モンスターハンターArriving in New world【完結】   作:皇我リキ

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世界

 銃弾が竜の頭部を抉る。

 

 

 竜は吠え、その翼を羽ばたかせながら口から漏らす()()を地面に叩きつけようと吐き出そうとした。

 

 しかし、その火炎が吐き出される前に放たれた一発の弾丸が、竜の顎を弾いて火炎は明後日の方向へと着弾し爆発する。

 

 

「リオレウス亜種が居るなんて聞いてないぞ!?」

 後ろで一つに纏めた赤い髪を揺らしながら、ロウは目を細めてそう言った。

 

 古代樹の森の生態調査。

 プケプケが大蟻塚の荒地に現れたと報告されててから、見慣れたモンスターを見慣れない場所で見付けるという報告が相次いでいる。

 

 その謎を探る為、古代樹の森を再び調査している時に現れたのは蒼火竜───リオレウス亜種だった。

 

 

「リオレウスの亜種なんて、相当環境が良くないと出てこないって聞いたけどな。なるほど、流石新大陸」

 安全な木の上で双眼鏡を覗き込みながらリオレウス亜種を観察するキリエラ。

 

 

 その名の通り蒼い甲殻と、空の王とも呼ばれる原種と同じく強靭な肉体。

 吐き出す炎は全てを焼き尽くす劫火である。

 

 

 しかし、新大陸の狩人は優秀だ。

 

 

 

「出来るなら捕獲、か。あるいはあまり身体を傷つけず討伐したいが……それは少し難しいな」

 余裕を持って距離を取り、ヘビィボウガンに弾を込めるロウ。

 

 空を飛ぶ飛竜に対して、遠距離武器であるボウガンは有利である。

 それに空から放たれるブレスも、ヘビィボウガンの威力を持ってすれば放たれる前に軌道を晒す事が可能だ。

 

 後は肉弾戦に持ってこられない距離を保てば良い。

 

 

 そうして時間を稼いでいれば───

 

 

 

「来たわよ!!」

「アンワか。キリが救難信号を出してくれたんだな。それと……青い星とは、頼もしい」

 ───調査団の仲間が来てくれる。

 

 

 三人の狩人はそれぞれ己の得意な距離を取り、蒼火竜と対峙した。

 

 竜の咆哮が轟く。

 

 

「……さて、一狩り行こうか」

 銃弾が空気を切り裂いた。竜が炎を吐く。

 

 狩人達の戦いが、森の空気を震わせた。

 

 

 ☆ ☆ ☆

 

 朝。

 

 

 目を覚ますと、ロウは相棒が既に起きていて机に向かっているのを見付ける。

 

 

 

「早いな、キリ」

「ん、おはよう。調査報告を見ててね。ほら見て、クシャルダオラにテオ・テスカトルだって」

 古龍渡り。

 

 渡りの古龍の調査を目的にした調査団は、遂に古龍であるクシャルダオラやテオ・テスカトルと邂逅していた。

 

 

 しかし、その調査対象である古龍の中にオオナズチの名前はない。

 

 

「ポットがテオ・テスカトルと会ったとかこの前言ってたな」

「なんか振り向いたらそこにいて、たてがみに頭が吸い込まれちゃったんだっけ? 新大陸の古龍ってなんだか僕達に敵意が少なくて驚くよね」

 古龍渡りは龍が死に場所を探してやってくるから、という定説通りなら───かの龍達は殆どが歳を取った個体だという事になる。

 

 それはつまり、その歳まで生き残る力を持った個体という事だ。

 

 

「……だから、あのオオナズチもそうだったのか」

 それほどの力を持つ者からすれば、人間は追い払うにすら値しない小さな生き物なのかもしれない。

 

 

「オオナズチ、結局あの後誰も見付けてないんだよね。僕達が見たのは幻か何かだと思われてそう」

「……居た、んだがなぁ」

「あの龍には何か目的があった。だから、僕達の前に姿を表したんだと思う。……そうでないなら、オオナズチは人の前に姿を現さない。それが、オオナズチの古龍としての強さだしね」

「目的、か」

 あの龍に目的があったとするなら、それはあの時に地盤を崩し、龍脈の結晶を自分達に見せた事だろう。

 

 

 それが何の為だったのか。

 

 きっと、調査を続けていれば分かる筈だ。

 

 

 この先に答えはある。

 

 

 

「そういや、さ」

「なんだ?」

「キリって呼んでくれるようになったよね。いつからだっけ」

 振り返って、左手の義手をロウに向けながらそう言うキリエラ。

 

 窓際から照らす光が、逆光になって彼女の表情を際立たせる。

 キリエラは凄く面白そうな顔をしていた。

 

 

「突然……!?」

「だって聞くタイミング無かったし。なんか、気が付いたらそう呼んでくれてたじゃん?」

「それは……その」

 顔を晒すロウ。

 

 キリエラは右手で耳に掛かった青い髪を持ち上げながら、ロウの耳元に口を近付けて「どうして?」と囁く。

 

 

「ひんっ!?」

 後ずさるロウ。

 

 そんな彼を見て、キリエラはゲラゲラと笑った。

 

 

「もう! やっぱ可愛いな君は!!」

「うるさい!! なんなんだお前は!! ったく!!」

「ロウ君!! 遊びに来たよ!!」

「お前も何なんだ!?」

 突然現れたポットに驚いてさらに飛び上がるロウ。キリエラはそんな彼を見てさらに笑う。

 

 

「偶には宅飲みも良いかなと思って! アンワの部屋から持ってきたんだ!!」

「それは普通に泥棒では!?」

「皆で飲むって言って買ったやつだから大丈夫さ!!」

「皆で飲むの皆にはアンワも入ってると思うんだが!?」

 二人の注意も聞かず、何か高そうなワインを開けるポット。

 

 後で絶対に怒られるだろう彼の姿を予想しながら、しかしロウは何か吹っ切れたようにため息を吐いた。

 

 

「よし、飲むか」

「ロウ!?」

「そうこなくては!! キリエラ君、ジョッキ借りるよ!!」

「ちょっと待って!? ロウ!! 本気で飲むの!?」

「もうどうにでもなれ!!」

「ロウ!?」

 吹っ切れたロウはポットから受け取ったジョッキを一気に喉に流し込む。

 

 

 キリエラは、あの日の悪夢を思い出した。

 

 

「……僕、これから用事が」

 そう言って部屋を出て行こうとするキリエラを、ロウが止める。

 

「何言ってるんだキリ、今からが宴じゃないか」

「朝から飲んで宴とは良いご身分だね!?」

「ここからがパーティだぜ!! 誰も寝かせねぇからな!!」

「うわ!! 出来上がるの早過ぎ!! 怖い!! 僕逃げる!! やだ!! あの日の二の舞は嫌だぁぁあああ!!」

 部屋に引き摺り込まれるキリエラ。

 

 

 そんな彼女に、ロウは一瞬真面目な顔でこう語り掛けた。

 

 

「これからも宜しくな、キリ」

「う、うん」

 どういう意味でそう言われたのか分からない。

 

 今から飲むから介護よろしくな、という意味なら最悪である。

 しかし、その言葉のままの意味なら───

 

 

「───そうだね、これからも宜しく。ロウ」

 ───きっと、これからもこんな風に、難しくも楽しい日々が待っているに違いない。

 

 

 新大陸の謎が解明される事があっても、その先も、ずっと。

 

 

 一緒に居る。一緒にいよう。

 

 

 

 ☆ ☆ ☆

 

 龍は人々を見下ろしていた。

 

 

 彼等は群を作り、何かに挑戦し続ける。

 

 この地を炎で満たす事になるかもしれない龍を、海へと導いた。

 その先も、かの龍に匹敵する龍との戦いを繰り広げている。

 

 

 そのまま進めば、彼等は龍結晶の地のその先に───この世界の理に辿り着くかもしれない。

 

 

調()()()と言ったか。

 

 

 龍は翼を翻し、その地を離れた。

 

 

 

 この大陸の謎。

 

 この星の意志とも呼べるこの世の理に争う事は、龍にすら出来ない。

 

 

 しかし、彼等調()()()なら───

 

 

 

 龍は霞に消える。

 

 この残り少ない時間を、かの龍は調()()()を見届ける事に使う事にした。

 

 

 だから、龍は姿を現さない。

 

 

 

 

 その時が来るまでは。

 

 

 To be continued……




モンスターハンターArriving in New worldこれにて完結でございます!!長らくのお付き合い、本当にありがとうございました!!

実はWORLD原作作品は連作として別の作品のプロットもありまして、オオナズチのソレはそいつの伏線という事になります。まあぶっちゃけゼノの事なんですけども()
そんなお話もいつか書けたらな……なんてお話をしながら。

実は既にモンハン原作次回作の予定も立てているので、特に湿っぽい終わり方をする理由もなく。


本当にこの作品にお付き合いいただきありがとうございました、という気持ちでいっぱいです。まだまだモンハン創作は続けていきますので、ご縁があればまたお付き合いくださいませ。


それでは、また何処かで。

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