新世紀エヴァンゲリオン 天才少年シンジ君(試作) 作:高橋ヒナタ
クライマックス突入。
「やられた…っ!」
Mark.06は旧NERV本部にいるものと思っていた。
そこで再建を続けているものだと。
だがSEELEはWILLEの強襲を予見していた。
黒き月が南極に辿り着く前に旧NERV本部から運び出され
カルヴァリーベースで修復を受けていたのだ。
そして今、Mark.06は12体の"使徒"を引き連れ
WILLEの前に姿を現した。
「敵性エヴァに高エネルギー反応!砲撃来ます!」
「A.T.フィールド全開!排熱機関出力最大!」
ビギュオンッッッ!!!
白い帯の敵性エヴァが持つ杖のような武器から
凄まじい威力の怪光線が放たれる。
「
「もうやってる!!!」
ヴンダーが動けなくなった今、残ったホフヌングが
どんな手段を使ってでも4隻のNHGとMark.06を
破壊しなければならないが、敵性エヴァからの攻撃を前に
標的を照準に捉えることすら困難な状況に陥る。
かつての戦いで培われたアスカの操艦技術が無ければ
今頃ホフヌングも砲撃の雨に打たれていた頃だろう。
『お父さん!!』
「レン!無事か!」
居もしないMark.06を探しに行っていたレン達も
何とか旧NERV本部から脱出してくるが
ここに彼ら4人が加わったとしても
相手は始祖とそれを守る使徒の軍団だ。
頭数が圧倒的に足りない。
旧本部内で敵の妨害に遭ったのか武器をいくつか失い
レンの新1号機に至っては左腕が完全に折れている。
これであの軍団を全て墜とせと言うのは酷だ。
[BLOOD TYPE:BLUE 18th ANGEL]
「敵性エヴァ、S2機関を解放!!」
「次元測定値が反転していきます!」
姿も知らぬ18番目の使徒を贄とし、本物の神が覚醒する。
眩い純白の輝きを放ち、頭上の光輪が広がっていき
南極海は──否、世界は再び赤色の空に包まれた。
そして、Mark.06が新たな槍を自身へ突き刺すと同時に
12機の使徒がS2機関を解放していく。
「リツコ…!」
『全ての現象が18年前と…いえ、33年前と酷似してる。
フォースインパクトの予兆ね』
発動するは、浄化の儀式。
サードインパクトにより大地が浄化され
そして今、フォースによる海の浄化が実行される。
Mark.06がアンチA.T.フィールドを広げるにつれ
美しかった青い海が不気味な紅色に染まっていき
海に住む生命は十字の光を放ってL.C.Lへと溶ける。
ヴンダーやWILLEのエヴァには浄化結界対策があるため
搭乗員やパイロットに危険は及んでいないが
それもいつまで保つか。サードインパクトの時でさえ
ヴンダーの対浄化結界装置は悲鳴を上げていたのに。
ビギュオンッッッ!!!
「空力制御システム損傷!艦長っ!これ以上は!」
「……ぐっ…」
敵性エヴァからの砲撃でヴンダーが再び大きく揺れる。
ヒデキの目の前のコンソールに映るステータスが
次々とイエローやレッドへと変わっていく。
主要な武装を失ったヴンダーは敵の砲撃の雨の中を
防御機能全開で逃げ回っているが、このままでは
翼を折られて南極海に墜落してしまう。
万全の状態なら海に墜ちようが問題など無かったが
あちこちに損傷を負っている今どうなるかは分からない。
「万事休す、ね…」
ホフヌング一隻ではSEELE戦力を退けるのは難しい。
黒き月を槍へ変え役目を終えたらしい敵艦から
オップファータイプ4機が出てきて戦力差が更に開く。
ミサトが呟いた通り、まさに万事休すであった。
「───ミサトさん。少し、艦を頼みます」
「シンジ君?」
この状況に、シンジはミサトにヴンダーを託した。
自分にもまだやる事がある、と。
「セカンドインパクトによる仮説の実証
サードによる大地の浄化、フォースによる海の浄化…
長い時が掛かったが…ようやく我らの願いが始まる。
ファイナルインパクトによる魂の浄化を以て
人類の神化と補完を完遂させよう…!」
その頃、事態は更に進展を迎えていた。
先程までMark.06の傍らで事態を静観していた
未知のエヴァンゲリオンが動いたのだ。
突然Mark.06を背後から襲ったかと思ったら
その首筋からエントリープラグを引き抜いて噛み砕き
Mark.06よりも更に上位の覚醒形態へシン化。
そして、Mark.06の腹に突き刺さっていた槍を引き抜くと
白き月の頂点に空いていた小さな穴へと投げ込む。
するとその穴から虹色の光輪が広がっていくと同時に
無数の紫色の"何か"が溢れ出して来た。
「古の生命のコモディティ化か…」
「あぁ。ファイナルインパクトの始まりだ」
エヴァや補完計画についてよく知るゲンドウや冬月は
これが何なのか分かっていた。あの紫色の"何か"とは
今も世界中を彷徨っているエヴァインフィニティであり
物質化された魂で形作られたシン化した人類だ。
あれに呑まれれば最後、肉体はL.C.Lへ、魂はコアとなり
何も無い"ひとつの世界"へ誘われることだろう。
「──オップファータイプ再接近!!」
「後方からも来ます!Mark.06´複数!」
しかしそちらにばかり意識を割くわけには行かない。
敵機が無数に向かってきている。
「ゼルエル」
「俺は前をやる。ラミエルは後ろを」
「分かった」
ビギュオンッッッ!!!
艦首方向から来ていたオップファータイプには
ゼルエル機の怪光線とジークフリート二門
ファウスト四門が一斉に射掛けられる。
艦尾方向から来ていた十数機のグリューンには
かつて第三新東京市の迎撃設備を薙ぎ払った時のように
ラミエル機の加粒子砲による掃射が叩き込まれる。
「ゼルエルさん!砲撃を抜けた奴が!!」
「くっ…対処する!」
「スケレットシリーズが艦尾方向より接近!」
「数が多すぎる…っ」
しかし、人の身に収まる範疇であるゼルエル達と
使徒の力をお構いなく振り回してくるSEELE戦力とでは
徐々にその差が顕になって来てしまう。
ズドォンッ!!!
「やられました!1番N2機関大破!!」
「ファウスト左舷1番2番応答無し!」
ゼルエル達の砲撃をすり抜けたSEELEエヴァ
特にオップファータイプによる被害は甚大だった。
以前も散々苦しめられたその怪光線によって
ヴンダー級の巨体を支える生命線のひとつである
中央1番N2機関が爆発と共に大破。
「補機エネルギー回路4番5番が断線!」
「ぬぅぅ…っ」
それだけに留まらず、ホフヌングの飛行を支えていた
補機からのエネルギー供給にも支障が起きる。
アスカは一気に反応が鈍くなった舵を全力で握りしめ
艦をコントロールするがやはり操艦精度は落ちる。
「Mark.07接近!」
「やばい!」
その結果、敵機の接近を許してしまった。
ズズズ…ッ
「かっ、艦の物質構造が変貌していきます!」
「いかん!侵食タイプか!!」
「13番目と同じか…厄介だな」
Mark.07はホフヌングの船体に降り立つと手足を変質させ
青黒い触手によって艦そのものを侵食し始める。
まるで粘菌のように表面が蠢くその触手は
かつて人の手で焼き払った
「排除急げ!」
『やっています!ですが!』
ゲンドウは一応侵食の排除指示を出したが
無駄だろうと分かっていた。
あの時は使徒が本格的に活動を始める前でなおかつ
休眠状態という無防備な時を狙ったからこそ
人の手で排除出来たのであって、ここまで覚醒されては
人が抗えるものでは無いのだ。使徒という存在は。
「ぐっ…こんのォッ!」
「姫!5時方向からも来る!」
「分かってるっちゅーのッ!!」
艦が侵食されていくにつれて操舵は更に難しくなり
もはやインパクトを阻止するどころでは無くなっていく。
あの未知のエヴァを今すぐ破壊しなければならないのに
ホフヌングは上空へ向かうどころか力を失ったように
徐々に高度が落ちていく。
「何とかしなさいよ!!バカシンジィッ!!!」
アスカが思わず彼の名を叫んだ、その時だった。
バキンッ!
何かが割れるような音が聞こえたその瞬間
ホフヌングに群がっていたグリューンやスケレットが
ことごとく光の中に消えていった。
ビギュオンッッッ!!!
続く第二射。
『……!!』
狙いはホフヌングを侵食しようとしていたMark.07。
Mark.07は間一髪で直撃を免れるが──
キィィィーーーンッ…!!
飛び立ったMark.07を光線が追尾する。
『!!』
そしてそのまま、Mark.07を真っ二つにしてしまった。
ブリッジにいた全員が光線の出処へ目を向ければ
それはヴンダーの船体を突き破って発射されていた。
中央搬出入ゲートが開かれたそこに立っていたのは
槍を手にした紫色のエヴァンゲリオンだった。
「エヴァ初号機!シンジか!?」
そう、エヴァンゲリオン初号機である。
「あの姿は!」
「擬似シン化第1覚醒形態…!」
だがその初号機は本来の姿とは違う姿をしていた。
蛍光グリーンだったはずのパーソナルカラーは
絶大な力を感じる紅色に染まっており
頭上にはSEELEエヴァとは違う白い光輪を浮かべている。
かつて、SEELEとの決戦の際に1度だけ見せた姿
擬似シン化第1覚醒形態と名付けられた形態をしていた。
『『『………』』』
「………」
残ったオップファータイプ3機が初号機を取り囲む。
『!!』
先に攻撃の構えを見せたのは、Mark.08。
しかし初号機はそれを許さなかった。
Mark.08の怪光線をA.T.フィールドで弾きながら
槍を構えて突撃し、ホフヌングの外装へ叩きつける。
『…!…!!』
槍の刺し所が悪かったからかMark.08はまだ抵抗するが
初号機は左手で抵抗を封じた上で敵の首を噛みちぎった。
『!!』
『!!』
後方から出遅れたMark.09とMark.10が迫る。
「ッ!!」
それに対し初号機は、バッと左腕を向け──
キィィ………ンッ…ズドォンッ!!!
虹色に眩く輝くA.T.フィールドで形作られた塊を形成し
それをオップファータイプ2機へ向けて放った。
以前も同じようにオップファーへ放たれたそれだが
その威力は正しく桁外れとしか言えないものであり
それに直撃したMark.09は上半身が消し飛んでいた。
「………」
『…!?!?』
Mark.10の方へ、初号機がゆっくりと振り返る。
ビギュオンッッッ!!!
紅く輝く瞳に睨まれたMark.10は慌てて逃げ出したが
初号機は静かにその背を見つめると、光線を放った。
ただそれだけで、Mark.10は消し飛んだ。
「…あとはアレを止めないとね」
「えぇ。ヒトとシトが共に生きる世界を守るために。」
初号機のエントリープラグに乗っていたのは
シンジと、そしてレイの2人であった。
──否。その2人と、そしてエヴァ初号機は
曖昧な境界線のもと溶け合っている。
その中心にいたのは、碇シンジ。
リリスの分身たるエヴァ初号機とひとつになり
リリスの魂たる碇レイとひとつになった彼は
まさしく神の児と言える存在となっていた。
その証か、彼の瞳もまた紅い輝きを放つ。
「……やはり我らの妨げとなるか…第3の少年」
「キール議長」
シンジが駆るエヴァ初号機と、キールが駆る未知のエヴァ
エヴァンゲリオンヤハウェが南極海上空で相対する。
そのどちらも人の域を超えたエヴァンゲリオン。
向かい合うだけでA.T.フィールドが強烈な干渉を起こし
それぞれを包むオーラのように輝きを放った。
「──知恵の実を食した人類に与えられた運命は2つ。
生命の実を与えられた使徒に滅ぼされるか…あるいは
その使徒を滅ぼし、その地位を奪って神の子となるか。
我らはそのいずれかを選ばなければならない」
キールが静かに自身の想いを語り始める。
このままでは人類に未来など無いのだ、と。
「この世界も、やがて人の住める世界では無くなる」
「分かっているさ」
世界が変わった。
キールとシンジ、レイが対話をしていた空間が
突然地球を俯瞰するような景色を映し出す。
そしてその景色は、早送りしているかのように
凄まじい速度で移り変わっていく。
それは、キールが世界の運命を垣間見せているからであり
シンジが世界の辿る運命を再確認しているからであり。
「確かに…太陽が死んだ世界で生きていけるのは…
宇宙の星々すら死した世界でも生きていけるのは
生命の実を持つ存在だけかもしれない」
太陽が赤色巨星となり、やがて死んで白色矮星となる。
遥か遠い未来の話とはいえ、宇宙中全ての星々が死ねば
残されるのは光無く時間すら意味を成さなくなった世界。
そんな世界で生きていけるのは、単独の生命として完結し
あらゆる環境で生きていける使徒のみだろう。
だがそれでもシンジは、諦めなかった。
人類がヒトの姿のまま生きていくことを。
「でも…それでも…!人類の知恵と意志はいつか必ず
神の力だって克服して生きていけると信じている!」
「………!」
シンジとレイが、力を解き放つ。
まるで、今の言葉が真実と証明するように。
「カヲル君は返してもらうよ!」
シンジは右手を、レイは左手を空間へ押し当て
始祖が持つ力を更に解放していく。
その力は空間の跳躍すらも可能とし──
「カヲル君ッ!!」
「渚君!!」
『………!』
「「手を!!」」
ヤハウェのコアに取り込まれたまま眠っていた
魂だけの渚カヲルの元へ手を伸ばすことも可能にした。
「…本当に…また会えるなんてね」
「君が言ったんじゃないか。僕が望めば、って」
「ふふっ…そうだったね。ありがとう。シンジ君」
「渚君、貴方が帰ってきてくれて良かった」
「ただいま、だね」
「えぇ。おかえりなさい」
シンジはついに、渚カヲルを取り戻したのである。
「…アダムとリリスは人として生きる事を望む…か」
そしてそれはSEELEの敗北を意味していた。
カヲル君復活&初号機復活。
あと1話+αで本編は完結とする予定です。
既に次話の執筆は開始しておりますので
どうか完結までお付き合い下さい。