【旧バージョン】QOLのさらし場所   作:QOL

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【旧バージョン】何時の間にか無限航路 第三十三章+第三十四章+第三十五章+第三十六章

 

 さて、ゼーペンスト艦隊を罠に嵌めたので敵がいない首都惑星に降り立った俺ら。

 敵兵は居るにはいるんだけど、なんつーか非常に脆かった。

 統率は取れてはいる。むしろ今まで出会った中で一番かも知れない。

 

 だけど、咄嗟の事態に非常に弱かった。素手のヘルガが突撃しただけで怯んだほどだ。

 なんか、訓練はしっかりやっているけど、実戦経験はないって感じか?

 ちなみにヘルガは素手に見えても武器を内蔵しているから武器云々は関係ない。

 

 こちらが撃つと何故か攻撃が一度止まり、しばらくして銃撃が再開するのだ。

 何でかなぁって思ってよーく見てみると、こっちの銃撃で全員が怯むのが見えた。

 訓練通りの動きは出来る癖に情けないねぇと思いつつ、容赦なくバズを撃ちこんで制圧。

 

まぁ俺以外もバズを携行しているからな。

というか愛用しているヤツも居る訳で、さっき俺が撃った後に発射していた。

 放たれた弾頭は何故か放物線を描き、敵部隊の近くに着弾する。

 

 

≪ズズーン・・・≫

 

「バリケードが崩れたみたいッスね。ほいじゃ俺も――」

 

 

 愛用のハンディバズを片手に、白兵戦しているとこに行こうとしたら肩を掴まれた。

 誰だろうと思ったら、険しい顔をしたププロネンが立っている。

 

 

「艦長、あまり前に出ないでください。危険です」

 

「ププロネン、上が動かなきゃ下が付いて来ないッスよ」

 

「それでもです。上が倒れたら指揮系統に乱れが生じます。トップである貴方は前に出てはイケなのです。既に貴方は艦隊を率いる身。以前の様な気ままな場合と違って大きな責任を持つのです」

 

「でも・・・」

 

 

 俺だって戦えるのに、なんだが戦力外通知されたみたいだったから反論しようとした。

 だけどププロネンは首を縦に振ることは無く、むしろ正論で攻めて来た。

 残念だが、確かにその通りだ。でもまぁ・・・。

 

 

≪カチャ――≫

 

「艦長、なにを?」

 

「なに、別に近づかなくても・・・ね」

 

 

 俺はバズを斜めに構えて引き金を引いた。

 どういう訳だかは知らないが、このバズはエネルギー式なのに重力に作用される性質がある。

 高エネルギーで疑似物質でも造り出してんじゃねぇだろうな?

 まぁそんな訳で発射されたバズのエネルギー弾は放物線を描いて敵陣に突っ込んだ。

 

 

「これなら良いッスよね?」

 

「・・・・はぁ、ほどほどでお願いしますよ」

 

 

 呆れたように溜息を吐いたププロネンにニカっと笑いかけて俺は味方の援護に回った。

 そういや俺の肩にはクルー達の未来っていう責任が乗ってんだよな。

 迂闊な行動は、あんまりしないほうがいいか。

 

 すでに白鯨艦隊は俺だけのフネじゃない。

 数千人以上のクルー達の生活ってモンがあるんだ。

 うわっはぁ、責任重大じゃねぇか。

 

 そんな訳でとりあえず援護だけに専念する事になった。

 まぁ実質指揮官が前に出過ぎたら、部下はもっと前に出なきゃならない。

 そうなると突っ込み過ぎの状態になって、集団が危険にさらされる。

 

 

 ―――俺もまだまだ未熟だぜーと心の中で思った戦闘中の一幕だった。

 

 

 さて、そんなこんなで戦闘は続行中だ。

 一応軌道エレベーターの周りは確保出来た。

 ココはある意味宇宙からの橋頭保になる重要なポジションであり、敵からすれば増援が現れない様に一番に防衛しなければならない場所だった。

 

 だけど、恐らく俺達の艦隊がこれほど早く首都惑星に到達出来るとは思っていなかったんだろう。軌道エレベーター周辺に防衛部隊の展開が間に合わず、準備不足な状態で強襲してきた俺達と戦闘に入った訳だ。

 

 金をかけて戦車っぽいのやら、兵員輸送車とかをそろえてあったみたいだが、ソレらは真っ先に俺らが破壊した為、兵器として活用されることなくガラクタになっちまった。

 

 

 ちなみに今回は海賊討伐では無い為、VFやVBの様な艦載機による支援が行えない。

 やっかいな事にコレもアンリトゥンルールってヤツでな。

 基本的に0Gは地上に対して兵器を使用する事が一番汚い行為って事になっている。

 

 だから今回に限り、地上攻撃は白兵戦のみで行われる運びとなっていたんだ。

 まぁ白兵戦部隊はほぼ全員が装甲宇宙服を着こんで戦っている。

 そうそうやられる事は無いだろう。

 

 ちなみに俺も専用のヤツ着ているんだぜ?紺色のミョルニルアーマーをな! 

 死なれたら困るかららしいけど、カッコいいから許す!

 

 

「へぇ、なかなかの打撃力だ。どれ、私も・・・」

 

 

 ふとお隣から俺のよく知っている人の声が聞えた。

 俺が振り返る前に金属を擦り合わせた様な音が響き、続いて冷却機が作動する音が聞こえた。

 

 

「あーれま、たったの一発であの様かい?」

 

「トスカさん、何時の間にバズを・・・」

 

「いやー、意外とスカッとするもんだね。コレ」

 

 

 隣に立っていたのはトスカ姐さんだった。

 俺の隣で俺のよかデカい、冷却機から水蒸気を吐きだしているエネルギー式バズーカを抱えているトスカ姐さんが呟いた言葉に思わず突っ込む。いやスカってするってあーた。

 

 

「連射が出来ないのが難点だけど、打撃力と範囲攻撃力は中々じゃないか。いいね気にいったよ」

 

「こえ~」×その他大勢。

 

「さぁ、次の連中をブッ倒しにいこうか!」

 

 

 まるでピクニックに行くかの如く、鼻歌交じりにバズを担ぎあげる彼女。

 バズーカ片手にケラケラと戦闘中に笑う彼女に、俺達は若干の戦慄を覚えたぜ・・・。

 

 

***

 

 

 さて、拠点を占領していくうちに、収容施設とかいう場所を制圧した。

 何でも思想犯とか政治犯を閉じ込めておくための施設らしい。

 中は凄まじく捕まえられた人達でごった返していた。

 どうも専制君主たるバハシュールに反感を持つ人間は意外と多かった様だ。

 

 

「・・・トスカ姐さん、使えそうな人間見つくろっておいてくれッス」

 

「成程、確かにバハシュールに反感を持つ人間なら部下にしやすいだろうしねぇ。

 よし、まかせときな」

 

 

 とりあえず使えそうな人間をスカウトしておくことにした。 

 こんな惑星でももしかしたらロウズの用に“掘り出し者”がいるかもしれない

 ちなみに誤字に非ず。

 

 

 この後は適当に収容所の中を調べて回っていたのだが―――

 

 

「・・・・あら?彼女は―――」

 

 

 収容施設の一室に金髪の少女がポツネンと一人座っている。

 どうみても政治犯には見えないし、正直この環境のなかでは非常に異質だ。

 コイツはもしかすると―――俺は携帯端末を操作し、ファルネリさんを呼び出した。

 

 

「ファルネリさん。ちょっと確認して欲しい事があるんスが?」

 

『何ですか?私は今お嬢様探索にいそがし――お嬢様!』

 

 

 この反応、どうやらやっぱりこの独房の少女がキャロ・ランバースらしい。

 携帯端末の空間投影一杯にファルネリさんが顔をドアップにしている。

 

 

「場所は4階のDブロック何スけど・・・」

 

『わかりました今行きまぁぁぁぁ・・・・・・・――――・・・・・すっ!只今到着!」

 

「はや!?」

 

 

 ちょ!さっきまで一階に居たけどどうやって!?

 

 

「お嬢様への忠誠心のなせる業です!」

 

 

 ・・・そうですか。

 ソレはさて置き、とりあえずキャロ嬢の居る部屋のロックを解除させた。

 そして少し戸惑った感じの少女に俺は―――

 

 

「―――問おう・・・貴女がセグェン氏の一人娘か?」

 

 

 なんとなくフェイ○風にやっちゃったんだー☆

 生身の身体で時を止めてやった!ふふ、周りの視線が痛いぜ!

 

 

「そ、そうよ?貴方は?」

 

「俺?俺は「おじょうさまぁぁぁぁぁ!!!ごぶじでしたかぁぁぁぁぁ!!!」え!?ファルネリ!?」

 

 

 俺が自己紹介をしようとすると、ファルネリさんが俺を押しのけて部屋に突撃してきた。

 その為俺は壁にビタンと張り付くように叩きつけられる。

 

 

「貴女も助けに来てくれていたのね?」

 

「ええ、ええ!本当に良かったわ・・・よくぞご無事で・・・」

 

 

 あー、感動の再会は良いんだけど、俺壁の滲みになっちゃいそうなんだけど?

 とりあえず復帰して、キャロ嬢の身体の心配をしてみた。

 

 

「怪我は無いッスか?」

 

「あ、貴方の方こそ大丈夫なの?」

 

 

 そしたら逆に心配されちまったい。なんていい子なんだろうか?

 

 

「大丈夫、鍛えてるから」

 

「・・・・鼻から血がどくどく流れてるけど?」

 

「ああ、大丈夫。こんなのすぐに止まるッス・・・ほら止まった」

 

「え!?早いよ!ていうかもう治ったの?!」

 

「なれてるッスから」

 

 

 慣れてる慣れてないの問題じゃないと思うけど・・・と冷や汗を流すキャロ嬢。

 いやはや、自分で身体を鍛え始めたころは重力に逆らえなくてよく転んだからねぇ。

 俺の鼻の骨は何回も折れています。リジェネレーション技術万歳。

 

 

「ふぅ、まぁソレはさて置き貴方ユーリって言ったわね?」

 

「おぜうさま~」

 

「ああ、そう言ったスよ」

 

「ご苦労だったわ。あとで私からもご褒美を上げる」

 

「おぜうさま~」

 

「ほう、そいつは楽しみッスね」

 

「さ、すぐにおじい様の所に連れて行ってちょうだい」

 

「おぜうさま~」

 

 

 おやおや、急に強気になったかと思ったら、今度はなんか命令されたぜ。

 つーかファルネリさん、幾らお嬢様が見つかったからってキャラ壊れ過ぎ。

 

 

「うーん、ちと難しいッスかね」

 

「どうして?私はすぐに帰りたいのよ?お風呂だって入りたいし、着替えもしたいの」

 

「あ~う~・・・・実は俺はまだやることがあって・・・そうッス!バリオさんが来てるから、バリオさんの艦で帰って欲しいッス」

 

「いや!私は貴方のフネで帰りたいの!さぁ早く案内しなさい!」

 

「無理ッスよ!こっちはバハシュールを探し出して倒さなきゃならないッス!」

 

「私の命令が聞けないって言うの!」

 

「お願いならともかく!命令される筋合いはないッス!ってなわけでバリオさんカモーン!」

 

 

 俺は通信端末を操作し、バリオさんに連絡を取った。

 そんでしばらくの間キャロ嬢は俺の事をムムムとした眼で見つめていたが、ファルネリさんに諭されたので押し黙った。

 流石はお嬢様と長年連れ添っただけはあるッスね。

 

 

 

 

 

 

 

さて、街中の敵戦力はほぼ排除出来た為、俺達はバハシュール城へと向かった。

つーか、デカイ。街の中でひときわ大きい金ぴかで、おまけに昼間なのにライトアップ。

金の無駄遣いっていうのが遠くからでもわかる城だった。

 

警備員とかが何十名かいた様だったが、そこは物量で押し切った。

んで王の間に辿り着いたけど、そこに目当ての人物は影も形も無い。

代わりに只大勢の美女が残されているだけだった。

 

 

「おおー、美女軍団ッス。眼福。眼福」

 

「むぅ、艦長!鼻の下を伸ばしたらみっともないです!」

 

「しかしユピ、コレは男としての当然やるべき行為で」

 

「不潔ですー!ダメですー!いけない事ですー!エッチなのはいけないと思います」

 

「な!?ユピ!何処でその台詞を?!」

 

「知らないです。ふ~んだ!」

 

 

 何故だ?何故ユピが頬を膨らませて拗ねてるんだ?

 つーか他の連中!なんで“またか”みたいな目で俺を見る!?

 

 

「と、とにかくこの人たちから事情を聞くッス!」

 

「「「へーい」」」

 

 

 心なしかやる気が無い返事にくそ~と思いつつも、美女軍団の方達の優しく聞いて見た。

 最初こそおびえている様だったが、ウチの連中は女性には紳士だ。

 少しずつと情報を離してくれて、ソレらを合わせた情報によると――

 

 

“バハシュールは東の砂漠に逃げた”

 

 

―――との事だった。ちなみにココまで3時間経過。

 

 

「ユピテルに救援要請!兵員輸送VBを回してもらうッス」

 

 

 とりあえずフネから足を回してもらう。

 兵員輸送VBなら最大30名位乗せられるからな。

 VBが来るまでの間に、ユピとヘルガに3時間いないに行ける距離を算出して貰う。

 そしたらどうやら東のさばくには、なんと未発掘のエピタフ遺跡があるんだそうな。

 

 バハシュールはどう見ても考古学には興味なさそうだしなぁ。

 未発掘で残っていても不思議じゃねぇって事なんだろうな。

 

 

 まぁそんな訳でしばらくしてバハシュール城に舞い降りたVBに分乗して砂漠へ。

 何故か教授も遺跡があるという事を何処かで聞いたらしくVBに乗っていた。

 流石教授、自分の分屋の事となると地獄耳だぜい!

 

 

 

 

 

 

 

≪ブォォォォォォーーーーン!!!≫

 

『艦長、こちら機長。間もなく遺跡に到着します』

 

「ウス、俺達を降ろしたらそのまま待機していてくれッス」

 

『了解』

 

 

 VBに揺さぶられて砂漠の中にある遺跡へと飛んだ。

 間は特に何も無かったのでキングクリムゾンだぜ。

 

 兵員輸送VBは遺跡上空を旋回し、遺跡の入口と思われる付近へと着陸。

 俺達は遺跡の入口へと降り立った。

 

 

「おお!ムーレアの遺跡にそっくりだネ!」

 

「ちょっ!教授!敵が潜んでるかもしれないんスから先行しないで!」

 

「ユーリ、こっちにエレカーが止まってる。新しい足跡も遺跡に続いているみたいだ」

 

「・・・こりゃ間違いなくバハシュールがいるッスね。ププロネン」

 

「は、保安部員達に任せてください」

 

 

 保安部のププロネンが保安部員を集め、遺跡へと向かわせる。

 元々はトランプ隊として各地を転々としていた傭兵達だ。

 その為彼らは大地での戦闘の仕方もよく心得ていた。

 

 クリアリングを的確に行い遺跡へと入っていく。

 俺達は先行する彼らに従って後を追った。

 

 

≪―――パラパラ≫

 

「ん?なんか落ちて来た?」

 

「どうやらムーレアよりも風化が進んでいる様だネ」

 

「見たいッスね。下手にバズ撃つと崩壊するかも・・・」

 

 流石に遺跡で生き埋めとかは勘弁願いたいので、部下に爆発物の使用は控えるよう指示を出す。

 探査を続けたが、遺跡はそれほど広くは無かったらしく、しばらくして―――

 

 

「ひっ・・・ひぃ!来るなッ!来るなァァァ!!」

 

 

―――とまぁ、なんとも情けない声が遺跡の中に響き渡った。

 

 

「お前がバハシュールッスか?」

 

「ひぃ!?な、なんで、なんでだよぉ!俺に何のうらみがあるってんだ、おまえら」

 

「えーと、まずカルバライヤ方面でお前さんがパトロンやっていた海賊に襲われて、その所為でウチのクルーが危険にさらされたッス。おまけに要人を誘拐した挙句、その交渉に来た俺達と交友があったシーバット宙佐を手に掛けたッスね・・・大分恨みはあるって事で」

 

「シ、シーバット?あ、あいつは保安局の癖に、自治領に侵入したんだぞ?!

だから!だから殺ッただけじゃないか!ソレが宇宙の掟だろ!!」

 

 

 ヒステリーにかかったかのようにわめき散らすバハシュール。

 その姿は非常に見苦しく、またコレが自治領の領主だった男かと疑いたくなった。

 つまりは、その理屈で行くと―――

 

 

「宇宙の掟ッスか?なら、宇宙開拓法第11条も掟ッスよね?」

 

「宇宙開拓法第11条?な、なんだよソレ」

 

「“自治領領主はその宙域の防衛に関し、すべての責任を負う”」

 

「ひっ!?そ、そんなの―――」

 

「ま、星に引きこもっていたセンズリ僕ちゃんには解らない事かもしれないッスけどね。つまりは因果応報、今まで好き勝手したんだろう?いい加減年貢の納め時さ・・・」

 

 

 俺はハンドサインでバハシュールを拘束するように指示を出そうとする。

 金属音を立てて構えられる銃の群を見たバハシュールは冷や汗を大量に流していた。

 

「ま、ままままっまてまてまて!!そんなの無理!捕まえるとかナイッシングだってぇぇぇぇ!!何でもやる!この宙域も譲るから許して・・・」

 

 

 そう言って何とコイツはジャンピング土下座を決めた。

 一国の領主がだすとは思えない程の見事なフォームで放たれた土下座。

 ソレを見て俺達は一気に士気が低下していくのを感じた。

 あまりにも情けなさすぎる。コイツの所為で何人の人間が死んだ事やら・・・。

 

 

「・・・はぁダメ人間にも程があるよコイツ」

 

「・・・行きましょう。コイツは殺す価値も無いッス」

 

「ゆ、許してくれるのか!あ、ありが―――」

 

「勘違いするなッス。俺はテメェの様なバカ野郎の血で仲間の手を汚してほしくないだけッス」

 

 

 見逃してやるよバハシュール。

 今まで部下に頼って生きて来たお前さんが、この厳しい世界で生きていけるかは知らないがな。

 

 

「さーて、撤収ッスよー」

 

 

 あんまりにもアホらしくなり、撤収指示を出した。

 バハシュールはどうも腰が抜けたらしく、その場にへたりこんでいる。

 だがその時―――

 

 

≪ズズン・・≫

 

「な!?遺跡が揺れ―――」

 

「コレは重力波振動!?何かが降りてくる!?」

 

 

 唐突に遺跡全体に振動が走った。ゴゴゴと経っていられない程の振動に襲われる。

 俺はトスカ姐さん達と一緒に一度遺跡の部屋から逃れたが―――

 

 

≪―――ガラっ!!≫

 

「た、助け――ぎゃぁぁぁぁぁぁっ・・・・・・」

 

 

 断末魔の悲鳴が遺跡にとどろいた。

あ、いっけね。アイツ放置したまんまだった。

 

 

***

 

 

「・・・あちゃー、完全に瓦礫の下だ」

 

「バカ領主だったけど、最後がコレじゃ浮かばれないだろうねぇ」

 

 

 すこしして振動が収まった為、バハシュールが潜伏していた部屋へと戻った。

 中は天井や壁が剥がれおちて所々瓦礫で埋まっている。

 そしてバハシュールがいた場所は赤い水で染まっちゃってました。

 どう見ても下敷きです、本当にどうもありが(ry

 

 ま、バカ野郎だったけど、死んじまったにはしょうがない。

 死者は冒涜するに非ずってな。寂しとこだけど墓標くらい立てといてやるさ。

 

 

 

―――そんな事を考えていた時だった。

 

 

 

「ほう。バハシュールのボンボンを潰しちまったのか。そいつぁ、ちっと悪ぃことしちまったなぁ」

 

「へ!?誰ッスか!?この素敵な銀河万丈ボイスは!?」

 

「ユーリ!メタな事言ってないでアソコだ!」

 

 

 トスカ姐さんが指差した先、天井が崩れて瓦礫が積み重なった山の上にヤツは居た。

 

 

「お、おまえは!!・・・・・・誰ですか?」

 

 

 なんか俺の後ろでズッコケる音が複数聞えた。

 

 

「あんたあいつが誰か知らないのかい!?」

 

「えー、だって知らないッスよ。あんなイカリ肩で髭の素敵なおじ様なんて」

 

「男におじ様っていわれても気持ち悪ぃだけなんだがな・・・まぁいい。俺はヴァランタイン。大海賊ヴァランタインだ!小僧も名前くらいは聞いたことがあるだろう?」

 

「・・・ヴァラン・・・タイン?・・・・マジで?」

 

「おう、よくも俺様を罠に嵌めてくれたよなぁ?俺は愉快だぞ?楽しめそうだ」

 

 

 何がーーー!??と、叫ばなかった俺を褒めてくれ。

この素敵なお髭のおじ様が歌にもでる大海賊ヴァランタインだって!?

あかん、完全に記憶から抜け落ちてやがる・・・。

 え?という事はもしかして、もうゼーペンストの艦隊を超えて来ちゃった?

 

 

「はっはー。こっちはわざわざ策にノッてやったんだ、感謝して欲しいもんだぜ」

 

「あ、その件はどうもありがとうございますですハイ」

 

「お、いやいや、ガキの遊びに付き合うのもオトナノタシナミってヤツでな」

 

 

 ははは、不味い、今気付いたけどものすごい威圧感。

 身体が震えそうだけど、ソレを見せる訳にはいかない。

 カラ元気で頑張ってみたけど、もう泣きそうですー。

 

 

「お前らの目的はエピタフだろ?そいつは俺の後ろにあるんだぜ?だけどコイツは俺のモンだ。悔しかったら俺と戦って―――」

 

「・・・・とったんじゃよーっと」

 

「「あ」」

 

 

 なんかガコって音が聞こえたかと思えば、ヘルガが話しの途中に背後に回っていたらしい。

 台座に安置されていたエピタフを掴んだヘルガが、得意げそうにこちらに掛けてくる。

 ちょ!ヘルガ!お前空気読まないにも程があるぞ!

 

 

「ほい艦長。これがエピタフじゃよーっと」

 

「・・・成程、全部小僧の指示か?」

 

「え?!いやその!?」

 

「・・・・や~れ、やれ。大人でも、ガキが悪さしたら怒んなきゃだめだよなぁ?小僧」

 

「そ、ソレは時と場合によると、俺は思うッスー!!」

 

 

 ひぇぇぇぇぇっぇぇ!!??怒気がましていくぅぅぅぅぅぅ??!!

 あ、青筋がスゲェ事になってますよヴァランタインさーーーん!!

 つーか私は何も関係ないって感じでエピタフ渡すなよぉぉぉぉぉ!!

 やっぱりこれ疫病神じゃァァァっァァ!!!

 

 

≪・・・・ヴヴヴヴ≫

 

「あ、あれ?なんか光り始め――」

 

「なに!?まさかお前も!」

 

 

 ってしまったぁぁぁ!!俺が観測者だってばれちまったぁぁぁ!!

 つーかエピタフ何で反応するかなぁ!?以前のヤツは反応しなかっただろう?!

 

 

「今だ!ソレ!」

 

≪ボフン!≫

 

「な、煙幕だと!くそ小僧待ちやがれ!」

 

 

 一触即発になりかけた時、俺の後ろで控えていたトスカ姐さんが煙幕弾を使った。

 辺りは一瞬にして煙に包まれる。俺は誰かに肩を掴まれて遺跡から逃げだした。

 そしてすぐさま待機していたVBに乗り込み、遺跡から脱出した。

 

 

 途中でいまだ光り続ける懐のエピタフの事を思い出したので、

 とりあえず光るエピタフに“光んのやめい!”と強く願ったら光らなくなった。

 俺GJ,だけどマジでヴァランタインが怖かった。死ぬかと思った。

 

 

「さぁ早く出港準備しないと、ヴァランタインが追って来るよ?」

 

 

―――え?なんで?

 

 

「だってユーリ、エピタフを持って来ちまったじゃないか?」

 

「・・・・・いやぁ~~!!返す!コレ返す~~!!」

 

「ちょ!ユーリ!ドア開けんな!危ないだろう!」

 

 

 離せ!離してくれぇぇぇ!!コイツを返さないとマジで追って来るって!

 つーかなにコレ?なんなんだよおぉぉぉぉ!!

 

 

「エピタフのばかぁぁぁ!!」

 

 

***

 

Side三人称

 

 ゼーペンスト領にあるデブリ帯、普段は漆黒の闇に閉ざされている空間。

だが、今は閃光に照らされてその姿をさらしていた。

 

 そこかしこで上がる閃光が、デブリ帯の近くを航行する駆逐艦に命中する。

 シールドで防がれたエネルギーは徐々にシールドをすり潰して貫通。

 指向性エネルギー弾の直撃を受けた駆逐艦が火球となった。

 

 

「――ッ!有人S級10番艦中破、いえ撃沈されました」

 

「ったくなんて奴らだい!残りの駆逐艦は!」

 

「残り4隻、計6隻が沈められています」

 

 

 そしてその駆逐艦を率いていた白鯨艦隊は今、壊滅の危機にあった。

 既に護衛艦の半分以上が敵のフネに沈められてしまい、敵を振り切ることが出来ない。

 ソレもそうだ、相手はマゼランに名をとどろかす大海賊。

 

 

「ヴァランタイン、やはり手ごわ過ぎるッス」

 

 

 大海賊ヴァランタインが率いる海賊戦艦グランヘイムが相手だったのだから。

 ユーリ達は首都惑星を脱出した後、追撃してきたグランヘイムによって攻撃を受けた。

 その際に2隻の駆逐艦が沈められ、ステルスを使う暇も無く後退する事になる。

 

 反撃をするが生半可な攻撃はグランヘイムの持つ強固な装甲に阻まれ、ダメージを与えられる攻撃はことごとく卓越した操船によって回避されてしまう。なんとかデブリ帯付近にまで逃げて来られたが、既に白鯨艦隊は追い詰められていた。

 

 

Sideout

 

***

 

Sideユーリ

 

 

 不味い不味いマジでヤバいってどうすんのどうすんの俺ライフカードぉぉぉ!!

 って取り乱してる場合じゃ無かったぞコンチキショイ!

 

 

≪ズズーン!≫

 

「デフレクターに至近弾、デフレクター耐久値3%低下」

 

「・・・・掠るだけでこれってどう何スか?」

 

「恐らく大マゼランの技術である超縮レーザー砲なのではないかと推測できるな」

 

 

 そうッスかサナダさん!相変わらずのご高説感謝!

だけど今はそれどころじゃねぇよ!

 

 

「―――待て待て落ちつけ俺、まだ何か方法が」

 

「敵艦主砲発射!」

 

 

 考える暇もありゃしない。

グランヘイムの三連装砲が放ったビームがユピテルのデフレクターを揺らす。

デフレクターの耐久値がドンドン下降していくのがモニターに表示された。

ケッ!やっぱクソ強ぇなヴァランタイン!あれが大マゼランの実力かよ!

 

 

「ビームの一部がデフレクターを突破、熱処理装甲に被弾、損傷無し」

 

「くそ、お返しにHLでもぶちかましたろうか?≪ドーン!≫な、なんだ!?」

 

「ッ!メイン噴射口に直撃弾!ユピテルの巡航速度が60%ダウン!」

 

 

 どうやら三連装砲だけじゃなく、単装砲も発射していたらしい。

 しかも一発の威力は三連装砲よりも上だったらしくデフレクターを突破。

 メインエンジンの噴射口が破壊されちまったよオイ。

 

 

「機関室に火災発生!ダメージコントロール中!」

 

「速度が保てません!このままじゃ追い付かれます!」

 

 

オペレーターのミドリさんとユピの報告が飛ぶ。

 くッ、生き残っているこちらの戦力はアバリスと護衛艦が4隻か・・・。

 

 

「・・・・あ~、だーめだこりゃ。逃げられねぇッスな」

 

「ユーリ!アンタ!」

 

「落ち着くッス。トスカさん取り乱しても何も解決しないッス」

 

 

 はぁ、八方塞がりで逆に冷静になっちまったよ。

 恐らくは連中は俺達の脚を止めて、乗りこんでくる気なのかもな。

 もしくは莫迦にされたと考えて、なぶり殺しか・・・しゃーないか。

 

 

「リーフ、あのデブリの影に艦を寄せてくれッス。敵を近づけさせない様にHLを発射」

 

 

 とりあえずデブリ帯にある小惑星の陰にフネを隠した。

 HLのお陰で敵は近寄ろうとはしない。

 だけど修理する暇なんて無いから俺はある判断を下した。

 

 

「ユピ、全艦放送に切り替えてくれッス」

 

「あ、はい・・切り替えました」

 

「ん、あんがと―――あー、こちら艦長のユーリだ。全艦聞えているな?』

 

 

 俺は手元のコンソールのマイクからフネの中に放送を流す。

 コレは最後の手段でもあり、ある意味仕方の無い事だからな。

 

 

『全艦クルーに告げる。全クルーは速やかにアバリスへ待避せよ。総員退艦ッス。本艦はこれより単艦でグランヘイムを食い止める為反転するッス』

 

「ユーリ!アンタ!」

 

「艦長!?」

 

 

 俺は言い寄ろうとするトスカ姐さんとユピを手で遮り、放送を続けた。

 

 

『繰り返す、全クルーは脱出艇にのり、速やかにアバリスへと待避せよ。コレは艦長命令だ。拒否は許さん。総員速やかにアバリスへと移乗を開始せよ。俺からは以上だ』

 

 

 マイクを切る。これでいい、こうすれば白鯨艦隊の全滅という事態は避けられる。

 俺が艦長席に座ろうとすると、横から腕がにゅっと伸びて胸倉をつかんだ。

 

 

「・・・・何スか?トスカさん」

 

「見損なったよユーリ。あんたユピを見殺しにするつもりなのかい?」

 

「・・・あ、その、きっと艦長にもお考えが」

 

「あんたは黙ってなユピ。私はユーリに聞いている」

 

 

 怒り顔のトスカ姐さんが今にも俺を殴ろうという感じで腕を振り上げています。

 だけど、何でこんな指示を出したのか理由を聞きたいって感じか。

 

 

「なに、簡単な理由ッスよ。肉食獣に追い詰められたエモノが複数いたなら、誰かが犠牲になることで全滅の憂いは避けられるッス」

 

「ほう?その為にユピテルを、ユピを犠牲にしても良いってのかい?!仲間じゃなかったのか!」

 

 

 バキンという音と、頬に走る衝撃と激痛・・・トスカ姐さんに殴られました。

 あるぇ~?俺って艦長だよね?部下に殴られるってマジっすか?

 だけどトスカ姐さん、アンタは一つ勘違いをしているぜ。

 

 

「・・・なにか勘違いしてるみたいッスけど、ユピの人格データはアバリスに転送可能ッスよね?」

 

「あ、はい!私は今や白鯨艦隊そのモノですから、白鯨艦隊のフネが残っていれば・・・」

 

「そう言う事ッス。だからユピは心配いらないッス。問題はこのフネは無人コントロールが出来ないって事ッスよ」

 

 

 ユピテルは今は旗艦として運用する事を前提としており、必要ないモノだろうって事で、マッド達にその無人コントロール機能を取り外されているのだ。正確には誰か一人いないと戦闘を行う様な運航が出来ない。

 

 だから誰か一人ブリッジに残る必要がある。

 だが、それにも問題があるのさ。

 

 

「チッ、そう言う事かい・・・で、誰を残すんだい?アタシかい?それとも―――」

 

「俺が残るッスよ」

 

「・・・・なんだって?」

 

「聞えなかったッスか?俺が残るんスよ。艦長席のセキュリティの関係上、一人でフネを動かすには俺の生体情報がいるッス。つまり、俺しかこのフネを単艦で操れないんスよ」

 

 

 そう、セキュリティが強化されている為、俺以外の人間に艦長席の機能が使えない。

 艦長席のコンソールからでしか、ユピテルの全機能制御は行えないのだ。

 そして、現在このフネの艦長は俺だけだ。

 

 まぁミョルニルアーマーあるし、ブリッジは装甲板の下に入ってるし、直撃貰わなきゃ沈んでも生きられると思うしなぁ~。俺まだ死ぬ気は無いし。

 

 

「あんたは・・あんたが、何で・・・」

 

「艦長ダメですよ!一人残るなんて!死んじゃいますよ!」

 

 

 いやしかしですな?誰かが残らねぇとグランヘイムは止められネェよ。

 スケープゴートを残さないと、みんな死んじまってからじゃ遅いんだヨ。

 

 俺はそう言って二人を説得しようとするが、なんか全然来てくれない。

 しまいにゃなんか気絶させても連れて行くとか言い始めるし、それじゃ誰が動かすんだよ。

 確かに危険だと思うけど、戦闘行動が取れないフネなんてすぐに撃沈されちまうから意味無いんだよ。

 遠隔で動かしたくてもセキュリティやハードの問題で無理だしさ。

 

 

「とにかく、みんなが生き残るためにはこれしかないッス。大丈夫、俺は死ぬ気なんて無いッスよ」

 

「ユーリ・・・」

 

「うぅ・・・艦長」

 

 

 まぁエクストリームブラスターの直撃とか受けなきゃ問題無い。

ブリッジ周辺は特に強固に造られてるしな。

最終的には俺専用のVFで逃げようと思うし・・・。

 

つーかすげぇんだぜ?このブリッジから直通で専用の格納庫に降りられるんだ。

マッドに専用機造ってって言ったら専用の格納庫も付いてきました。

マジでマッドぱねぇ。まぁそんな訳で俺の逃げるルートは確保してあったり。

 

 とにかく、時間がないんだから二人とも脱出してくれッス。

 それになんか涙目で見られると非常に罪悪感がふつふつと・・・。

 

 

「まぁそう言う訳で二人ともアバリスに脱出してくれッス」

 

「・・・・私は残るよユーリ。副長は艦長の隣に居るもんさ」

 

「いや、だけどこんな博打につきあわなくても」

 

「0Gなめんじゃないよ。生きてるうちは博打じゃないか。なら一世一代の大博打にかけるのも酔狂ってもんだろ?」

 

 

 ちょっ!トスカ姐さん何言ってんスか!?

 

 

「私も残ります」

 

「ちょっ!ユピまで!」

 

「幾らデータが生き延びると言っても、私は艦長以外の人の元に行く気は無いんですから」

 

「・・・・・(えー、なにソレ?まさかの告白?いや、そんな訳が・・なんなんさー!?)」

 

「だから残ります。アバリスにデータ転送なんてしません。艦長がフネと運命を共にするというのなら――私も残ります」

 

「そう言うこった。嫌だって言っても聞かないよ?私らはフネに残る」

 

 

 ちょ、待って!なにフネと運命を共にするって感じになってんの?!

 足止め出来たら俺も脱出する気満々なんだけど!?

 

 

 ・・・・あ、でも今までの言動だと・・・うわぁ、俺なに英雄的行動取ろうとしてんの?

 リアルでOTLだわぁ・・・鬱りそうだわぁ。

 

 

「ZUーーーーN・・・・」

 

「ちょっと、何落ち込んでるだい?」

 

「いや、なんでもないッス」

 

 

 い、いえねぇ、実は後から脱出しようとか思ってたとかなんて・・・。

 ど、どうしよう!?あーーーーーもう!どうにでもな~れ☆

 

 

…………………………

 

 

……………………

 

 

……………

 

 

 さて、結局のところなんですが・・・。

ブリッジクルーはエコーとイネスを除き全員残るそうです。

 なんか梃子でも動かネぇって感じで逃げろっつてんのに残るって怒られた。

 

 仕方ないので、イネスにはチェルシーの事を頼むことにした。

 流石に博打につきあわせたくは無いからね。

 というかイネスに任せたのは、多分彼女も残ると言いそうだったからだ。

 

 ソレだけは兄ちゃん許しまへん!

チェルシーの花嫁姿を見るまでは死なんぞーー!!

 

 

「・・・・・」

 

「ちょ!ユーリどうしたんだい!?目からハイライトが消えてるよ!?」

 

「いえ、ちょっとチェルシーが花嫁になって誰かの元に嫁ぐのを想像したら・・・」

 

「何してんだい・・あんたは」

 

 

 ああ、溜息つかないでくれ、結構切実な問題なんだぞ?

 可愛い義妹が嫁に行く・・・うう、交際相手と対峙する俺!

 妹さんをください!だが断る!そしてギリアス、テメェはダメだ!

 

 

「艦長、トリップ中申し訳ないのですが――」

 

「いやトリップって・・まぁいいッスけど何スかミドリさん?」

 

「そろそろ動かないと敵艦がミサイルの発射準備をしている様なのですが」

 

 

 げ、ミサイルかよ。もしかしてなんかスゲェ威力の弾頭とか言うんじゃねぇだろうな?

 反陽子弾頭ならともかく、量子魚雷だったら直撃じゃなくてもきついぞ。

 

 

「仕方ないッスね。アバリスは?」

 

「既に最大戦速で宙域を離脱しました。我々に残されたのは無人S級艦4隻だけです」

 

「上等ッス、ソレだけあれば囮には持って来いッスからね」

 

「無人艦を特攻でもさせますか?」

 

「はは、武装したミサイルって・・・・いい考えッスね」

 

 

 おお、どうせ出し惜しみしねぇんだからソレもありかもな!

 色んな方位から突っ込ませれば、一隻くらいは到達出来るやもしれん。

 ちょっと今回は数が足りないから、ミサイルじゃなくて移動砲台だけどな。

 

 

「トクガワさん、機関出力はどれくらいまで出せそうッスか?」

 

「そうじゃな、ケセイヤ達が修理しているからもうすぐで全力の7割で動かせるじゃろう」

 

「へぇケセイヤさん達が・・・ってケセイヤさん達降り無かったんスか?!」

 

「“どうせ他じゃ好き勝手出来ねぇんだから、ココ以外居場所はねぇよ”と、彼らは言ってましたよ艦長」

 

 

 ・・・・・おいおい、整備班の連中の腕ならどこででも食って行けるだろうに。

 ――って待て待て、今の言い方だと死亡フラグだろう俺。

 

 

「ちなみに私も残っていたりするぞ少年」

 

「ミユさん!?」

 

 

 突然聞えた声に驚いて飛びあがって振り返るオイラ。

 見れば白衣を着たナージャ・ミユさんがそこに立って居た。

 

 

「意外とキミを慕う人間は多いという事だ。流石に教授は避難させたがな」

 

「え!?あの人まで残ろうとしてたんスか!?」

 

「梃子でも動きそうに無かったから、ヘルガに任せたよ。彼女が鷲掴みにしてアバリスに行った」

 

 

 何でだろう、ヘルガが教授の頭を鷲掴みにして引き摺る光景が普通に見える。

 つーか老人をいたわろうぜヘルガ。お前も元老人だろうに・・・・。

 

 

「まぁそう言う訳で、このフネの乗員の内、タムラやアコーエコー姉妹、それとイネスやチェルシーやルーべや生活班と医療班の大半が離脱している。ちなみにサド先生は離れる気は無いそうだ。彼の酒のコレクションは何気に多いからな。酒と共にココで果てたいらしいぞ少年」

 

「・・・・つーことは、結局艦を離れたのは6割弱って事ッスか」

 

「そう言う事だ。良かったな少年。残りは皆お前を慕っているって事だ」

 

「うわっ、なんか嬉しくて泣きそうッス」

 

「ふふ、胸を貸してやろうか?」

 

「いえ、ソレやるとなんか怖いんで止めとくッス」

 

「ソレは残念」

 

 

 つーかミユさん、流し眼でそんな事言わんといてくらはい。

 スンごく引かれます。ええ、ぼくオトコノコです!

 

 ソレはさて置きモニターに目を戻す俺、モニターには敵のグランヘイムが映っていた。

 正直逃げたいです。誰かワープ技術をください。もしくはハイパースペースでも可。

 このさいフォールドでもいい、目の前の恐怖から俺を逃げさしてくれ。

 

 

「現実逃避は今更だと思うぞ少年」

 

「ですよねー」

 

 

 俺はそう言って少し泣き、頬をパシンと叩いて気合を入れる。

 さぁて、覚悟完了!やったろうじゃんか!

 

 

「HL発射準・・・」

 

 

 俺はグランヘイムの気を引く為、攻撃指示を下そうとした。

 だが俺が攻撃指示を出す前に―――

 

 

「グランヘイムに爆発反応、敵損傷軽微」

 

「・・・・へ?」

 

 

―――何故かグランヘイムが攻撃を受けていた。

 

 あれ?俺まだ攻撃指示出してないよね?何故なの?どうしてなの?

 いきなりの事態に頭が吹っ飛びそうになった。つーか既に混乱の極みです。

今なら鼻からスパゲッティを・・・いや幾らなんでも混乱し過ぎだ俺。

 もっとCOOLになるんだ。決してKOOLでは無くCOOLだぞ。

 

 とにかく深呼吸をした俺がモニターを見た時に、その眼に映ったのは見覚えがある機体。

 VF-0と呼ばれるアバリスの護衛を頼んだ艦載機達が写っていた。

 

 

Sideout

 

 

***

 

 

Sideププロネン

 

 

『こちらアバリス、なんとか安全圏には出られたぜ。護衛感謝だ』

 

「了解しました。引き続き護衛を続行します」

 

 

 通信機に入るアバリスからの通信を聞きながら、私はそう応えていました。

 だが、内心私の心は憂鬱でした。何故私はココに居るのか?ソレだけが脳内を占めています。

 

 今回まことに不幸な事に、私の艦長はヴァランタインに目をつけられてしまった。

 当然普通ならソレだけで絶望してしまい、生きることすら放置する事もあります。

 しかし艦長は止まることはせず、何とヴァランタインの手の内から逃げようとしていました。

 

 流石は私が艦長と認めた人物です。物怖じしない姿勢には好感が持てます。

 とはいえ今回は相手が悪すぎました。流石は大海賊の名を持つ者。

 今の我々だけではとてもじゃないですが敵わなかった様でした。

 

 徐々に落される護衛駆逐艦、数少ない有人艦も落されてしまいました。

 なんとかゼーペンスト領のボイドゲートまで半分の所までは逃げられましたが、そこでついにヴァランタインのグランヘイムに捕捉されてしまいました。

 

 そして艦長は決断なさいます。それは二手に分かれ片方が食い止めるというものでした。

 元々の艦隊で勝てないのに、ソレを二手に分けるなんて狂気の沙汰かと思うかもしれません。ですが“生き残る”という観点から見ればソレは正しい判断に見えました。

 

 絶対的な強者から逃げるには贄が必要となる。

 つまりグランヘイムを食い止める方は“贄”なのです。

 かの大海賊の機嫌を直す為の供物。

 

 その時はてっきり私たちにもお呼びがかかるモノだと思いました。

 我々戦闘機隊は艦隊戦においては元々足止め等が主流として行われます。

 ですから残る方に我々も残されると覚悟を決めていたのです。

 

 ですが実際は、艦長は我々に逃げるフネを守るように指示を出しました。

 あっけにとられた私たちが反論する前に、アバリスは発進してしまい、私たちトランプ隊は護衛の為アバリスへとくっ付いて行く事になったのです。

 

 そして気が付けばこんな所にまで来てしまった。

 遠くにかすかにグランヘイムの砲火の光が見える。

 ・・・・私はココで何をしているのだろうか?

 

 

『リーダー、あのさ・・・』

 

「ガザン、わかっています」

 

『ッ!だったら!』

 

「しかし艦長は我々にこのフネを守れといったのですよ」

 

 

 そう、私たちはアバリスの護衛を頼まれた。

 だから離れる訳には・・・いやしかし、う~。

 

 

『あ~、その事なんだが』

 

「何ですかトーロさん?」

 

 

 ふと通信を見ると、頬を掻いているトーロさんの姿が写っていました。

 何かトラブルでもあったのでしょうか?ま、まさかエンジントラブル!?

 だとしたら我々が今度は囮になると―――

 

 

『ココまで来ればグランヘイムでも追い付けねぇと思う。だからお前さんたちはユーリの応援にいってやってくんねぇか?アイツだけじゃ大変だろうしよ』

 

 

―――よし、帰還しましょう。丁度護衛対象からも許可を貰いましたしね。

 

 

「では我々はユピテル援護の為帰還します」

 

『おう、我らが艦長殿を助けてやってくれ。俺は無事にクルーを安全な所にまで運んで行くぜ』

 

「お願いします。VF隊、VB隊、私に続け!艦長を助けに行きますよ!」

 

 

 そして私たちは一路反転、ユピテルに照準を合わせているあの海賊へと攻撃を仕掛ける。

 はは、既に私が使えるべき人は決まっているという事なんでしょうね。

 見殺しになんてさせません。私たちは艦長の手足なのですから・・・。

 

 

Sideout

 

***

 

 

Sideユーリ

 

 

 さてさて、ちーと・・・つーかかなりヤベぇかな?

 

 

「大6ブロックに直撃弾!熱処理装甲貫通!隔壁閉鎖!」

 

「熱処理装甲の排熱!追い付きません!」

 

「デフレクター展開効率が更に低下・・・このままだと不味い・・・かも」

 

 

 流石は原作において一隻で数千の艦隊を相手にしたフネだけある。

 トランプ隊が決死の足止めをしてくれているお陰でなんとか持っているけど時間の問題か。

 

 

「HLシェキナ発射、エネルギーブレッド直進―――命中、敵損害なし」

 

「がぁぁ!!クソ!!どんだけ堅いんだよ!」

 

「落ちつけストール」

 

 

 こっちも反撃してるし、誘導性の光弾だから当たるっちゃ当たる。

だけど、どうも有効なダメージを敵に与えていない様なのだ。

これでも大分強力な武装なんだけどなぁ。

下手すると兵装スロットLLクラスのビーム砲と同威力が出せる。

だけどソレ位の大砲を敵さんも詰んでいらっしゃる訳で・・・

 

 

「成程、自分の主砲程度なら耐えられる装甲板を積んでいるのか・・次回の改装の時にやってみるか」

 

「その次回がくればいいんスけどね」

 

 

 どうしてくれよう?いやマジで。

 こちらの攻撃は効きづらい、機動性は同程度。敵は攻撃も防御も上。

 唯一こっちが勝っているのは、誘導光線兵器としての精密さ。

 ふーむ・・・ぽくぽくぽくぽく、ちーん!そうだ!

 

 

「ストール、敵の主砲を狙えるッスか?」

 

「主砲を?あの三連装砲の事か?」

 

「ウス、武装の繋ぎ目なら弱い可能性があるッス」

 

 

 ほら!よくあるだろう?主砲が折れまがったりして攻撃不能とかさ?

 ソレをやればもうしばらくは・・・持つと思うし・・・。

 

 

「アイサー艦長、やってみる。ミドリ、データリンクを」

 

「もうやっています。トランプ隊の電子戦仕様VFとリンクしました」

 

「おっしゃ!それじゃほいきたポチっとな!」

 

 

 HLの発振体からビームが発射される。

 発射されたビームは空間に浮かぶ不可視(と言っても、微妙に空間に歪みが見える)の重力レンズが偏向し、グググと軌道を大きく逸らして敵の元へと直進する。

 

 そして微調整を繰り返しつつ、ビームは敵へと命中する。

 だが、ビームが敵の主砲に当たる直前・・・。

 

 

≪―――・・・ビシャァァァ!!!≫

 

「エネルギーブレッド空間中で拡散、兵装撃破ならず」

 

 

まるでホースから出た水が傘によって防がれるかのように、空間中でビームが拡散して消失してしまった。いや、どっちかって言うと何かとがったモンに当たって水流が分散した時に似ている。

一体どうなってんだ?

 

 

「装甲が分厚いって訳でも無さそう何スが、どうなってるんスか?」

 

「瞬間的な重力場の乱れが感知出来た。恐らくピンポイントでデフレクターを展開したんだろう」

 

「ピンポイント?そんなことできるんスかサナダさん(つーかピンポイントって、マクロスかよ・・・)」

 

「ふむ、必要な時にのみ展開するんだろう。フネ全体を包むよりもある意味効率が良い。だが敵の攻撃を予め予測できなければ意味は無いし、出来たとしてもタイミングが難しい。我々の知らない技術なのかも知れん。ただ言えるのは通常のデフレクターよりも高密度であるから、攻撃を防ぐ力もケタ違いという事だろう」

 

 

 うわ~、アレですか?ロストテクノロジーとか言うヤツ。

 この世界の技術って、実はマゼランに来る前の移民船時代の時の方が上らしいんだよね。

 船内で世代交代を何度も繰り返したらしいから、失われた技術とかもあるんだとか。

 

 で、それがロストテクノロジーってヤツらしい。

 でも考えてみると始祖移民船とかってまんまマク○スだよねー。

 ゲームだと全体が把握できない程デカかったから全長数十kmはあるよ。

 ・・・ん?でもあれマ○ロスよりかはゼ○ギアスのエルドリッジにも似てた様な・・。

 

 

≪ズズーン!≫

 

「敵ビーム、デフレクターと接触。艦長指示を出してください」

 

「おっと、悪いッス」

 

 

 いけね。ついつい考え事しちまったぜ。

 だけどどうッスかなぁ、まさかあんな強力な防御システム持ってるなんて。

 デフレクターの一点集中、ソレによってピンポイントで攻撃を防ぐことが出来る。

 なんかオペレーター三人娘がボール型コンソールを一生懸命回してるビジョンが・・・。

 

 

「ブンブンブン(いかんいかん、集中せねば)」

 

 

あ、でもデフレクターの集中運用とかウチもやってるか。

HLシステムの空間重力レンズなんかモロそうだしな。

 ウチがあれを攻撃につかったんなら、向うは防御で使ったって感じ?

 うわ~、パクリとか言われてパテント料払えとか言われねぇだろうな?

 

 

「どうするユーリ?ビーム系は防がれちまうよ?」

 

「・・・もう一度シェキナを発射ッス」

 

「でも艦長、もう一回やっても防がれちまうぜ?」

 

「構わんッス。その代わり全砲を一点に集中、それとトランプ隊に指示、こちらの攻撃が命中すると同時に兵装を狙って攻撃を開始せよッス」

 

 

 デフレクターを一点に集中している時、他の重力波防御領域が薄くなると予想される。

 実弾系の対艦ミサイルやR(レール)G(ガトリング)P(ポッド)を搭載しているVFなら、APFSの影響を受けないだろうから、ある程度のダメージは期待できる筈!

 

 

「OK,座標変わらず!FCSコンタクト!ポチっとな!」

 

 

 そしてストールのポチっとなの掛け声とともに、ユピテルからHLが発射された。

 相変わらずの正確な砲撃、当然相手も同じ場所を狙うと解っていたんだろう。

 

 

「敵収束デフレクターの稼働を確認、エネルギーブレッド拡散されます」

 

 

 そして二度目の攻撃無効化、ビームが拡散されてスプレー状に広がり霧散する。

 スプレー状になってもエネルギーは持っているから装甲に当たれば火花は散るが、グランヘイム級の堅牢な装甲を破るには至らない。

 だが―――

 

 

「トランプ隊攻撃を開始。対艦ミサイル、上甲板三連装砲及び側面部三連装砲を破壊を確認」

 

 

 そして思った通り同時に攻撃を仕掛けると、すんなりと攻撃が通った。

 まずはグランヘイムの主要兵装である3連装砲が破壊される。

 

 

「VB-6G(ガザン仕様)、レールキャノン発射、後部単装主砲を4基撃破」

 

「おっし!これで主要兵装は潰した!畳みかけ・・・」

 

「待ってください!敵艦インフラトンインヴァイターの出力上昇中!30、50%!?なおも上昇!本艦の最大臨界出力を越えます!」

 

 

 敵の主砲を潰したので、俺達は更に攻撃を仕掛けようとした時だった。

 急激にグランヘイムのエネルギーが上昇を開始したのである。

 ソレはユピテルのエネルギー総量を軽く上回る量であった。

 

 

「これは・・・艦長、敵艦から通信が――キャッ!」

 

「え?」

 

 

 ミドリさんの悲鳴に驚きオペレーター席を見ると、コンソールが火花を上げていた。

 強力な信号で強引にユピテルの通信回線が開かれたのだ。

 そして中央空間投影パネルに、あの髭が素敵なヴァランタインが映し出される。

 

 

『・・・・よう、小僧。よぉくもやってくれたな?俺の大事なフネが傷付いちまったぞ?』

 

 

 相手の声が入ったその瞬間、まるで身体の芯を鷲掴みにされたような感じがした。

 全てを見透かされ、その上で相手がどう踊るのか楽しむかのような視線・・・。

 通信機ごしだというのに、何と言うプレッシャーだろう。

 

 

『なんだぁ?ダンマリ決めちまってよ?まぁ良いがな。よくぞまぁ俺相手にココまで頑張ったモンだ。この銀河にゃ骨のある連中なんていないかと思えば、中々どうして』

 

「・・・・なにが、したいんスかあんたは・・・なんで、通信を――」

 

 

 俺は相手の放つプレッシャーの最中、絞り出るように声を出した。

 マイクの感度が自動で上がるシステムが無ければ、聞き取れない様な声。

 俺のその様子を見て、ヴァランタインは獰猛な笑みを浮かべる。

 

 

『・・・はは、なぁ~に、ちょっとはがんばって“楽しませて”くれたオコサマに、ちょっとしたプレゼントを上げようと思ってな?こっちを見てみな』

 

 

 ヴァランタインにそう言われ、外を見るパネルを見る。

 するとグランヘイムの艦首部分が可動しているのが見えた。

 竜が顎門を開くかの如く、上下に開かれた艦首から何かがせり出してくる。

 

 

「・・・は、はは、それも“オトナノタシナミ”とか言うヤツッスか?」

 

『そう言うこった。お前が真に0Gを名乗るなら、これくらい耐えて見せろ。それじゃさいなら』

 

 

 そう言ってヴァランタインが通信を切った途端、世界が揺れた。

 

 

「ユ、ユーリ!?」

 

 

 いや、正確には俺が倒れそうになったんだ。

 通信が切れた途端、プレッシャーから解放された。

 その解放感からか身体から力が抜けて倒れそうになったんだ。

 

 

「―――はは、なんだありゃ。マジでバケモンっスか・・・」

 

 

 乾いた笑いが口から出る。本人と対面した訳じゃなくて通信だけでこうなった。

 本人と対面した遺跡においては、相手は本当に“遊び”のつもりだったんだ。

 つーか、通信先の相手を震え上がらせるプレッシャーとか、どんな漫画だよ。

 

 

「ユーリ、大丈夫かい?」

 

「大丈夫ッス・・・いや本当はヤバいッスけど、けど倒れてらんないッス。ミドリさん」

 

「はい、何でしょう?」

 

「トランプ隊に通達、あの艦首からせり出した敵の特装砲を攻撃して止めろと。もしもあれの発射までに止められない場合、グランヘイムの前方の宙域から即座に離脱せよ――と」

 

「了解しました」

 

「トクガワ機関長、エンジンを臨界一杯で動かしてくれッス。あとユピ、人間が居ない場所は生命維持装置を解除、エネルギーを全部兵装に回すッス」

 

「了解じゃ」

 

「あ、あいさー」

 

 

 まだ足がガクガクするなかで、俺は指示を出してなんとかしようとする。

 だが、敵の主兵装こそ破壊したモノの―――

 

 

「トランプ隊苦戦中!対空ビームシャワークラスターです!」

 

「チッ!艦長!連中を援護してやらねぇと!」

 

「解ってるっスよ!ストール!」

 

「あいよ!ポチっと「敵艦から大型対艦ミサイルが発射されました!本艦をロックオンしています!」」

 

「ストール!命令撤回!HL拡散モードに!」

 

「アイアイサー!!」

 

 

 だが敵さんにはまだ副兵装と呼べる兵装が残されていた。

 しかもまだまだ報告は続く―――

 

 

「敵艦から艦載機が発進、トランプ隊と交戦中!」

 

「艦長!敵のインフラトンエネルギーが臨界に達するまでもう時間がないぞ!」

 

「敵の予想射線は!?」

 

「計算中・・・ダメです、今の本艦の機動性では・・・」

 

「クソ、万事急須かよ・・・」

 

 

 漂う絶望感、グランヘイムの艦首特装砲はハイストリームブラスターと呼ばれるモノだ。

 またの名を軸線反重力砲、重力波をビーム状に照射し、軸線上の敵を押しつぶす兵器だ。

 そしてその照準は本艦に向けられている。マジで万事急須だ。

 

 

「敵、特装砲発射まで、のこり約20秒、トランプ隊の迎撃、間に合いません」

 

「トランプ隊に退避勧告、至急敵の射線上から退避させるッス」

 

「―――ソレはいいとして、私たちはどうするんだい?」

 

「・・・・・・」

 

 

 どうすると言っても、もはやどうしようもない。 

 考えちゃいるけど、正直もう遅すぎるぜ。

 う~ん、遺書を今かいてもフネが消滅しちゃったらなぁ・・。

 

 って待て待て、まだ諦めんなよ!

頑張れ頑張れ諦めなきゃなんとかなる!そこで諦めんなよ!気力の問題だよ!

 

 

「敵艦特装砲発射まで、のこり約10秒」

 

「・・・・・むり」

 

 

 無理じゃァァァァァァ!!!気力とか云々の前に積んでるゥゥゥゥゥゥッ!!!

 どうすんのどうすんのさ!死んじゃうよこのままじゃ死んじゃうゼ!コンチクショー!

 

 

 そんな事を考えている内に、グランヘイムの艦首が明るく光るのが見えた。

 もう手も足も出ない状況に、俺は思わず艦長席のコンソールに手を叩きつけた。

 だけど、コンソールというのは色んなスイッチがくっ付いているのである。

 

 

≪バキャ―――≫

 

「あれ?なんか嫌な音が手元から――【特殊プログラム作動】――へ?」

 

 

 なにやらユピテルの声では無い電子音声がコンソールから流れる。

 嫌な音がした俺の手の下には、黒と黄色の格子模様に囲まれた、いかにもという感じの赤いスイッチ・・・しかも白いドクロがプリントされていた。

 

 

「な、インフラトンインヴァイターのリミッターが解放されるじゃと!?」

 

「何が起きてるんスか!?」

 

【艦長の声帯パターン確認、特殊プログラム『最後の咆哮』を作動、自動発射システムリンク】

 

「ちょっと!どうなってんだい!?」

 

「ひーん!わかんないですー!!完全にスタンドアローンなプログラムで干渉できませーん!」

 

 

 よくわからないうちに、勝手にFCSが立ち上がる。

 どうやら以前ルーのじっさまに貰った“最後の咆哮”を使う為のボタンだったらしい。

 技能じゃなくて実はコンソール操作だったんだけどね。

 

 

「HLに過剰エネルギーチャージ中、発射まであと5秒、敵砲撃とリンク」

 

 

 そしてカウントが0になり、グランヘイムからハイストリームブラスターが発射される。

 時を同じくして、ユピテルが文字通り最後の咆哮を上げて全力のHLを発射した。

 両者は一瞬だけ均衡をみせ・・・そしてやはりこちらが押し負けて消える。

 

 

――――そして宇宙に巨大な閃光が起こったのであった。

 

***

 

 

Side三人称

 

 

 宇宙海賊戦艦グランヘイム、そのフネの艦橋においてヴァランタインは目をつぶり、まるで瞑想するかの如く腕を組み、静かに佇んでいた。そしてヴァランタインが立っている艦長席の背後のエアロックが開き、背の小さな男が1人入って来る。

 

 その男は顔を隠せるくらいの大きな瓶底眼鏡をかけ、頭が大きくガニマタ。

 薄汚れた安物の空間服とジャケットに袖をとおして羽織っている。

 腰には工具入れらしきポーチをつけていることがから、彼が技術職の人間である事が窺えた。

 その男はキョロキョロと辺りを見回し、お目当ての人物を探し出すと、何の気兼ねも無く声を掛ける。

 

 

「艦長、主砲・副砲の修理終わったぜ。キッシッシ」

 

「おう、相変わらず早いなオオヤマ技術官殿?」

 

「あたぼうよ。こちとら手の速さが自慢ってね」

 

「ちなみにアッチの方も早いのか?」

 

「そいつはヒデェ嫌味だなオイ」

 

「「がっははは!」」

 

 

 その男、オオヤマが声を掛けたのは大海賊の称号を持つ男、ヴァランタインだった。

 普通なら萎縮してしまう様な相手だが、両者は旧知の中らしく気負った感じはしない。

 しいてこの二人の間柄を表現するのなら、友人同士といった方が良いだろう。

 

 オオヤマはすたすたとヴァランタインの横に来るとドカっと腰かける。

そして手に持った物をヴァランタインに向けた。

 

 

「飲むか?大吟醸“微少年”だぜ」

 

「ほう、ブリッジに酒を持ちこむとはな。テメェは本当に周りを気にしねぇ」

 

「キッシッシッシ。だが、飲むんだろ?」

 

「モチろんだ。アルコールは飲む為にある」

 

「ちげぇねぇ」

 

 

 断っておくが宇宙船のブリッジで飲み物を飲むことは、別段禁止されてはいない。

 だが、酒を飲むという事はしない。グランヘイムが海賊戦艦であるからこその光景だ。

 まぁ技術が進歩しているとはいえ、マニュアルでの操船はシビアなモノがある。

 アルコールが入ってする事ではないだろう・・・普通は。

 

 

「―――ング、ング、ング・・・ぷは~、やっぱ仕事の後はこいつだーね」

 

「おっさんくせぇな。一気に煽り過ぎだ」

 

「いいんだヨ。まだまだ造ってあっから」

 

「たく、フネの開発から設計、はたまた無駄と思える酒造りまでこなすヤツなんて、銀河広しといえどもオメェだけだろうなぁ、オオヤマよ」

 

「当たり前だ。人間は無駄がある生き物だ。ならば無駄がなくなればソレは人間じゃあるまいて?」

 

「オメェのその考えはいいな。深く考える必要がねぇ」

 

「人間は複雑だと言うが、実質飯と寝る場所さえあれば生きられる。深く考えたところで本質は変わんねぇさ」

 

 

 そして杯を煽る二人。つーか、その酒はグランヘイム産かい。

 周りのクルーも特に反応を示さない所を見ると、どうもこの二人がこういった場所で酒を飲みかわすのは当たり前のようだ。

 しばらく酒を酌み交わす音だけが、彼らの所から聞こえる。

 すこししてふとオオヤマが、微妙に機嫌が好さそうなヴァランタインに気付いた。

 

 

「どうしたヴァランタイン。なんかいいことあったか?」

 

「なに、久々に面白味のあるガキどもだったと思ってな」

 

「ああ、あいつ等の事か。そういや普段ならあんな連中すぐダークマターに変えちまう様な性格してるお前が見逃すなんて珍しい事もあったモンだ。明日はきっと宇宙乱流が起きるね」

 

 

 怖や怖やといってオオヤマは手に持った杯を煽った。

 流れる沈黙、これまた少ししてオオヤマが口を開く。

 

 

「・・・・ソレだけ気にいったか?」

 

「気にいったってよりかは、まぁ同族を見つけたってとこか」

 

「なんぞそら?」

 

 

 オオヤマはヴァランタインの言った事の意味が解らず首をかしげる。

 大海賊の船長はそんな彼を気にせず、手酌で酒を継ぎ足した。

 

 

「ま、俺たちゃキャプテンについて行くだけだがね―――あ!お前注ぎ過ぎだぞ!俺の分もよこせ!」

 

「おいおい、まだストックはあるんだろ?けちけちするんじゃねぇよ」

 

「何を言う、造ったのは俺でお前は造って無い。だから俺にこそ飲む権利があるのだー!」

 

 

 オオヤマはそう言うと、ひったくるようにして酒瓶をヴァランタインから取り返した。

 銀河に名立たる大海賊相手に、なんて無謀なことをと普通なら思うところだが、

ヴァランタイン事態が彼の行動を黙認、いやさ特にどうとも思っていないらしい。

 ひったくられた時は渋い顔をしたが、すぐに呆れたように手を振った。

 ソレだけオオヤマと呼ばれた男が、彼に信頼されているという事なのだろう。

 

 

「へいへい、わぁったよ。・・・所でお前も機嫌が良いな?」

 

「おっとと―――ん?やっぱ解るか?」

 

「俺がどれだけ長くオメェと居ると思ってんだ?―――ング、で?何があったんだ?」

 

「いやなぁ~に、折る意味お前さんと同じさ」

 

 

 同じと言われ、ヴァランタインは首を傾げた。

 その様子を見て、オオヤマは笑いつつも説明する。

 

 

「キッシッシ、俺達のフネに搭載されているロストテクノロジー達。そんなかの重力場収束装置と同じモンを作り上げた連中だったんだよ。この間のあいつ等はな」

 

「ほう、そいつはまたすげぇな」

 

「だろ?俺達ですら遺跡から拾い上げた装置を解析して造ったモンだぜ?それをあいつ等は普通に使ってやがった。しかも俺達が防御に使ったのに対し、あいつ等は攻撃に転用したんだぜ?宇宙空間で曲がるビーム、なんて浪漫だって話しだぜ!解るだろうヴァランタイン?」

 

「お、おう――(しまった。コイツ酔い始めるとウンチクが長くなるんだった)」

 

「ま、そんな訳で、同じ技術屋としては対抗意識がわいちまったって訳だ。ちなみに、あの重力場収束システムはデフレクターを応用すれば造れることは解ってるんだが―――」

 

 

 ヴァランタインは友人がはじめてしまったウンチクに溜息を付いた。

 普段の様子を知っているから、コレは長くなるという事を察知したのである。

 ま、それ程苦痛じゃないからいいけどな。そう思いつつ彼は窓から宇宙を見たのだった。

 

 

「おーい、ヒック!聞ぃてんのかヴァランタイン?」

 

「聞いてるから近づくんじゃねぇ。酒クセェぞ」

 

 

Sideout

 

 

***

 

 

Sideユーリ

 

 

 なんだがボーっとした感覚の中で、俺はまどろんでいた。

 直前に何かあった様な気がするけど・・・む~、思い出せん。

 

 

「―――長、――――艦」

 

 

 ん?なんだろうか?なんか呼ばれている気がするぜ。

 だけどオイラはスピードワゴンさんの如くクールに行くぜ~。

 つーか、もう少しこの浮遊感を楽しみてぇ~。

 

 

「――コラ、―――ユーリ―――目を覚ま―――」

 

 

 あん?何言ってやがる?俺はもう少し眠りてぇんだよ。

 

 

「――ダメ、――死ん――嫌です!――艦――長」

 

「ええい!―――こうなれば―――」

 

「――ちょっ――トス――何――を」

 

 

 なんか周りがうるせぇな。

 う~ん、と、ユーリさんはついついうなっちゃうんだ☆

 

 ん?あれは川?それと・・・小町っちゃんじゃないか?

 あれ?もしかして俺死んだの?だけど死んだ場所は幻想郷と場所が違う様な・・・。

 

 なんだぁ夢かぁ、俺の夢なら小町っちゃんとおしゃべりしても良いよな?

 えー、だめなん、なして?・・・・えーきっきに怒られるん?じゃあしゃーないな。

 

 

≪・・・グィ・・・≫

 

 

 と、その瞬間、口の中に異物が入った様な感じを受けた。

 なに、これ・・・ニュルンってしてて・・・気持ち悪い―――

 

 

…………………………

 

 

……………………

 

 

……………

 

 

「死ぬな!このバカ!起きろユーリ!」

 

「おえ、なんだぁ?(気持ち悪ぃ・・・)」

 

「艦長が目を覚ましました!(凄いですトスカさん、あんな風に唇を・・・私には無理ですぅ(泣))」

 

 

 あ~~、なんか気持ちわるい。つーかココ何処だ?・・・・思いだした。

俺グランヘイムと対峙して戦闘したんだっけ。じゃ、ココはブリッジなのか?

 周りを見渡してみると、あー半壊してるけどユピテルのブリッジのレイアウトだ。

 外を映すモニター類が全部死んでらぁ。しかもまだバチバチいってら。

 

 

「あたたた、う~ん、身体痛い。それになんか空気が薄い様な」

 

「ユーリ、良かった気が付いたね」

 

「ありゃ?トスカさん、何泣いてるんスか?」

 

「!?な、泣いて何かいないさ」

 

「いや、でも目元≪バキンッ!≫――なんでなんっスか~」

 

「か、艦長!?し、死んじゃったらダメですよ~!!」

 

「・・・ハッ!?私は一体何を!?」

 

 

 この人テレ隠しで私めを殴りましたヨ。酷いヨ。身体痛いのに酷いヨ。

 さて、どうやらあの戦闘の中、俺は辛くも生き延びたらしい。

 見ればブリッジクルーも無事だし、ユピも可動している所を見るとAI関連も無事だ。

 

 どうやらあのグランヘイムの攻撃を、最後に発射したHLの所為でフネが射線からずれたらしい。軸線重力砲自体もエネルギーの衝突で火線がずれたらしく、ユピテルはあのエネルギーの塊を直撃しなかったのだ。

 

 とはいえ、フネの半分があの攻撃によって持って行かれたことに変わりなく、インフラトン機関は完全に緊急停止(スクラム)。推進機も完全におじゃんにされ、現在宇宙空間をただ浮遊している状態だ。通信設備も運悪く攻撃に巻き込まれた為救援も呼べない。

 

 まぁ近くにまだグランヘイムがいるかもしれないから、通信は出来ないんだけどな。

 そんな訳で、現在は非常用電源と最低限の生命維持装置だけで俺らは生きているのだ。

 ああ、早い所インフラトンインヴァイターだけでも直さないと酸欠で死ぬなぁ。

 

 ちなみに俺が臨死体験した理由は艦長席のある高い所から落下したから。

 弩級艦だからさ、艦長席が高所にある訳ですよ?大体10m位は軽くね。

 

 んで、あの攻撃の際の衝撃で俺は艦長席から投げ出されて落下、床に叩きつけられたかららしい。 普段から重力の効いた部屋で鍛えてあって、ミョルニルアーマー着ていたから良かったが、普段の空間服のまま落下していたらと思うとゾッとしたぜ。確実に首の骨折って死んでたね、ウン。

 

 

***

 

 

『おーし、艦長、次はそこの外壁を取っ払ってくれ』

 

「えーと、こうッスか?」

 

≪バキャン≫

 

『あー!!もっと優しく扱え!』

 

「無茶言うなッス!コイツの操作難しいんスから!」

 

 

 さて、今俺は船外で俺専用VF-0Sを使い修理作業を行っている。

 正確には修理をおこなう連中が船内に入る為の作業何だけどな。

 何でそんな事をするのかというと、先の攻撃で隔壁が歪んでしまった所為なのだ。

 

 また現在完全に動力が落ちている状態であり、隔壁のロックを外せないのもある。

 フネの中からいけない以上、フネの外側から行く事になるのだが、ドアは開かない。

 ならドアを壊すしかねぇって事で、今動かせる唯一の機体である俺専用機を引っ張り出したって訳だ。

 

 

『お次は右舷の第208ハッチ、小天体と接触しちまったとこの近くだ』

 

「あいあい~ッス」

 

 

 俺は機体を動かし、ユピテルの船体をぐるりと回る。

 ユピテルの外壁を回りながら、しばらくしてあの時受けた傷跡が見え始めた。

 あのグランヘイムの撃ったハイストリームブラスターを受けた際、射線を逸らすことは出来たモノの、右舷側の三分の一が消し飛んでしまっていた。

 

 まるでバターナイフでバターを切り取ったかのように緩やかな融解面を目にしつつ、融解面に沿って俺は機体を進ませる。すこしして“壁”にのめり込んだ部分に到達した。

 いや、正確には壁では無い、ソレは小天体とも呼べる全長約200km程の岩塊だ。

 実はユピテルは今、その小天体に不時着しているような形なのである。

 

 戦闘の際の爆発の衝撃でそのままデブリ帯の中を進みココまで流された様なのだ。

 ああ、せっかくの俺のフネがこんなことになっちまうなんてなぁ。

 応急修理すれば飛べるらしいが、こりゃ応急修理だけで修理代が嵩むなぁ。

 ステーションにつければ無料で修理できるんだが・・・。

 

 

「こちらユーリ、第208ハッチに到達したッス」

 

『おう、そこには5~6機ほどのハシケが置いてある筈だ。という訳でハッチぶっ壊しといてくれ』

 

「りょうか~い」

 

 

 仮にもフネの持ち主に、そのフネをぶっ壊せとは何事だと言いたいが、今は非常時なので自重する。まぁフネの修理関係についてはケセイヤさんの方が権威だしなぁ。

 俺がどうこう言えることは無いって事で・・・。

 

 

「せーの――ッ!」

 

≪ゴン・・・ガギギギギギ―――≫

 

 

 言われた通り、ハッチにバトロイドモードのVFの手を打ちこみ、無理矢理スキマを作る。

 そしてそのまま無理矢理腕を差し込み、少し歪んだ扉を動かしてハッチを解放した。

 機体の中にまで響くちょいといや~な金属音を聞きつつ、扉が開ききった事を報告する。

 

 

「空いたッスよ~」

 

『おう、あんがとさん。これで作業ができるわ。ああ、後他にも作業用大型ドロイドのハッチも開けてくれ』

 

「あいあいッス~」

 

 

 なんかいい様にパシらされている様な気がしないでもないが、それはそれコレはコレである。

 この俺専用機を操作出来るのは俺しかいなんだから、いた仕方なし。

 そんな訳で言われるがまま為すがまま、船外でハッチをあける作業をしていたんだが・・・。

 

 

「――――ん?なんか光った?」

 

 

 ふとユピテルが着床している小天体の地平線辺りで何かが光った様な気がした。

 見間違い・・・かな?いやでも人工的な光りにも見えた様な・・・。

 

 

「ま、調べりゃ解るッスね。ケセイヤさん」

 

『あん?なんだ艦長?』

 

「なんか向うで光るもんが見えたんで、ちょっと偵察してくるッス」

 

『おう、逝って来い行って来い。作業艇も出せたから後は俺達でやっとくさ』

 

「んじゃ、ちょいと行ってくるッス」

 

 

 俺はケセイヤさん達に修理作業を任せて、機体をFモードに可変して飛んで行く。

 人工的な光りだったし、もしも近くを通りかかったフネだったら救援が遅れる。

 仮に海賊だった場合の事も考えて、小天体付近を行く事にしたんだ。

 

 

―――思えば光に気が付かずに、作業に集中していたら・・・大変だっただろうね。

 

 

***

 

 

「う~ん、おかしいなぁ。確かこのあたりだと思ったんだが・・・」

 

 

 さて、ユピテルから少し離れた小天体の地平線の位置。

 俺はそこの上空をファイターモードで飛行して、さっき光った物を探していた。

 地平線の向こう側にフネは無し、見た感じ地表にも構造物は無し。

 う~ん、只の見間違いだったんだろうか?

 

 

「何か見えたのは確か何スけど・・・」

 

『艦長、急にユピテルから離れてどうしたんですか?』

 

「あ、いやミドリさん、なんか見えた気がしたから哨戒に―――」

 

『先程偵察無人機が出せる様に格納壁をこじ開けたとケセイヤから連絡がありました。貴方は腐っても艦長なんですから、突然いなくならないでください』

 

 

 いや、腐ってもってあーた。まぁ良いけど。

 

「むー・・・お、金属センサーに感あり?」

 

 

 ふとセンサーを見ると、何かに反応を示している。

 どうやら足元の小天体に反応している様だ。

 ふむ、金属分が多い天体なのか?だとしたらフネの修理材に使えるかもな。

 

 

「何か足元のセンサーに色々反応が出たから、一度小天体に降りてみるッス」

 

『・・・了解、気を付けてくださいよ?』

 

「おう、まっかせろー」

 

 

 とりあえず、一度小天体へとゆっくり降下していく。

半人半機状態のガウォークで低高度をゆっくりホバリングしながら飛行した。

 

 

「んー・・・ん?」

 

 

すると、一瞬だったが何やら光るものが見えた。

遠目では何か棒状の何かが小天体から伸びている様に見える。

何じゃろうかと思い、俺はガウォークのままで近づき、その棒状の何かの元に着陸。

人型のバトロイド状態に可変すると、調査を開始した。

 

 

「ミドリさん、なんか人工物っぽい何かを見つけたッス」

 

『人工物ですか?宇宙船の残がいでは?』

 

「いや、なんか見たことがないモノで出来てるっぽいッス」

 

 

 その棒状のモノは灰色に近い金属で出来ていた。

 繋ぎ目の様なものは無く、微妙に何か模様の様なモノが描かれている。

 何かの遺跡的なモノなのかもしれない。足元の金属反応も大きいしな。

 

 

「もしかしたら他にも何かあるかもしれないッス。ちょっと周りを歩いて見るッス」

 

『了解』

 

 

 他に何かないかと見回すと、似た様な人工物が少し遠くにあるのが見えた。

 とりあえず調べておこうと思い、機体を歩かせようと一歩を踏み出した瞬間!

 

 

≪―――ガラ≫

 

「え?!う、うわぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

 突然足元が崩れ、VFはバランスが取れずそのまま落下する。

 

 

「ま、不味いガウォーク!」

 

 

 とりあえずホバリングさせようとガウォークへと機体を可変させる。

 そしてエンジンを吹かそうとした瞬間、上空警報のアラームが鳴り響いた。

 

 

「げ!?瓦礫が!?」

 

 

 上から自分の乗っている機体と同じサイズの瓦礫が降ってくる。

 どうやら、俺が落下した時に周りの岩やその他も連鎖的に崩れ始めたらしい。

 小天体とはいえ重力はある。流石に自分と同じ大きさの瓦礫と当たればタダでは済まない。

 

 

「ぬ、ぬぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

 

 驚いた俺はレールガトリングガンポッドを起動させて、瓦礫に撃ちまくる。

 一番近くの瓦礫は弾幕を受けてぶっ壊せたが、その際更に別の場所に弾が当たり更に瓦礫が発生して、此方へと降ってくる・・・え?これイジメ!?

 

 

「な、なんとぉぉぉぉぉ!!」

 

 

 機体を横滑りさせてロールや横転も使って岩塊を回避していく。

 定期的にシミュレーターに乗るようにしておいて良かったと考えつつもマジでヤバい。

 ふと視界の隅に横穴らしきものが見えた。

 

 

「し、死んでたまるかァァァ!!!」

 

 

 必死の俺はその横穴へと機体を滑り込ませた。

 その時長距離通信用のブレードアンテナが破損したが、岩塊に潰されるよりかはましだ。

 そして俺が逃げ込んだ横穴を塞ぐように岩塊がドンドンと落ちてくる。

 機体の中に振動が伝わるほど揺れて、横穴の入口がドンドンと塞がって行った。

 ようやく静かになったが、見れば入口は完全に瓦礫で埋まっていて脱出できない。

 

 

「不味いッス・・・そうだ通信!」

 

 

 とにかくヤバいことをユピテルにつなげようと、俺は通信回線を開いたのだが―――

 

 

「≪ガガガ!≫――ダメだ、電波が届かない」 

 

 

 先程の崩落で長距離通信アンテナが破損した為、地下深い位置だと電波が届かない。

 短距離通信は行えるようだが、いずれにしてももう少し上層に出ない事には・・・。

 

 

「・・・・・あれ?この横穴、奥に続いてる?」

 

 

 ふと見ると、俺が飛びこんだ横穴にはまだまだ奥があるらしい。

 むぅ、ココで待つのも一つの手だけど、このまま見つからない可能性もあるしな。

 

 

「一つ、探索と行きますか」

 

 

 もしかしたら横穴が何処かにつながっていると思い、俺は機体を歩かせることにした。

 俺が乗るVFは単機でも恒星間移動が可能なように設計されている。

 一応通常稼働でも数日位は酸素とかが持つ様に設計されているし、サバイバルモードでは数週間は持つ。

 

 出来れば酸素とエネルギーが持つ間に脱出したいなぁ。

 延々と続きそうな横穴を歩きつつ、俺はそう思ったのだった。

 

***

 

 

 どうも、なんか小天体の竪穴に落っこちて、気が付けば埋まりかけてたユーリ君です。

 横穴を見つけて歩いてると、なんか段々坑道に変化が現れて来た。

 なんかさ、最初は洞窟みたいだったのに、なんかスッゲェ壁が滑らかっての?

 よーく見たら人工物の様に見えなくもない。

 

 

「何かの遺跡か?」

 

 

 その可能性は非常に高い、何故なら以前みたエピタフ遺跡と通じる感じがあるからだ。

 とはいえ非常に暗い為、サーチライトがないと何も見えないから詳しい事は解らんが。

 

 

「・・・・あら?行き止まりッスか?」

 

 

 歩いて行くと、レーダーに壁らしき物が映った。

 ライトをそちらに向けると、完全に人工物な壁が坑道を塞いでしまっている。

 どう見ても遺跡関連です本当にありがとう(ry 

とはいえ参ったな。結局こっちも行き止まりかよ。

 このままここで干からびるのは勘弁して欲しい。

 

 

 ―――う~ん、この状況・・・ハンバーガー8個分くらいかな☆

 

 

 脳内教祖さま、お帰り下さい。つーか意味がわからん。

 干からびることが何でハンバーガー8個分なんだよ。

電波を受信しないでデムパを受信してどうすんだ俺。

 

 

「参ったッスね~・・・・おろ?」

 

 

 壁を見ていると、何やら繋ぎ目らしき物が見える。

 つーか、コレ扉じゃねと気が付くのに時間は要らんかった。

 よし!まだ先があるコレで勝つる!とか思ったけど、どうやって開けるんだ?

 

 

「う~ん☆・・・まぁ誰の持ちモノでもないしいっか」

 

 

 微妙にまだ教祖様が取りついている様な気がしないでもないが、気にしない事にした。

 とりあえず扉と思わしき場所から少し下がって、坑道にまで戻った。

 何をするって?くくく、開けられないなら壊すまでよ。

 

 

「RGP発射ってな!」

 

≪ブォーーーーー!!ズガガガガガガガン!!≫

 

 

 VFに標準装備されているレールガトリングガンポッドが火を噴くぜ!

 どうや!ケセイヤさんが造った戦艦の装甲ですら貫通する弾幕!

 壁にぶち当たって弾頭が粉々になって煙になってるせいで見えねえ。

 だが至近距離ならデフレクターも貫通出来るコレを喰らえば―――

 

 

「・・・・無傷・・・・だと?」

 

 

――――うーん、と、ドナ○ドはついついうなっちゃうんだ☆

 

 

 だから教祖様自重しろ。でも驚いたな。

RGPはデブリの中ですらつき進める戦艦の装甲ですら貫通出来るんだぞ?

 見れば噴煙が晴れた壁には傷一つなく、いまだそこにドーンとそびえている。

 普通凹むくらいしても良いんじゃねぇの?どんだけ堅いんだコレ?

 

 

「銃じゃ無理かよ」

 

 

――――ド○ルドマジック☆

 

 

 いや、教祖様はココに居ないから無理です。つーかいい加減帰って下さい。

 

 

――――あら~☆

 

 

 ふぅ、一人だと突っ込みもしなきゃならんから疲れるな。

 ソレはさて置き、俺はもう一度扉と壁を調べることにした。

 もしかしたら見落としがあったのかもしれない。

 

 つーか調べる前に撃つなよという意見は却下だ。

 ゆーりくんは、むずかちくかんがえるのはにがてなのじゃ~。

 ・・・・・ゴメン気持ち悪いな自重するぜ。

 

 

「うーん、うん?」

 

 

 よーく見ると、壁には溝みたいな何かが彫られている。

 ソレは基本的には直線であり、曲線を描く溝は全くなく曲がる時は直角だった。

 んで、その溝を追って行くと、1カ所だけ妙に溝が集約している個所が見えたのだ。

 コレは絶対なんぞあるお。

 

 とりあえずVFの手を伸ばして溝に触れてみる。

 ふーむ、センサー類に色々と反応があるみたいだが・・・・さっぱりわからん。

 俺はこういったのの専門家とちゃうからなぁ、ジェロウ教授が居れば解ったかも。

 

 いやいや、無い者ねだりしてどうするよ俺。

 改めて問題の遺跡の壁を見てみよう。彫られた溝は最終的には一つへと集約し・・・。

 ・・・・・・もしかして、集約したとこの中心を触ると開くとか?

 

 

「そんな上手い話しがある訳――――」

 

 

マニピュレーターを伸ばし溝の集約している中心へと触れてみる。

 

 

「――――ほら、なんも起きないッス≪――ガコン!≫・・・・え?」

 

≪ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ――――――≫

 

 

 何と言う事でしょう。あれだけ大きな障害であった扉がみるみると開いて―――。

 何一人ビフォーアフターやってんだ俺?突っ込みおらへんと寂しすぎる!

 とにかく、溝が集約している中心に触れたら急に扉が開きやがった。

 まるで誘っているかのように奥は真っ暗で中が見えねぇ。

 

 

「・・・・・ハッ!おいでおいでって事か?いいよ、入ってやるッス」

 

 

 俺は機体を操作し、開いた扉の中に入る。その時は気が付いていなかった。

いまだアーマーのポーチに入れられているエピタフが、扉に触れた瞬間かすかに光っていた事に。

 

 

Sideout

 

 

***

 

 

Side三人称

 

 

 さて、ユーリが居なくなってからのユピテルはと言うと――――

 

 

『おーい、取り合えずインフラトン機関へ続く道は開けられそうか?』

 

『うんにゃー、まだ無理だな。とりあえず外壁の穴塞がないと貴重な空気が減っちまう』

 

『そっか、んじゃ俺ハンチョーに飯届けてくっから』

 

『あー、気ぃつけてなぁー』

 

 

――――全然心配されていなかった。

 

いや約1名フネのAIが卒倒しかけたが、それ以外はおおむね平和である。

実際艦長の反応がロストしたことは知っていたし、全員が心配していた。

 

しかし、それ以上にフネの状態がヤバかったのである。

インフラトン機関がスクラムを起している為、エネルギー供給がない。

生命維持装置もエネルギーがなければ只のガラクタでしか無いのだ。

 

その為、このままこの状態が続くと、いずれ酸素が切れて全員がオダブツとなってしまう。

故に数少ない人員を艦長の捜索に出せる訳も無く、彼らは自分たちが生き残る為に仕事を優先した。それもまたこの宇宙の掟でもある。最終的には自分が優先、他人を助けるのは余裕がある時だけ。

 

もっとも、見捨てたというとちょっと語弊が生じる。

彼らは見捨てたののでは無く、己が出来る事を優先しているのだ。

整備班はシステムの復旧を急ぎ、科学班の艦内修理に走る。

そのほかの手が空いている人間は現場の指示によって行動する。

全員が生き残る為に動いているのだ。

 

 

――――そしてその中で唯一、動けるクルーがいた。

 

 

ユピテルの格納庫のハッチが開き、中から無事だったRVF-0がはい出してくる。

ソレを操作しているのは勿論我らがAI様であるユピである。

彼女はフネを修理している無人ドロイド達を操りつつも、その余裕のある演算能力で無人偵察RVFを稼働させたのだ。

 

 

【艦長、今行きます!】

 

「行くのは勝手ですが、居場所は知っているのですか?」

 

 

 RVFに意識を集中させようとした矢先、突然ミドリさんに声をかけられるユピ。

 しかし質問の内容にそう言えばといった顔となり、みるみる困った表情へと変化する。

 心なしかRVFにまで漫画汗が垂れてくる始末だ。

 

 

「まったく、貴方は急ぎ過ぎです。私たちだって探しに行きたいのを我慢しているのに・・・」

 

【め、面目ございません】

 

「・・・まぁ良いです。はい、これ艦長が最後に通信を入れた座標よ。くれぐれもトスカさんにはばれない様にしてください。彼女今すっごくイライラしていますからね」

 

【あ、ありがとうございます!】

 

「いえいえ、何の何の――(これでトトカルチョがまた変動しますね)」

 

 

 純粋なユピは気が付かない。

 既に彼女は艦長とつき合うかどうかの賭けごとレースの大将にされていることを。

 そしてユーリも知らない、ソレの結果次第では整備クルー達に半殺しにされるやもしれないという事を・・・・。

 

 

 ――――そしてユピは無人機を操り、ユピテルを飛びだした。

 

 

Sideout

 

 

***

 

 

Sideユーリ

 

 

 暗い入口に入る・・・と言ってもこれまで来た道も真っ暗だったから実はあんま変わらない。

 とりあえず遺跡の入口だと思える扉の中に入った訳だが、入った途端埃が舞った。

 どれだけ長い事放置されていたのかわからないが、どうやら近年入ったのは俺だけの様だ。

 もうもうと舞う埃の中を歩くと、それ程歩いていないのにまた扉が立ちはだかる。

 

 

―――――らんらんる~☆

 

 

 でもさっきと同じように、溝が集約している出っ張りらしきものが見えた。

 てな訳で、脳内に聞えるデムパは無視する事にする。

 う~ん、艦長席から落ちた時に頭打ったかな?

 

 

「えーと、ここに触ると―――≪ガコン≫おし、開いてくッス」

 

 

 溝に触れた途端、淡い燐光を放ちつつ反応があった。

 背後の入ってきた扉が閉まって行くが、まぁ向うにも出っ張りあるし大丈夫。

 とりあえず待っていると、急に機体がガクガク震え始めた。

 ジ、地震なのかとか思ったけど、よく見たら気圧計が上昇していた。

 

 

「・・・・・減圧室だったんスか?」

 

 

 どうやらこの通路は厳密には通路では無く減圧室だったようだ。

 遺跡の機能が生きていた事にもビックリだが、この減圧室信じられないデカさだ。

何せ今の俺はVFに乗っているのだ。

 全長10m近い機体が可変しているとはいえ、ソレが普通に入れる部屋でこれである。

 

 まぁ遺跡には時たま稼働する物があったりするらしいから、それ程珍しくも無い。

 ムーレアの遺跡だって、なんかスイッチみたいなもんで操作する扉あったしな。

 

 しかし、ある意味無駄な機能だと思いつつ、前方の扉が開いて行くのを待つ。

 開き切った扉の先は・・・・やっぱり暗かった。

 う~ん、減圧室が動くんなら、何で照明が点かないんだろうか?

 正直VFのサーチライトだけだと微妙に怖いんですけど?

 

 ま、考えても仕方ないので、奥へと続く通路を通ることにした。

 ちなみに外の気圧は丁度1気圧、人間が普段過ごす気圧と同じである。

 ともあれ、本当に空気なのか怪しい為、外気は取り込まないようにしている。

 

 ま、しばらくはVF内蔵のエアで持つからな。

 酸素が切れた時に取り込むって事で・・・。

 

 

…………………………

 

 

……………………

 

 

……………

 

 

「おう、コイツはまた・・・」

 

 

 しばらく通路をホバー走行していると、どうやら出口に来たらしい。

 前方の通路が暗い為、暗闇ににポカンと薄暗い穴が浮かんでいるように見える。

 んで、ようやく通路から抜け出せた訳だが、周りの光景に驚いた。

 

 

「・・・・ものすごく広いッス」

 

 

 そう、凄まじく広い空間が広がっていた。ユピテルすら完全に格納できる程に広い。

 それこそ、この薄暗さと壁さえ見えなければ、室内である事を忘れてしまいそうだぜ。

天井も高く、戦闘機型に可変するファイターモードで飛行しても問題なさそうだ。

 そんな訳で俺は機体を可変させ、ファイターモードで飛び上がった。

 

 

「本当に広いッス・・・ん?よく見たらビルみたいな構造物があるッスね」

 

 

 ちょいと気になったので半人半機形態のガウォークへとシフトする。

 んでホバリングでゆっくりと眼下に見えた建造物らしき集合体へと降りてみた。

 薄暗いのでサーチライトを上手く当ててどんなものなのかを見た。

 

 そこにあったのは確かにビルだった。窓らしき穴があり、建造物の中には部屋がある。

 壁の材質を見るに、この遺跡を構成するのと同じ建築材で建てられているらしいな。

 ・・・・だけど、なんかこのビル群の壁。焼け焦げた様な跡がある。

 まるでこの中で巨大な炎に焼かれた様な感じだ。

 

 どのビルもそんな感じで焼け焦げている処を見ると、どうも1区画だけでは無いらしい。

 ふと気になって飛びあがり、天井へと向かってみた。

 天井に付いた俺は機体をホバリングさせながらマニピュレーターを壁に伸ばしてみる。

 ザリって感じで擦り、マニピュレーターをこちらに向けてみると、微妙に煤が付着していた。

 

 

「こりゃ・・・この空間ごと焼却されちゃったような感じッスね」

 

 

 この広い空間は微妙にドーム状の空間だ。

もしこの中を覆う様な火炎だとしたら、ここは完全にオーブンと化していたことだろう。

 この遺跡の中で何かが起きて、火炎で焼かなければならなかったのか?

 

 う~ん、わからねぇな。ともかく火で焼かれてからココには誰もきていないって事は解る。

 何せ低重力空間にも関わらず、あれだけ膨大な埃がつもっていたのだ。

 さっきのビル群らしき建造物の周りにもかなりの埃がつもっていた所を見ると、やはり数100年は堅い。

 

 

「詳しく調べてみれば解るんだろうけど・・・今は先に進むッス」

 

 

 新たな通路を見つけた俺は、ガウォークのままで、その通路へと入って行った。

 しばらく通路を進むとまた扉があったが、ソレも出っ張りに触れると解除された。

 やはり部分的に機能が生きているんだろうか?

 

 ともあれくら~い通路を進むと、またもや広い空間へと躍り出た。

 といっても今度はさっきの空間に比べたらそれほど広くは無い。

 雰囲気もまったく異なる。さっきの場所は居住区っぽくて、ココはなんか工場区画みたいだ。

 

見た事も無い様な機械らしき物がならび、そこで何かが造られていたことを匂わせる。

 こりゃ教授がいたら絶対に飛び付きそうな遺跡群だな。

 ココまで完全な形で残されている遺跡なんてそうは無いだろうし。

 

 若干この空間はせまい為、飛びまわることはせずに通路から伸びるハイウェイを道なりに飛ぶ。

 しばらくして、また通路らしき入口が見えたので、そのまま中に入って行った。

 今度の通路はずっと続いて行くだけで、なんだが地底に潜っていく様な感じだった。

 

 こりゃ閉所恐怖症とか暗い所ダメなヤツには恐怖だぜ。

 俺はそう言った体質がないから、全然平気なのがありがたい。

 でもこの通路どんだけ続くんだろうな?ものすごく長い気がするぜ

 

 

「―――ん?また行き止まりッスか?」

 

 

 今度もまた通路の真ん中に壁があった。

 んで、また溝を辿り突起を探してみるとやっぱりあったので押してみる。

 コレでまた奥に行けるだろうと俺が思った瞬間!

 

 

≪ギギギギギ―――ガゴォォォォン≫

 

「げ!?閉じ込められたッス!?」

 

 

 後ろの通路の天井から扉が音を立てて降りて来て閉まっちまった!

 ちょ!マジで閉じ込められた!?なに侵入者対策のトラップか何かなのか!?

 ヤベェ!ヤベェよヤスニシ先生!こんな時どうすればいいんスか!?

 

 

――――諦めたら、そこで試合終了だヨ。

 

 

 はい、ありがたい言葉頂きましたが、それこの状況じゃあんま関係無いッスよね?

 と言うかマジでだれかボスケテ・・・

 

 

――――らんらん

 

 

 正し教祖!テメェはダメだ!

 

 

――――あら~☆

 

 

 やヴぁい、かなりテンパってるぜ俺。落ちつくんだ焦ったら不味い。

 素数を数えるんだ、素数は孤独な数字、俺に勇気を与えてくれる。

 え~と・・・・1って素数だっけ?・・・・ダメじゃん俺!

 

 

≪―――ズズズズ≫

 

「げ!床が上がり始めた!?」

 

 

 おいおい、あれですか?遺跡に良くある侵入者対策トラップのトップ5に入りそうなコレ。

 オラを天井と床とのあいだに挟んで、Gの如く押しつぶす気だなぁ!?

 

 

 

「や、ヤベェよ!この際脳内教祖様でも良いから助けて~!!」

 

 

――――・・・・・・この本、前に読んだなぁ☆

 

 

 テメェェェェェェ!このヤロウ!!!!

大事な時だけシカトこくんじゃねぇぇぇぇ!!!!

 や、ヤバいこうしている内に天井が!うわぁぁぁっぁっぁ!!!

 

 

 

 

シニタクネーヨー・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・あれ?潰されて無い?

 

 

 

 

 

 

 

 

「え?なして?・・・・ってなんだ。天井が開いたのか」

 

 

 なんてこたぁなかった。ちょっと遅かったが天井が開いただけ。

 つーか押せぇヨ、後少しで本当に天井と床に挟まれるところだったじゃねぇか。

 あれか?脳内教祖様を罵倒した所為なのか?久々にマック食べたい!

 

 

「ふ~ん、上も随分と竪穴が続いてるッスね」

 

 

 どうやらコレはエレベーターだったらしい。

 床がゆっくりとだが確実に上へと進んでいる。本当にゆっくりとしてるな。

 でもそんなこと考えているウチにガクンって感じで上昇が止まる。

 

 

「え?着いたッスか?――――――って訳でもないか」

 

 

 どう見てもエネルギー切れかエレベーターが破損しました。

 どうしよう、扉は閉まってるから戻れないしな・・・・。

 

 

「あの溝を辿って行けば・・・」

 

 

 先程から扉の開閉に使っている突起物。

 それには必ずと言っていいほど、あの溝が掘られていた。

 よく見たら横の壁に同じような溝が、上に向かって伸びている。

 

 てなわけで、ブーーーーーンと空中へと舞い上がるオイラ。

 いやはやVFで来ていて正解だったね。

 

 

「・・・・・お、また行き止まりッスか・・・っとココに出っ張りがあるッスね」

 

 

 ココにも溝が集中して出っ張りが出来ている。

 てな訳で今までと同じくマニピュレーターをかざしてみた。

 

 

≪ゴゴゴゴゴ――――≫

 

「よし、やっぱりあれはスイッチ何スね」

 

≪――――ズズズズ!!!!≫

 

「ん?なんか違う音も聞こえる様な?」

 

 

 そう思った瞬間、下方の警報アラームが鳴り響く!慌てて下の方に目を向けると、先程まで止まっていた床が猛スピードでこちらに上がって来ていた!

 

 

「ちょwwwwwww2段式罠キタコレwwwwwwww」

 

 

 なんつー罠、安心しきったところを狙うとは卑怯なり!

 ・・・・う~ん、でも罠ってよりかは只単に制御装置が壊れてるだけか?

 

 

「ってそんな場合じゃ無かったッスーーーーーー!!!」

 

 

 とにかく迫る床板から逃げる為、俺は全速で飛びあがった。

 床板の速度はかなり早く、時速は500kmに到達しそうである。

 流石にVFでもあの速さで激突されたらショックアブソーバーで相殺しきれない。

 =VFの中身でノシイカ完成!である。

 

 

「のぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 

 

 本当にもう泣きそうです。ぐんぐん床板から離れるけど絶対このままじゃ終わらない筈。

 だってコレがエレベーターであるなら、絶対何処かで行き止まりになるからだ。

 そして数分してやっぱり行き止まりになる。

 

 

「出っ張り!出っ張り!あった!」

 

 

 慌てて溝を探し、出っ張っている部分を押す。

 

 

「ちょ!反応しない!?」

 

 

 無情にもうんともすんとも反応がないんですけどーーー!?

 つーか床板が加速したぁぁぁぁぁ!!

 

 

「い、いやぁぁぁぁ!!!死にたくねぇッスゥゥゥゥゥッ!!開け!開けよぉぉぉ!!」

 

 

 ノシイカになるのはいやぁァァァ!!ていうか何このインディ!?

 こんな遺跡探検はもうこりごりッスーーーーー!!!

 マジでシニタクナイ!!!!

 

 

≪ズ、ズズズ―――≫

 

「は!ひらいたっ!」

 

 

 天に祈りが通じたのか、はたまた接触が悪かっただけなのか。

 出っ張りの横の壁がゆっくりと開いて行くのを見て、俺は機体をその開いたスキマに滑り込ませた。

 

 その直後、背後でドゴーンと激しい震動が襲う。

 あの高速で迫っていた床板が天井部分と激突したのだ。

 正直もう嫌、なにこのトラップ遺跡?危うく死ぬところだったんですけど?

いや実はトラップじゃないのかもしれないけど・・・。

 

 

「こ、こあかったッス~」

 

≪ギギ・・・・ズズーン≫

 

「あ!・・・閉まっちゃったッス」

 

 

 安堵のため息をついた瞬間、少しだけ開いていた扉が完全に閉じてしまった。

 壊れた・・・・んじゃなくて、エネルギーが通っていないらしい。

 材質がこの遺跡と同じ材質だから破壊してってのも無理みたい。

 

 

「あー、詰んだ?」

 

 

 見ればここはエレベーター前のエントランスのようにも見える。

 機体がおけるちゃっおけるが、非常に狭い為コレ以上VFで行くのは無理だ。

 でもまだ通路が続いているらしい。目の前には人が通れそうな程度の通路が見える。

 

 

「う~ん・・・どうしよう?」

 

 

 ついついそう呟きつつもマジでどうするっぺ?

 戻る道は無い、あるのは目の前に進む道のみである。

 調べに行くか?う~ん、VFからビーコン出しておけば最悪ココまでは戻れるだろうし。

 

 

「・・・・・よし、止まっててもしょうがないから行くべ」

 

 

 そう意気込んで俺はVFを停止させて、操縦席を開けようと―――

 

≪ぐ~~~~きゅるるるる・・・・≫

 

――――開けようと思ったが、その前に腹ごしらえをする事にしたぜ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし!今度こそ準備完了ッス!」

 

 

 サバイバルキットに入っていた合成高カロリーレーションを食べた後、ヘルメットをかぶり直し俺は機体から飛びだした。サバイバルキットが入ったバックパックを背負い、腰には折りたたみバズをつけ、手にはVFに乗せてあったライフル型メーザーブラスターを持っている。

 

 

「・・・・・・クリア」

 

 

 なんとなく言って見たかった。特に後悔はしていない。

 ただ誰も聞いていないとなると、非常に寂しい気分になる。

 コレは早いところ皆と合流しなければなるまいて・・・。

 

 

「・・・・あ、でも、普通遭難とかしたら、あんまり動いちゃいけないんだっけ?」

 

 

 真っ直ぐに続く通路をあるていると、ふとそんな考えが浮かぶ。

 ・・・・・やべぇじゃん。メッチャ動いて置くまで来てんじゃん。

 あはは、コレでこの先に何も無かったら完全に俺死んだなぁ~~~。

 

 

***

 

 

 しばらく歩くとまた壁が見えて来た。どうやらコレ隔壁みたいなもんらしいな。

 横にはスイッチらしき物が付いた台座があるが、触れてもうんともすんとも言わない。

 う~ン困った。誰かに相談したいが今は俺一人。

 この際教祖様でも良いか。

 

 

(おーい、教祖様~)

 

――――よんだかい☆

 

 

うわ、本当に来たよ。

 

 

(なんか道が塞がっちゃってて通れないんですよ。どうすればいいと思いますか?)

 

――――あっはははは☆そんなの簡単じゃないか☆ハンバーガー半分程度の難しささぁ☆

 

(え?どうすればいいんですか?)

 

――――らんらん、る~☆

 

(いや、答えろや)

 

――――ヒントはキミがここまで来る時にしていた事さ☆それじゃ、ば~い!

 

(ちょ!?教祖様!俺はヒントが欲しいじゃんなくて答えが欲しいッス!おい教祖!)

 

――――ピー、現在この神託にはデムパが届いておりません。

 

 

 デムパが切れやがった。つーか脳内教祖がマジで応えるとかヤバくね?

 オレって寂しくなると妄想しちゃうんだろうか?とりあえずシェイク飲みたい。

 

 

「う~ん、俺がここに来るまでにしてきたこと?」

 

 

 そんなもん機体を飛ばして、通路を飛んで、遺跡内部を覗きまくっただけ。

 ・・・・・って、ああそうか。確かにソレはまだしてないか。

 

 

「え~と、溝はっと・・・あったッス」

 

 

 今までココに来るまでにしてきたこと、ソレは溝の集中した出っ張りに触れること。

 見ればココの壁にも溝が走っている。ソレを辿るとスイッチがある台座の反対側に出っ張りがあった。

 

 

「・・・・よし」

 

 

 生唾を飲み込みつつ、出っ張りに触れようとする俺。

 さっき凄まじいトラップみたいなのがあったから慎重にもなるさ。

 そして俺の手が、出っ張りに触れるまで後、10cm、5cm、1cm――――

 

 

≪ゴガン、ガギン・・・・ズズズズズズ―――――≫

 

「・・・・開いたよ。スゲェな脳内教祖様」

 

 

 ありがとう教祖様、まさかあんたが役に立つとは思わなかった。

 だけど幾らデムパが来たからって、出演はコレだけにしてくれよ?

 

 

――――はは、勿論さぁ~☆

 

 

 てな訳でまた奥へと続く通路・・・では無く、今度は普通に部屋だった。

 いや部屋って言ってもユピテルのブリッジの5倍程度の広さだけどさ。

 それでも今まで極端に広い通路とか空間ばっかりだったからせまく感じるぜ。

 

 

「うわ、ここも埃がスゲェッス」

 

 

 ここも最初に入った減圧室の様に埃だらけだった。

 俺が入ってきた場所はなんか高台の様になっており、イスの様な突起が一つある。

 その横には下に降りる階段らしき物が両サイドに付いており、下へと降りられる。

 

 下にはなんかテーブルのような物が真ん中にあり、そこに人が座れるようになっているかの様な穴が沢山空いているのが見えた。埃が舞うので下には降りたくは無いが、どうも人型生物が使っていた様な痕跡は残っている。

 

 教授に見せたら心臓止まるんじゃないか?

目を爛々と輝かせて“考古学会における偉大な発見だヨ”とか言いそうだぜ。

 そして嬉しさのあまり心停止するんですね?割と洒落にならない。

 

 

「う~ん、出口は無しッスか・・・困った」

 

 

ミョルニルアーマーに付いているライトが部屋を照らすが、ココから出る通路がない。

 見た感じ出入り口は俺が入ってきた扉だけである。

 もしかしたら見えない位置に何かあるのかもしれないが、流石に疲れた。

 

 ちょっと疲れたので、丁度高台の上にあるイスみたいな出っ張りに腰かけた。

 はぁ、ココまできて出口が見つからないとか、詰んだのかな・・・。

 まぁもしかしたら通路に見落としがあったかもしれない。

 途中で分岐していた所もあったしな、次はそっちを見てみよう。

 

 

「あーもう、疲れたッスー」

 

 

 正直ヘルメットを脱ぎ棄てて思いっきり呼吸したい気分だ。

 だがこんな埃っぽい部屋でんなことしたら最後、ハウスダストよりひどい事になる。

 なんか丁度腕を乗せるのにちょうどいいテーブルみたいな所に腕を組んで体重を傾けた。

 

 

≪――――――――ヴン―――――――――≫

 

 

 あれ?なんか音しなかったか?

そう思い顔を上げると、なんか部屋の中央に空間パネルが浮かんでます。

あら?俺なんか触ったのか?そう思い画面を見ると何やら色んな言語が走って行く。

・・・・・なんだろう?このパソコンが立ち上がる時みたいな感じ?

 

 じーっと流れていく言語を眺めること5分、言語の流れが止まった。

 緑色の画面・・・なんか本当にパソコンの起動画面に似ている。

 

 

「はぁ、どうせ起動するんだったら映画でも見せて欲しいもんスね・・・・ん?」

 

 

 ふと、目の前の画面以外に何やら明かりがあるらしく辺りが明るい。

 周りを見渡すが画面以外に明かりは無いんだけど・・・・。

 すこししてその明りは自分の腰にあるポーチから出ている事に気がついた。

 

 

「??・・・・え?!ええ!!??」

 

 

 何ぞと思い、ポーチを開けてみると、そこには何時ぞやのエピタフが光りを放っていた。

 だがその光りは以前の様な激しい光りとは違い、何処か包み込むような優しい光だった。

 アレかな?遺跡から出たモノだから、こういった生きている遺跡に来ると活性化するのかも知れない。

 

 はぁ、でもどうせ活性化するんだったら―――――

 

 

「この遺跡から出られたら最高何だがね・・・・・」

 

≪――――ヴヴヴヴヴヴヴヴ≫

 

「あ、あれ?この振動・・・なんか嫌な予k―――≪ビカッ!≫うわ!まぶし!?」

 

 

 だがそう思った瞬間、エピタフがはじけるような光りを発した。

 あまりのまぶしさにヘルメットの遮光機能が働き前が見えなくなる。

 そして突然経っていられない様な振動が俺を襲った。

 イスが揺れている?!いや、遺跡全体が振動しているんだ!

 

 

「な、なにが―――」

 

≪ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴ≫

 

 

 俺がそう言葉を発するが早いか振動が最大になり、急激な重力が発生する。

 低重力下だった所に、急に重力が発生した事にも驚いたが、振動に揺さぶられる俺はそんな余裕は無かった。

 

 

(あばばばばばばば―――不味い、連続する縦揺れで・・・・吐きそうウプ)

 

 

 こみ上げる吐き気と戦うので精いっぱいだったんだぜ?

 いやいや考えてみて欲しい、俺はいまミョルニルアーマーという宇宙服を着ている。

 つまり完全に外と遮断されてるんだぜ?そんな中ゲロしようものなら・・・わかるでしょ?

 

 

≪ゴゴゴゴゴゴゴゴ――――≫

 

(ど、どうでもいいから―――はやく振動止まれっ!ヤバい!)

 

 

 もはや喋ると戻しそうなので、心の中で喋るが願いは伝わらず振動は激しさを増す。

 遠くを見れば乗り物酔いの様なモノは楽になると言うが、ヘルメットが遮光している為外が見えない。

 

 

(ら、らめぇぇぇぇぇぇぇぇぇ)

 

 

 そして俺は・・・・・もう飛んでも良いとか思った。

 その瞬間振動が止まり、今度はイスに抑えつけられる程の重力に襲われる。

 

 

 

 

 

この時は知らなかったんだ。

 

 

 

まさか、この遺跡がエピタフで活性化して復活していたなんて・・・。

 

 

 

 そして、この遺跡自体が実は宇宙船で会ったなんて・・・・。

 

 

 

 活性化したエピタフの所為で、長き眠りから目覚めただなんて――――

 

 

 

(うぷ・・・・・もう、どうにでもなれってんだ)

 

 

 

 顔面さっき喰ったモノと遺跡が混ざった物で窒息しかけている俺にはどうでもいい事だった。 

 

 

 いや、本当に誰かボスケテ・・・・。

 

 

 

 


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