【旧バージョン】QOLのさらし場所   作:QOL

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※注意

 この先の話はほぼ直していないので、そういうの嫌な方は何も言わず、改訂後の何時の間にか無限航路へどうぞ。


旧版 無限航路
【旧バージョン】何時の間にか無限航路 序章+第一章


何時の間にか無限航路 序章+第一章

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、何がどうして俺は平原に突っ立っているのだろうか?」

 

≪むにぃ≫

 

「痛みは………あるな」

 

 

ほっぺをつねったらイタイ…つまり夢じゃなかった!―――どうなってやがる?

ホントにどうなってやがる?大事な事なので二度言ってみた。

おし、ちょいと状況を整理してみようじゃまいか…良い感じに混乱してっけど…。

 

さて…

 

俺の名前は―――――――――――大和田 明夫

職業は―――――――――――――大学生

趣味は―――――――――――――ゲーム&読書(マンガ比率高し)

直前までは何をしていたか――――部屋で無限航路してた。

 

 

アカン、全然役に立つ情報があらへん…。

というか、着ている服がいつものと全然違うぞ?

普段着は基本ジャージなのに何なんだこの服?ジャンパーとGパン?

 

 

「……てか俺背縮んでんじゃねッ!?」

 

ふと気付くと視点が低い…まて…待て待て待て!!俺の身長は一応190cmはあったんだぞ?!

それがいきなり165cmくらいに縮むかぁ?!数字がやけに具体的なのは只の勘!!

変なオクスリのまされて頭脳は大人身体は子供になったんかい!?

 

 

 

「いや、てことは――My sunはッ?!」

 

 

 

ガバッ!と、大急ぎでズボンの中をのぞき見た。

 

 

 

俺の、俺の息子は―――――

 

 

 

「はは…もう、おしまいやぁ…」

 

 

 

―――縮んでしまった我が息子を見て膝をついた。

 

 

 

 

 

―――俺は、チ○○のサイズでコレが現実だと思い知った。オウノウ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひっひっふー、ひっひっふー……はふー」

 

 

とりあえずラマーズ法で自分自身を落ちつかせる。ラマーズ法は偉大だ。

何かあったらラマーズ法を行えば大抵どうにかなる。

それはさておいて少しでも情報が欲しい。一体ここはどこなのかっと…。

 

うん、自分の服といって良いかわからんが、今着てる服のポケットをまさぐり持ち物を探ってみたらなんか出て来た。

えーと、なんか変な四角い物体、何かのカード入りの財布…財布ってことは名刺とか住所とか書いてあるカードとかないか?。

 

 

えーと、財布には―――――うひん!?

 

 

「名前は、ユーリ…………まじで?」

 

 

財布には、さっきまで俺がやっていたゲーム、無限航路の主人公の名前が書かれていた。

ちなみに地球の言語ではない。見た事もない文字……でも読めちゃう、不思議。

しかも持っていた四角い物体は良く見れば物語のキーアイテムのエピタフじゃないすか。

 

そう言えば…ふと思い出せば今着ている服は主人公が一番最初に着ていた服ですねー。

おまけに頭髪が真っ白だと?ふむ、若白髪って訳でもなさそうだな。

 

 

「おいおい、オイオイオイ、マジですかなコリャ…」

 

 

どうやら俺は、無限航路の主人公くんに憑依しちまったという状態な訳か……。

うん、もう色んな事があり過ぎて無理、もう理性の限界―――――

 

 

「死亡フラグ満載な世界なんてイヤじゃーッ!!!!!!」

 

 

なんでかワカンネェけど俺は憑依したらしい……夜の草原に叫ぶ声だけが響いた。

 

 

* * *

 

 

「さてさて、これからどうするよ俺」

 

 

はーい、何故か無限航路の世界に来てしまった大和田ことユーリで~す。

とりあえず落ちついたので、今後の対策を考えることにしました。

ぶっちゃけいろいろ考えるのもアレなんで状況に任せてみる事にしたんだなコレが。

 

冷静に考えれば名前が一緒でも主人公とは限らないしなとか思ったんだが…。

エピタフつー本編ゲームのキーアイテム持ってるから、憑依したのはほぼ確定事項……どう考えても良く似た他人はムリぽ。

 

 

ソイツはさて置き、さっきから俺が連呼しているゲームタイトルの無限航路とは何か?

概要を簡単に説明させていただくと、“宇宙船の艦長をやる少年の成長物語”を題材とした宇宙船のRPGである。

 

戦闘用宇宙船を使って宇宙に張り巡らされた航路を巡り海賊ぶっ殺して金稼ぎ&冒険。

金がたまったら船を改造、更なる高みへ上り、強者との戦いへ挑むって感じのゲームだ。

おまけにこのゲーム白兵戦ありだから、死ぬ可能性がかなり高いのも特徴である。

ヤベェ、すでに詰みそう。

 

 

「んで多分、目覚めたここは冒頭の惑星だから……ト、ト?…あーおっぱいが大きい姉ちゃんが落ちてくる場所だ」

 

 

それっぽい草原ってか荒れ地?まぁとにかくここで待ってれば来てくれるだろう。

誰が来るか?それは、俺を宇宙に連れて行ってくれる人さ(キリッ)

………言いたいことは判る。カリスマぶっても似合わねぇってな。

 

まぁとにかく俺の憑依先である主人公くんは、独裁的領主が宇宙に出る事を規制したこの星系に住んでいる、という事になっている。

でもソラを夢見た少年はルールは破るもんだぜヒャッハー!と……違う違う。

あながち間違いじゃないけど違う。

今のは半分近く正解だが、正確には序盤は打ち上げ屋という職業の方に頼んで宇宙に行くって話だった筈。

ココだけは何度もやっててDSのOPアニメにも入ってたからよーくおぼえちょる。

 

とはいえ、ある意味開拓者のような生活になるので、この旅には命の危険が付く。

死 亡 フ ラ グ なんて道端に転がってますレベルに死と隣合わせであると言える。

なんせ宇宙船の壁一枚向こうが真空なのだ。

壁に穴でもあいたらダイソンも真っ青な勢いで吸引されて空気ゼロの窒息死まっしぐらだぜ。

 

ぶっちゃけ船を作らないとか乗らないって手もある。

だが俺はそれを選択しない。なぜか?

 

だって宇宙船だぜ?!宇宙船!!スペースシップッ!!

光速の10倍の速度が出る宇宙船を作れるし実際に乗れるんだぜ?!

元いた世界でも月に逝けるか行けないかで騒いでいたのに普通に宇宙船に乗れるんだぜ?!

これに燃えない男がいるだろうか?恐らくいないだろうッ!異論は認めるっ!

 

しかもこのゲーム、最終的に全長3000mのフネも作れるのだ!

キロに言い直したら全長3km…都市一つ飛ばしてるようなモンである。

そんな宇宙船の艦長をやれるかもしれない。そう考えたらオレァ燃えてくるぜぇぇッ!!

 

――てな訳で俺は0Gドック、この世界における宇宙航海者になる方面でいくことにした。

 

この世界では主人公のユーリくんはかなり危険な位置に居る。

海賊に殺されかけたり星間戦争に巻き込まれる事もある。

死ぬかも知れない危険な宇宙の旅……だけど俺はそんな事露ほどにも考えていない。

死亡フラグ?そんなモンこの世界に居たら、しょっちゅう起こりうる些細な問題なのだ。

 

 

どうせ死にかけるのだったら、好きな様に生きてやるっていう方が良いに決まってるだろう?

それにある意味、俺は男共通の夢である宇宙の旅に出られるという好奇心の方が強かった。

死亡フラグくらい、根性で何とかしてやるぜ!――って心意気で行く事にしたぜッ!本音は怖いけどな!

 

 

「さぁ早く来いでっかいおっぱいの姉さん!!そして俺に自由の翼をプリーず!!」

 

 

 満点の星空へと俺はやややけくそ気味にそう叫んでいた。

是非とも戦艦の艦長になって故郷の星に戻ってきた時に、某偉大な老艦長に肖って『ロウズか…何もかもが懐かしい…』とかやってみたいものだ!

 

あ、ちなみにロウズっていうのは俺が今いる惑星な?

とっても静かで自然豊かで良い星だけど、そんなのは老後の楽しみにとっとけってなッ!

ワクワクとドキドキと周りが夜なのでお化けでないかドキドキとか考えながら、夜空を見上げていた。

 

 

「しっかし、宇宙に出られるっていうのに惑星に引きこもるなんてバカだよなぁ…」

 

 

夜空を染める星々を眺めて何か見えないか目を凝らしていた時、ふとこんなことを思って口に出していた。

この惑星の…というかこの星を含めて近隣星系は領主であるデ、デ…デラなんちゃらによって支配されている。

このデラなんちゃらは市民が宇宙に昇る事を禁じている。

コイツがこの星系において自由に宇宙の航海に出られない元凶である。

理由としては“自分が老いたから、若い0Gドックが生まれるのがイヤ”という些細な事だ。

 

 

「俺なら航宙禁止法なんて作らないで、むしろ応援しちゃうけどなぁ」

 

 

 宇宙資源とか一杯手に入れた方が領土が発展するだろうに。

そこら辺は老人のプライドって奴だろう。犬も食いそうにないけどさ。

 犬と言えばサモエドかわいいよサモエド。

是非あの毛皮でモフモフしたい―――

 

 

≪………ドドドドド―――!!!≫

 

「ん?何ぞ?このドドドドって音は?」

 

 

暇なので思考がずれていたらしい。

突然上の方から大気を揺らす様な大きな音が聞こえてきた。

なんだろうと空を見上げれば、全長100mは有りそうな発光する飛翔体が何個か飛んでおり、一個の飛翔体を複数の飛翔体がおっかけてジグザグ飛行しているのが目に入る。

 

 UFO!?……な訳ないか。ありゃ多分宇宙船かな?

詳しくは判らないが一番先頭にいる発光する宇宙船が後に続く宇宙船達から逃げているように見え…あ、逃げる方に目掛けて光線が…別のフネから攻撃されているのか。

 

うーん遠くて詳しくは判らないなぁ。夜だからあたりも暗いし。

まぁ上の方は光線が飛び交って、ちょっとした宇宙戦争みたく発光してるから、何処を飛んでるのかはすぐわかるんだけど。

 

……おろ?なんか追われてるフネから火花が……ッ!?

 

「うえっ!?コッチに飛んでいや墜ちて来たぁぁぁ!!!???」

 

あれれー?逃げている方のフネから火の手が上がったかと思ったら突然大きくカーブして落下してくるよ?

しかも俺のいる位置目掛けて……これ思いっきり衝突コースじゃねぇかっ!!いきなり死亡フラグの到来?!

 

「ギイーヤーッ!!まだフネ作ってなぁい!!モジュール組み立てやってなぁいッ!!」

 

迫る爆音が大きくなり、俺は踵を返してこの場から離れようと爆音を背に走った。

もうとにかく必死で近くの森の中に飛び込んだ。

 

「デカパイ姉さんのバカ野郎ぉぉぉッ!!!」

 

思わずそう叫びながら足を取られてゴロゴロと木々の間にダイブするように転がり込む。

そしてゴロゴロ転がっていたら少し窪んだ場所に落っこちた直後なんかすごい熱量が頭上を通過していくのを感じる。

だけどもっけの幸い。たまたま転んではまった窪地のおかげで、俺の首が吹っ飛ぶのは免れたらしい。

 

 

「……うん?なんか焦げ臭――ってアッツーッ!!!!!!!」

 

 

だけど火花が背中に当たって少し燃えた。慌てて大地に五体投地しゴロゴロと消火作業にいそしんだお陰で火はすぐに消えた。あー熱かった。それ以上に吃驚したべ。くそ、何だか前途多難だけど………大丈夫かな俺?

 

 

 

■ロウズ編第一章■

 

 

―――モソモソ、木のウロからソロリと顔を出す。

 

どうやら墜落してきたあの飛行物体はちゃんと不時着したようである。

あやうく不運(ハードラック)と事故(ダンス)っちまうとこだったZE。

べ、別に怖く何か無かったんだからネ!漏らしてもいないんだからネッ!

 

……精いっぱいの虚勢を張ってみたがこれは普通にキモいな。

 

とにかく、いきなり死にかけたけどこれはほぼ原作通り。

“打ち上げ屋”であるデカパイ姉さんが落ちて来たという事であろう。

とにかく、宇宙に出るには彼女と接触しなければ!!そう思い藪をかき分けて進む。

 

 

 

 

―――そして、居た。

 

 

 

パチパチと爆ぜる様に燃える焚火に照らされて座っている女性。

その後ろに鎮座しているのは彼女の宇宙船である魔改造輸送船デイジーリップ号。

うん、明らかに壊れてるね、バチバチショートしてる音がココまで聞こえるわ。

 

 

「そこのぼうず、なに見てるんだい?私は見世物じゃないよ」

 

 

おお、なんという姉御声だ。

それ以上にさりげなく手に握られている銃が超怖…じゃなくて。

 勇気を出せ俺、ここで言葉を出さねば一生修理工暮らしだぞ

 

「あ、あの打ち上げ屋さんですか?」

「そうだけど、あんたは?」

「良かった。依頼した大……ユーリです。俺をゲートの向こうに連れて行って下せぇ!!」

 

あ、あぶねぇ…つい憑依前の自分の名前言っちまうとこだったぜ。

多分ユーリは自分の名で連絡入れてるだろうから下手な事言えネェわ。

でもアレだなトスカさんは姐さんオーラでも出しているんだろうか?

なんか俺の喋り方が妙に舎弟っぽくなるんだが?

 

 俺の戸惑いとは無縁とばかりに下から上に舐める様に見やるトスカ姐さん。

 ―――イヤンっ。そんな熱い目で見ちゃらめ…

 

「金は?」

「ええと、コレッス」

 

 一瞬すごく冷たい眼をしていた様な…気の所為かしらん?

それはそうと金だ。恐らくはそうであろうカードを財布から取り出し姐さんに渡す。

というか唯一の所持品である財布の中にはコレしかなかったから、このカードじゃなかったら俺ァ泣くぞ?

彼女はカードを受け取ると、懐から出した携帯端末の様なものにカードを差し込んだ。

ミーっと何かを読みこんでいるかの様な電子音が静かに響く。

 

「うん、1000ちょうどだね。よし良いだろう。

あたしがあんたをゲートの向こうまで連れてってやるよ……と、いっても肝心の船がこれじゃなぁ」

 

そう言って自分の船を見上げる姐さん。

確かにまだバチバチショートしてて壊れてまーす全開だよなぁ。

しかも主翼みたいな部分の根元が45度位上向きに曲がってしまっている。

アレは知識がない素人目で見てもドッグ入りなのは間違いないだ。

…ってちょい待ち!この船が使えないじゃ宇宙に出られネェぞ?

 

おい、なんとかならねぇのか?!デカぱい姐さんっ!

 

「あ゛あん?」

 

とても綺麗なお姉さま、どうにかならないでしょうか?

スゲェ睨まれたので今の俺は蛇に睨まれた蛙状態である。

あれだね。人間って睨まれるだけでも多分死ねるね。

そんくらい怖いって事さ。というか心でも読めるんですか貴女は…。

 

ともかく原作だったらユーリがその場でチョチョイと直してたデイジーリップ号であるが……

流石にココまで破壊されてたらこの場で直すのはちょいとムリだ。

それに俺は本来のユーリと違って直し方判らん。

くそぉ、宇宙に出てみたいだけなのに、いきなり最初から頓挫しやがった。コンチキショーめ!

 

俺は考える…こういう時、大抵憑依先に何かしらの知識が残されている筈だ。

そう思い考えを巡らせたところ――――あった。ご都合主義万歳。

脳内のデータバンクによると、この近くに廃棄された施設があるそうな。

それも開拓時代の一通り設備がそろっているってヤツが。こうしちゃいらんねぇ。善は急げだ。

 

「えーと、打ち上げ屋のお姉さん?」

「トスカだ、トスカ・ジッタリンダ」

「トスカさん、この近くに廃棄された大規模入植時代のコロニーがあります。

廃棄されて長いですが一応まだ中の機構は生きてるらしいです。

だからソコのドックで修理した方が良いんじゃないッスか?」

 

 

ユーリ本人が持っていた知識である。

どうやらコイツ事前にかなり予備学習されていたらしい。

さりげなく脳内を探ってみれば出るわ出るわ。

最低限の操船知識から子宇宙技術にEVA技能、それに船の整備に至るまでかなりの知識を持ってやがった。

 

おまけに思考も早い。

俺という外部要因がいるので頭が良いかは主観となるが多分頭も良い。

さすがはこの世界の主人公は色々チートやね。顔も良くて頭の方もとかどんだけやねん。リア充爆発しろ!

……ってそのリア充は今俺だから爆発はやっぱり無しで。

 

 宇宙船を間近で見て少しばかり興奮し変な妄想をしている俺を横目に、トスカ姐さんは俺からの情報を吟味しているようで考える仕草のまま動かなかった。

後で聞いた話じゃ雇い主を観察していたらしいが、その時の俺は只の馬鹿に見えていたんだってさ。ヒデェ。

 

「成程ねぇ。まっ、確かに一利あるね。良し案内しな“子坊”」

「あ、俺の事は親しみを込めてユーリって呼んでくださいッス!」

「初対面なのに結構図太い子だねぇ…ま、子坊がもっといい男に成ったらそう呼んでやってもいいさ」

 

そう言うと彼女は流し眼でウィンクをしながらこちらを見た後歩き出した。

やべぇ、カッコ良いッス!惚れてまうやろぉぉぉ!!マジ惚れそうッス姐さん!!姐さんになら掘られても(ry

 

「なにボーっと突っ立ってんだい?さっさと行くよ?」

「ヘイッ!姐さん!」

「あ、姐さん?!よしてくれよ、トスカでいい。」

「解りましたトスカさん!こっちッス!」

「………はぁ、なーんか調子狂うね、ホント」

 

 

 

* * *

 

 

 

さて、憑依先の知識だったので無事に目的地にたどり着けるかどうか結構心配だったのだが、

殆ど人が来ないからか荒れ放題の獣道のような場所を進み藪を抜けたところ、大きなドーム状の建物を発見した。

どうやらコレがユーリの記憶にある施設の様だった。

 

俺にしてみれば近未来建築って感じで思わず目をきらきらさせてしまった。

何か建物を見てデジャブを感じたが、それもその筈……ぶっちゃけて言うとゲームのOPアニメで見たことがある建造物そのものだったからである。

てな訳で道中何かある訳でもなく普通に辿り着く事が出来た。

 

「入口は…まぁ締まってるよねぇ」

「まぁ普通はそうッスね。あ、こっちッス。ひび割れから入れるッス」

「……表は硬くても横は脆かったね。放置されりゃこんなもんか」

 

ドームの入口は厳重に封印されていたけど、場所が曰く付き名場所なので長い事放置されて整備が一切無しの状態だった所為で、

そこら辺じゅうの壁にツタが吹き出て亀裂が走っている。

そのお陰で実質侵入し放題だった。封印した意味がまるでないし。ザマァ。

 

んで、比較的大きい大人一人が通れそうなひび割れから施設内に侵入したけど、どうやら中の方は比較的無事らしい。

非常用電源や情報端末とかも普通にまだ生きていた。

開拓時代のって言うくらいだから丈夫に出来ているのかもしれない。

 

「お、この端末まだ電気が通ってるみたいっスね」

「使えそうかい?」

「少々おまちを…えーと(ユーリの知識さんカモ~ン……おk、パネル外して配線いじればすぐだ…)」

 

とりあえず施設備え付けのまだ生きている端末をチェックする。

配線いじって起動とか車かとか思ったがそういうもんだと納得しておく。

とにかく情報端末から得た情報によるとこの施設内の整備ドックのある区画は中心部に近い位置にあるらしい。

外周部に近い端末がちゃんと動くので、恐らくは使える状態であると判断する事にした。

 

ちなみにココが廃棄された原因もユーリの知識の中にあった。

実はつい最近まで使用されていたが、なんでもバイオハザードが起きたんだとか…ゾンビはでねぇぞ?伝染病ってだけ。

まぁつい最近と言っても、それからすでに20年も経過しているので安全だから関係ないけどね。

 

とりあえず造船所に赴き、自分の目で施設が動くか確認した後、俺達は応急修理に必要なモノをそろえて、デイジーリップの所に一度戻った。

歪んでしまった船体はともかくとして、最低限フネに搭載された反重力ユニットさえ修理出来れば、とりあえずココまで引っ張ってこれるからである。

 

「ジェネレーターからコネクタつなぎます……どうッスか?」

「O,K、動き出したよ」

 

一応フネに関する知識は一通り記憶としてあったので俺も修理をお手伝いした。

トスカ姐さんは遠慮したけど、これから世話になるんだからと押し通した。

だってこれから乗せてもらうのに横でただ見てるだけとか…中の人は日本人なオイラにはムリである。

 

もっとも手伝いはしたが…役に立っていたかは微妙だ。やっぱり難しかった。

なにせ憑依先の知識を引き出しながらの修理である。

少しずつ修理の手伝いをしていると最初の内は記憶から引っ張り出すという作業を挟むことが必要な為、ちょっと仕事が遅かったのだ。

 

だが作業している内に無意識に知識を“思い出せる”ようになっている事に気が付いた。

どうやら徐々にユーリのもっていた知識が俺の意識と融合を始めたらしい。

ご都合主義バンザイだがコレがないとこの先ヤバいので歓迎すべき事だろう。

これでいろいろと不自由しない程度に色々できるように…っと話がズレた。

 

「うぉ、浮いてるぜ…スゴ」

 

そんなことを考えている内にデイジーリップ号はふわりと浮かびあがり宙へ浮いていた。

小さいと言っても100mもあるフネが音もなく空中で静止しているのは、なんというか…スゲェ。

でも思わず声に出したらトスカ姐さんに怪訝な目でみられた。

 

「いまどき反重力なんて車にも使われてるだろうに、変なヤツ」

「あ、いえ…その、こういった大きなフネで使われてるのを見るんは初めてでして…」

「あん?この程度大きいに入らないよ。アンタは知らないだろうけど宇宙にはもっと大きなフネなんてゴロゴロしてるんだからね」

「へ、へぇー!それは見るのが楽しみッス!」

 

 

 

ちょっと棒読みに近かったが、トスカ姐さんはそこら辺には気付かず俺の返事に気をよくして作業に戻った。

恐らくこの時の俺は、頭から冷や汗ダラダラだった事だろう。

だって21世紀在住だった俺が反重力車なんて知る訳ないじゃない。

ありがたい事にトスカ姐さんはあまり追及しないでくれけど、この後はドッグにつくまで終始無言だったのが辛かったな!!

 

 

 

 

 

 

さて廃棄されたドームのドッグに到着すると、まずは船体の固定作業を行った。

作業は半ばオートメーション化されている為、こっちはコンソールに指示を飛ばすだけなんだけどね。

ぶっちゃけデイジーリップに関しては、アレはトスカ姐さんのカスタム船らしいので、俺は本格的な修理作業は手伝う事が出来ないのである。

 

仕方ないので、何か使える物資は無いかと色々と散策して廻る事にした。

フネ用のドックが付いていた程の規模がある施設だ。

しかも突然のバイオハザードで取る物とらずに廃棄されたからいろいろ有る筈。

 

そう考えた俺は色んな場所を見て回り、結果としてデータとしてだがモジュールと呼ばれるフネ用内装品の設計図を幾つか入手。

ソレと真空パック状態の物資コンテナを幾つか発見した。

幸先がいい。俺って結構運が良いねぇ。

 

「う~ん、流石にコレ以上はないかぁ」

 

モジュールデータを発見した部屋で、端末を弄くっていた俺はそう呟いた。

まぁ幾ら突然廃棄されたとはいえ引き上げる時には重要データだとか大事なデータは消すか何かしているだろうしな。

第一20年前に廃棄されたコロニードームで、そんないいモノが残っている訳もないか。

 

「俺だったらHDDの中身を消去してから逃げるしな……HDDの、中身?」

 

 

 

 いま、俺はとても重要な案件に気が付いた。

 

 

 

 俺、前の世界の、HDDの中身、消去して無い……。

 

 

 

 ――めのまえが まっくらに なった――

 

 

 

「――残念、ユーリの冒険はココで終わってしまった…って流石にソレはメンタル弱すぎるわい」

 

 戻れるかわからんけど多分戻れないから別に大丈夫だし――ホントだぜ?

目から熱い水が流れて止まらないけど大丈夫なんだぜ?

……ああどうかあちらの世界に居らっしゃる方々。

どうかPCの中は見ずに何も言わずにHDDを破棄してくだしゃぁ。

 

「――ん?何ぞコレ?」

 

 陰鬱な影を背にもう一度だけ端末の中を洗っていたら、なんか変なファイルを発見した。

いやまぁ、社会的に重要そうな機密ファイルとかは全部消去済みだったんだけど、そのファイルは個人のフォルダの中に入っていて自動消去システムから免れたデータっぽかった。

 

―――勿論個人ファイルだからパスワードを入力しないと開けない。

 

「ん~、どうしよっかな~」

 

端末を開いて整備ドックにアクセスしてみる。

デイジーリップ号の損傷度合いが大きい上、設備が古いので今しばらく修理に時間がかかりそうだ。

その間が暇すぎるなと判断した俺はヒマつぶしにこのファイルを開いて見る事にした。

 

 そん時は、只のあそびのつもりやったんや。

まさかあんなモンが入ってるなんてわかるかーい。

 

……………………

………………

…………

 

 

 

「こ、これは?!」

 

俺の持てる全スキルを持って解読にあたり何とか4時間くらいでロックを解除出来た。

ニョホホ!俺の事は今度からスゴ腕ハッカーと呼んでくれ!………いや、冗談なので本当には呼ばないでね?ただの軽いジョークさ。

 

本当の事をいうと実は全く解けなかったんだ。

だって俺ハッカーとかじゃないし、プログラム引き出して解析とかなんてムリ。

だから正攻法で頭に思いつくパスワードをつらつら撃ち込んだダケである。

そこら辺の知識も入れといてくれよ憑依先さん…。

 

んで思いつく単語や数字の組み合わせとか、この世界、無限航路に出てきそうな単語は思いつく限り殆ど入力したけど全然ファイルは開かなかった。

そりゃまぁ、それで開いたら苦労はないだろうね。

俺が持ってたPCみたく適当に決めた英数字の組み合わせとかだったら俺にはお手上げじゃ。

 

あまりにもロックが解けないのでイライラしてた俺は、ケッと言いながら机に足を乗せようとして―――

 

「うら~↑!?」

≪ビターン≫

 

―――勢い余ってイスから墜ちた。痛かった。痛かったぞー!

 

 頭は打たなかったけど、イライラが溜まっていた事もあり怒りは加速する。

 

「お、おのれ…俺は怒ったぞォ!!」

【ア タ マ ニ キ タ】

 

―――カタカタと冗談半分で打ち込んだ。すると突然端末から電子音が響いた。

 

 最初はエラー音か何かだと思っていたんだけど、よく画面を見てみると偶然にもロックが外れていた。

 

マジかよ…と茫然とした。まさかのパスワードがドンピシャリだった訳だ。

そして一応開けた訳だし、そのファイルの中を確認した俺は、この時点では有り得ないモノを発見した。

調べてみた隠しファイルの中には、恐らく設計図と思わしき大量のデータが存在していたのだ。

 

「ネビュラス級戦艦にバゼルナイツ級戦艦、マハムント級巡洋艦にバゥズ級巡洋艦にバクゥ級巡洋艦、駆逐艦はバーゼル級だなんて……どうやって手に入れたんだ?」

 

今の俺がわかるだけでこれだけの設計図である。

どれもこれもこんなマゼラン星雲の辺境星系で手に入るシロモノではない。

造船ドックに持っていけば“船体くらい”は作れる程のデータ量だ。

まさかこんなところで大マゼラン方面にある軍事国家、ロンディバルドとアイルラーゼンの戦艦が拝めるとは思わなかったぜ。

 

しかし、良くもまぁこれだけのデータを集められたモンだ。

きっとこのデータを集めた人物は、大マゼランと小マゼランを繋ぐマゼラニックストリームをも超えた猛者だったんだろう。

ファイルに残された文章によれば、どうやらファイルの制作者はオリジナルのフネを作る為にわざわざ参考用にこういったフネの設計図を集めていたらしい。

 

 

ソレを見て俺は思わずニヤけてしまって緩む顔を揉みほぐしていた。

まさかこんな序盤で強力なフネの設計図が手に入ったと思ったからだ。

ご都合主義と笑いたきゃわらえ!これぞご都合主義よ!

バンザイご都合主義!大事な事なので二回言いましたっ!

 

何せ原作では第二ステージにあたる大マゼラン製はかなり強力なフネが多い。

エルメッツァという大きな国家が纏めている小マゼランと違い、大マゼランはそのエルメッツァを凌ぐ星系国家が乱立しているからな。

所謂群雄割拠の戦国時代みたいな場所なので、兵器関連の技術の向上が目覚ましいのもそこら辺に要因があるんだろう。

 

それはともかくとして、この設計図のフネを造船出来れば、例え星間戦争に巻き込まれても死ぬ確率がぐっと減る。

おまけに夢にまでみた大型戦艦の艦長となれるのだ。興奮を覚える。

その興奮冷めやらぬ中、俺はさらに設計図を調べた。

これさえ造れるなら、最早敵なし。強くてnewゲーム状態である。

原作でも2周目プレイはあったけど所持金ステータス持ち越ししかなかったので、こういう序盤で強いフネの設計図というのはある意味夢だった。

 

だけど―――

 

「……あー、だめだこりゃ」

 

流石に天下のご都合主義もそこまで甘くは無いらしい。

設計図全体のデータは割かしちゃんとしていたが問題は全体設計よりずっと細かい部分。

主に兵装や内装関係のデータの殆どが欠損しており、このままでは使い物になりそうもなかった。

 

 ゲームの宇宙船はモジュール機構を採用しており、キャパが許す限り内装をいじれるのであるが、欠損していたデータはモジュールでは無く船体本体の内装系。

すなわちモジュールを接続すべき基礎と呼べる部分が無いのだからどうしようもない。

流石にトイレとかキッチンとかが付いて無い宇宙船に乗りこむ気はない。

 

それ以前に電灯が点かないかもしれないフネになんて乗りたくない。宇宙暗いし。

つーか、兵装は後付け出来るとして、データ不足で装甲穴だらけでライフラインがごっそり消えるバグった設計データってどうなんよ!?

 

いやもしかしたら意図的に削除してあったのかもしれない。

 恐らく既存のデータに何らかの改造を加える際のシミュレートとして、部分的に装置を入れ替えたらどうなるかの研究図案だった可能性がある。

 

「ん~」

 

 まぁ本当のところは当時の人に聞かないとわからないけど…。

だから思わず前の世界で結構有名だった道化師さんのように唸っちゃうんだ。

そりゃね、ココは廃棄された施設だからさ。

放置されて整備もされなかったコンピュータのデータが全部無事とは思わなかったけどさ。

 

唯一使えそうなデータがバゼルナイツ級戦艦だけだなんてひどい。

 今は金がないのだし、できるなら駆逐艦から巡洋艦へアップデートするように造れれば最高だったのに…。

あれだな、なんか隠しショップ見つけたけど、値段がべらぼうに高くて買えないっていうあの感じだ。

 

でもコレはコレでラッキーではある。

バゼルナイツ級はこの世界の通貨で32400程度で造れるし、性能もこの時期に入手できる艦船に比べれば高い。

コイツを序盤の内に作れれば、この先しばらくの間はかなり優位に展開出来る筈だ。

 問題はそこまで金を稼げるか……まぁ、敵が弱いのは今の内なのだし、頑張ってみるしかないだろう。

 

「――とりあえず、一生借りておく事にするッス」

 

戦艦を作るには大量の金が必要だ。

一応目安としては序盤で買わされる事になるであろう駆逐艦のおよそ5倍の金がいる。

 

死なない為に俺達は金稼ぎを強いられているんだ――!

 

―――という羽目になるという事に、この時の俺はまだ気が付いていなかった。

 

***

 

「おそかったね子坊、どこに行ってたんだい?」

「とりあえず使えるものが無いか探してました」

 

色々やっている内にディジーリップの修理が終わっていた様だ。

ま、今すべき事はフネ云々の前にこの星を離脱するって事だしな。

宇宙に行けなければどちらにしてもこのデータは尻拭く紙以下の価値もない。

 

「フネはもう大丈夫なんスか?」

「まぁ、設備は古かったけど一応規格が同じだからなんとかなったよ」

 

と言ってもココの設備と物資だと、応急修理で精いっぱい。

なんとか動かせるモノの、ちゃんとしたドックでオーバーホールが必要だそうだ。

となりの惑星にある空間通称管理局とかいう組織の運営する軌道ステーションに行けば、すぐに修理出来るんだそうで。

 

「そっちは散歩の収穫はあったのかい?」

「真空パックされた生活物資が少し、あとはモジュールのデータくらいッス」

「そうかい、それじゃ乗りこんでくれ。すぐに出発する」

「アイコピーッス」

「ところで家族とのお別れはちゃんとすましたのかい?一度宇宙に出たらそう簡単には戻れないよ?とくにロウズじゃお尋ねモノ扱いになるしね」

「ええと、大丈夫っス。(家族いねぇし)」

 

俺の家族は異世界に居るしねぇ。

憑依先のユーリくんに家族は居たんだっけ?

 

「それじゃ乗り込みな。ようこそディジーリップへ」

「はい!お世話になります!」

 

そして俺は彼女のフネに乗った。まだ見ぬ星の海を目指して―――

 

 

 

 

 

 

 

――――ガントリーに引っ張られたディジーリップ号がレールカタパルトへ乗る。

 

「反重力ユニットコネクト、離陸モードでロック」

「――えーと…レールカタパルト遠隔操作、システム問題無しッス。出力最大で設定、カタパルトエネルギーチャージ完了まで20秒」

「OK,隔壁解放っと――進路オールグリーン、いい子だ」

 

 本当は自力で大気圏脱出が可能なのだが落っこちた衝撃で若干出力が低下して初速が安定しないらしい。

なので施設のレールカタパルトを動かすハメとなった。

ちなみに何故かサブパイロット席に座らされた俺もコンソールに表示される計器を読み上げる役をやらされている。

 

いやまぁ、タダで乗せてもらえるとは思ってませんので良いんだけどね。

未来の言語が読めてマジで助かった瞬間である。

そしてドックの隔壁が開きゆっくりと前進するデイジーリップ号。

射出位置に着くとレールカタパルトのトンネル内に照明が点き、オレンジ色の光に包まれたデイジーリップが重力制御装置により固定された。

 

「ほんじゃま、いきますか―――星の海へね!」

 

 そうトスカ姐さんが呟くのと同時に俺がカタパルトを起動させる。

するとガクンという衝撃と共にデイジーリップ号がするすると動きだした。

反重力により空間に浮いているから動きだした衝撃以外に特に振動は感じない。

おお流石は未来技術だ。

 

俺が未来の技術に再び感動しているのを横目に、トスカ姐さんが操縦席の真横にあるスロットルレバーのようなモノを思いっきり下げた。

途端大音響と共に宇宙に飛び出したデイジーリップ号。

その中で俺は……大気圏脱出のGで気絶した。

星の海すらまともに見てねぇやん。ダメじゃん。

 

…………………

 

………………

 

……………

 

―――気絶から覚めるとソコはすでに惑星軌道上だった。

 

後ろには青い惑星……地球は青かった……ってあそこは地球じゃなくてロウズか。

 

「おお、星の海だ」

 

窓…というか液晶パネルだが、外の映像は入ってくる。

良くテレビでやっていた、国際宇宙ステーションの船外作業の映像に似てるかも知んない。

うおん、ここはまるでプラネタリウムか。

思わずジーっとショーウィンドウを眺める子供のように外の映像を見ていると、声をかけられた。

 

「おや子坊。目が覚めたかい?」

「うぃ、気絶してた事に今気付いたとこッス」

 

操縦席から離れたトスカ姐さんが目が覚めた俺に気が付いて声をかけてきた。

操縦しなくていいのかって感じもするけど、考えてみたら俺の時代よか何千世代も後な訳だし自動操縦くらいあるわな。

ちなみに無限航路は現代の時間軸から見てスゲェ未来の宇宙。

マゼラン銀河圏が舞台でゴンス。超未来でSF…胸が熱くなるな。

 

「さて、どうだい?初めて星から出た感想は?」

「すごく…大きいです…」

「はぁ?なにが?」

 

ちぇっ、アヴェさんネタは通じないか。

 

「いや自分の居た星って結構大きいなって…」

「そうかい。つーか全く言いたい事はちゃんと声にだしな」

「フヒヒwwwサーセンwwww」

「………なんかムカつくねぇ、なんだいその言葉は?ロウズじゃ良くある相槌かい?」

「あ、いやホントスゲェって思ってて正直テンパってますハイ!!」

 

ぐぅ、2chネタとか通じねぇよ。詰まらん。

 

「まぁそれはさて置き、これからどうする?」

「ええと、そうですね…≪ヴィー!ヴィー!≫っ!なんだ?!」

「チッ!もう来たのかい!!子坊、死にたくなければ手伝いな!!」

 

艦内に鳴り響いた警報、ソレはロウズ警備隊が接近してくる警報だった。

すぐさまトスカ姐さんはコンソールに手を置いて機器を操作し敵艦を映し出した。

液晶パネルに映し出されたのは、2隻のレベッカ級と呼ばれる三角形に近いシンプルな形状をした警備艇である。

おお、小さいながらもちゃんと武装してやがる。

 

―――とか考えていたら俺もあてがわれた席に座らされた。

 

「操船はあたしがやる!子坊は砲手をやってくれ!このまま突っ切るよ!!」

「わ、解ったッス!」

 

ちょっと慌てているトスカ姐さんの剣幕に、俺もつられてコンソールを操作して火器管制を開いていた。

これもまた知識があってよかった瞬間だ。

無かったら一から操作を聞かなけりゃならんもんね。

 

「えーと…GCSリンク、回路コネクトでっと…大砲にエネルギーを回してくださいっス」

「ジェネレーターからは50%以上回せないからエネルギーの残量に注意しな!」

「アイコピー!」

 

ジェネレーターから出力が来たので、俺は憑依先のユーリの記憶に従い、火器管制を待機モードから戦闘モードに移行させる。

ジェネレーターからエネルギーを得られた事で火器管制のコンソールが開いたので、

そのままデイジーリップ号に備え付けられている小型レーザー砲とミサイルのファイアロックを解除した。

 

そういえばロウズで胴体着陸してたんだよなこのフネ…。

主翼も曲がる程の衝撃を受けていたんだし、主武装はなんと主翼部分にあるのだ。

……念の為に手動で砲塔を少し動かしとこう。

 

コンソールで手動モードを開き、少しテストしてみる。

このデイジーリップ号の小型レーザー砲は乗る前に聞いた話じゃ元はデブリ破砕用らしい。

だが結構砲塔周りが改造してあるらしく、素早い警備艇を問題無く追尾出来るようだ。

 

まぁこれがメインの武装なのだから動かなきゃ話にならん。

確認がてらコンソールのパネルを操作し、小型ミサイルのレーダーとの同期回路を接続。

レーザー砲も同じ様にレーダーと同期できるようにコンピューター制御の自動追尾回路を開いた。

 

手動でも動かせるがいきなり実戦で動かしてる俺が手動照準でやっても、レーダー上で見てやっても素早い警備艇に当てるのは難しいだろう。

初戦で手動攻撃命中はヤマトに肖って実にロマンだが、命と等価交換出来ないならしない方がいい。

 

てな訳で、未来のオートメイションに期待しよう。ローク、機械を使え。

データさえあれば後はフネのコンピューターがはじき出した相手の予想マニューバを元に照準する。

そうすれば砲門は自動的に敵が来ると予想される位置へと向けられるのである。

 

あとはトリガーを引くだけで良い。オートメーション化がかなり進んでますよコレ。

簡単な操作さえ教われば、多分小さな子供でも扱えるんじゃないかな。

まぁ、細かい制御なんかはやっぱり人の手じゃ無いとダメみたいだけど……。

 

「まだかいっ!」

「――攻撃準備完了ッス!」

「よぉし!子坊ベルト締めな!一気に行くよっ!!」

≪ドォウンッ!!≫

 

小型船故の爆発的な加速力。腰に響くGのショック。

若干船体強度に不安があるけどココで撃墜されるよりかは遥かにマシだろう。

一方の敵さんは突然加速したこちらの動きに何故か慌てている。

なかなか撃ってこない。こいつはチャ~ンス!

 

「射程距離まで、あと500!」

「砲門開口!ミサイルセット!」

 

 

目標は!―――――相手の機関部!

 

 

「今だッ!」

「撃つッス!!」

 

コンソールパネルに表示された攻撃のスイッチをポチっとなする。

すると艦内に砲身冷却とミサイルが射出された振動が響き渡った。(レーザーは音がでません)

 

そして小型砲塔から放たれたレーザーブレットが相手の艦の装甲板に突き刺さった。

だがエネルギー兵器に対する処理が進んでいるらしく、レーザーは貫通せずに船体表面を滑るようにして拡散した。

フネの船体に何かしらの防御処置かシールドがあるようだ。

その所為で先のレーザーは拡散されて弱まり、一瞬の隙と敵の装甲を薄く削っただけに留まった。

 

しかしそれだけで十分。

元より違法改造した程度のデブリ粉砕用小型レーザーで、戦闘が想定された敵警備艇を破壊できるとは思ってない。

 

「ミサイル、命中まで3秒ッス!」

 

本命は、時間差で発射しておいたランチャーの対艦ミサイルなのだ。

レーザーが当たった事で動きが一瞬鈍ったレベッカ級に、優秀なコンピュータがはじき出した照準により理想的なタイミングで発射されている。

そして時間差で小型対艦ミサイルが装甲板に突き刺さり警備艇を食い破る。

 

―――直後、船体内部から爆散!レベッカは火球となる。

 

「やった!敵2番艦、命中、爆散したッス!」

「次を撃ちなッ!もたもたしてるとこっちが食われるよッ!!」

 

俺が初めての火器管制で敵を倒した余韻に浸る暇もなくトスカ姐さんから叱責が飛ぶ。

見ればレーダーにもう一隻が背後に回りこもうとしているのが映っていた。

トスカ姐さんの声に反応した俺は、すぐさま照準を敵1番艦へと向けた。

流石に敵さんも先ほどとは違い、攻撃準備が整ったので、慌てふためく様な事はしていない。

 

『レーダーロック・アラート』

「攻撃が来るよ……今!」

≪ズシュウウッ!≫

 

アラートが鳴り響くと同時にトスカ姐さんが船体を思いっきり傾ける。

慣性制御装置が相殺しても感じるほどの急激な横G。

それに耐えている俺の目に敵の攻撃が船体を掠り防御のシールドを揺らすのをモニターで見た。

一応まだ大丈夫みたいだけど、今のボロボロな状態のデイジーリップ号じゃあ何度も直撃受けたら危険だっ!

俺は早く敵を落とさなきゃとコンソールにしがみ付いた。もう必死である。

 

「敵標準固定!発射準備完了ッス!」

「よしっ!ぶっ放しなッ!!」

「ホレ来たポチっとな!」

 

発射されたレーザーは敵艦のブリッジ部分に命中する。

出力が弱いからかブリッジを貫通こそしなかったが、エネルギーの直撃で電装系をやられたらしく迷走するレベッカ。

そこへ発射した止めのミサイルでレベッカ級は哀れ吹き飛ばされ火球となった。

俺は砲手用の三次元レーダーを見つつ、報告を続ける。

 

「敵1番艦の沈黙を確認、インフラトン反応拡散、勝ったッス!」

「よぉーし、敵さんから使える物取ったらすぐに撤退するよ!」

「了解!」

 

こうして俺の初めての艦隊戦はつつがなく終了した。

くぅッ!やっぱ良いねぇこういった雰囲気!コレコレ、こういうの結構大好きだよ俺!

絶対この後フネをもったら“砲雷撃戦用意!”とか“第一級戦闘配備”とか言ってやるぜ!

 

そんな事考えつつ、トスカ姐さんに船外作業用のアームの操作を教えてもらい、俺は敵さんの船から売れそうなモノを剥ぎ取った。

接触が悪かったのかアームで船体をちょいぶつけちゃったのは秘密である。

 

 

 

 

――――そして取るモノとって、俺達はその場をすぐさま後にした。

 

 

 

 

* * *

 

 

売れる物を回収し、すぐさま一番近い星バッジョへと降り立った。

降り立ったと言っても原則として緊急時でも無い限り、フネは軌道上のステーションに停泊させるのがルールだとトスカ姐さんは言っていた。

その為、今居るのは軌道エレベーターがあるステーションの中である。

 

俺にとっては初めての宇宙港なので他にもフネが居るかなぁとワクワクしていたのだが…初めての宇宙港は伽藍として閑散としているという印象しかなかった。

数百mもある大きなゲートなのに、見えるのは小さなタグボート位…さみしいな。

 

 

とりあえず、軌道ステーションには降り立てた。

これからどうするのかトスカ姐さんに尋ねたところ、先の戦闘で拾ったジャンクを、ステーションのローカルエージェントに売り払い金にするという。

 

基本ジャンク品だけど、100%リサイクルが可能な世界なので結構お金になるらしい。

こういったジャンクだけを集める連中の事を、別称でジャンク屋と呼んだりするらしい。

そういう人たちも、みんな0Gドッグだから案外同じ穴のむじなだけどね。

ゲームで戦闘後に何でお金が手に入るのか解らなかったけど、こうやって金にしてたのかぁ、と一人納得。

 

あ、そうそう、さっきこぼしたローカルエージェントってのはさ?

空間通商管理局って組織が各宇宙港に配置しているアンドロイド達の事だ。

俺達宇宙航海者…通称0Gドッグのサポートの為に、空間通商管理局のステーションには必ず彼等がいる。

 

彼等はフネの整備、消耗品の補充、欠けた人材の補充までやってくれるスーパー便利屋さん何だそうだ。

しかも、人間相手のお仕事な為、アンドロイドだと言ってもかなり表情豊かである。

20世紀人間にとっては、もう驚きで開いた口がふさがらんかと思ったですよ。

 

 

ああちなみに0Gドッグというのは簡単に言うと冒険者みたいなもんだ。

自前のフネを持って無法者の討伐やデブリとかが少ない航路の発見、宇宙資源が埋蔵されている小惑星や惑星の発見等々、様々な仕事がある職業である。

一応誰でもなれるが原則として宇宙船の乗組員である事が最低条件だ。

 

んで俺もローカルエージェントに頼んで0Gドッグとして登録した。

これで空間通商管理局所有の施設ならほぼ無料で利用可能となるってトスカ姐さんが言ってた。ありがてぇありがてぇ。

 

「0Gのランキングは…まぁ当然最下位だね。若いんだしこれから頑張りな子坊」

「ランキング?」

 

続いてトスカ姐さんが指さしたパネルには、ズラリと沢山の人の名前が表示されており、それ全てが0Gドッグであるという。

どうやらこの名簿が原作ゲームにあった0Gドッグの名声値ランキングというものらしい。

原作ゲームではこの名声値を溜めると、フネの性能を上げる設備の設計図がアンロックされたり、普通は売ってもらえないフネの設計図を融通してもらえたりという特典があった。

 

この世界ではどうなのかわからないが、恐らく同じようなものなのだろう。

ちなみにランキングで登録されているランキングは4000まであり、欄外の俺が上位に食い込むには、最低でも4000人は蹴落とさないといけないんだろうね。

 

ま、名声値はどういう仕組みか知らないが敵対した勢力を倒せば倒す程あがる。

例えそれが同じ0Gドッグでも、航路上で戦ったなら問題なく名声値が加算される。

港じゃともかく一歩外洋に出れば敵でありライバル。うーんアウトローだねぇ。

 

 

「――――さて、フネの修理はすぐに終わるらしい。あたしは一度下に降りるが、あんたはどうする?」

 

「行くとこ無いんで、どっこまっでも着いてきまーす」

 

「まぁ下に降りたとしても、0Gドッグが行く場所なんて一つしかないけどね」

 

「えう?……どこに行くんスか?」

 

 

俺がそう訪ねるとエレベーターに向かう通路を歩きながら彼女は答えた。

 

 

「酒場さ」

 

「酒場…ですか?」

 

「そう、酒場。だけど只の酒場じゃ無い。

情報を聞く場所でもあるし0Gドッグへの仕事の斡旋もしているのさ」

 

「へぇーハローワークみたい」

 

「あん?…ハローワークってな何だい?」

 

「あ、いえコッチの話です」

 

 

なんと、この時代にはハローワークは存在しないのか?!

世の自宅警備員の方々はどうすれば……あ、でもネットとかより進化してて案外大丈夫なのかも……。

 

 

「時たま変な事口に出すね子坊は?ロウズのことわざみたいなものなのかい?」

 

「イヤァー俺が勝手に言っているだけでスよ」

 

「……へんなヤツだねぇあんたは」

 

「ぐはッ!何気ない一言が刃物のように俺のハートに突き刺さる!」

 

「置いてくよー」

 

「リアクションスルーっスか?!」

 

 

な、なんという高等テクを…トスカ姐さん、かなり強いッスね。

その後もこんな感じで雑談をしながら、地上へと降りて言った。

 

 

***

 

 

酒場の中はなんて言うか……西部?アウトローが集いますって感じ?

な、なんでココまで来る時は普通の合金の床だったのに、ココに来た途端木製になるの?

 

 

「ねぇトスカさん?何でこの酒場って、こんな…レトロな感じ何スか?」

 

「ん?さぁねぇ、酒場は私が0Gドックになる前からあったし、

ココは空間通商管理局がスポンサーを兼ねてるから、案外上からの指示かも知れないねぇ」

 

 

へぇそうなん?

 

 

「いや、コレはきっと上からの指示に見せかけた孔明の罠だ。

きっとこの酒場のマスターの趣味に違いない」

 

「子坊、あんた人の話聞いて無いね?」

 

「いや聞いてましたよ?只なんとなくやりたかっただけッス、後悔はしていない」

 

 

でも何気に孔明の罠のくだりから、酒場のマスターがピクンって動いたから、

あながち間違いではないと思うんだ、ウン。

ところで孔明の罠って言葉まだ有るんだろうか?

 

 

「とりあえず何か飲むかい?」

 

「あ、はい飲みます」

 

 

ま、一息入れてから考えますかね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらく酒場の片隅で美女とふたり向かい合う形で飲んでいた。

言葉だけ聞くとロマンチックな匂いが漂いそうだが、俺はこの時代の酒の銘柄がわかんないから普通にソフトドリンクなため締まらないことこの上ない。

お互い口を閉じちびちび黙って飲んでいると、ふとトスカ姐さんが口を開く。

 

「そういえば子坊、あんたなんで0Gドックになりたかったんだい?」

 

「えと、それは……」

 

 

はて?ユーリ君はなんて思ってたんでしたっけ?

 

 

「それは…きっと…どうしても宇宙に出たかったからッス」

 

 

妙に漠然としているがコレしかない。というかコレは俺の当面の目的でもある。

せっかく来た未来の世界なんだ。もっと色々見て見たいんだよね。

まぁ死亡フラグ乱立で超怖いけど。

 

 

「だけど、この宙域の外に出る為のボイドゲートは、すでに押さえられてるはずさ」

 

「そう言えばトスカさんはロウズ宙域にどうやって来たんスか?」

 

 

原作でもソレが気になっていたんだよね。

だってボイドゲート封鎖してるなら入ってこれないじゃん。

 

あ、ボイドゲートっていうのは、宙域と宙域とを結ぶ橋の様なものだ。

長距離をタイムロス無しで移動できるから転移門みたいなモノだと思う。

宇宙を旅する連中はたいていこのゲートを活用している。

スゴイ距離を移動できる上に利用料タダだしね。

エネルギーと物資節約の為にも、ボイドゲートは今や欠かせない施設なのだ。

 

またこのゲートは空間通商管理局が管理している施設である。

基本的にゲートに対しての攻撃とかの手出しは許されないし禁じられている。

その昔ゲートを巡って戦争が起きたので、なんだかんだあって航宙法が制定され、それによりボイドゲートはどの勢力相手でも中立、すなわち公海という位置となった。

 

では何故ここの領主はゲートを封鎖出来るのか?

まぁ何事にも抜け道はあり、ゲート自体は手出しできないが、ゲートから少し離れた宙域は封鎖出来るって訳で。

出たり入ったりするヤツを待ち構えて監視すれば良いから楽なモンだな。

 

―――っと、話を元に戻そう。

 

 

「ああ、あたしのフネは元が貨物船だろ?偽造した通行証で貨物を運んでる運送屋に仕立てたのさ」

 

「……で、ロウズに降りようとしたら、警備隊に見つかったってとこッスか?」

 

「まぁそんなもんだ。すでにあたしのフネは連中に見られて手配されているだろう。

あたしのフネじゃ流石に連中全員とやり合うのは無理だ」

 

「確かに、あのフネの装備だと集中砲火でも喰らったら最後ッポイッスね?」

 

「ちがいない…で、子坊、あんたはそれでも飛び立ちたいのかい?」

 

 

そりゃ勿論ッス!そうじゃ無けりゃトスカ姐さんの前に出てこないッス!!

 

 

「どうしてもゲートの向こうに行きたいです!」

 

「じゃあ、作るしかないねぇ?あんたのフネをさ?」

 

「俺のフネ…ッスか?」

 

「そうI3(アイキューブ)・エクシードエンジン、

ブリッジ・エフェクトの効果により光速の200倍程度の速力を誇る…フネさ」

 

 

ええと解らん人の為に解説入れとくけど―――

 

アイキューブ・エクシード航法っていうのは、I3(インフラトン・インデュース・インヴァイター)を主機として巡航時に用いられる推進手段の事で、我々が住む宇宙に下位従属する子宇宙を形成し、そこを通り抜けることで相対論的時間(ウラシマ効果)のギャップを調整する事が出来るそうな。

 

これは複数の子宇宙を縦断する「アインシュタイン・ローゼンの橋」を架け、その上を通り抜けるという意味で「架橋効果」、または「ブリッジ・エフェクト」と呼ばれている。この時代における宇宙船の大半はこの推進機関が備えられており、コレにより宇宙が狭くなったと言っても良い……だそうです。

 

―――正直俺にも訳わかんないので飛ばしても結構。要はメッチャ早いってことだ。

 

 

「まぁ、かなりお金が居るけどね」

 

「はぁ金かぁ…」

 

 

地獄の沙汰も金次第。人の世は何処に行くにも金が憑き纏うってか。

…………そう言えばエピタフって高く売れるんだっけ?

 

 

「ねぇトスカさん、俺こんなの持ってんですけど?」

 

 

俺は懐から一応ユーリの親父の形見とかいう設定のエピタフを取り出して見せた。

原作だとコレを質に入れて10000Gにして駆逐艦を手に入れた。

質に入れてそれなら売ったらもっと良い金になる。

 

 

そう思って見せたんだが、思えばエピタフの価値を考えておけばよかった。

 

 

「エ、エピタフぅぅ~~?!」

 

「ちょっ!トスカさん声デカイッス!!」

 

 

 見せた途端叫ぶように大声を上げたトスカ姐さんにこっちも慌ててしまう。

周りを見れば、エピタフの言葉に反応した人たちがこちらをジロジロと…。

 

 

「あぁ…あはは何でもないですよぉ~!コイツ、エピタフが欲しいなって…」

 

「……無理やりッスね≪ゴチンッ!≫――イッテェッ!!!」

 

 

慌てて取り繕ったので まわりの連中は興味が失せた様だ。

大方酒に酔っておおごとな話をしていたと思われたのだろう。不本意だけど。

周りからの視線が弱まったあたりでトスカ姐さんになんか殴られた。

叫んだのは彼女だというのに理不尽である。

 

 

「うっさい……大体何でそんなモン子坊が持ってるんだい?ありえないだろ」

 

「いや、コレ一応親父の形見なんスよ。(設定上は)」

 

 

まぁ、この身体の持ち主であるユーリくんにはもうチョイ複雑な理由がある。

ちなみにこのエピタフっていう手のひらサイズの真四角の箱は、各宇宙島に点在する古代異星人の物と思われる遺跡から出土するモノである。

 

正直エピタフ自体が何の為の物だかイマイチよくわからない。

だからかエピタフは色んな憶測を呼んだらしく、一生分の富を得られるだとか、力を解放すれば宇宙の支配者になれるとかいう噂がある。

一時期熱心なコレクターや冒険家が血眼になって収集していた上、現在でも噂があるからか売買価格は結構高い。

 

要するにかなり高く売れる…でも只の四角い箱にしか見えないお…。

 

さて、話を戻す。

俺はトスカ姐さんにエピタフを見せて、コイツを売って金にしてくれと言おうとしたんだが。

 

 

「はは~ん、つまり宇宙に出たいのは、それの秘密を探りたいからかい?」

 

「いやまぁ…」

 

 

俺とエピタフを見比べてどこか納得したような顔をしたかと思えば、姐さんは自己完結してくださった。

ええと、なんと答えるべきかねココは?一応コレは物語の核心に迫るアーティファクトだしなぁ。

 

でもコレ紆余曲折あって結局に手元には戻って来ない…筈。

よろしい、ならば売却だ。コレは後腐れもなく売ってしまおう。

あくまで俺の目的は宇宙戦艦を作る事なんだからな!

そういう訳で俺が“コレ売ってフネ作りたい”と応えようとしたその時。

 

 

「本物のエピタフか…おい兄ちゃん、怪我したくなかったらソレこっちに寄越しな?」

 

 

そんな事いうデブが、後ろに立っていた。

えーと、どなたさまでしょうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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