新世紀エヴァンゲリオン 天才少年シンジ君(試作)   作:高橋ヒナタ

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新章、第6話となります。

ネーメズィスシリーズとの戦闘回にして
ヴンダー級の処女航海かつ初戦闘回です。
果たして4Aか4Bか4Cか──
まぁ流れ的に分かるとは思いますが。



天罰への抗い

 

 

 

『ヴンダー、発進ッ!』

 

「…ホフヌング発進!」

 

2隻の艦長を務める男達の号令と共に、巨大宇宙艦が

その巨躯をゆっくりと空へ浮かび上がらせていく。

 

「重力操作および空力制御は正常!」

 

「主翼フィールド出力は120%を維持だ!」

 

ジオフロントの底にあった施設が軒並み格納され

まるで大地が割れるかのように発進ゲートが開いていく。

 

そうして空いた大穴からまずはホフヌングが顔を出す。

両翼に眩いばかりの光をまとい、重力を感じさせない

ゆったりとした動きでジオフロントから脱していく。

 

「ホフヌング、地上に出ます!」

 

そして、ついにその巨躯が地の底から抜け出し

青い空の元へと姿を現した。

 

 

 

「これがシンジ君の傑作か。良い艦じゃないか碇」

 

ゲンドウの後方に立っていた老人が、艦橋から見える

光景を目にして少しばかり楽しそうに笑みを浮かべる。

 

名を「冬月コウゾウ」と言い、かつてNERVの副司令として

ゲンドウの右腕として様々な策を打ってきた男にして

シンジの母ユイの大学時代の教授を務めた男でもある。

既に80歳近くにもなる冬月だが、その歳を感じさせない

堂々とした佇まいで前を見つめていた。

 

 

「ああ。魂への確固たるレジスタンスのためには

無くてはならない艦と言える」

 

「…さて、その序曲をどう演じる?シンジ君」

 

 

お手並み拝見といこうか、と冬月が下方にいるヴンダーへ

視線を向けたその時──

 

 

ガシャァンッ!!!

 

 

「どうしたッ!?」

 

「目標物の攻撃か…!」

 

強烈な衝撃と共に艦が大きく揺れ、船体がぐらりと傾く。

 

「主翼を貫通されましたッ!損害不明!」

 

何者か──Mark.04からと思しき攻撃を受けたようで

ホフヌングの主翼には小さくない穴が開けられ

地上から伸ばされた触手の様なものが突き刺さっていた。

 

「目標の捕捉は?」

 

「依然として位相空間内に潜伏中の模様」

 

ゲンドウの問いにオペレーターが険しい表情で答える。

かつて第12使徒(レリエル)が扱ったディラックの海のような

こちらからは視認出来ない次元に目標は潜んでおり

弱点であるコアの捕捉はおろか、目標の現在位置すらも

正確に捉える事が出来ない状態であった。

 

 

「艤装の手薄な2番艦を狙うか。タチが悪いな」

 

すぐ下では高い戦闘能力を有する1番艦の発進準備が

今まさに整おうとしているというのに、戦闘能力の無い

2番艦を狙ってきたMark.04の行動基準に対して

冬月は厄介そうにしつつも何処か愉しそうにもしていた。

 

「こうなった以上囮として動かすしかあるまい」

 

2番艦には多くの民間人を保護しているため

戦闘行動に投入する事は躊躇われるが、Mark.04が

お構い無しに──寧ろ優先的に狙ってくるのであれば

武装を持たないホフヌングは囮として使うべきだろう。

 

 

『父さん!2番艦を囮にして目標を引きずり出すよ!』

 

1番艦から通信が入り、シンジの立てた作戦が伝えられる。

やはり親子と言うべきか、2番艦を囮にするという作戦が

親子でピタリと合致したのだ。

 

 

「揚力最大。目標を位相空間から引きずり出せ!」

 

「了解!主翼出力フルスロットル!」

 

ゲンドウは速やかに2番艦機関長へと指示を飛ばし

ホフヌングを勢いよく浮上させる。

 

主翼を貫通していた触手はそのまま主翼に絡まり

地上にある位相空間の入口から物凄い勢いで

引っ張り上げられていく。

 

「主翼全体に亀裂発生!危険です!」

 

「かまわん。引き揚げを続けろ!」

 

ホフヌングの主翼にも目標物の凄まじい重量が掛かり

主翼全体に少しづつヒビが入っていくが、ゲンドウは

それに一切怯むこと無く引き揚げを続けさせた。

 

 

 

┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄

 

 

 

「目標物が引き揚げられていきます!」

 

「よし。殲滅戦用意!主砲および対空砲発射準備!」

 

ゲンドウが武装の無いホフヌングで奮戦している中

ヴンダーの方でもシンジ指揮の元Mark.04殲滅のための

準備が進められていた。

 

船体を浮上させつつも砲撃の準備も進められる。

大型搬出入ゲートと入れ替えで設置された2門の主砲が

第2船体の先端が開くようにして姿を現した。

 

「陽電子破砕砲発射用意!」

 

「陽電子加速用電力を注入、回路開きます」

 

シンジの指示を受けた高雄が2門の主砲へと繋がる

給電用回路を一斉に開き、陽電子の加速が始められる。

ヴンダーに備え付けられた主砲とは、巨大な陽電子砲で

その口径はなんと2300mm。かつて第5使徒戦で運用された

ポジトロンスナイパーライフルの5倍にも及び

最大出力も相応以上に強化されているという

凄まじい火力を誇る武装である。

 

「対空砲にエネルギー貫通弾を装填!」

 

「各砲、自動照準補正を起動!補機直結を確認!」

 

日向が対空砲のFCSを起動させ、弾種の切り替えと

エネルギー回路のオープンを確認する。

こちらは補機から供給されるエヴァ特有のエネルギーを

様々な弾種へ切り替えて発射する対空防御火器である。

主砲に比べれば幾分かマシではあるが、それでも

通常兵器が鉄くず(無用の長物)と化す凄まじい火力を誇っている。

 

 

──バリバリバリーンッ!

 

「出ました!目標物です!」

 

「目標の光の柱、消滅していきます!」

 

触手の発生地点の空間が大きく裂けるようにして

六角形のパネル──恐らくは偽装用だろうATフィールドが

ガラスの様な音を立てて散り散りになっていく。

そして、割れた空間の隙間から触手の束の数と同じだけの

計6機分の機影が勢いよく引きずり出された。

 

Mark.04と思しき機体が引きずり出されると同時に

第三新東京市周辺に展開していた光の柱は

エネルギーの供給源を失ったのか消滅していく。

 

 

「あれもエヴァだっていうんですか?!」

 

「識別番号上はそうらしいね」

 

Mark.04の全体像を見たヒデキは率直な感想を口にした。

 

それもそのハズ、エヴァMark.04は人の形をしておらず

巨大な円盤状の外周部にウェポンラックの様な形状の

パーツが幾つも並び、ホフヌングの主翼を貫いた触手は

円盤の中心部から上下に複数本生えていた。

 

あれをエヴァだとは認めたくない異質な見た目であり

ここまで凛とした佇まいを崩さなかったシンジも

さすがに苦笑いである。

 

 

 

『目標の動きを封じる。取舵いっぱい!』

 

ホフヌング内でゲンドウの指示が飛び、Mark.04を

吊り下げていたホフヌングが反時計回りに回転し始める。

 

空中に放り出されたMark.04は機体を固定する術を失い

ゲンドウの思うがままに振り回され、為す術も無いまま

ホフヌングの周囲を凄まじい勢いで回転していく。

 

「なるほど…主砲を回転軌道上へ向けろっ!」

 

「了解。予想軌道計算、機体を回頭」

 

レイがシンジの思惑をすぐさま理解し、機体の向きを

主砲がMark.04の回転軌道上へ向くように変更する。

 

「主砲のエネルギーチャージ率はっ!?」

 

「88%ですが撃てます!」

 

日向が計器にチラリと目をやり、主砲が撃てることを

シンジへと報告する。

 

 

「ならいい。ジークフリート、撃てぇッ!」

 

バシュィィィーーーンッッッ!!!

 

 

 

竜をも屠る英雄(ジークフリート)の名を冠した奇跡(ヴンダー)の主砲が火を吹き

青空に桃色の光条が駆け抜けていく。

 

 

『このまま陽電子砲へ叩きつけろ!』

 

勢い良く振り回されたMark.04達は結局抵抗は出来ずに

ヴンダーから放たれた2本の光の柱へと放り込まれる。

 

覚醒したエヴァをも屠る事を目標に鍛え上げられた

ヴンダーの主砲に使徒のATフィールドという些細な防壁が

意味を成す筈も無く、一瞬でその機体が光へ溶けていく。

 

「逃がすなッ!対空砲で追撃っ!」

 

「ファウスト、全砲門斉射開始!」

 

運良く軌道が逸れて逃れたとしても、シンジの的確な

追撃指示によって発射された対空砲(ファウスト)が待ち構え

残ったボディを悉く穴だらけにされていった。

 

 

ドォーーーンッッッ!

 

 

「目標殲滅!」

 

『パターン青は消失しました』

 

シンジ達の勝利を祝う眩い十字の閃光が6つ青空に輝き

両艦の観測員からMark.04殲滅完了の報が上がった。

 

 

 

 

 

「ヴンダーは後続のMark.07を迎え撃つ準備へ入るよ」

 

『2番艦は主翼の応急処置完了後離脱する』

 

ひとまず初戦は勝利で終える事が出来たが、まだこの後も

Mark.07と謎の大型飛行物体への対処が残っている。

 

主翼に多大なダメージを負ったホフヌングは

速やかな応急処置に入り、ヴンダーの方も続く戦闘に備え

陽電子砲の冷却や再充電などを済ませておく必要がある。

 

「回収したラストエヴァの状況は?」

 

『冷却用LCL注水、停止信号プラグ挿入を実行中よ』

 

更にシンジ達は回収したラストエヴァの対処を

どうするべきかという判断にも迫られていた。

 

SEELEに利用されないようにヴィレの槍ごと回収して

ヴンダーに積んではいるが、仮にレイを乗せたとしても

エヴァは空が飛べないため出撃させる意味は薄い。

武器を開発して無理に固定砲台をやらせるぐらいなら

対空砲を増設する方が安上がりかつ汎用的なのだ(誰でも扱える)

 

 

 

「Mark.07の現在位置は?」

 

「中国上空に侵入したとの事です」

 

日向が各支部から伝達された後続の敵の情報を

主モニターへと表示させる。

 

Mark.07と大型飛行物体の反応は中国キルギス間の

国境付近で観測されていたとの事で、その航行速度を

考慮に入れるとあまり時間的余裕は無さそうである。

 

「中国支部より光学の映像データを受信しました」

 

今度は青葉が送られてきた映像を主モニターへと映す。

 

 

「これは…!」

 

「なんて言うか…ヴンダーに似てますね」

 

画面に映し出されたのは、ヴンダー級と似た3胴構造で

より生物的な外見をした巨大な戦闘艦の姿だった。

 

ヴンダーのものとほぼ同等の翼が左右両端に2枚ずつ

上から見た時X字状になる様な配置で取り付けられており

第2船体甲板上には謎の球体が左右一基ずつ──

位置的に恐らく対空砲であろう物が取り付けられている。

 

だがしかし、シンジを含む使徒との戦闘を知る者達の

視線を釘付けにしたのはその造形ではなく──

 

「『光輪!?』」

 

機体上部に薄らと光り輝く、虹色の光輪(エンジェル・ハイロゥ)だった。

 

それは使徒が自身の力を解放させた時などに現れるもの。

どう間違っても通常の兵器や乗り物に現れる事は無く

エヴァの力を借りているヴンダー級でさえも

あれほど綺麗な光輪を発する事は無いのだ。

 

それが一体どういう事を示しているのかと言うと──

 

「ヤツら…サードインパクトを起こす気かっ!」

 

あの艦は使徒やエヴァの生体パーツを組み込んで作られた

生きる艦であり、それの秘める力が使徒を軽く超えて

始祖の域に達しているという証拠となる。

 

そしてそれは、SEELEが目指していた究極の計画

人類補完計画のトリガーとなる可能性が存在し

補完計画の要となる儀式サードインパクトが

発動する可能性を孕んでいる事の証拠でもあった。

要するに、人類滅亡の危機がすぐそこに迫っているのだ。

 

 

 

「──全支部に緊急通告!対浄化結界装置(アンチLシステム)を起動!」

 

『全保存ユニット射出準備。大気圏離脱用意!』

 

その輪を見た2人の艦長はしばし青ざめた顔になるも

各々がすべき事を即座に実行に移していく。

 

「支部の対浄化結界装置を!?」

 

「あぁ。目標到達予想時刻より最大稼働と伝えるんだ」

 

シンジが指示したのは、この様な事態が起こる事に備えて

作り出させた特殊な防護装置の全力運転。

正式名称を「ANTI()-PurificationBarrier(浄化結界) System(装置)」と呼び

使徒や始祖が発するアンチATフィールドの影響による

LCL化やコア化と呼ばれる現象を防ぐ装置である。

 

かつてゲンドウがセカンドインパクトの爆心地南極を

訪れた時に搭乗していた艦にそれのプロトタイプが

搭載されていて、シンジがその仕組みを応用して

作り出した、人類にとって最後の砦となる防壁だ。

 

「ということは…!」

 

「SEELEとの決戦ですか!?」

 

これをフル稼働すると言うことは、もうすぐ目の前に

人類滅亡の時が迫っている事を明確に表している。

 

ブリッジクルー達の表情にも緊張が走った。

 

 

『これよりホフヌングは低軌道周回航路へ突入する。

以降は衛星通信でな。後を頼むぞ、シンジ』

 

「あぁ。任せてよ父さん」

 

第三新東京市からの避難民と多くの生命達のつがいを

載せたホフヌングが、大気圏離脱シークエンスに入った。

計6機のN2パルス推進器をフルスロットルで吹かし

重力のくびきを逃れていく。

 

地球上の生命の多くをインパクトを超えて存続させる

ノアの方舟──それがヴンダー級本来の役目である。

鈴原・洞木両家や相田一家などシンジの知人たちも乗せ

ホフヌングは宇宙へと離脱していった。

 

 

 

┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄

 

 

 

──???

 

 

「第3の少年…コード4Cをも退けるか」

 

 

機器の駆動音だけが静かに鳴り響く艦橋のような場所で

バイザーを掛けた老人が歯噛みした。

 

老人はただ館長席らしき場所に座ったまま

目の前に広がる戦況報告に目を通していた。

「Mark.04 Code:4C」と記された反応グラフは

全て暗灰色(SIGNAL LOST)に染まっており、対応する機体が

生命活動停止或いは破壊に陥った事を示している。

 

 

「我らに背き、神が与えた運命にも背き…

自ら滅びへと進む者…碇シンジ──」

 

 

誰も居ない空間で怪しげなバイザーを身につけ

シンジへの文句をぶつぶつと呟いているその姿は

関わってはならない危険人物に見えてしまうが

この男こそSEELEの中心人物であり人類補完委員会の

議長を務めていた「キール・ローレンツ」である。

 

 

「我らに牙を剥くならば、死をもって償ってもらおう」

 

 

彼の背後には「01」のナンバーが記された

モノリスが設置されており、周囲には同じモノリスが

扇を描く様に並べて設置されていた。

 

ただ、キール以外のメンバーはモノリスだけであり

並ぶモノリスはまるで魂が宿っているかの様に

仄かな紅い輝きが揺らめき続けているだけだ。

 

 

「始まりへ還る事を拒んだ最後のシ者を贄とし

我らの神による儀式の遂行を始めよう」

 

 

キールはモニターの一角へと視線を向ける。

 

そこには、補完計画の贄となる最後の使徒の姿と

再臨したSEELEの"神"が佇むさまが映し出されていた。

 

 

 

「宿願たる人類補完計画……原罪に穢れた魂を浄化し

人々を真の姿へ還す三度の報いの時が、今こそ──。」

 

 

そしてキールは一度言葉を区切り、並ぶモノリス達と共に

人類補完委員会最後の会議の終了を告げる──

 

 

 

『『『「全ては人類補完計画のために」』』』

 

 

 

──つづく。





コード4Cとの戦闘回でした。
2隻いるのに原作のまま4体だとつまんないよな
ってことで更にプラス2体しましたが
まぁこれは前哨戦、サクッと撃破されました。

そうそう、アンチLシステムについてですが
本作はリリスが結界を貼らずレイと同化したので
名称を変更させてもらいました。ご了承を。

【2300mm陽電子フィールド破砕砲】
主砲、ジークフリート。名前の元ネタはSEEDの
アークエンジェル級の武装命名法則に則って
リヒャルト・ワーグナーの楽曲名から。
口径は小さい気もするけど陽電子砲の口径×5。
要するにローエングリン。

【375mm対空防御ビーム砲塔システム】
ファウストと呼ばれてた対空砲。
元ネタはSEEDのイーゲルシュテルンで
口径はAAとの対比からざっくりと5倍化。
要するに原作ヴンダーの主砲。

【追記】
ストーリー構成の都合上で少し修正を加えました。
Mark.07と大型飛行物体の反応は
別々ではなくセットで移動している事としました。
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