黒歴史小説 トリプルエッジ   作:味噌村 幸太郎

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 一面緑で覆われた大きな森が見えてきた。

 ちょうど、中心に古い城がある。

 

「あれか……」

「そうじゃ、あれが妾の最後の希望じゃ」

「ん?」

 

 何かが、俺の目を過ぎった。

「どうした?」

「あ、いや……」

 

 まただ……見える。

 それは俺の目に映ったのではなく、頭の中に映っていた。

 ノイズのようなものが混じっていて、しっかりとは見えないが、確かにどこか遠方の映像だ。

 変な猫のマークがついた巨大戦艦が空を飛んでいる。

 聞こえる……これは……声だ、誰かの声だ。

 

 

『……目標確認』

『ハーク様、ついに見つけましたね』

『うむ、やっとだな……。やっと……見つけた……。忌まわしき城め。今度こそ、その姿を無きものにしてやるわい』

 

 

 なんなんだ? この猫人間どもは……。

 脳内にぼんやりと映し出される映像。

 

 

「……まさか、こいつは!」

 これは魔王の力なんじゃねぇのか。

 ということは、これは身に危険が迫っていると言う信号……。

 そうか……そいつはいいや。

 

「婦子羅姫! 海呪城の高度を直ちに上げろ!」

「どうしてじゃ?」

「敵が下にいやがる!」

「なんじゃと?」

 

 それを聞いたミノが慌てだす。

「下を確認しろ! 敵艦に怪しい動きはないか!?」

 いつにない厳しい顔つきで、部下に叫ぶ。

 

「はい、まだこちらには気づいておりません」

 ホッとした彼が俺の方にやって来て、深々と頭を垂れた。

 

「ありがとうございます。黒王様のおかけで、敵の戦艦を察知することが出来ました」

「よ、よせよ。勘だよ、カン」

 ミノは「ご謙遜を」という顔で首を振る。

「いえいえ、これぞ黒王様のお力。御見それいたしました」

「もう、分かったよ……それより、この戦艦。どこのもんだ?」

 

「それは五大魔神、ハーク・フォゼフィールドの船じゃ」

 振り返ると、険しい顔をした婦子羅姫がいた。

「ハ、ハーク……フォ、フォ、フォンデュ?」

 カタカナに疎い俺は舌をかみそうになった。

 

「ハーク・フォゼフィールドじゃ。今、魔族を取り仕切っているのは奴じゃ。奴さえいなければ……日本の妖怪達は……」

 婦子羅姫は悔しさを抑えるために、歯を食いしばった。

 その悔しさは彼女の顔から、十分、伝わってくる。

「姫……心中、お察しします」

 ミノも寂しげな顔でうな垂れた。

 

 俺はそんな二人を見ていられなくなり、思わず、叫んだ。

「バカ野郎!」

 婦子羅姫とミノの体がビクッと震えた。

 

「そんな弱気でどうすんだ! お前らは……人間が恐れる、あの妖怪達だぞ。俺が小さい頃、読んでいた絵本に出てきた妖怪は本当に恐ろしかった……。そんなに弱くなかったぜ。やっぱ、妖怪も人間と同じで、時代によって風化されんのかよ? 違うだろ……。お前らは、日本最強の化け物だ。もっと、ビシッとしろよ!」

 二人は目を見開いて、俺の顔を見つめている。

 やがて、お互いの顔を見て頷いた。

 

「黒王様の言うとおりですな。この老いぼれ、年と共に、若かりし頃の熱い血を全て流しきったと思っておりました。ですが、先ほどのお言葉で、あの、昔の血が甦った気がします」

「すまなかった……黒王」

「だから、謝るなよ。どこに謝罪する妖怪がいるんだ?」

 俺がそう言うと、婦子羅姫が微笑んだ。

 そうだ。それでいい……。

 

「よし、これから敵の戦艦に不意討ちをかける!」

 ミノが目を丸くして言った。

「なんですと! 相手は五大魔神ですぞ」

 俺は鼻で笑った。

「んなこと関係ねぇよ。敵はぶっ潰すだけさ」

 自分でも訳が分からないのに、気づいた時は体を動かすよりも先に口が動いていた。

 次々と策が頭に浮び、それを口に出す。

 

「まず、俺が先陣をとって、隙を作る。その間に婦子羅姫は城の中に入れ。そして、海呪城は敵戦艦に特攻をしかけ、白兵戦にもちこめ!」

「は!」

 ミノが部下達に、指示を伝える。

 婦子羅姫がそっと俺に近づいた。

 

「黒王、大したものだ。惚れ惚れする……」

「へっ、お世辞はこの作戦が成功してから頼むぜ」

 婦子羅姫が皆にわからぬように、そっと、俺の手を掴んだ。

 

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