新世紀エヴァンゲリオン 天才少年シンジ君(試作) 作:高橋ヒナタ
新章第8話です!お待たせしました!
人類はサードインパクトを乗り越えた。
「…カヲル君…っ」
──大きすぎる犠牲を払って。
「…ガフの扉が閉じていきます」
虹色の円が中心へ吸い込まれる様にして消えていき
空が元の青色に戻っていく。
黒き月が大地へと落ち、聖杯からワインが溢れる様に
ビルだったモノが──電車だったモノが──
神の子となった人々が大地へ降り注いだ。
「結界密度減少、危険域を脱しました」
「地上付近の結界密度は依然危険域です」
儀式の中断に伴い一帯を支配していた結界の効力も
徐々に弱まっていき、第三新東京市の上空は
再び原罪で穢れた人類の住める地へと戻る。
それでも、神によって浄化され深紅に染まった大地は
人類がその土を踏みしめる事を許さなかった。
「副長より通達。これより現空域を離脱するわよ」
親友を目の前で喪い失意のどん底に沈んた艦長に代わり
副長ミサトがこの非常事態への対処に就いた。
儀式は終わりを告げたかも知れないが、この艦の周囲には
この事態を引き起こした主犯がまだ残っているのだ。
どんな光景であれ驚き戸惑っている場合では無い。
「敵勢力の様子は!?」
ミサトは真っ先に敵艦と残存オップファータイプ2機の
動向を調べさせた。
光学を含む各レーダーは爆発による電磁波や衝撃波で
一時的に障害に陥っていたが、それらが復活した今
敵勢力が追撃を行おうとしているかどうかを
真っ先に確認しなければならない。
「敵艦に動きはありません」
「パターン青、反応無し。敵機は帰投した模様」
爆心地付近を航行するヴーセに大きな動きは見られず
撃墜されたMark.10を含むオップファータイプ3機も
帰投ないし回収された後らしく反応自体が消失していた。
「本艦は損傷箇所の応急処置および物資補給のために
インド洋方面へ一時離脱します」
『2番艦も主翼の応急処置が完了し次第向かわせよう。
入港先の当ては…ユーロか北米辺りになるか』
ミサトはゲンドウと衛星通信で連絡を取り
今後の方針を定める。まずはヴンダーの応急処置のため
2番艦と合流、そこで物資の補給なども済ませてから
現時点で生存している最も大きな支部へ入港する。
それをおおまかなプランとして行動する事となった。
「ユーロ支部より入電!」
「繋いで」
おおまかな方針が決まったタイミングで、ユーロ支部から
衛星経由で通信が入る。恐らくは向こうもこの事態に
どう対応すべきかを話し合おうとしていたのだろう。
ミサトはすぐに通信を繋げさせる。
『…大変な事になったわね…ミサト』
「ええ。久しぶりねアスカ」
通信に出たのは「惣流・アスカ・ラングレー」中佐。
ZUKUNFTユーロ支部長を務める母親が余りにド天然なため
ユーロ空軍所属でありながらZUKUNFTユーロ支部長を
事実上兼任するユーロ圏イチの天才美女だ。
「この艦をユーロに降ろしたいんだけどいけるかしら?」
『いいわよ。人員の補充と交換で良ければ』
ミサトとアスカはNERV時代でも良く交流をしていたため
交渉事もあれよあれよという間に成立していく。
ユーロ支部にヴンダー級2隻の停泊場所を確保する代わり
避難民を含む2隻の搭乗員から人員をユーロ支部へ提供──
といった形で今後の対処に当たる流れとなった。
「レイ、ユーロ支部へ航路を取ってくれる?」
「了解。…入力完了、自動操縦へ切り替え」
レイは損傷でフラついていた船体を上手く立て直し
ヴンダーをユーロ支部への航路へと乗せた。
「…シンジ」
「レイ…か。何だい」
操舵をオートに切り替えたレイは、未だに
見つめて動かないシンジの所へ足を運ぶ。
「………レイ?」
流した涙の跡がまだくっきりと残るシンジをレイは
そっと抱きしめた。
仕事で失敗したりして落ち込んだ彼を励ます時と
同じように、彼が最初にしてくれた抱擁と同じように
優しく、暖かく。
「──きっと、"彼"はどこかで生きている」
レイは、己の心が感じるままにそう告げた。
「カヲル君が…?でもカヲル君は今さっき…ッ」
──レイは悲しむ人を励ます時に優しい嘘は吐かない。
シンジは混乱で再び涙が溢れてくる。
「…この目で見た…エヴァと一緒に吹っ飛んだんだ」
Mark.06はシンジ達の目の前で眩い光と共に吹き飛び
原型すら分からない残骸だけが第三新東京市の跡地に
バラバラになって落ちていった。
エントリープラグの射出も確認されておらず
パイロットが助かるような程度の爆発では無かったのは
誰の目から見ても確かだった。
だが──
「…私の中のリリスが…そう言っているわ」
「リリス…が…?」
シンジの瞳に少しだけ希望の光が戻ってくる。
「確かに渚君は死んでしまったかも知れない」
碇レイは渚カヲルと同じ様に始祖を身に宿す存在である。
普段そういった力は一切使わずに生活しているが
その気になればATフィールドで空をも駆け
核ミサイルすら意図も容易く受け止める力を持つ。
そんなレイは、同格の存在である渚カヲルの反応を
互いが地球上のどこに居ても感じ取る事が出来た。
「でも…まだ"彼"を感じとれる」
「カヲル君…また会えるかな」
リリスがそう言っているのなら、彼が最後に言った通り
自分が望めばいつかまた出会えるのかも知れない──
「希望は残っているわ。どんな時にも」
「うん…!奇跡を起こせば…きっと…!」
奇跡を起こして希望を掴む──
今乗っているこの艦の名に込めた意味を思い起こし
シンジは再び立ち上がった。
今のシンジには守りたいものややりたい事が沢山ある。
大切な親友との別れに嘆き立ち止まっている事など
もうシンジには出来ないのだ。
──新たな幸せを掴んでくれと願って光の中へと散った
大切な親友の想いを無駄にしない為にも。
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「酷い有様だな…」
──冬月がサードインパクト後の地球を見て呟いた。
鮮やかな深紅に染まった大地、第三新東京市跡地に
横たわる黒き月、地上を闊歩する
広大な海はまだ青さを保っているが、大地から流れ込む
浄化された水がそれすらも紅く染めてしまうだろう。
宇宙へと上がっていたホフヌングから見えた地球の姿は
それを"
「…だが、希望はある」
「対浄化結界装置、そしてこの艦か」
ゲンドウは、地上に点在する紅色では無い土地を見て
まだ人類文明の復興の兆しは残っている事を確信する。
巨大な対浄化結界装置に囲まれた支部やシェルターは
紅色の世界も神の子達も踏み入る事を許さなかった。
このエリア全てが紅色に染まらない限り、人類にはまだ
か細い光条だとしても希望の光は残されているのだ。
『居住ブロック、大気圏突入準備完了です』
艦内無線で全ての区画の大気圏突入準備が整った事が──
散乱する可能性のある物の固定完了が報告された。
「よし。リナ、大気圏突入だ」
「リョーカイっ!フィールド展開、突入開始ッ!」
リナが舵を取りホフヌングの船体が地表面に対して
ほぼ直角へと姿勢を変える。
その直後に6基のN2パルス推進器が一斉に起動し
地球の重力と併せて加速し大気圏へと突入を開始した。
『断熱圧縮を確認。艦外は現在8,000℃』
同様の大気圏突入をスペースシャトルなどで行えば
確実に機体が崩壊する角度での突入をホフヌングは
難なく実行に移す。
輝くATフィールドが艦首方向へ円錐状に展開され
圧縮された大気が発する超高温と強烈な抵抗力を防ぐ。
5万km/hを超える超スピードでの降下にも関わらず
船体に傷が一つも付かないのは、ATフィールドが
そういった熱やデブリを防いでいるからだった。
『対流圏突入まであと5、4、3、2、1──』
「──降下プロセス終了!」
その圧倒的速度を以てすれば大気圏突入プロセスなど
あっという間に終わる。最後に艦の姿勢を元に直せば
無事大気圏突入完了である。
『おかえり、父さん』
「立ち直れた様だな。シンジ」
地球へ帰還したゲンドウ達をヴンダーが出迎えた。
モニター越しに映るシンジは艦長服を綺麗に着直し
キリッとした目付きに戻っており親友を喪った悲しみから
立ち直れている事がハッキリと見て取れた。
『まずはユーロ支部へ向かおう』
「──全てはそれから、という訳だな」
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──補機管理室。
「レン、調子はどうだい?」
今後の方針の決定や修繕工事の優先順位付けなどといった
艦長としての諸業務を一通り終えたシンジは
発進から現在までヴンダー級の補機を稼働させ続けている
自分の息子の様子を見に来ていた。
『う〜ん…ちょっと眠い、かな』
「まぁそうだよね」
補機が起動していなくてもヴンダー級は飛ぶ事が可能だが
空中への適応力は大きく落ちてしまう事になる。
戦闘中なら尚更地の利を失う訳にはいかなかったため
補機の稼働をレンに任せ切りにせざるを得なかったのだ。
父親からの期待を受け気丈に振舞っていたレンだが
流石に表情には眠気や疲労が浮かんできていた。
「パリ支部までの時間は──」
シンジは補機を動かしているレンとシイに少しでも
休息を取らせようと時間を工面しにかかる。
「レイ!通常航行に切り替えてくれる?」
『分かった。やっておくわ』
航海艦橋でレイが航行システムの切り替えを実行する。
『フラップを最大展開。ラダー、エルロン共に正常』
『空力制御翼全システムの稼働を確認』
「補機エネルギーサプライヤ全回路閉鎖」
「エントリープラグ排出プロセスに移行します」
「LCLガス排出」
艦橋と補機管理室のオペレーター同士で無数のやり取りが
飛び交い、補機に関する全てのシステム切り替えが
正常に行われた事が報告されていく。
これまでヴンダー級はATフィールドの力で浮遊していたが
利用するエネルギーを動的揚力に切り替える事で
空中での停泊や浮遊移動は出来なくなってしまうが
補機に頼る事無く航行を続けることが可能となるのだ。
こうすれば、パリ到着までの数時間の間だけではあるが
レンとシイを休憩させてやる事が出来る。
「エントリープラグ排出」
バシュッ!
エヴァの首元に挿入されていたプラグが排出され
補機管理室の方へと移動してくる。
「意外と疲れるんだなぁ…エヴァに乗るのって」
エントリープラグから降りたレンはぐぐっと伸びをして
疲れた体を軽くほぐす。
レン自身は座って雑談や音楽鑑賞に勤しんでいただけだが
乗っているエヴァがATフィールドを発し続けていたため
その分の疲労感がフィードバックダメージとして
レンの身体に蓄積していたのだ。
「おつかれ、レン」
「ありがとうお父さん」
シンジはレンへの労いの言葉を掛けつつ、彼が好きな味の
ソフトドリンクを追加で1本手渡した。
「……あの、更衣室ってどこだっけ?」
「──向こうにある」
更衣室がどこにあったかを父に尋ねた。
そのスーツに関する思い出のあれやこれやを思い出した
シンジは、何とも言えなさそうな苦笑いを浮かべたまま
最寄りの更衣室を案内してやったのだった。
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「ユーロ第二号封印柱の復元作業は後回しだ」
「直ぐにヴンダーが来る!受け入れ作業の準備を急げ!」
シンジ達が再起の仮拠点として選んだパリ支部では
ZUKUNFT職員とユーロ連合軍が総出でヴンダー級の
受け入れ作業の準備を進めていた。
「各補給部隊はヘリポートで待機!発進後は補給対象の
管制指示に従って補給を行ってくれ」
「物資搬入、搬出共に準備完了しました」
ヴンダーとホフヌングは緊急発進させたが故に
人員も物資も足りなかったり余っていたり
色々な意味でかなり滅茶苦茶な状態で入港する。
同時にパリ支部も結界による浄化で人員も物資も
中途半端な部分が多く現れていたため、それらを整理し
状況を整える必要があった。
「米国およびロシア政府との連絡がつきました」
「中国政府はまだ応答無しか…」
ZUKUNFT支部にほど近いエリゼ宮殿ではフランス政府が
主導となる形で各国政府との連絡も行われており
ヴンダーが到着し次第国連臨時総会という形で会談が
開催される予定だ。
現時点で連絡手段を含めて首脳陣の生存が確認されている
国家とZUKUNFT支部の主要メンバー、ZUKUNFT本部長の
シンジがオンライン上での会議を行い、SEELEへの対応や
各地での救助活動の方針などを策定する。
「中佐!避難民の受け入れ準備、完了しました!」
「ん、了解。追加の指示は追ってするわ」
ドイツ国防空軍の意匠をあしらった軍服を身にまとい
お気に入りのネコミミ付き帽子を被ったアスカも
ユーロ連合軍管轄の仮設エリアを駆け回って
部下達の指揮に精を出していた。
「…来たわね、ヴンダー!」
「あれが…!」
程なくして、地中海方面からヴンダー級2隻が現れる。
巨大な翼に輝きを宿して飛来したその巨大宇宙艦の姿は
見た者達に人類の再起の意志を強く感じさせたのだった。
──つづく。
大地がQ以降と同じように真っ赤になり
エヴァインフィニティ達が出現しました。
次回は本格的な再起へ向けたパートと
あとはアスカ達との再会とかかな。
【前回の補足】
・2887
イージスガンダムの自爆コード。
中の人繋がりでMark.06も自爆させました。
イージスとジャスティス、頑侍と…あと他に
cv.石田彰が搭乗者の自爆したロボットって
何かありましたっけ?