエルは零号機へ襲いかかり

全身へその侵食を開始していた。

 

「……っ」

 

ようやく本来の標的(エヴァ)へと接触を果たしたアルミサエルは

デュアルソーとビゼンオサフネを手放し、零号機への

侵食スピードを一気に加速させていく。

 

『零号機のエントリープラグを強制排出!』

 

『ダメです!信号を受け付けませんっ!』

 

早くも5%以上の生体部品を侵され、エヴァの機能が

いくつか機能停止していく。

 

 

『2号機を出せ。何としても救出しろ』

 

『エヴァ2号機起動!今行くわよレイ!』

 

ゲンドウは零号機が危機的状況に陥ったと判断した瞬間

2号機への待機命令を解除、即座に発進させる。

 

現場に最も近いゲートへ射出しても少なくない時間が

掛かってしまうが、今のゲンドウにレイを見捨てる判断は

出来るハズも無かった。

 

 

 

「レイっ!…僕らの事も狙ってくるのか!」

 

「少し下がるんだシンジ君!」

 

零号機への侵食を進めながら、近付くエヴァに対しても

その手を伸ばそうとしてくるアルミサエルに

シンジ達は迂闊に手を出す事が出来ずにいる。

 

『これ以上の侵食は危険です!』

 

『レイッ!』

 

零号機が侵食されていくにつれ、コックピットにいる

レイの体にも丁度零号機が侵食を受けている場所と

同じ場所から血管の様な模様が浮き上がってくる。

 

「私が死んだら…シンジがっ…悲しむ…」

 

レイも何か打てる手段が無いか必死に探す。

 

ここで自分がアルミサエル諸共自爆すれば

使徒は殲滅出来るかもしれない。

スペアの身体を使えば"綾波レイ"も生き返る。

 

だが生き返った綾波レイ(3人目)は、シンジと親しくしてきた

今の綾波レイ(2人目)とは異なる存在になってしまう。

シンジと出会う前であれば何の躊躇も無く自爆し

使徒を殲滅しただろうが、今のレイには出来なかった。

 

 

 

(あなたと…わかりあいたい…)

 

「…シン…ジ……」

 

レイの意識はその声と共に闇に落ちていく───

 

 

 

┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄

 

 

 

(ここは…?)

 

目を覚ますと、摩訶不思議な空間に居る事に気付く。

 

どんよりとした灰色に濁った空と遠くに見える山脈

そして足元に広がる広大な湖。

 

レイはその湖の水面の上に浮かんでいた。

 

 

 

(誰っ?!)

 

目の前の水面に波紋が広がり、水の中から誰かが

レイの前へ姿を現してくる。

 

(私…っ!?)

 

水色の髪の毛に白いプラグスーツ──まるで目の前に

鏡でも置かれているかの様な、自分とそっくりな

姿をした少女が現れたのだ。

 

(貴方が使徒?)

 

(……そう。貴方達がそう呼ぶもの)

 

表情は伺いしれないが、非常に淡々とした声で

目の前の少女──アルミサエルは口を開いた。

 

 

(…わたしとひとつになりましょう)

 

アルミサエルは、少し妖艶さを帯びた声で

レイへそう語りかける。

 

アルミサエルのいう"ひとつ"とは、文字通りひとつ。

ATフィールドを失い、完全に溶け合った状態。

しかし、レイはこの問いに拒否を返す──

 

(いいえ…ひとつにはならないわ)

 

(………何故?)

 

今の綾波レイはこうして生きる今の綾波レイだけであり

誰かと溶け合ってしまえばそれは自分では無い何かへ

変わってしまうから。そうアルミサエルへ答えた。

 

 

(こんなものを抱えて生きていくの?)

 

(…ッ)

 

アルミサエルの瞳が煌めいたかと思ったその瞬間

レイの全身──否、心に不快なモノが流れ込んでくる。

ドロっと濁った、より濁りを増したこの空のような

複雑な感情が入り交じったものが。

 

(それは貴方の心。とても醜い心)

 

(………)

 

ただシンジと共に居たい。

シンジの時間全てを自分の為に使って欲しい。

自分だけを見つめていて欲しい。

 

心の中に渦巻く醜い感情が痛みとなってレイを蝕む。

 

(──ひとつになれば苦しむことも無いわ)

 

全てが溶け合えば、そんな痛みも忘れる事が出来る

そうアルミサエルはレイを誘惑する。

 

 

 

(そう、これが私の心。人の心)

 

しかしレイは自身を蝕む痛みをただ受け止め肯定する。

これこそ、人として生きる事を選んだ自分(リリス)の心だ、と。

シンジと共に生きる世界を守るためならば

どんな存在を敵に回しても構わない、そう思う位には

自分は汚れた人間なのだと語る。

 

 

(人の…心?)

 

(それが弱さであり…強さでもあるわ)

 

人は時に傷つけ合い、時に分かり合い、そうして

少しずつ強くなっていくものだとシンジは教えてくれた。

 

 

 

(………)

 

更に心と記憶が掘り返され、自身の心へと流れ込むが

レイはそれを全て受け止める。辛い過去も全て。

 

(これが人の心…人の強さ…)

 

アルミサエルがレイの記憶を過去へ遡るほど

空もそれを表すかのようにより黒く、より平坦に

何もかもが無くなっていく。

 

悲しみも憎しみも(悪いことも)幸せや喜びも(良いことも)

 

 

 

 

 

アルミサエルはひとつ問いかける。

 

(私達は…分かり合う事が出来る?)

 

レイは俯いたままのアルミサエルへ歩み寄り

優しく抱きしめる。

 

 

つぅっ、とアルミサエルの頬に涙が伝った。

 

(私は…さみしかった。とても)

 

使徒は人を知ろうとして、人の心を覗き込んで

知ってしまった。(アダム)を失った事への悲しみと

一人ぼっち(完全生物)で居る事への寂しさを。

 

(暖かい…これも人の心?)

 

(そう。醜くも強い人の心)

 

アルミサエルは自分を抱きしめるレイの腕から

心地よい暖かさが伝わってくるのを感じる。

心の壁を持ったままでも感じられる暖かさが。

 

 

 

(私は…貴方と共に居たい。生きていたい)

 

アルミサエルはそっと顔を上げ、レイを見つめる。

 

 

(歓迎するわ。…きっと、みんなも)

 

レイはアルミサエルから一歩離れ、手を差し出す。

──自らの意思で手を取り合う事を選ばせるために。

 

 

 

(…よろし…く?)

 

 

 

アルミサエルはレイの手を取った。

 

 

 

──つづく。





レイは原作通り捕まってしまいました。
"外"がどうなったのかは次回で。

今回、レイの心境描写にかなり苦戦しました…
人の心って難しいですからね。
「人はそんなものじゃない!」ってところが
もしかしたらあるかも知れませんが…
筆者が基本ぼっちなので…。
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