新世紀エヴァンゲリオン 天才少年シンジ君(試作) 作:高橋ヒナタ
新章第5話です。
評価バーの色が1段落ちてしまいましたが
もうこのまま最後まで突っ切る事にしました。
1人でもこの作品を「良い作品」と言ってくれるなら
それだけで私は嬉しいですから。
──ヴンダー艦橋。
「資材搬入はリストの86%までクリア」
「艤装作業のペースが遅い!あと3%加速させろ!」
遂に表立って活動を再開したSEELEとの決戦に備え
ヴンダー級2隻の最終調整が着々と進められていた。
艦外のドックでは物資搬入用のトラックが慌ただしく
走り回り、各所で大型クレーンを用いての搬入や
極太ケーブルでの動力注入が続けられている。
「エネルギーサプライヤは補機関連が最優先だ!」
「主機N2リアクター、最終試験稼働を開始」
「始動用電力注入作業急げ!」
特にヴンダー級は航行する際に使用するエネルギーが
一般的な艦船とは全く種類もスケールも違う。
比較的マトモな構造をしている主機N2リアクターでさえ
そのサイズがサイズなだけに扱いは非常に難しく
外部から凄まじい量の始動用動力を回さなければ
ヴンダー級ほどの巨体は動かすことが出来ない。
『補機擬似エントリー回路、反応ありません!』
「もう一度308からやり直すんだ!」
艦長席に立つシンジも艦の状態を逐一確認しながら
難航する補機関連の整備を中心に指揮を行う。
『主砲及び対空砲の設置作業78.4%完了』
「対空砲優先!以降の搬入はA-12と15を使ってくれ!」
それなりの月日は掛かってしまったものの
ヴンダーの戦闘艦への改造は順調に進んでおり
開発された主砲や対空砲などの設置が
もうすぐ完了しようかという所まで来ている。
ビーッ!ビーッ!ビーッ!
突然、艦橋の主モニターに「EMERGENCY」の文字が並ぶ。
『エヴァMark.07の起動信号確認!』
『ユーロ支部より通信!超大型飛行物体が日本方向へ
侵攻を開始した模様です!』
以前渚カヲルを誘拐したエヴァMark.07の起動信号が
確認された事に起因する警報と、ユーロ支部から
謎の大型飛行物体を確認したとの報告が重なり
艦橋にはけたたましくアラートが鳴り響く。
「もう来たか…っ!」
早くも仕掛けてきたSEELEに、シンジは制服を整え直し
艦長の証として
心持ちを戦闘モードへと切り替える。
ビーッ!ビーッ!ビーッ!
艦橋内に再び警報が鳴り響いた。
[BLOOD TYPE BLUE]
[Evangelion Mark.04]
今鳴り響いている警報の内容は、パターン青の観測──
使徒が出現した事と、エヴァンゲリオン4号機と
思しき存在が新たに起動した事を表す警報。
「今度は何だっ!?」
「新型の反応です!4号機ではありません!」
突然の事態に慌てふためく
かつてNERVで使徒との戦闘をオペレートしていた
眼鏡の男「日向マコト」が状況を報告する。
ヴンダーのセンサーが捉えたエヴァMark.04という反応は
以前存在したエヴァ4号機とは少し異なる反応であり
尚且つパターン青はそのMark.04とナンバリングされた
謎の機体が発しているとの事だった。
「位置の特定を急げ!2番艦の発進も急がせろっ!」
「了解!」
シンジはブリッジクルー達に的確な指示を飛ばし
この状況を脱するべく動き出す。
「第三新東京市に避難指示を発令!ここの受け入れは
以降全て2番艦へ回せ!」
日向と同じくNERV時代からオペレーターを務める
長髪の男「青葉シゲル」も的確な対応を進め
第三新東京市から詰めかけるであろう避難民の
受け入れ態勢の敷設を進める。
「目標を捕捉!包囲陣形を取りつつあり!」
日向のモニターに映し出されているMark.04の配置は
第三新東京市を取り囲む様に複数機が展開しており
このままではヴンダーはここに封じ込められ
集中攻撃を浴びる事になってしまうだろう。
「コア反応はっ!?」
「駄目です!捕捉できません!」
シンジは使徒との戦闘を思い出し、当時の戦闘で特に
重要だった敵の弱点「コア」の位置特定を行わせる。
しかし、Mark.04らにはそういった反応は無かった。
(コア出現は攻撃行動時のみか!だとすると…)
使徒はそのコアを破壊しなければ殲滅は不可能──
Mark.04もそうなのだとしたら、非常に厄介である。
ただでさえ汎用性に欠ける巨大戦艦で、普段は隠れている
敵の弱点を的確に射抜かなければならないのだから。
「マズイわね…私らしくないって言われそうだけど
ここは撤退を提案するわシンジ君」
艦長シンジの意向で副長として招集された加持ミサトも
この状況には苦虫を噛み潰した様な表情を見せる。
熾烈な攻撃を繰り出す使徒を相手に柔軟に対応してきた
歴戦の元NERV作戦指揮官加持ミサトと言えど
弱点が分からない複数の敵に包囲された状況では
攻勢に打って出る策は取れなかったのだ。
『シンジ君…いえ碇艦長、擬似プラグは使用不可能だわ。
補機はどちらかしか起動出来ないわよ』
艦の整備班を取りまとめているリツコからも通信が入り
補機が使い物にならなくなった事が告げられる。
ヴンダー級2隻はジオフロントの底で建造していたため
補機によるエネルギーが無ければ垂直浮上が出来ず
ドックから出す事すら出来ないのだ。
搭載されている補機は現在レイとカヲルを運用者として
登録しており、運用者を書き換えるには時間が掛かる。
カヲルがSEELEに誘拐され敵が迫っている現状
2隻のうちどちらかを諦める必要に迫られていた。
「…シンジ君、どうするの?」
『私からも撤退を提案するわ。碇艦長』
ミサトと通信越しのリツコから撤退を促される。
1番艦を破棄しここを脱するべきだ、と。
しかし、シンジは余裕の表情を崩さず──
「現状を変えて後顧の憂いを断つ…。
2隻とも飛ばしますよ、ミサトさん。リツコさん」
なんと、敢えて二兎を追う事を選んだのだ。
「それは無理なのよ!?シンジ君!」
『補機の
思いもよらないシンジの決断に、ミサトとリツコは
今は補機が使えない状態だという事を改めて告げる。
何故そんな結論に至ったのか困惑しつつも。
だがシンジは、それでも尚余裕を崩す事は無かった。
手元の小さなモニターに映る人物をチラリと見て
余裕の理由を口にする──
「問題ないよ。たった今代理が来た」
モニターに映っていたのは、ZUKUNFT職員に案内され
艦内を歩いている
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「お父さんは何で僕達を呼んだんだろう?」
突然の避難警報にバタバタしながらZUKUNFT本部内へ
避難してきたレンは、以前来たことのある工場の様な
エリアを妹シイと共に歩いていた。
第三新東京市の街の人々と一緒に避難してきた所へ
ZUKUNFTの職員がやって来て「父親が呼んでいる」と
そう告げられ避難民とは別行動となったからだ。
「お父さんに直接会って聞けばいいわ」
「…うん、そうだね」
こんな非常事態に何故自分たちを呼ぶのだろうという
疑問は、呼んだ父親に直接尋ねる事にした。
いついかなる時も常にしっかり自分を引っ張ってくれる
シイの強さに安堵しつつも、兄として妹を守れるよう
強くならなくてはという想いを抱きながら
レンはシイと共にZUKUNFT職員の背中を追った。
[総員第一種戦闘配置!繰り返す──]
「警報すごいね…」
「戦闘…戦いが始まるんだわ」
あちらこちらに立ち入り禁止や高電圧注意の看板が置かれ
すり抜ける様に進んでいき、途中にあったゲートから
建物の様なものの中へと入っていく。
その最中も警報と機械の強烈な駆動音が鳴り止む事は無く
作業員の慌ただしさからも事態が緊迫している事が
うかがえる。
「ここです。暗いのでご注意を」
レンとシイが連れてこられたのは、微かに水の音がする
かなり暗い部屋。
僅かな光の反射から、立っている足場のすぐ下に
巨大なプールの様なものが広がっていて
部屋に無数のケーブルが張り巡らされている事が分かる。
カシャン!
「わっ!?」
電気が灯され、この部屋に横たえられている存在の姿が
ハッキリとレン達の目に入ってくる。
「これは…エヴァンゲリオンっ!?」
「お父さんのエヴァとは違うみたい」
所々外装が無い部分があるものの、その金属の巨体は
紛れもなくエヴァンゲリオンそのものだった。
外装のカラーは紫色がベースで随所に蛍光グリーンの
差し色が施されてはいるが、以前父親に見せてもらった
2人は直感的に"別物である"と理解出来た。
「これもお父さんが作ったのかな」
厳つい風貌の機体を眺めながら、これを作ったであろう
自らの父の姿を思い浮かべていると──
「──そうだよレン」
数日前に電話越しに聞いた2人の父親の声が響く。
「「お父さん!」」
「久しぶりだね」
レン達が入ってきた扉からシンジが顔を出した。
その後ろには
顔を合わせた事がある女科学者赤木リツコの姿もある。
「──エヴァ
「艦…ヴンダー、だっけ?」
シンジが目の前にある機体の情報を簡潔にまとめて
レン達に教えていく。
ヴンダー級の補機として運用する事を前提として
ATフィールドの出力・操作性を極限まで高めて建造された
特別なエヴァンゲリオン──それがP-01である、と。
「…もしかして僕を呼んだのって──」
今自分が置かれている状況を少し整理したレンは
父親譲りの察しの良さで自分が呼ばれた理由に勘づく。
外では戦端が開かれようとしていて、自分たちは今
父に呼ばれてエヴァンゲリオンの目の前に立っている。
そして、エヴァは操作する人を機体が選ぶ──
「レンの考えている通りだよ」
「僕が…これに乗って?…戦えって言うの?」
レンの体が少しづつ震え出す。
こんな巨大ロボットに乗って戦うのは男子中学生としては
とても憧れる状況だが、いざ実際にこれに乗れと
命令されると憧れよりも恐怖の方が上回ってしまう。
穏やかな人物だった父親が何故突然こんな危険なモノに
自分を乗せようとしているのか、戦う事にもなるのか、と
レンは父シンジの意図が掴めず尚更混乱していく。
「シンジ君!貴方ねぇっ!」
自分の息子をエヴァに乗せるという行為にミサトが
思わず声を荒らげる。かつてシンジの父ゲンドウも
何の説明も無しにシンジをエヴァに乗せようとした事が
あったが故に目の前の光景にそれが重なって見えていた。
「ミサト、今は目標殲滅が最優先でしょ!?」
「そうは言ったって…」
事実今迫っている敵を殲滅出来なければZUKUNFTはおろか
地球上の人類全てが死滅することになるのだ。
しかし、1児の母であるミサトとしてはその行為は
中々容認し難いものでもあった。
「今回はただ座っていればいいんだ」
「す、座ってれば…いいの?」
ただ、シンジの出した指示は特別危険なモノでも無ければ
難しい操作を要求するモノでも無かった。
エヴァに乗って"コクピットに座っているだけ"。
ただそれだけで良いのだ。
「敵と戦うのは僕らがやる」
このエヴァP-01は戦闘行動を基本的に想定していない。
故にレンのやる事はただエヴァに乗る事だけなのだ。
もう時間があまり無いため詳しい説明は省く事となるが
その詳しい説明無しでも問題はほとんど無かった。
(逃げちゃダメだ…逃げちゃダメだ…!)
少し前に兄として立派になると決意したばかりだろう、と
自分に自分で喝を入れ、心を奮い立たせる。
一つ一つ父の力になれる様になって行けばいい、と。
「やります!…僕が乗ります!」
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「アンカリングプラグ固定完了」
「LCLガス充填、電荷密度に到達しました」
P-01にレンが搭乗し、遂にヴンダー級の起動シーケンスが
実行される。
ちなみに2番艦の補機
レンには特に告げずに2番艦へと移動していったため
彼は2番艦の主機には母レイが搭乗したと思っている。
「エントリースタート」
外と隔離され、ガス状のLCLで満たされた戦闘艦橋に
エヴァのエントリープラグと同様のシステムを用いて
映像が映し出されていく。
「点呼完了。全乗組員の移乗確認」
「ドック内作業員、シェルターへの退避を確認」
ブリッジクルー達の手によって、発進に問題が無いかが
テキパキとチェックされていく。今この瞬間にも目標は
刻一刻と第三新東京市を包囲しようと接近しているが
そのプレッシャーをものともしない作業速度である。
「主機N2リアクター、回転数28,000!」
「補機出力上昇、臨界値まであと2.1%」
数多のケーブルを焼き切れさせ、多くのコンバーター群を
爆発させながら主機・補機共に出力が順調に高まっていき
着実に臨界ラインへと近づく。
「補機臨界。エネルギーを船体各部へと伝達」
「A.T.F.ディフレクションウイング起動!」
ヴンダーとホフヌングの巨大な主翼が薄らと光をまとい
光がその翼に絶大な浮力を齎していく。
補機から発せられたATフィールドを大きく偏向させ
重力に対して反発する力場を発生させることで
ヴンダー級をも持ち上げる揚力もとい浮力を得るのだ。
「時空間制御を起動。シンクロ操舵へ切り替え」
操舵用の特殊仕様のオペレーター席に立った碇レイが
ヴンダーの航行システム・操舵システムを切り替える。
レイのオペレーター席を包むように専用モニターが
投影され、艦の姿勢などが鮮明に表示されていく。
ATフィールドを用いた時空間航行に切り替わる事により
更に柔軟な操縦が求められる。そのため、操舵システムを
シンクロによる直感的な操舵が可能な特殊システムへと
切り替えたのだ。
『2番艦も切り替え完了!レイお姉様、行けますわッ!』
ホフヌングも航行・操舵システムの切り替えが完了する。
わざわざ通信を開いてまで切り替え完了の報告を行った
2番艦の操舵を担当している快活な声の女性は
レイの義妹である「綾波リナ」だ。
「来ました!全リアクター臨界突破!」
「発進、いけます!」
若手オペレーターがN2リアクターの状況を知らせる。
フライホイールの充電率も102%を突破し
補機を含む全てのエネルギー伝達も正常運転中だ。
全ての発進準備が整ったことを
「行こう、父さん」
『あぁ』
シンジが2番艦の艦長である碇ゲンドウへ合図を送る。
そしてついに、2隻の巨大宇宙艦が発進する──
「ヴンダー、発進ッ!」
『…ホフヌング発進!』
──つづく。
ヴンダーとホフヌングは無事起動しました。
今回のレン君のパートは原作1話オマージュです。
思いつきでぶち込んでみました。
尚、レン君シイちゃんがエヴァを動かせるのは
何となく想像つくかとは思いますが
レイ(始祖)が母親だからです。
P-01のデザインは最終号機に近いもの
P-02のデザインはメタルビルド零号機に
近いものと想定しています。
画力があれば自作したんですが…画力クダサイ。
Q初出ヴィレクルーですが、まだ続編内での
立ち位置があまり決まっていないので
明確な名前出しはせずにルビのみとしました。
可能な限り全員出すよう頑張りますので。