新世紀エヴァンゲリオン 天才少年シンジ君(試作) 作:高橋ヒナタ
新章第3話です。
本来もう少し書き込んでから投稿するつもりで
書き進めていたんですが、中々にスランプで
いつまで経っても先へ進めなさそうな気がしたので
ある程度まとまった段階での投稿を選びました。
普通に読めるレベルには纏まっているとは思うので
足りない部分は読者様方の方で補完して頂いて…。
私どうやら日常回を書くのは苦手な様です。
「わざわざ迎えに来てくれてありがとう」
17時を廻り早くも暗くなり始めたZUKUNFT本部に
レイの駆るセダンがシンジを迎えに来た。
「レンとシイは?」
「2人なら家で待ってるわ」
レイは本部内観光を終えた子供達を一足先に家へ送り
そのまま本部へとトンボ帰り。電車で帰宅する気だった
シンジを車に乗って迎えに来たのだ。
ジオフロントは今でも
ここへ通ずる民間カーゴトレインも利用するには
ある程度の手続きを踏む必要があるのだが
愛する旦那を出迎えに行くレイにとってはその程度など
道端の小石程の障害にすらならない。
「んっ…今日もお疲れ様」
「何年経っても可愛いねレイは」
車へと乗り込んだシンジへレイは頬に軽くキスをし
彼の今日の労働を労ってやる。
2019年の6月に結婚して既に13年程が経つ2人だが
付き合い始めた当初と変わらずラブラブである。
「まぁトレインはガラ空きだよね」
「ここの人しか使わないものね」
地上とを結ぶカーゴトレイン、ジオフロント側の駅は
だいぶ閑散としており、基本的に待つ事は無い。
「この後買い物に寄るわ」
「分かった、付き合うよ」
「来月北米支部との打ち合わせがあって──」
「…少し寂しいわ」
「………今夜、どう?」
「明日は早くないし、いいよ」
カーゴトレインがレールを走る音だけが響く中で
2人は本を読みつつ時折会話を挟んで暇を潰す。
『間もなく、新強羅駅に到着致します──』
2人の車を載せたカーゴトレインは特に何も変わりはなく
地上のモノレール線と接続している新強羅駅へと
たどり着いた。
「…この街も大きくなって来たもんだね」
「えぇ。人の強さが垣間見えるわ」
新強羅駅を発ったレイの車は自宅がある方向へと
駆け抜けていく。
市街地へ近づくにつれ真新しい綺麗なビルやマンションが
増えていき、街並みも美しく整ったものへ変わる。
直径3kmを超える大穴旧ジオフロントのフチに建てられた
新興住宅地もとい新興ビル街であり、主にZUKUNFT本部に
務める技術者を中心に少なくない人が暮らしている街だ。
[第三新東京市]
この街は、かつてここにあった要塞都市の名を継ぎ
数年程前にようやく活気を取り戻したのだ。
「今夜の献立のリクエストはある?」
立ち寄ったスーパーマーケットで、日用雑貨を探しつつ
晩ご飯を何にするかレイへ尋ねる。
「今日は既に決まっているわ」
「──随分豪華に行くね」
食べたい物の材料をリストアップしたメモ用紙には
薄力粉やお好み焼きソースを中心に沢山の材料が
書き記されていた。
「牛乳って余ってたっけ?」
「3分の1位残ってるわ」
「ミサトさんが飲むのはこのビール?」
「うん。エビチュビールで合ってる」
他愛のない会話を挟みつつ、ショッピングカートに載せた
買い物カゴへぽいぽいと品物を放り込んでいく。
復興直後からあるこのスーパーマーケットで
2人が和気藹々とした雰囲気を漂わせながら買い物をする
この光景は、長いこと第三新東京市に住む人々にとっては
とても良く見慣れた光景である。
「片山さんも買い物ですか」
「あらシンジちゃんレイちゃん、数日ぶりね」
そして、2人のNERV時代を知る数少ない民間人のひとり
片山さんと楽しそうに会話するのもまた見慣れた光景だ。
「…シンジちゃん仕事終わりでもそんなに綺麗だなんて
敗北感凄いんだけど!?」
「そういう片山さんこそ実年齢まるで分からない位に
綺麗じゃないですか」
30歳になっても初見では99%男性だとは信じて貰えない
レディーススーツでビシッと決めている碇シンジ、
美しい水色の長髪をゴールデンポニーテールでまとめた
ミステリアスな色気の漂う美女碇レイ、
そして、
エイジレスビューティー片山さん。
この3人が、ショッピングカートへ野菜やら生鮮食品やら
物凄く家庭的な品物を次々と放り込んでいくこの光景も
少々異様ながらこのスーパーマーケットの
お馴染みとなりつつある光景だった。
「雪がだいぶ強くなってきたなぁ」
店の窓から外を眺めてみると、昼間は止んでいた雪が
また徐々に強くなり始めていた。
「積もる時は積もるからね、箱根は」
「"セカンド"以前もですか」
2000年から2016年の間は、
未曾有の大災害セカンドインパクトによって
元々箱根は冬になると雪がしっかりと降る地域なのだ。
「暖房器具の売れ行きも落ち着いたよね」
「人が寒さに慣れてきたんだわ」
突然冬が再来し雪が降り積もった第三新東京市は
暖房器具はもちろん除雪用具などが飛ぶように売れ
街の人々の間で慣れない寒さに風邪が大流行するなど
一時期小さくない騒ぎになった事もあった。
ただ、今では夏しか知らなかった人々も冬の到来に慣れ
日本各地の生活スタイルはセカンドインパクトが
起こる前と殆ど変わらない物へと戻っている。
「──"残留組"も皆戻ってきたし」
要塞都市第三新東京市壊滅の折にここを離れていた
街に愛着のある人々も多くが戻ってきている。
特に片山さんを初めとする、使徒による破壊が続く中でも
第三新東京市に住み続けていた「残留組」は
全員が現第三新東京市に居を構えているという。
「良い街並みになったよね」
「…うん、綺麗ね」
スーパーマーケットの駐車場からジオフロント方面を
眺めると、綺麗にほぼ真円状に空いた直径3kmの大穴と
そのフチまで広がる第三新東京市が眼前に広がる。
その光景は、かつて使徒と死闘が繰り広げられていたとは
とても思えない程美しいものだった。
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──コンフォート芦ノ湖、A-22号室。
シンジとレイ、レンとシイの碇家4人が住む高層ビルだ。
芦ノ湖跡の大穴とジオフロントを眺めることのできる
良い立地に建ち、周辺施設へのアクセスも良い。
「「ただいま」」
シンジとレイは買った物を手に自宅の扉を開ける。
「おかえり、シンジ」
「父さん!?」
出迎えたのは、シンジの父碇ゲンドウだった。
かつてNERV本部の総司令官を務めた男だが流石に歳で
今は第三新東京市の郊外に立派な一軒家を建てて
自身の妻でありシンジの母碇ユイと共に暮らしている。
「ただいま。ユイお母さん」
「あらレイちゃん、おかえりなさい」
その碇ユイも廊下の奥からひょっこりと現れた。
料理の準備でも進めていたのか、エプロンを身にまとい
手にはフライパンとフライ返しを持っている。
「母さん、仕事は──」
「今日はお昼で上がりだったのよ」
碇ユイは既に還暦を過ぎている碇ゲンドウの妻であり
今年で31歳になるシンジの母親だが、とある事情により
まだ40代という若さで、ZUKUNFT本部で仕事を続けている
バリバリのキャリアウーマンである。
セカンドインパクト及び使徒との激戦で人類が被った
甚大な被害を復興させる計画「世界再生計画」の
最高責任者を務め息子シンジの手助けをしているのだ。
今日は仕事が早上がりだったため、ゲンドウを伴って
シンジの家を訪れたとの事だった。
「ねぇレイ、パーティーでもするの?」
「うん。大正解!」
今日の買い物の目的をあっさりと見抜いたシンジ。
そんなシンジに対しレイは食い気味に正解だと告げると
彼の手を取ってリビングへと向かった。
「やァシンジ所長。昼間ぶりだな」
「お邪魔してるわよ~シンちゃん♪」
そこに居たのは、まずは昼間会ったばかりの加持一家
加持リョウジと加持ミサト、加持コウキの3人。
そして──
「トウジ!?」
「よォセンセ。レイに呼ばれてな」
シンジにとっては中学以来の親友の一人で、数年前から
第三新東京市で医者をやっている男「鈴原トウジ」だ。
少年時代シンジを巻き込んで散々バカ騒ぎしてきた彼も
17年の月日を経て立派な大人に成長していたが
親しみやすそうな雰囲気は今でも変わっていなかった。
レイが子供達を自宅へ送った時に電話で誘いを受け
家族を連れてここへ訪れたとの事だった。
「碇さんっ!」
「おわっ!?」
「ぐえっ…相変わらずだねサクラちゃん」
鈴原トウジを突き飛ばしてシンジに抱きついたのは
「鈴原サクラ」。トウジの妹で、過去に使徒との戦闘に
巻き込まれかけてシンジに救出された経歴を持つ女性だ。
トウジ曰く半ば強引に着いてきたらしい。
「碇さんは今日も格好ええわ…ホンマに」
「…うん、相変わらずだね」
使徒との戦闘から救出された直後に一度会ってから
彼女はシンジにベタ惚れしていた時期があった。
彼がレイと結婚し抱いていた夢が叶わぬものとなっても
好意自体は薄れておらず、シンジと会う度にこうして
「碇シンジ分」とやらを摂取している。
「……これでうちはまた仕事に行けます」
「……………」
サクラはただシンジを眺めて抱きしめる位しかせず
シンジもその程度で靡く男でないのは分かっているため
レイはこの件について深く追求する事は諦めている。
当然あまり良い表情では無かったが。
「久しぶりね碇さん」
「れんのぱぱ~?」
「ツバメちゃんも大きくなってきたね」
義妹が落ち着いたのを見て声を掛けてきたのが
鈴原トウジの妻である「鈴原ヒカリ」。
夫トウジ共々シンジらと同じ第三新東京市立第壱中学校の
出身で、エヴァ4号機のパイロットも務めていた女性だ。
ヒカリのスカートの裾を掴んだままシンジを見上げるのは
3年ほど前に鈴原トウジ・ヒカリ夫妻の間に生まれた娘
「鈴原ツバメ」だ。
「レイさん本当に料理上手になったわよね」
「シンジと2人で何度も料理したから」
レイとヒカリの2人もキッチンに立ち今日のメニューを
テキパキと作り上げていく。
お好み焼きとそれに合うおかずを中心に数品目
お酒に合うツマミも追加で数品目と作っていく手際は
まさしく家庭を支える母といった様である。
「お味噌汁が得意料理なの?」
「ええ。シンジの伯母さんから受け継いだ味よ」
レイの得意料理である味噌汁はシンジが幼い頃に
彼の伯父の元に預けられていた時に覚えたレシピで
2人で料理を作っているうちにレイへ受け継がれたもの。
今ではシンジよりも美味しく作れるとのこと。
「最近ツバメがワシに対して冷たい気がするんや」
「イヤイヤ期かぁ…色々アドバイスするよ」
「これを乗り越えると少し楽になるぞ鈴原君」
妻達にキッチンから追い出された男達はビールを片手に
窓際で雪の降り積もる第三新東京市を眺めながら
駄弁っていた。
家族を大切にするトウジは、イヤイヤ期に突入して
ワガママになったツバメに突っぱねられる機会が増え
少なくないショックを受けているらしい。
顔に中々しょんぼりとした表情を浮かべている。
そんなトウジへ既に子供がイヤイヤ期を抜けた2人が
アドバイスを送る。自我がハッキリとしてくれば
理由無く冷たくされる事は減るだろう、と。
「そういえばケンスケとは会ってるの?」
「アイツか、今パリに行っとるらしいで」
「今頃はきっとユーロ空軍でも視察中だろ」
仕事の都合で最近あまり会えていなかった事もあり
とても良く会話が弾む。
「お夕飯が出来上がりましたよ~」
「シンジ。料理、出来たわ」
漂う美味しそうな香りと共に、
今日のメニューの完成を告げ、ささやかなパーティーが
始まった。
子供4人と大人9人で開かれたパーティーは
こうして集まるのが久しぶりだったということもあって
夜更け近くまで盛り上がったのだった。
この日のA-22号室は1部屋だけ日付を跨いでもまだ
明かりが点いている部屋があったらしいが、その部屋で
誰が何をしていたのかはまた別のお話。
──つづく。
今回は鈴原家の登場回でもありました。
トウジ、サクラ、ヒカリ、ツバメの4人。
鈴原夫妻の結婚は原作シンだとニアサーに起因する
ゴタゴタを乗り越えた事が少なからず
影響を与えているとのことでしたが、本作では
「エヴァでの共闘が絆を深めた」という事で。
「尻の大きい重い女」こと鈴原サクラさんは
流石にあそこまで暴走するキッカケは無いので…
──逆にシンジ好きが悪化しております。
次回からまた少し物語を動かしていきます。
※本編内でヒカリとサクラを間違えていたら
早急にご報告下さい。多分無いとは思いますが…