新世紀エヴァンゲリオン 天才少年シンジ君(試作)   作:高橋ヒナタ

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今回はヴンダー級について色々と。

エンジェルズ然りヴンダー級然り
まだまだ新要素が沢山出てきますので
頑張ってついてきてくださいな。

ヴンダー級の外見としては、「とある艦」と足して
2で割った様なモノを想定して頂ければと。
その「とある艦」についてすぐ分かります。



奇跡と希望

 

 

 

「これが…ヴンダー!」

 

「見た事の無い大きさだわ…!」

 

この後また仕事がある父シンジと一旦分かれたレン達は

ヴンダーの全体像が特によく見える場所へやってきた。

まるでそこに街がひとつ佇んでいるかのような光景に

レンもシイも思わず圧倒される。

 

「地球に住めなくなったとしても人類と多くの生物を

可能な限り永遠に存続させる船──それがヴンダーよ」

 

丁度目の前に見えているのがヴンダーの中枢となる

中央船体で、艦橋を含む重要設備が備え付けられている。

 

また、リツコが言った様に人類が地球を脱する必要に

迫られた時──具体的に言えばインパクトの再発に備えて

この船単独でも自活して行けるよう設計されており

生活排水を飲料用レベルまで浄化する浄化槽や

食料の生産プラントなども順次取り付けられる予定だ。

 

 

「地球から避難って…もしかして宇宙ですか?」

 

「勿論視野に入れて建造されているわ」

 

スペースアークの名が示す通り、ヴンダーは大気圏外でも

半永久的に運用出来るよう設計されている。

 

二酸化炭素を電気分解し酸素を生成する空気循環装置と

高性能空気清浄機を併用する事で艦内の空気を常に

清潔に保ち、水周りも大気圏内と宇宙空間双方に対応する

専用開発のものを採用している。

 

 

 

「確か…3胴構造と言うのかしら?」

 

「両側のも真ん中と変わらない位大きいや」

 

2人は視線を中央船体から両翼上部の第2船体へと移す。

 

第2船体はこのヴンダーの特徴とも言える部位で

船体前部の大型搬出入ゲートを有するカーゴブロックと

後部のN2パルス推進器を有するエンジンブロックで

構成されている。

 

数週間後には左舷第2船体も完成する予定となっており

個別で組み立てられているN2リアクターと推進器を

取り付ける事で完成となる。

 

 

「──足付き、なんて呼ばれてるのよ」

 

リツコが、この船に付けられているニックネームの中で

特に広まっている名称を明かした。

 

「このゲートが足…ですか?」

 

「分からなくも無いわね」

 

レンとシイは第2船体前面に取り付けられている

大型搬出入ゲートをチラリと眺める。

確かにそれが足だと言われれば、足に捉えられなくも無い

そんな外見をしていた。

 

正式名称が決まるまでは様々な仮称で呼ばれていたようで

「エンジェルズが開発に携わっている翼を持つ艦」という

特徴から「大天使(アークエンジェル)」と呼ぶ者も多かったとか。

 

 

 

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──第2ドック特殊組み立て室。

 

「リアクターの完成度合いはどう?」

 

「作業に9.1%程遅れが出ていますが、予定以内には。」

 

シンジは子供達をリツコに預け、ヴンダー級の開発現場を

見て回っていた。

 

この方舟の開発を含む計画「ノアの方舟計画」も

シンジが最高責任者を務めているため、時折ドックへと

顔を出し現場監督らと共に建造を進めているのだ。

 

「2番艦は…かなり遅れ気味だね」

 

「コスト削減が難航していまして…」

 

ドライドックの方をチラリと眺めてみれば、そこには

1番艦ヴンダーとそっくりなシルエットが佇んでいる。

 

[WunderClass SpaceArk Hoffnung]

 

より多くの種を存続させられるよう、保存ユニットに

割くスペースが1番艦よりも広く取られている

ヴンダー級スペースアーク2番艦「ホフヌング」だ。

 

いかにヴンダーが巨大だとしても、日本近辺の生物を

最低限収容しただけでかなりの収容枠を食ってしまう。

そこで造られたのがこのホフヌングで、コストの削減や

収容枠の向上を目指した量産先行機に当たる。

行く行くは世界各国の支部でも3番艦以降の建造を進め

現存する生命全ての種の存続を実現させる予定だ。

 

 

 

「建造は1番艦と比較しても31%の遅れが出ています…」

 

建造状況を告げた整備士の言葉の通りと言わんばかりに

ホフヌングは第2船体の基礎フレームの大半が剥き出し

中央船体がようやく完成したという有様だった。

 

これ程2番艦ホフヌングの建造が遅延していた理由は

1番艦ヴンダーの圧倒的な超スペックにあった。

あらゆる技術をつぎ込んで高性能化を目指した1番艦に対し

コスト削減や汎用性の確保を目指す必要があった訳だが

推進器や生命維持装置のコスト削減に苦戦していたのだ。

 

「2番艦を優先させよう。人員と資材も回しておく」

 

「助かります…!」

 

 

 

シンジは改めて目の前のリアクターへと視線を戻す。

 

[ヴンダー級専用 N2リアクター改参型]

 

かつてNERV本部の電源供給を一手に担っていた

大型N2リアクターを更に改良したものだ。

ヴンダー級に搭載するためにシンジらが17年掛けて

改良を進めたもので、最高出力は従来機の比では無い。

 

「シンジ博士、本当に4基でいいんですかい?」

 

「えぇ時田博士。予備緊急込みでも足りますよ」

 

シンジの開発仲間であり技術開発部所属の技術者

「時田シロウ」に、シンジはリアクター配置の予定図と

エネルギー配分を記した設計図を見せる。

 

通常時用リアクター2基、予備と緊急で1基ずつあれば

船の航行と保存ユニットの機能を維持するのに

十分過ぎる出力が用意出来るとの予想だった。

 

 

「…所長、コイツこんなに出力あるんすか!?」

 

表示された図面を覗き込んだ作業員が驚きの声を上げる。

 

シンジ達はさも当たり前の様に話していたが

このリアクターはZUKUNFT本部でも随一の頭脳を持つ

シンジ、時田、リツコの3人が持てる技術全てをつぎ込んで

フル改造を施した逸品である。

 

「"コレ(全長2km超)"を飛ばすには必要だよ」

 

「そりゃそうっすけど…。民間には出せないっすね」

 

その出力は、かつて日本全国から大電力を集めて撃った

あの「大出力自走460mm陽電子砲(ポジトロンスナイパーライフル)」さえこれ1基で

ポンポン撃ててしまう程のものを叩き出していたのだ。

これが2基あれば、日本で稼働中のあらゆる発電設備を

お払い箱に出来てしまうトンデモ発電機なのである。

 

仮にこのリアクターを民間にでも出そうものなら

電力事業の権益を巡って戦争が起きかねない。

 

 

 

「所長ー!ちょっとええか?!」

 

ドック側入口から、独特な口調でシンジに声が掛かる。

 

「──バルディエルか、今行くよ」

 

シンジを呼んだのは、黒系の作業着を身にまとった

言葉の端々に関西弁が混じる黒髪の男「バルディエル」。

彼もまた「エンジェルズ」の内の1人だ。

ZUKUNFT本部技術開発部所属のメカニックであり

特に電装系の調整や修理を得意とする。

 

因みに、彼の言葉に関西弁が混じるようになった理由は

シンジの友人らと交流を繰り返しているうちに

気の合った人物の口癖が移ったかららしい。

 

 

「ヴンダーの方や。シエルが呼んどったで」

 

「分かった。リアクターの再調整も丁度済んだし」

彼がココへ来た理由は、ヴンダーの方のドックで

シエルなる人物がシンジを呼んでいたからとの事だった。

 

 

 

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──推進器開発ブース。

 

 

 

「やぁシンジ所長、待っていましたよォ」

 

特殊なデバイスを装備しモニターとにらめっこしていた

青年が、シンジの到着に気付き振り返った。

 

 

「──待たせたねシャムシエル」

 

太陽モチーフのネックレスを掛ける金髪の青年の名は

「シャムシエル」。額に自作の太陽観察グラスを

常に乗っけている大の太陽好きで、ZUKUNFT本部内では

ヴンダー級の推進器系の開発を任されている人物の1人。

シャムシエルもバルディエル同様「エンジェルズ」に

所属する13人の内の1人だ。

 

「用事ってのは?」

 

「推進器の開発が上手く行ってなくてねェ…」

 

シャムシエルがシンジを呼んだ理由は、開発途中である

ヴンダー級用の推進器の開発を手伝って欲しい

というものだった。

 

[大型艦船用フィールド推進器 試作設計図]

 

補機として搭載する特殊なジェネレータから供給される

エネルギーを利用した最新型の推進器だ。

 

これを用いる事で、全長2kmを超える巨体であっても

空中に浮遊、静止させる事が可能になるというモノだが

シャムシエル曰くその出力がまるで足りず

船の総重量の維持が現状では不可能との事だった。

 

 

「う〜ん…増幅が足りないにしてもコレは…」

 

シンジは画面に表示されるフィールド出力図を眺め

問題は別の所にも有るとの指摘をする。

 

「バルディエル、頼めるかな?」

 

「任しとき!」

 

ここでバルディエルの出番が来る。彼はおもむろに

電装系の配電盤のカバーを外すと、剥き出しのケーブルに

何の遠慮も無く手を触れる。

 

[!危険 超高電圧!]

 

人間では耐えられない様な高電圧が流れている配線に

ガッツリと触れたバルディエルは、手のひらを青色に

変色させ、触れているケーブルを侵食していく。

 

「…待ってな、今探っとるから」

 

これがバルディエルの特技。手で触れた電装部品を

一時的に侵食し一体化する事でその電子機器の構造を

完璧に把握する事が可能であり、エネルギーの過不足や

回路の伝達効率といった要改善箇所、配線の接続不良や

ショート、オーバーヒートといった修理が必要な箇所を

一瞬で見抜く事が出来るのだ。

 

 

「Cの…09番と…N-97番が改善出来そうや」

 

機器全体のバランスを見て、バルディエルが改善点を

発見・指摘する。

 

 

「──次は僕だね。プログラムを少し調整しよう」

 

推進システムと電装系との接続や出力の配分を

少しづつ調整していくシンジ。

 

「シャムシエル、システムを起動して」

 

「了解です!…行きますよォ!」

 

シャムシエルは、両手にセットした特殊デバイス

「試作型フィールド制御用アームレイカー」を起動させ

仮想空間内に現れたヴンダーの操縦を開始する。

 

エンジェルズの中でも特にフィールド制御に長ける

シャムシエルは、推進器へ供給されるエネルギーを

器用に操作し船体の姿勢を安定させに掛かった。

 

「宙域航行時のボーダーはクリアしましたァ!」

 

「…大気圏は…まだ調整が足りないか!」

 

「N-40から47までの出力を13%アップや!」

 

シャムシエル、シンジ、バルディエルの3人が

逐一システムに調整を施していき──

 

 

「大気圏航行ラインまであと0.4、0.3──」

 

シンジが出力増幅装置を増設し、ヴンダーの航行が徐々に

安定したものへと変わっていく。

 

 

「…来ましたァ!航行可能ライン到達です!」

 

「流石はシンジ所長やな」

 

そしてついに、仮想空間内のヴンダーの飛行が

完全に安定したものに落ち着く。

シャムシエルがアームレイカーで操作し停船させても

重力に引かれて落下していく事は無かった。

 

 

「──あとは増幅装置の開発だね」

 

肝心のフィールドの増幅装置がまだ未開発なため

これを完成させなければならないという問題は

残ってしまっていたが。

 

 

 

 

 

「N2パルス推進器は使わないんですかね…?」

 

「確かに使ってなかったよな?」

 

ヴンダーの新型推進器のシミュレーションを後ろから

見守っていた開発ブースのメカニック達は

そのシミュレーション内容に空いた口が塞がらなかった。

 

ヴンダー級に搭載予定の推進器は、主翼部に搭載予定の

特殊な推進器を含めても3種類存在するのだが

今回のシミュレーションではそれらを一切使わずに

フィールド推進器のみで航行させて見せていたのだ。

 

「年々磨きが掛かってるよな、碇所長」

 

「色々とんでもないモノ発明してますしね…」

 

使徒との戦いを終えてからも、シンジの研究意欲は

衰えるどころか更に勢いを増しており、数ヶ月程前には

「相転移で物理攻撃を無効化する装甲材の完成品(ヴァリアブルフェイズシフト装甲)」や

「物理・光学双方に耐性を持つ装甲用塗料(ナノラミネートアーマー)」をあろう事か

個人で作り出してしまったとか。

 

「最上さんも楽しそうでしたよね」

 

「…あぁ、凄く楽しそうだった」

 

最近はヴンダーの主機、主推進器開発と並行して

特殊な光子を生成し続ける動力機関の基礎理論構築を

進めているらしく、ロボットアニメ作品の映像を片手に

ああでもないこうでもないと議論をしているらしい。

 

「アレ、試料って残して無いんでしたっけ?」

 

「所長自ら破棄しちまったんだと」

 

それらは作られた直後に完成品も含めた全ての試料が

破棄されたため現存はせず再現も不可能とされているが

設計データは未だにシンジの手元にあるのだとか。

 

 

 

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──ZUKUNFT本部、司令室。

 

 

 

「──以上が、公安の調査結果です」

 

「ありがとうございます。藤井長官」

 

相変わらずだだっ広くて殺風景な本部の司令室で

シンジは内務省公安調査庁長官から、とある調査依頼の

定期報告書を受け取った。

 

[国際テロ組織SEELEに関する動静調査報告書]

 

シンジが公安調査庁に依頼していたのは、17年前を境に

世界から姿を消した秘密結社SEELEの動静調査。

 

「未だに国内での活動は確認されていません」

 

「やはり日本には居ない…か」

 

SEELEは17年前に、国連軍および戦略自衛隊を扇動し

特務機関NERVを含む第三新東京市一帯に壊滅的な被害を

齎したとして国際テロ組織の認定がされており

人類補完委員会のメンバーを含むSEELEの構成員には

国際指名手配が出されていた。

 

しかし、事件から既に17年が経過した今でも

構成員の所在特定・逮捕に繋がった事例はほとんど無い。

世界を裏から牛耳っていた秘密結社なだけあって

憎たらしい位に証拠隠滅が完璧で、各国政府が一斉検挙に

乗り出した頃には既に雲隠れされてしまっていたのだ。

 

 

「碇所長、微力ながら応援していますよ」

 

「色々と…本当にありがとうございます」

 

シンジがヴンダー等の開発に全力を尽くしていたのは

SEELEが再び活動を再開した場合に備える為であった。

 

彼らがまだ人類補完計画の発動を諦めていないのなら

それは地球壊滅のリスクがまだ残っている事と同義。

エヴァは1機を残して全て失われ、かつての始祖達は皆

確固たる自我を持って今の世界を守るため動いているが

サードインパクトは絶対に発動させてはならない。

 

「ユーロからの調査結果次第かな」

 

「旧NERVドイツ第1支部、ですか」

 

シンジは今日も人類の未来のため奔走するのだった。

 

 

 

──つづく。





cv.三石琴乃さんが艦長を務める艦ということでね
「とある艦」とはSEEDのアークエンジェルの事です。
主翼は艦底部から左右に長く広がる1枚の翼に
第2船体前面にはAAの様な足、搬出入ゲートを取り付け
そんな感じの改変が施されております。

エンジェルズとして新たにシャムシエル君と
バルディエル君が登場しました。
シャムシエルは「神の強き太陽」を
バルディエルは「神の雷光」を意味する名だそうで。
彼らの特徴等はそちらも参考にしております。

次回は…多分日常回。
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