新世紀エヴァンゲリオン 天才少年シンジ君(試作) 作:高橋ヒナタ
お待たせいたしました、新章15話です!
最終決戦、突入。
結局新生イスラフェル君回よりも先に
本編が完成してしまったので
こちらを先に投稿させていただきました。
イスラフェル回の方は、完成した場合は
前回との間に挟み込んでおきますが
あまり期待はしないで下さい…。
──艦長室。
「──ああ、2番艦の艤装作業は1500までに。
後はエヴァの調整と新装備の搬入に掛かってくれ」
シンジは珍しく艦長室から作業指示を出していた。
最近特に働き詰めだった事をミサトやユイに指摘され
今日1日の艦長室からの外出禁止を言い渡されて
こうして内線を通しての指揮に留めていたのだ。
『JA改宇宙仕様の改造は完了しました』
「了解。後は主翼上の作業班に引き継げばいい」
『新装備の搬出準備が整いました』
「4号機の飛行ユニットから取り掛かってくれ」
生死不明と思われていたイスラフェルがつい先日
巡礼先であったメッカからゴルゴダベースを経由して
無事合流を果たし、ZUKUNFTは最終決戦へ向けて
本格的な準備を開始している。
前回の戦闘で破損してしまった箇所の完全修復をしたり
ユーロNERV時代から収蔵されていたエヴァ用の武器を
片っ端から引っ張り出して装備させたり
旧NERV本部現SEELE本部へカチコミを掛けるために
本部の外壁をぶち抜けるミサイルを用意したり
Mark.06再覚醒のリスクに備えた装備を作ったり、と
その多忙っぷりはヤシマ作戦直前の準備や
ゼルエル戦直後の後処理に匹敵するほどだ。
『──シンジ君、グッドニュースよ。停止信号プラグが
ようやく形になったわ』
「助かります。プラグは
『了解。手配しておくわね』
リツコ、ユイ、キョウコ、そして時田──
ZUKUNFTが誇る世界トップクラスの頭脳によって
"
決戦の準備は着々と整いつつあった。
「………」
シンジは通信の合間にテーブルへ目を向け
小さな植木鉢に飾られたアザミの花を眺める。
荒れ地にひとりぼっちで咲いてたんだ、と
レンとシイが植木鉢に入れて持ってきたもので
去年からずっとこの艦長室に置いてあるが
今でも綺麗な赤紫色の花を咲かせてくれる。
「…カヲル君…必ず迎えに行くから待ってろよ」
誰の手も振り切って強く生きていたであろうアザミを前に
静かに決意を新たにするシンジ。
──その彼の瞳がアザミと同じ色に煌めいていた事は
誰にも気付かれる事は無かった。
┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄
カチャリ…
それは、シンジが貴重な挽きたてコーヒーを淹れ
ちょっと贅沢な休息を堪能し終えた時──
「休憩中失礼致します」
何も無い空間から声だけが響く。
夜闇の様にしっとりと落ち着いた女性の声色が
部屋の中心の床から聞こえてきた。
下の階層からでは無く、まさにシンジが今いる
この艦長室の床から声が発せられたのだ。
「ん、レリエルかい?」
「はい。エンジェルズNo.12、レリエルです」
その声の主はシンジの返答を確認すると
床に「ディラックの海」と呼ばれる黒い影を広げ
そこからスーッと室内へ浮上して来た。
星空の様に煌めくダークシルバーアッシュの髪
モノトーンカラーでまとめられた服装に
物静かで落ち着いた雰囲気を纏う長身の女性の名は
エンジェルズメンバーのうちの1人「レリエル」。
「君が来たってことは──」
「はい」
レリエルはディラックの海による瞬間移動を活かし
ここパリから遠く離れた
レジスタンス基地兼SEELE監視所との連絡役
および人員の運搬役を担ってもらっている。
ついでに人員不足だった現地の助産師も兼任しているが
それは置いておいて、SEELEを監視していた彼女が
直接艦長室にいるシンジの元へ跳んで来た理由は
もはやひとつしかない。
「…NHG1番艦が旧NERV本部および黒き月を伴って
カルヴァリーベース方面へ移動を開始しました」
「残り時間はあと僅か、って訳だ」
SEELEとの決戦が始まるのだ。
┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄
「──全艦、発進準備」
シンジの号令が2隻の戦艦へ静かに響き渡る。
『総員、第一種戦闘配置にて発進準備!』
『自立誘導ミサイル、推進剤注入開始』
両艦のクルー達はその声に弾かれる様に
一斉に決戦への最終準備へと取り掛かった。
艦の巨大な主翼の上では、手足を取り外された
JA改宇宙仕様へ大型のプロペラントタンクが装着され
高精度の自立誘導ミサイルへと改造が進められる。
『新1号機、エール・ド・アンジュを接続。異常無し』
『4号機の増設ブースターはぶっつけ本番で行くわよ!』
一方のエヴァ格納庫内では、専用飛行ユニットである
「エール・ド・アンジュ」の完成品が取り付けられ
あとは各パイロットの搭乗を待つのみ。
『主機N2リアクター、臨界点を突破。出力安定』
『補機パイロットのバイタルにも問題無し』
全てのN2リアクターに火が入れられ、艦の各機能が
全力運転を始める。補機のエヴァ・エンジェルズには
既にイスラフェルとサハクィエルが搭乗しており
巨大な主翼を光で包んでいる。
──そして、発進を目前に控えた2隻の艦内に
ZUKUNFT本部長碇シンジの声が再び響く。
「これより我々『
フォースインパクトの不可逆的阻止を目的に
旧南極カルヴァリーベースへ進行中の旧NERV本部
現SEELE本部を強襲、フォースのトリガーとなりうる
エヴァMark.06の奪取ないし無力化を主目的とした
『ハヤタ作戦』を決行する!」
その声は、30を過ぎたばかりとは思えないほど
覚悟と威厳、そして強い意志に満ちていて
WILLEのクルー達も自然と身が引き締まる。
「人類の知恵と…そして何よりもその"意志"が
いずれ神の力をも克服する事を忘れないで欲しい!
次の時代を作る子供たちに
諸君の健闘を期待する!!」
クルー全員が身につけている青いバンダナは
それを持つ者が「かつての青かった地球を必ず取り戻し
人間として生きる未来を切り開く」という強い意志を
内に宿している事を表すものであった。
最後にシンジはひとつ息を吐き、決戦の火蓋を切る。
「……全艦、発進!!!」
ついに、2隻のヴンダー級がパリの空を発った。
目指すは旧南極へ向かうSEELE本部。
黒き月を伴っていることからSEELE本部の進行は遅く
あちらがオーストラリア大陸を抜けた辺りで
対象を捕捉出来る計算となっている。
┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄
「──目標を光学で確認!」
"それ"は程なくして見つかった。青葉が報告を上げるが
主モニターを見ている面々であれば誰でも気付けた。
水平線の先に、まるで太陽が登るかのように
姿を現した超巨大な構造体はそう、黒き月。
最大望遠でも頂上で浮遊する旧NERV本部が
まるで砂粒のようにしか見えない遠距離でも
黒き月の姿はハッキリと見て取れる。
「高度を合わせろ!誘導ミサイル発射準備!
突入部隊の出撃準備も進めるんだ!」
「誘導ミサイル発射最適地点算出、軌道修正」
『エヴァ全機発進準備!』
シンジは素早く戦闘準備へと入る。
レイが1番艦を、2番艦をアスカが巧みに操り
誘導ミサイルを最も撃ち込みやすいポイントへ向け
ぐんぐん高度を上げていく。
1番艦のエヴァはリツコが、2番艦のエヴァはユイが
主導し素早い発進準備が進められる。
第2船体前面へ繋がるカタパルトへと載せられ
安全な射出タイミングを待つ。
そんな時だった。
──ビギュオンッッッ!!!
「右舷第2船体に被弾!」
凄まじい火力の怪光線がヴンダーを襲ったのだ。
ヒデキがコンソールにしがみつきながら報告を上げる。
幸い損害は表層のみで、カタパルトや火器に異常は無い。
「3時方向に艦影発見!」
立て続けに、今度はミドリが敵影の位置を報告。
「NHG1番艦ヴーセ…!」
「目的はMark.06再起動までの時間稼ぎか!」
ミドリが告げた方角へ目を向けてみれば
海面下から──厳密に言えば位相空間の中から
サードインパクトの時にヴンダーを苦しめてくれた
NHGの1番艦ヴーセが顔を出していた。
2隻と並走するように姿を現したヴーセは
艦首側6門、艦尾側1門の計7門へ増設された主砲を
綺麗に全てこちら側へ向け、一斉に撃ってくる。
「あちこちに被弾っ!あっちの火力も圧倒的ですぅ!」
一点特化されればATフィールドすらぶち抜かれる
超火力の砲撃が主にヴンダーを襲う。
「怯むな!右舷砲撃戦用意!SEELE艦を牽制しつつ
目標地点へ急ぐッ!」
「A.T.フィールドを右舷側へ集中」
『各砲射線が開き次第発砲を開始。撃て!』
『あいよゲンドウ君!虎の子AAミサイルだよん♪』
だが、シンジ達はこれしきの事では怯まない。
艦を更に加速させつつ、対艦戦闘用火器をフル稼働。
ヴンダーがA.T.フィールドを集中展開させて前衛を務め
その背後からホフヌングが全火力をぶっぱなす。
NHG対策として用意させた専用対艦ミサイルは
A.T.フィールドによる防御を貫いてダメージを与え
対空砲が装甲を徐々に赤熱させていく。
「SEELE艦が離れます!」
「よし。父さん、2番艦を後方へ!」
『防御機能を最大展開、1番艦の後方へつけろ』
『了解!A.T.フィールドを後方へ回すわ!』
6発のN2パルス推進器によって更に加速した2隻は
ヴーセを後方へ置き去りにしていく。
A.T.フィールドとラミネート層の蓄熱容量を消費した
1番艦を先程まで後衛にいた2番艦が守るようにして
後方へ移動。縦列陣を敷き再び黒き月を目指す。
数の有利が可能にする、単純明快かつ強力な戦法だ。
だが──
「艦首12時方向に艦影出現!」
「待ち伏せかっ!?」
そんな有利は、すぐに崩れ去ってしまう。
SEELE本部から出撃したと思しき2隻目のNHGが
突如前方に現れ、挟み撃ちにされてしまったのだ。
ビギュオンッッッ!!!
ビギュオンッッッ!!!
「やばいですッ!これ以上やられると防御機能が!」
「くっ…!」
『どうする碇、このままでは艦が持たんぞ?』
『…今ある手札でなんとかするしかあるまい』
前方、「NHG2番艦
それでもWILLE側2隻への被害は拡大していく。
A.T.フィールドを貫通した砲撃が何度も直撃し
ラミネート層の蓄熱容量を一気に食い尽くす。
容量オーバーを起こしてしまうと艦体が崩壊するため
いずれ緊急保護機能が作動し機能停止してしまうのだ。
「──シンジ君、やるわよ!」
「あぁ!前方の2番艦から排除する!舵そのまま!」
シンジはとんでもない奇策を打つことにした。
それは、かつての使徒との激戦の中で築かれた
副長加持ミサトとの信頼関係が可能にする
常人であれば考えつきもしない策の即断即決。
「本艦はこれより、360度バレルロールを行うッ!」
全長2kmを超える超巨大戦艦での、バレルロールである。
「レイ、頼む!」
「任せて!」
尚も接近してくるエアレーズング。
WILLEはこの危機的状況に風穴を空けて脱出するべく
吶喊の準備を始めた。
「安全確保の通達完了!総員シートベルト着用!」
「対空砲起動よし!バレルロール開始と同時に一斉射!」
『敵艦の進路確認!最大戦速を維持!』
『主砲エネルギーチャージ完了!いつでも撃てます!』
重力下でバレルロールを実行するという荒業のために
1番艦の館内ではあらゆるモノの仮止めなどが行われ
シートベルトの着用や安全な場所への避難も始まる。
2番艦の方は、1番艦が前方にいる状態ながらも
主砲の陽電子破砕砲をチャージし、射線が通った瞬間に
エアレーズングへぶちかませるよう構える。
「接触まで、10!9!8!──」
脇目も振らず突っ込んできたヴンダーに
エアレーズングは減速するが、もう遅い。
「バレルロールッ!!」
ヴンダーはその巨体を見事にバレルロールさせ
エアレーズングの背中を対空砲で叩きながら
後方へとすり抜けていく。
『陽電子砲、撃て!』
ヴンダーが宙を舞い、射線が開いたその瞬間
陽電子のビームが鮮烈な輝きを放ちながら
エアレーズングの前面にぶち込まれる。
そして、煙を吐きながら落下するエアレーズングを
まるで足蹴にするように船体下部で踏みつけながら
ホフヌングも後方へと抜けていった。
『発案は葛城君か…相変わらず無茶をする』
海に叩きつけられたエアレーズングを眺めながら
痛快な光景だ、と冬月が笑みを浮かべる。
墜落していくエアレーズングに進路を遮られ
ヴーセも大きく迂回させられているので
少しの間はNHGによる襲撃を凌ぐことが出来るだろう。
「さて、いよいよ本部攻略だ」
「そうね。気合い入れていくわよ」
2隻のNHGを退け、とうとう旧NERV本部が射程内に収まる。
SEELE本陣の最奥に仕舞い込まれているであろう
Mark.06の元までは、まだ山のように敵が居るのだろうが
どれだけ敵がいようとも薙ぎ倒すだけだ。
「自立誘導ミサイル起動!」
「目標座標入力、制御システム起動」
両艦の主翼で待機していたJAミサイルの光学センサーに
一斉に光が灯り、その視線を旧NERV本部へと向ける。
必要最低限の冷却水のみを積んだ彼らは
機体のN2リアクターをオーバーロード寸前の状態まで
フル回転させている。
「誘導ミサイル発射最適地点まであと10!」
彼らは燃料を満載したプロペラントタンクを抱えたまま
目標へ向けて飛行し、セットされた近接信管が
着弾とほぼ同時にリアクターを暴走させ大爆発するのだ。
「──3、2、1、発射地点到達!」
「誘導ミサイル全弾発射!!」
CIC担当の日向とマリが誘導ミサイルの発射スイッチを
同時に押し込み、ジェットアローンが飛び立つ。
そして───
ドォォォォーンッ!!!
「目標に命中!」
「侵入ルート確保を確認!」
吸い込まれる様に旧NERV本部に飛び込んだJAたちは
凄まじい大爆発を引き起こし、本部の堅牢な外壁に
どでかい大穴をぶち開けるのに成功していた。
エヴァンゲリオン再建区画へと繋がるであろう
大穴が開いたことを確認したシンジとゲンドウは
速やかに突入部隊へと発進指示を出す──
「『エヴァンゲリオン、発進!!』」
碇レン搭乗のエヴァンゲリオン新1号機と
碇シイ搭乗のエヴァンゲリオン新0号機が
ヴンダーのカタパルトから。
ゼルエル搭乗のエヴァ・エンジェルズ3号機と
ラミエル搭乗のエヴァ・エンジェルズ4号機が
ホフヌングのカタパルトから。
それぞれ飛び立って行った。
──つづく。
いよいよシンのラスト、ヤマト作戦編へ。
作戦名はウルトラマン「ハヤタ隊員」から。
頭文字が「ヤ」でないのは気になりますが…
悪くはないかと。
【新生イスラフェル】
新生前と同様2人に分かれることが可能。
髪色はアッシュグレー、音楽が大好きで
サンダルフォンやカヲルと特に仲がいい。
使徒の中で唯一イスラム系由来ということで
服装などは基本中東系がベース。
サードインパクト時はメッカへ巡礼中で
何とかゴルゴダベースへ逃げ込んだ。