モンスターハンターArriving in New world【完結】   作:皇我リキ

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プロローグ【新大陸の狩人】
新大陸


 その地は大陸から遠く───

 

 

「───さて、第5期調査団の諸君」

 四十年前より調査が始まって以来、未だ未開の地。

 

「そろそろ時間だ」

 古龍渡り。

 古来より知られる、龍が不可思議な渡りを行う自然現象だ。

 

「別れの言葉は必要ないな」

 百年に一度、龍が一斉に未知の地に渡るというこの現象。

 それがここ数十年で、十年に一度という周期になっている事をギルドは重く見ていた。

 

 

「この船に乗ったら、もう後戻りはできない」

 そして四十年前。

 ギルドは第1期調査団をその地に派遣する。

 

 一度赴けば、戻って来られる保証はない。

 古龍すらその地から戻って来ないのだから。その道のりすら、平坦ではないのだ。

 

 

「もし、覚悟が失われたのであれば……ここで引き返すことをすすめよう」

 なればこそ。

 

 

 何故、龍はその地を目指すのか。

 

 

 何故、人はその地を目指すのか。

 

 

「それではこれより、新大陸に向け出航する」

 答えはその地にあるだろう。その地の名は───

 

 

 

「君たちに、導きの青い星が輝かんことを」

 ───その地の名は新大陸。

 

 

 ☆ ☆ ☆

 

 波と喧騒。

 

 

 ここは新大陸へと向かう船の中。

 

 未知の地へ赴く期待と不安。

 複数の船が並走する中の一つで、青年が一人で酒を仰いでいた。

 

 

「やぁ、ロウ君! こんな所に居たんだね。まったく釣れないじゃないか! 僕達は相棒(バディ)だろう!」

 そんな青年に話し掛ける男が一人。

 

「……誰だ。あんた」

 話し掛けられた青年は酒を机に強く置くと、男と目も合わせずに口を開く。

 後ろで一つにしている赤い髪を揺らして、青年は大きなため息を吐いた。

 

「僕だよ僕! ポット! ポット・デノモーブ!」

「……ポッと出のモブ?」

「そう! ポット・デノモーブ! ん? 少しイントネーションが違う気がするな。いや、良いんだ! 僕と君の中だからね!」

 ポットと名乗った男は「ワッハッハ!」と快活に笑いながら青年の正面に座る。青年は嫌な顔こそしなかったが、特に目を合わせようともせずに沈黙していた。

 

 

「───よう、もうすぐ新大陸に到着だな。アンタも準備完了?」

 ふと、近くの席でそんな言葉が聞こえて来る。

 

 船に揺られる長旅もようやく終わりを迎えようとしていた。

 

 

 新大陸。

 古龍渡りという自然現象で古龍が渡る地である。

 

 そして彼等は新大陸の調査団───その第5期団として、新大陸の謎を解き明かさんとする者達だった。

 

 

 

「もう少しで到着らしいよ、ロウ君。いやぁ、謎多き新大陸の調査か。この僕に相応しい任務だ! そうだろう!」

「そうか。精々頑張ってくれ」

 ロウ───と呼ばれた青年は、ポットにそう返事をすると席を立つ。

 そんなロウを追いかける様にポットは席を立って「ちょっと待ってくれよ!」と、ロウの肩を叩いた。

 

「そんな他人事みたいに言わないでくれたまえよ! 僕達は相棒だろう?」

「相棒になった覚えもなければ、俺は誰とも組む気はない。悪いが他を当たってくれ」

 ロウはそう言って、ポットの手を振り解く。

 

 しかし、ポットは諦めずに彼の後ろをガーグァの幼体が如く付いて船の甲板まで歩いた。

 

 

「新大陸の任務は危険が伴うんだ。モンスターと戦うハンター、物事の判断を下す編纂者が相棒となって調査をする。素晴らしいシステムじゃないか!」

「そうだな、素晴らしいシステムだ」

 そう言って突然振り向くロウ。そんな彼に「それじゃ───」と目を輝かせるポットの言葉を遮って、ロウは彼の胸倉を掴み上げながらこう声を上げる。

 

「俺がお前を守って、お前が調査をするって事か。冗談じゃない。お前を守るなんて無理だ。……他を当たれ」

「ちょっと! ロウ君!」

 ポットを突き放して、ロウは甲板の後方まで歩いた。

 

 

 波の音が強くなっている。

 大陸に近付いたからだろうか。

 

 そんな事を思っていると、突然船が揺れた。

 

 

「……なんだ?」

「うぉ!? なんだ!! ロウ君、危ないからこっちに!!」

 未だにロウの背後についていたポットが、彼の手を引っ張る。

 

「引っ張るな」

「危険だ、ロウ君」

「何が起きてるか調べる必要が───なんだ!?」

 さらに強い揺れ。

 

 

 船の前方で大きな水飛沫が上がったのが見えた。

 同時に、浮遊感。

 

 傾く船。

 前方で突然山が出来上がったかの様に、船が持ち上げられていく。

 

 

「ゾラ・マグダラオス!!」

「アレが……」

 傾いていく船は、徐々に垂直に近付いていった。

 

 なんとか物に捕まって落下せずにいた二人だが、下を見ると知らぬ間に水面から数十メートルは船が浮いてしまっている。どうやら突如海面から盛り上がってきた何かに乗り上げてしまったらしい。

 

 

「何たる事!! ロウ君!! しっかり捕まっているんだ!!」

「言われなくても分かってる! お前こそしっかり捕まれ!」

 ロウに忠告を入れるポットだが、両手で船内の出入り口に捕まっているロウに対して───ポット自身は片手でなんとか船の帆を張る縄に捕まっているだけだった。

 

「捕まれ!」

「ロウ君! 僕の事を心配してくれるなんて!」

「んな事言ってる場合か! 手を伸ばせ!」

 片手で船内の出入り口に捕まりながら手を伸ばすロウ。しかし、もう少しという所でその手は届かない。

 

 

「くそ。おい、登ってこい! お前!」

「お前じゃなくて! 僕はポット!」

「分かったから登って来い!」

 必死に手を伸ばす。

 

 

 しかし───

 

 

「わ!?」

 船の前方───真上から降って来た荷物が、船を揺らした。

 

「うわぁぁ!!」

 その衝撃で、ポットは手を離してしまう。

 

 

「───っ」

 あと少し。

 あと少しで届きそうだったその手をすり抜けて、ポットは船から落ちてしまった。

 

「……っぁ、ぁあ───なんで」

 そんな光景を、ロウは見ている事しかできない。

 

 暗い海が小さな水飛沫を上げる。

 頭の中が真っ暗になって、伸ばした手を何度か握った。しかし、その手が何かを握る事はなくて。

 

 

「───アンタ、大丈夫か! 捕まってくれ!」

 放心していたロウに、船の中から先程「もうすぐ到着だ」と言っていた狩人がロウを掴み上げる。

 

「誰か落ちたのか?」

「……あ、あぁ」

「救助は後だ。船が落ちる。脱出しよう!」

 狩人はロウを抱えたまま、船の中にいた調査団メンバーに声を掛けて船から飛び降りた。

 

 突如海から現れた山。

 持ち上げられた船の乗組員達は、なんとか救助活動をしていた船に飛び移っていく。

 

 

 新大陸調査団は選りすぐりの狩人達の集まりだった。

 

 その殆どが数多の修羅場を潜り抜けてきた先鋭である。

 各自の判断で船を動かし、最善の救助活動が既に展開されていた。

 

 

 

 そしてこの青年───ロウも、その一人である。

 

 

「なぁ、男を見なかったか?」

「男? 何言ってんだあんた。ここに居る半分以上は男だろ」

「……そ、それはそうか」

 正気に戻って、ロウは首を横に振った。

 

「ん? あんた、何処かで見た顔だな。確か、書士隊出身の───」

「ひ、人違いだ。悪いな」

 片手を上げて彼はその場を離れる。

 

 

「……何をしてるんだ俺は。危険な調査なのは誰もが分かっていた。誰かが死んだって、それはしょうがない。俺のせいじゃない」

 自分で言い聞かせる様にそう言って、ロウは救助された船の上で頭を抱えていた。

 

 

「大陸に上がったら直ぐに点呼をするぞ! 新大陸に着いて最初の任務は海に落ちた奴の救助だ!」

 誰かがそう言って直ぐに、船は新大陸に辿り着く。

 

 

 星の光だけが照らす未知の大地。

 

 初めて目にし、一際視線を引いたのは距離感が狂いそうになる程に巨大な樹木の集合体───古代樹。

 

 

「……ここが───」

 第5期調査団ー新大陸上陸。

 

 

 

 ここは、龍が渡りの末に辿り着く地。

 

 

 ここは、人が目指す新天地。

 

 

 ここは、数多の謎を辿る物語の地。

 

 

 

 その名は───

 

「───新大陸」

 ───新大陸。




モンハン新連載です。宜しくお願いします。
今回は割とシリアス系。ギャグが読みたかった人、ごめんなさい。

後更新不定期です!頑張ります!
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