黒歴史小説 トリプルエッジ   作:味噌村 幸太郎

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第十二章 怒黒殺
12-1


 僕はうろたえているドラムに怒鳴った。

 

「ドラム!」

 彼はハッとした顔で僕に目をむける。

 

「いかん、青山。どうやら城が動き始めたらしい・・・」

「じゃあ、一刻も早く城を止めなきゃ!」

「ああ、わかった。では、私の背中に乗れ」

 そう言うとドラムは背中から紫色の大きな翼を広げた。

 

「うん!」

 僕はドラムの背に飛び乗った。

 ドラムのスピードは並外れていて、古城へと一瞬で追いつく。

 古城へぐんぐんと近づき始めるにつけて、僕は何故か手から震えが止まらなくなっていた。

 

「どうした? 青山?」

「わからない…この邪気、魔王のだろ?」

「ああ、だろうな」

「似てるんだ…」

 

 ドラムが眉間にしわをよせる。

「なにに?」

「一年前の…あの時の感覚と…」

 しばらくすると、城から真っ赤な炎が空へと昇っていった。

 

「ドラム!」

「ああ!」

 

 ついに〝悪魔の蓄音機〟が動き始めたんだ。

 僕たちは城の入り口を見つけると、すぐさま螺旋階段を駆け上っていった。

 そこには綺麗な色白の顔をした女の化け物が倒れていた。

 

 そして、その隣には青年がひとり泣いていた。

 身体が金色に光っている。

 

「あの子が魔王?」

 まだあどけない顔をした青年じゃないか。

 だが、ドラムは驚きもせず、魔王を殺す気のようだ。

 

「何を驚いている? 青山」

 ずしずしと魔王にむかっていく。

「あの青年が本当に魔王なのか?」

 ドラムは獣のような険しい目つきでいった。

「当たり前だ。魔王は人間の体内を借りて生きている。あの青年を殺さなければ、世界は滅びるぞ。それに…」

 彼はため息をつき、頭を左右にふった。

「それに?」

「あいつは、魔王はお前の、青山の…探していた化け物だ」

 僕は愕然とした……と同時に、やっと見つけたという喜びと、胸が焼けるような強い憎しみが溢れかえっていく。

 

「あの子かぁ…。はははっ、あんなヤツが僕の妹を! くるみを! 殺したって言うのかぁ!」

 そう叫んで魔王目掛けて、全身の気を拳に集める。

 思い切りぶん殴ってやった。

 魔王は無様に倒れ、そして、金色の光も消えた。

 

 床に倒れた魔王は、僕とドラムを見てどす黒い邪気を周囲に放った。

 赤い目でこちらを睨みつける。

 

「なんだぁ、お前らは?」

 

 彼の凄まじい邪気で身体が震える。

 だが、復讐を果たせる歓喜、いや、狂気で構えた。

 

「お前は僕の大切なくるみを奪ったんだ! 殺してやる!」

「青山! お前一人では無理だ!」

「うるさい! ドラム! あんたは下がっててくれ! これは僕の一人の戦いだ」

 

 僕は月花流、最終奥義にして最強の奥義、怒黒殺(どこくさつ)の構えをとった。

 

 この奥義はまだ一回も使っていない。

 こいつを倒すためだけにとっておいた技だ。

 何故ならば、この技は自分の憎しみだけで右手に気を集中させるのだが、憎しみで気をコントロールするため、術の発動中に右手を吹き飛ばしたり、時には命をも奪ってしまうからだ。

 

 今まで89代続いた月花流のなかでも、誰一人成功させた人はいないと師匠もいっていた。

 

「魔王! たくさんの人々の命とたった一人の家族であったくるみを奪った罪だ! 月花の名の下に枯れ果てるがいい」

 

 腰を深く落とし、右手に気をためる。

 ゆっくり、ゆっくりと腕をあげていくにつれ、激痛がはしる。

 だが、僕の憎しみはそんな痛みでは抑えきれない。

 そして、やっと気が全て右手に集まり、紫色の巨大なボールができた。バチバチと音をたてている。

 

「月花流最終奥義、怒黒殺!」

 紫色のボールが、僕の腕から吹き飛んだ同時に誰かが叫んだ。

 

「やめてぇ!」

 魔王めがけて放った怒黒殺が、全身真っ白な服を着た少女に当たり、文字通り、胸に大きな穴があいた。

 それを見た先ほどの邪気は消え失せ、魔王はうろたえながら、少女に駆け寄る。

 

「なんで、なんで……。‟お前”がここにいるんだ!」

 魔王は子供のように泣きじゃくっていた。

 

「そ、そんなバカな!」

 術は成功したが、狙っていた魔王ではなく、見知らぬ罪もない少女を殺してしまったことに愕然とした。

 もう術に二度はない……。

 その証拠に僕の右手は、肩の先から跡形もなく吹き飛んでしまったから。

 師匠の言った通り、僕は復讐を果たせなかった。

 

「くるみ…ごめんよ、兄ちゃん、仇をとってあげられなかった」

 そうつぶやいて、魔王に背をむけた。

「ドラム、お前なら魔王を倒せるだろ? 代わってくれ……」

 

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