モンスターハンターArriving in New world【完結】 作:皇我リキ
光が大地を包み込んだ。
ハンターが使うアイテムに閃光玉と呼ばれる物がある。
そのアイテムを使うと使用した素材の光蟲が辺り一面を真っ白に塗り潰すような強い光を放ち、大型モンスターの目ですら一時的に焼くことの出来るアイテムだ。
一方で、今この瞬間放たれた閃光はハンターの使う閃光玉ではない。
「これが噂に聞いた
「援護する。一旦引け」
「了解!」
眩鳥───ツィツィヤック。
プケプケと同じく鳥竜種に属するモンスターだが、翼は持たず短い前脚を持つ小型鳥竜種に多い姿の竜である。
特徴的なのは青い鱗と、頭部で展開する扇型の器官だ。ツィツィヤックはこの器官から真昼の日の光も眩むような閃光を放つ術を持っている。
ツィツィヤックと交戦するロウとアンワは、その閃光による攻撃で一度退却を余儀なくされるのだった。
☆ ☆ ☆
陸珊瑚の台地ベースキャンプ。
「───目、痛ぁ!!」
陸珊瑚で出来た自然の洞窟の中に作られたベースキャンプで、アンワは地面を転がりながら叫ぶ。
それを見て、彼女の相棒であるポットは「大丈夫かい! ほら目を見せて! 見せないとどうなってるのか分からないよ! ほらこっちを向いて!」とアンワの顔を抑えた。
アンワは閃光で焼かれた目を無理矢理開かれる激痛で叫びながらポットを蹴り飛ばす。今度はポットが「痛い!!」と地面を転がって叫んだ。
「そんなにヤバいの?」
「離れていても凄い光だったからな。俺もまだ目がチカチカする」
閃光を直視したアンワ程ではないが、ロウも嫌な感覚に目を細めてキリエラに返事をする。
ロウとアンワのパーティは眩鳥ツィツィヤックの討伐の為に陸珊瑚の台地に訪れていた。
調査団は現在ゾラ・マグダラオスの追跡中だが、かの龍ばかりに気を取られている場合ではない。この新大陸の謎はまだまだ解明されていないのだから。
そうしてクエストに挑む二人だったのだが、ツィツィヤックの思わぬ反撃に一時撤退して今に至る。
「あのふざけた形の頭変形させてやる。あー、くそ! いつまで続くのよこの目のヤツ!!」
少しは落ち着いたアンワだが、未だに閃光の余韻が消えないらしい。歯を食いしばりながら左右に振り続けるその姿にポットは「面白い顔してるよ、アンワ」とふざけた事を言って殴り飛ばされた。
その元気があるならとりあえずは大丈夫だろうと、キリエラは安心する。
「ま、ひとまずは休憩だね。ツィツィヤックの閃光は頭の向いてる逆方向への影響が少ないから、背後に回るのが効果的だよ」
「なるほど。となると、俺が注意を引いてアンワが叩く方が楽そうだな」
「任せて。思いっきりデカいのを入れてやるわ」
一旦体を休める事も兼ねて、キリエラは焚き火を付けて温めたお湯で紅茶を入れて二人に渡した。
新大陸に多く自生する回復ツユクサの葉を使い、ハチミツを少量入れたキリエラ特性のお茶である。程良く疲れた身体に染みる味は調査団の中でもそれなりに人気が高い。
「しかし流石キリエラちゃんだね。気も利くし、ウチのポットとは大違いだ」
「うむ! キリエラ君は凄いからね! あれ? 僕は凄くないと言われてないかい?」
「うるさいわ。凄くないとは言ってないでしょ。アンタはもう少し気を利かせ」
「あはは。でも、ポット君も凄いよね。瘴気の谷から続く地脈回廊を見つけたんでしょ?」
そう口にするキリエラの言葉に、ポットは鼻を高くして「ふふん、そうだよ」と誇らしげにこう続けた。
「瘴気の谷で見付かったゾラ・マグダラオスの痕跡の位置を並べてみると、あの龍が目指している場所の予想がなんとなく出来るからね。それを追ってみたら、巨大な地下洞窟を見つけてしまった訳さ」
「私もビックリしたよ。なんだか途方もない巨大な穴がポッカリ空いてるんだ。人間ってのは本当に小さな生き物なんだって事を思い知らされたわね」
二人が見付けた地脈回廊は存在こそ知られていたが、新大陸の海側からどこにどう繋がっているのか分からない巨大な迷宮とされている場所である。
今回ポットが瘴気の谷で地脈回廊への入り口を見付けた事で、この巨大な地下空洞は過去の調査の予想通り新大陸全土に広がっているという事が分かった。
それは瘴気の谷を捜索しても痕跡が残るのみで消息の分からないゾラ・マグダラオスを探す大きな手掛かりにもなる功績である。
「うーん、しかし、僕の予想が外れたな。ゾラ・マグダラオスは死に場所を探して瘴気の谷に向かったと思っていたんだけど。瘴気の谷も通り過ぎて何処に向かっちゃったんだろうね」
「いや、キリエラ君の考えをまだ否定して良いという訳ではないかもしれないよ! もしかしたらゾラ・マグダラオスは眠ろうとした場所に着いたは良いけど、また別の目的地が出来たのかもしれない。その証拠に、瘴気の谷にはゾラ・マグダラオスが暫く停滞していたと思われる程沢山の痕跡が残されていたんだ」
調査団の調査では、ゾラ・マグダラオスは瘴気の谷に到着後直ぐに姿を消した訳ではないだろうと言われていた。
ならばなぜ、目的はどうあれ目的地に辿り着いたゾラ・マグダラオスがその地を離れたのか。
「こう、何かに呼ばれたんじゃないかな。導かれたとも言えるかもしれない! もしゾラ・マグダラオスがその生涯を終えようとしているなら、最期の時の場所はちゃんと選びたいだろうしね!」
「導かれた、か。ポット君は面白い発想をするよね」
興味深そうにポットの話を聞いていたキリエラは、ふと一つの仮説を頭の中で打ち立てる。
ゾラ・マグダラオスが自らの死地を探していると仮定して、その死地を変える決断をした。
仮に古龍の亡骸というエネルギーを糧に繁栄するのが新大陸の生態系だとすれば、ゾラ・マグダラオスにその決断をさせるのはこの大地そのものだという事になる。
「ゾラ・マグダラオスを呼んだのはこの大地そのものか、それともこの星の意志か。御伽噺の導きの青い星、か。何はともあれ、この新大陸にあのゾラ・マグダラオスの意思を覆す何かがあるのは確かなんだよね」
龍は───ゾラ・マグダラオス程の強大な龍は、人の力ではその歩みを止めさせる事すらあまりにも難しい。
その歩みの先を変える程の何かがこの新大陸にはあるのだ。それを調査するのが、新大陸古龍調査団の使命なのだろう。
「……かもな」
「ん、安心してよロウ。僕はゾラ・マグダラオスをもう追わないから」
話に入って来なかったロウがやっと喋ったのを聞いて、キリエラは遠慮しない声でそう口にした。
古龍を恐れるロウには、ゾラ・マグダラオスの調査は出来ない。
かの龍そのものは巨大過ぎて逆に恐れる事はないかもしれないが、古龍渡りの古龍を追うという事は他の古龍に出会うかもしれないという事でもある。
特にあの時現れたネルギガンテという龍は、ゾラ・マグダラオスを追えば再び姿を表すかもしれない。古龍の死に場所だとキリエラが予測する瘴気の谷のその先は、ロウにとって恐怖の対象でしかなかった。
「……それは、ありがたいが。……本当に良いのか?」
「何度も言わせないの。僕はロウの相棒なんだからね」
立ち上がってロウの頭を撫でるキリエラ。
調査団にはアンワやポットのような優秀なハンターと編纂者が沢山いる。
ロウやキリエラは特別な訳ではない。それに今回のような古龍以外の調査も新大陸の調査には必要な事だ。
彼女は今の調査に不満の一つもないのである。
「撫でるのをやめろ」
「えー」
「じゃあ僕! 僕を撫でてくれキリエラ君。アンワは全然撫でてくれないんだ!」
「いや、なんで撫でないといけないのよ。撫でなくて良いわよこんなアホ」
「まぁまぁ、そう言わずに。ほーら、偉いぞーポット君」
「フッフッフッ! まーね!」
「撫でるのをやめろ!!」
「なんでロウがここで怒るのさ!?」
だから、今はこれで良い。
「───回り込め! 閃光が来る!」
「───またか! しまった!」
数刻後。
ツィツィヤックとの再戦も佳境を迎えていた。
何度か交わした閃光だが、集中力の切れてきたアンワに再びツィツィヤックがその頭を向ける。
しかし、放たれた閃光が彼女の目を焼く事はなかった。
ヘビィボウガンから放たれた弾丸が、ツィツィヤックの頭を弾き飛ばす。明後日の方向に向けられた閃光が、陸珊瑚で出来た崖を照らした。
頼りの一撃を外したツィツィヤックは怒りの眼差しをアンワに向けようとする。しかし、その眼光はアンワを捉える事は無かった。
再び頭に叩きつけられた弾丸がツィツィヤックの姿勢を崩して、さらに後脚に叩き付けられた弾丸の威力でその身体はバランスを崩して倒れ込む。
必死に頭を持ち上げようとするツィツィヤックが最期に見た光景は、振り下ろされる巨大な鉄の塊だった。
「クエストクリア! 帰って酒よ、酒。ロウ、アンタも飲むでしょ?」
「……いや、俺は無理だ」
「何それ! ポットはまた飲みたいって言ってたのに。アンタ飲むとなんか凄い面白いって聞いたけど?」
「最悪だ……。絶対に飲まない」
古龍とは戦えなくても、ロウは優秀なハンターである。
それはキリエラだけでなく、他の仲間達も知っている事だ。
だから、今はこれで良い。
そんな彼を、何かが見詰める。
霞の中で、それは静かに、何かを選び取るように視線の先を眺めていた。
突然ですが蒸しぷりん先生にファンアートを頂きました!!
【挿絵表示】
ロウとキリエラと、さらにポットまで描いて貰えました!!
凄く生き生きとした本当にそこに居るかのようなイラスト……!!ありがとうございます!!
それにしてもポットの解像度高過ぎて存在感凄いな!!そうそう!!コイツはこう!!!
読了ありがとうございました。