新世紀エヴァンゲリオン 天才少年シンジ君(試作) 作:高橋ヒナタ
本当に長いことお待たせしました…!
新章第10話でございます!
描きたい展開ってのはあるんですけど
そこにたどり着くのが中々大変…
最終話までのプロット自体は
ある程度出来てはいるので
必ず完結はさせたいと思っとります。
上手い事纏まったので今回少し短めです…。
──アスカとケンスケが結婚して数日。
ZUKUNFTパリ支部では、SEELEとの決戦へ向けた準備が
忙しなく進められていた。
『ホフヌング、船体固定終了』
「改造期間に余裕は無いぞ!急げよ!」
特に目を引くのは、パリ北駅上空に固定された状態で
大規模な改装作業を受けている2番艦ホフヌング。
第三新東京市から乗せてきた避難民らはほぼ全員
パリ支部へと移ったため、SEELEの戦闘艦に対抗出来るよう
1番艦同様の戦闘仕様へ改造されているのだ。
やる事としては陽電子破砕砲および対空砲の設置
コストカットされていた主翼推進器の改修作業
4機目となる緊急用N2リアクターの増設。
『シエル!ちぃと出力抑えろ!ワシが触れん!』
「分かってますよォ!難しいんですからッ!」
『リウェトさん、対空砲設置は完了です』
「ん、りょーかい。次はどこ進めようかな…」
改造にはエンジェルズの面々も駆り出されており
バルディエルとシャムシエルは主翼周りの改装作業を
リウェトは搭載火器の作業監督を務めている。
それとは別に改装作業を手伝っているエンジェルズが
もう1人居る。宙に浮いているために作業がしにくい
ホフヌングの船体下部を重点的に───
「あわわっ!?あれーおっかしいなぁ~?」
「あれ?ナットが無い…落っことしちゃったかなぁ」
「んー…こんな感じならオッケーだね。だよね?」
実に不安になる手つきで作業を進める女性がいた。
「これでオッケーでしょ?シエル兄さん!」
「サハクィエル…確かにそうですけどねェ…」
ド派手なブライトオレンジに染められた髪に
サイケデリックなカラーリングの服装をした
長身の女性「サハクィエル」である。
彼女はアラエルと同じ様に常に空中に浮遊する事が出来
さらにATフィールドの扱いに長けるのもあって
ホフヌングの主翼の外部機器調整を担当している。
『あのなぁ姉さん、機械っちゅうモンは──』
「オッケー出たんですから!平気ですって!」
ボルト締めにすら不安を感じるほど大雑把で
何もかもをフィーリングでこなして行く彼女だが
一つミスしても最終的には成功に繋げていくし
ATフィールドの調整は何だかんだ完璧に仕上げる。
更に言えば、時折誰も思いつかない様な発明を
創意工夫で編み出してしまう事さえある。
それがサハクィエルという人物であった。
「続き、やってきますからっ!」
『お…おいっ!』
サハクィエルは楽しそうにフワフワと飛びながら
残っていた作業に取り掛かっていく。
『ねぇ…ちょっとそいつ大丈夫なの?!』
『キチンと完成はするから大丈夫や。せやけどなぁ…』
「不安ですよねェ…」
艦外からは短時間なら飛行可能なシャムシエルが
艦内からバルディエルと2番艦操舵士に就いたアスカが
見守っているが、なんとも不安である。
一方地上では──
「レン!ゼルエル!反応が遅いぞッ!」
『お父さ──ぐあっ!?』
『早い…ッ!目で追えないなんて…!?』
「シイもラミエルも狙いが甘いわ」
『うっ…当てて見せるッ!』
『…負けません……!』
エヴァの操縦シミュレータでシンジ&レイペアを相手に
レン、シイ、ゼルエル、ラミエルの4人が
全力で抗い続けていた。
一体何故こんな事になっているのかというと
それは数時間前に遡る───
┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄
「碇本部長、人員の異動報告はこちらの書類に」
「あぁ。確かに受け取ったよ」
補機の擬似エントリー用プラグを完成させ
ヴンダーとホフヌングの繋留を済ませたシンジは
凄まじい量の報告書の処理に追われていた。
ホフヌングは保護した民間人のほとんどが下船し
戦闘艦への改造が決定した事もあって
大幅な人員異動が実施されており
シンジがその大まかな采配を執っていたのだ。
「パイロットの方は…宜しいのですか?」
「僕も所詮は1人の親だ。子供に嫌われたとしても
あの子達を守ってあげたいんだ」
「…ははっ、奥さんと全く同じ事を仰りますね」
その人員異動の中には、P-01とP-02の搭乗員として
臨時で登録されていたレンとシイも含まれていた。
擬似プラグが完成した今、2人が補機パイロットとして
エヴァに搭乗する必要も無くなっていた。
更に言えば、エヴァ・エンジェルズを補機として
使用する事も可能になっているので
それに伴ってレンとシイはパイロットの任を解かれ
一民間人の立場へと戻る事になる。
そんな話をしていた時──
「「お父さんっ!」」
まるで話を聞きつけたかの様なタイミングで
レンとシイが支部長室で報告を受けていた所へ
飛び込んで来たのだ。
「──すみません本部長、押し切られてしまって…」
「レンにシイ…急にどうしたんだ?」
シンジの前に立つ子供達2人は瞳に鋭い闘志を湛えており
それはこの支部長室の警備を務めていた黒服達が
思わず押し切られてしまう程だった。
覚悟の決まった鋭い眼差しをしている。
「僕達も…エヴァに乗って戦いたいんだ!」
「お父さんを…皆を守りたい…っ!」
「レン…シイ…っ」
2人は、エヴァのパイロットを降ろされた事を
受け入れたくは無いらしく、猛抗議するように
シンジの事をジッと見つめる。
その視線は思わずシンジも気圧される──が。
「ダメだ。これは2人を守る為だ。分かってくれ」
2人をパイロットから降ろした理由が理由だ。
シンジもそれだけは譲らない、と返した。
それも、かなり厳格な態度を以て。
今のシンジが纏う雰囲気は、彼が第三新東京市で
久しぶりに出会ったばかりの父ゲンドウにも匹敵する
見方によっては「高圧的」「冷徹」と評されても
おかしくは無い、そんな雰囲気だった。
子供達を危険に晒さないために、敢えて冷たく接し
2人から嫌われてでもエヴァから遠ざけにかかったのだ。
だが、子供達は決して意志を曲げなかった──
「「お父さんッ!」」
「っ!?」
「お父さんが託してくれたんだ…!」
「大切な人を守る為の力を…!」
父と母にもう二度とそんな想いをして欲しくない──
「僕は…エヴァンゲリオンP-01のパイロット…
碇レンなんだよッ!」
「お父さんとお母さんがもう!悲しい思いをしなくても
いいようにするの!だからッ!」
シンジを。レイを。親しくしてくれたみんなを。
そして自分たちをも。絶対に守ってみせる──
そんな覚悟をレンとシイは父シンジへとぶつけたのだ。
「……………───」
┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄
──そういった出来事があり、レンとシイは再び
エヴァンゲリオンのパイロットに任命されていた。
子供達の成長の証をまざまざと見せつけられて
尚も首を横に振り続ける訳には行かなかったのだ。
『まだまだ目標は遠いぞ!レン、シイ!』
『ぜえっ…ぜえっ…お父さんはやっぱ強いや…ッ』
『まるで当てられない…これがお父さんの実力!』
子供達の覚悟を思い知らされたシンジだったが
そう簡単に再搭乗を許可させる訳では無い。
SEELEとの決戦に備える僅かな期間の間に
エンジェルズ達と共に戦闘訓練を受け
一定以上の戦績を叩き出し続けなければ
その時は容赦無くパイロットから降ろす──
そんな条件を出していた。
『狙いが素直過ぎるわ』
『これでリリスの力を使っていないなんてッ…!』
『…ゼルエル、挟み撃つ。回り込んで。』
十分な戦績を叩き出し、父に認めてもらえるよう
エヴァ・エンジェルズの正式パイロットである
ゼルエルやラミエルと共に、父シンジと母レイが主導する
地獄のトレーニングに2人は打ち込んでいたのだった。
「流石はシンジ君達ね。現役時代から衰えてないわ」
「あのゼルエルで敵わないなんてね…凄まじい強さだ」
シミュレータルームのモニター室側では
エヴァの管理を任されている伊吹マヤ副整備長や
手が空いていたサキエルが試合を観戦している。
6人とも使用している機体のスペック値は共通だが
シンジとレイは攻撃面に於いても回避面に於いても
圧倒的だった。エンジェルズでも随一の戦闘能力を誇る
ゼルエルとラミエルを片手間で相手にしながら
子供達を指導しているのだから。
『シンクロ率に差がある分だけ反応も遅くなる!
それをしっかり意識するんだ!』
「──当人が一番シンクロ率低いのに良くやれてますね」
「そうね…30%以下に設定してるとは思えないわ」
シンクロ率が100%でない以上必ず発生する"ラグ"を
修正しつつ戦うようレンとゼルエルを指導するシンジ。
そしてそう、サキエルが指摘しているように
シンジはなんとシンクロ率の設定を極限まで落とし
起動可能ラインギリギリの数値で戦っている。
ラグの修正を彼らの目の前で実践して見せているのだ。
シンジの操縦手腕は18年経った今でも健在だった。
『命中させる事に拘り過ぎてはいけないわラミエル。
シイもそうよ。時には誘い込む事も必要』
「──ラミエルは相変わらずなのかい?」
「シャルギエル…そうだね。いい様に撃たれてるよ」
アッシュグレーの髪色の青年がレイの戦闘の様子を
サキエルの隣から覗き込んできた。
支給されているZUKUNFTの制服をキッチリと着こなした
彼の名は「シャルギエル」。種子保存プロジェクトの内
冷凍保存を中心に研究を行っていた青年だ。
「…0.2秒、1.0秒、0.3秒、0.5秒。射撃タイミングも
毎回全てずらしているのか…碇レイは」
シャルギエルはレイの牽制射撃をジッと眺め
彼女の凄まじい射撃スキルに感心する。
等間隔かつ正確に敵を狙うラミエルの射撃とは違い
レイの射撃はパッと見る限りでは非常に不規則。
だがそれは、相手の回避のタイミングを掻き乱し
最後に叩き込む本命を当てる為の誘導。
レイもまた、当時の手腕を維持していたのだ。
「シャルギエル、そっちの仕事は済んだんだ?」
「そうですね。プロジェクト再開は順調ですよ」
シャルギエルは自身が進めるプロジェクトの報告書を
エンジェルズのまとめ役であるサキエルへ提出しつつ
シンジ達の戦闘を眺める。
レンとシイは両親である
エヴァとのシンクロや戦闘スキルをメキメキと高めており
本格的な訓練開始から半日も経っていないというのに
基本の戦闘動作などは全てマスター出来ていた。
┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄
──こうしてレンとシイがエヴァの操縦訓練を
受ける様になって十数日。
「第二号封印柱復元?」
「はい。2番艦の改装も完成の目処が立ちましたし」
ZUKUNFTパリ支部から少し離れた場所に刺さっている
使徒封印用呪詛柱の復元作業が行われる事が決定した。
現在稼働している
居住スペースや農業用スペースを確保していく過程で
明確な敷地不足に陥ると判明したため
渚カヲル誘拐に使われた封印柱を再起動させ
浄化結界無効化領域の拡張を試みるとの事。
「シャムシエルが補佐に、ゼルエルが護衛に付きます」
「何も無いといいけどね…」
──そう言うシンジだが、封印柱の復元を試みれば
必ずSEELEによる妨害が入ると確信していた。
「ま、万全にしておくに越したことはないし…──」
「了解です。手配はこちらで進めておきます」
復元作業の補佐としてATフィールドの操作に長ける
シャムシエルがエヴァ・エンジェルズの4号機で
作戦中の封印柱周辺の防衛役として高い戦闘能力を有する
ゼルエルが3号機でそれぞれ出撃する予定だ。
1番艦ヴンダーは予想されうる敵部隊の駆逐が主目的。
SEELE側の大型戦闘艦をも相手取る事を想定し
N2リアクターを予備・緊急用を含む4機を全てフル稼働
補機出力も最大近辺を維持し、封印柱復元班および
パリ市街を狙う敵を殲滅する火力要員となる。
また、2番艦ホフヌングは主砲がまだ未完成なため
レンのP-01、シイのP-02を直掩機として配備し
後方からの援護を担当する。
「明後日、午前10時より作戦開始です」
「さて!更に忙しくなるぞ!」
今後を見据えた領土奪還作戦へ向け気合を入れ直すと
シンジは意気揚々と仕事に戻っていく。
パリ市街が三度目の屋島の戦いの地となるまで
あとわずか──
──つづく。
レン君シイちゃんが正式にエヴァパイロットに。
「僕はエヴァンゲリオン初号機パイロットの──」も
「碇くんがもうエヴァに乗らなくても──」も
ここではやってないのでね、子供達2人に
セリフを引用させてみました。
サハクィエルとシャルギエルが初出演。
如何せんエンジェルズが全部で13人いるので
出番が少ない子が出てしまうんですよね…
あと出てないのはイスラフェルとレリエル。
次回はシン冒頭のあの作戦!…かな