新世紀エヴァンゲリオン 天才少年シンジ君(試作)   作:高橋ヒナタ

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新章14話です。

キャラクターごとの心情描写に関しては
どちらかというと苦手な分野なので
少なくない綻びが出てそうですが
そこはどうか読者様方の方で補完して下さい。

貞本版5巻42頁、セカンドインパクトの日付が
9月13日ではなく8月15日となっていますが
本作は「セカンドインパクト=9月13日」
として扱います。



それぞれの想い

 

 

 

「さぁ~って!探すわよぉ!」

 

「「はい!」」

 

つい先日色を取り戻したパリ市街東部地区を

加持リョウジ・ミサト夫妻とその息子加持コウキ

碇レン・シイ兄妹とサキエルが、ZUKUNFT職員を引き連れ

意気揚々と──まるでお宝探しにでも出掛けるような

楽しげな雰囲気で歩いていた。

 

彼らが何をしているのかというと──

 

「まずはここからだな」

 

リョウジが急造の荷車を停めたのは

がらんどうになったホームセンターの前。

 

 

「使えそうな物はかき集めていきましょう」

 

「僕は農具が無いか物色してくるよ」

 

「行こうシイ!僕達は野菜コーナーへ!」

 

「ええ。まだ植えられるものがきっとあるわ!」

 

コウキとサキエルは雑貨コーナーへ

レンとシイは青果売り場へと駆けていく。

 

そう、ミサト達がここへやってきた目的とは

食料の自給自足を行う為、野菜・果物の苗や種

農耕に使えそうなクワやスコップ等の道具

ビニールシートやキャンプ道具といった

汎用性の高いアイテムの回収である。

 

 

「どんどん持っていっちゃって!私達もやるわよ~!」

 

「「「了解!」」」

 

サードインパクトによって文明は事実上の壊滅状態──

物を売買する際に用いる金銭も、それを支払わない事を

咎める司法も、実質的に機能していない様なもの。

故に、人類の存続に必要なものであれば

片っ端から持っていき生活に役立てるだけだ。

 

 

 

「この辺の野菜は芽が出るんじゃないかな?」

 

「そうね。水に浸ければ根が出ると思うわ」

 

レン達は野菜コーナーに並んだ青果から

傷んでいないものを選定してカゴに放り込む。

そこだけ切り抜いてみれば「少年少女のおつかい」だが

その野菜達は料理の材料にされる訳では無い。

発芽させ新たな食料の元とするのだ。

 

当初は青果の保存状態が心配されていたが

サードインパクトからそれ程月日は経っていないうえ

コア化していた間は物質の構造が変化しており

状態は殆ど変わっていない。つまり、結構新鮮な状態。

支部に持ち込んで検査に掛ける必要はあるが

十二分に足しに出来るだろう。

 

 

 

「サキエルさん、頼りにしてますよ」

 

「勿論だともコウキ君。農業は僕の得意分野だからね」

 

雑貨コーナーを物色しに行ったコウキとサキエルは

無事に使えそうなツールを確保した。

流石に耕運機のような機械的なものは少なかったが

鍬や鎌、熊手といったものであれば十分に集まる。

 

この収集作業を終えたら2番艦の物資輸送班と合流し

ヴァンセンヌの森の一角、南東のマルヌ川と隣接する

区画を中心に人力開墾を実施するのだ。

人手はZUKUNFT職員や避難民から募集すればいいが

道具がなければ始まらない。

 

 

 

「そういやシンジ君達は今どうしてるんだ?」

 

「『川』の方をやるって。ガギエルが補佐に付いてるわ」

 

「水の供給源確保は急務だもんな」

 

一方で今ここにいないシンジや他エンジェルズだが

そちらは中心街区画でセーヌ川の調査を実行中。

 

水は食料生産の面以外でも重要で、飲料水は勿論

機械の冷却水や医療にも当然大量に消費する。

現状はヴンダー級2隻の浄化槽をフル稼働させて

対応しているが需要に追いついていないので

セーヌ川を水源兼魚の養殖池として利用出来ないか

更なる調査を進めているという訳だ。

 

ミサトとリョウジは数名のZUKUNFT職員と共に

避難民の生活に役立ちそうなツールを回収していった。

 

 

 

┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄

 

 

 

 

 

「どっこいしょーっ!……儘ならないもんね」

 

鍬を勢いよく地面へ振り下ろしたミサトがつぶやく。

首に掛けたタオルで汗を拭いつつ。

 

「ですね…っ!僕も何だかんだ機械に頼ってた訳だ!」

 

続けてサキエルが鍬を振り下ろし感想を一言。

 

早速始まった開墾作業だが、中々に苦戦していた。

邪魔な木々を斧を使って切り倒し、切り株や雑草を抜き

鍬で地面を片っ端から耕していくのだが

これがまた体力をゴッソリと持っていかれる。

 

サキエルが言った様に、第三新東京市在住の面々は

予想以上に機械化・電子化の影響を受けていて

それがモロに出ていたのだ。

 

 

「良いんですかミサトさん、僕達がこれ使って…」

 

チェーンソーで木を伐採していたレンが

申し訳なさそうな表情を見せる。

 

彼が手に持っているのは充電式チェーンソー。

ガソリン等の確保が絶望的な現状でも使うことの出来る

数少ない電動の工具。レンは自分達が楽をする事に

申し訳なさを感じている様だが──

 

「へーきへーき、あたし達はこう見えて体力あるから」

 

鍬を肩に担いでニカッと笑ったミサト。

彼女はNERV時代作戦部所属であったとはいえ

白兵戦スコアトップクラスの、言わば元軍人。

苦労こそすれど体力の心配は不要だった。

 

 

「それに電気は──」

 

「ジェットアローンが居るからな。よっと!」

 

リョウジが視線を向けた先で歩いていたのは

「JA改 地上仕様」。N2リアクターで稼働し

大量の物資の輸送や大電力の継続供給などを

難なくこなす大型無人重機だ。

当然レンやシイが扱う機器の充電もJA改が生産した

電気を用いて行われている。

 

4444Cとの戦闘で散らかったビルの瓦礫をものともせず

ヴンダー級からの物資を背中のコンテナで輸送し

避難民居住区にも十分な電力を供給し──

いつぞやの披露宴会場で時田シロウが語った

ジェットアローンの運用を見事実現していたのだ。

 

「なんというか…可愛い動きですね」

 

腕をぶんぶんフレキシブルに振って歩く姿が

中々シュールで可愛らしいと人気なんだとか。

 

 

 

「結界密度問題無し、pHも許容範囲内だね」

 

土壌調査の結果は可もなく不可もなく。

 

懸念されていた浄化結界による影響は無く

土地自体も極端に痩せている訳では無かったので

あとは農業経験者らも招いて細かい調整を施せば

割とすぐにでも栽培が始められそうであった。

 

ヴンダー級のプラント頼りの食料生産体勢を

改善出来る、とサキエルもミサトも安堵する。

 

 

 

 

 

「……………」

 

作業の合間にふと手を止めたサキエル。

 

 

「赤い大地がどうかしたのかい?」

 

「…いや、不気味だなって…ね」

 

視線の先にあるのは、結界に浄化された赤い世界。

最近「ハイカイ」と呼称されるようになった

傷だらけのエヴァンゲリオンインフィニティが

3体ほど、当てもなく彷徨っている。

 

目を向けるたび、禍々しいと思えてしまって。

 

 

「──曰く、神の世界だそうだ」

 

リョウジがタバコに火を付けて呟く。

 

SEELEが望んだ世界、原罪の穢れ無き世界だ、と。

 

 

 

「…これが、ねぇ」

 

サキエルは決してそうだとは思えなかった。

 

(僕は一度この世界を望んでいるはずなのにね…)

 

使徒サキエルは、サードインパクトを起こす為──

リリスより生まれし者との生存競争に打ち勝ち

アダムより生まれし者のみが生きる世界を求めて

第三新東京市へ侵攻したというのに。

 

 

「還りたいとは思わないのかい?」

 

「いいや全く。僕は緑といるのが好きだからね」

 

それでもサキエルは人で穢れた世界を望んだ。

ゆっくりと、だが力強く生きる植物たちの姿は

赤い大地では見られない景色だ、と。

 

サキエルだけではない。他のエンジェルズは勿論

綾波リナことアルミサエル、リリスの化身たる碇レイ

そしてアダムの化身たる渚カヲルも、人の姿のまま

この星で生きる事を望んでいる。

 

 

「そうだな。何かを育てるってのはいい事だ」

 

「ですね」

 

 

サキエルとリョウジはまた鍬を手に取り

耕作に戻って行った。

 

 

 

それ(タバコ)、貴重なんじゃないんですか?」

 

「そうなんだよなァ…」

 

 

 

┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄

 

 

 

──ヴンダー航海艦橋。

 

 

 

「あらシンジ君、ここにいたのね」

 

ひと仕事終えたミサトが艦橋に戻ってくる。

そこには、黙々と仕事を続けるシンジの姿が。

 

「ミサトさん」

 

シンジはセーヌ川の調査がひと段落した後も

休憩時間に入り静まり返っていた航海艦橋で

コーヒー片手に作業を続けていた。

 

 

「相変わらず仕事の虫ね。リツコのが移ったのかしら」

 

一度仕事モードに入ると寝食も忘れるその様は

NERV時代から割と変わっていなかったが

最近特に──サードインパクト発生以降

作業に没頭する時間が増えつつあった。

 

勿論、子供たちやレイと接する時間も設けていたが

それ以外の時間は殆ど作業に費やしている。

 

 

「少しくらい休んでもいいのよ?」

 

ミサトは働き詰めのシンジを気遣う言葉を掛ける。

 

「…あなたのご両親も、アスカのお母さんも

SEELEとの決戦に力を貸すって言ってくれているわ。

何もシンジ君が無理をする必要は無いのよ?」

 

ゲンドウとユイを初めとするシンジ達の両親世代や

冬月ら旧NERVスタッフ達は、かつて使徒との戦いで

子供たちを最前線に送り出してしまった罪滅ぼしにと

持てる力を総動員して決戦の準備を進めている。

 

ミサトの言う通り、シンジは無理をしなくてもいい

むしろ少し休んでいろと言われる立ち位置に居るのだ。

 

だが──

 

 

「………これは僕なりのけじめの付け方なんだ」

 

「けじめ…?」

 

シンジは負い目を感じる様な表情を浮かべ

過去の己の選択を思い返す。

 

 

 

『示そう!僕らの意志を!』

 

『全ての人たちへ、エヴァンゲリオンを──』

 

 

それは、世界に福音が降り注いだ日の事。

 

 

「…あの時僕はSEELEの人達を消してしまう事も

可能だったんだ。でも…僕はそれをしなかった」

 

覚醒した4体のエヴァンゲリオンとヴィレの槍を手にし

神に近い存在へと昇華していた当時のシンジには

アンチATフィールドを使いSEELEの構成員を

全てL.C.Lへ還元させ消し去る事も可能だった。

 

けれど、人として他人と共に生きるからこそ得られる

強さというものを彼らにも理解して欲しい、と

上位者として力を振るう以上私情は挟むべきではない、と

シンジはSEELE構成員をL.C.Lへ還元する事はしなかった。

 

 

「…優しいあなたらしい良い選択だわ」

 

「ありがとうミサトさん。けど、結果はこの通りだ」

 

だが、その結果SEELE復活とサードインパクト発生を許し

多くの命が失われる事態を引き起こしてしまったのだ。

 

「SEELEを壊滅させるまでは止まれないんだよ」

 

真実を知った時シンジを恨む人は数多くいるだろう。

理解すら出来ぬまま赤い大地に呑まれた人も大勢いる。

喪った親友の魂も未だSEELEの手の中にあるだろう。

 

だからこそ、けじめを付けるまでは立ち止まれないのだ。

 

 

 

 

 

「ミサトさんこそ、何で戦うんです?」

 

「私は…そうね…」

 

シンジから依頼されたとはいえ、ミサトにもまた

立ち止まれない理由はあった。

 

思い出すのは、2000年9月13日の出来事(セカンド・インパクト)──

 

 

 

『ミサト…お前は生きるんだ──』

 

『……お父さん…?』

 

 

それは、父の姿を見た最後の記憶。

 

研究に没頭してばかりで、いつも母を泣かせていた父が

突如崩壊を始めた南極の研究施設から自分を命懸けで

救い出してくれた時の記憶。

 

 

「お父さんへのせめてもの償いかしらね」

 

そんな父をミサトは別れの間際までずっと嫌っていた。

憎んでさえいた。父の想いに気付いた時には全てが遅く

何も伝えられないまま父は帰らぬ人となってしまう。

 

ミサトにとって、セカンドインパクトの元凶でもある

SEELEは父の仇も同然。元凶のうちの1人であった

NERV司令碇ゲンドウが生きて罪を償う事を選んだ今

SEELEを討つ事は父にしてやれる数少ない償いであった。

 

 

「…運命って残酷ですね」

 

「そうね」

 

たとえ人類に仇なす使徒を全て討ったとしても

たとえセカンドインパクトの真相を暴いたとしても

たとえ世界に福音をもたらしたとしても。

運命はまた残酷にもシンジ達に戦いを強いる。

 

人類の補完という、救済という名の終焉を齎さんとする

巨悪を討たなければ、本当の平穏は訪れない。

 

 

「僕は戦いますよ。最後まで」

 

「力を貸すわ。私も、リョウジも」

 

けれど、決してシンジ達の目から光は消えない。

 

人類の知恵と意志が神の力をも克服する事を

誰よりも信じているのだから。

 

 

 

┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄

 

 

 

 

 

「最後の執行者が完成したか」

 

 

キール・ローレンツのバイザーに隠れた視線の先で

血の様な赤紫色の液体で満たされたドームの中から

一体のエヴァンゲリオンが引き上げられていく。

 

 

「人類を滅びの宿命から救う希望の機体──」

 

 

その機体色は赤い水を浴びてもなお美しい白だが

素顔はペストマスクの様な(アダムの系譜にある事を示す)仮面で隠されており

肩からは禍々しい赤色の翼らしき部位が伸びている。

 

希望の機体を謳うには些か禍々し過ぎるそのエヴァは

SEELEが求める人類補完計画の鍵となる機体。

原罪の穢れを浄化し、人のシン化と補完を完遂させる

最後の執行者たる機体。

その名は──

 

 

「Mark.13…我らを救う唯一神(ヤハウェ)よ」

 

 

 

 

 

『リリスの再現を担うホースマンは我らの手の中にある』

 

『生命の樹を形作る12の"使徒"の建造も終わった』

 

SEELEはただただ人類の永続を願う。

 

「フォースインパクトの鍵となり、補完計画の贄となる

かつての神の復活を以て、約束の時となる」

 

知恵の実を食した人類へ神が与えた運命──

生命の実を得た使徒に滅ぼされるという運命に抗い

神の子の地位を奪って永遠を生き続ける為に。

 

 

「では…始めよう」

 

キールは静かに立ち上がり、最後の儀式へ向け

再び時計の針を進める事を宣言する。

 

 

 

「『『全ては人類補完計画の為に』』」

 

 

 

──つづく。





ここから先はいよいよ最終決戦です。

人類補完計画という、エヴァの中でも特に
難解な部分を取り扱う事になるため
物語の構成に個人的解釈を多く含みます。
そこはご容赦ください。
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