【旧バージョン】QOLのさらし場所   作:QOL

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残された文章のままなので旧メインタイトルも残っておりますが気にしないでください。


旧版【妄想戦記】多分四話から八話

 

「やりすぎ(じゃない!?)」

 

 

 

 

 

―――転生か?第4話―――

 

 

 

 

 

やぁみんな元気かい?僕はフェン、ピッチピチの5歳児だよ!

ごめん、自重するからそんな可愛そうな子供見る目で見ないでください。マジにへこみます……。

 

さて、何の因果かこの世界に来ちまった俺。

最近ではもっぱら新しく相棒となったヴィズに新しい魔法プログラムするかたわら、

新機能を取り付けたり、追加兵装のストレージ作ってます。

後は、母上と行う地獄の模擬戦をヴィズと一緒に励んでました。

 

――――あ、ちなみにヴィズって云うのは俺が作り上げたデバイス、ヴィーザフのAIの事ね?

言い辛いから略称にしたんだ。何?安直?いいんだよ俺が言いやすければさ。

 

ソレと現在の俺の魔導師ランク何だけど……気が付けば既に陸戦AAA+でマジチートです!

魔力量ならSSランク超えてるってどうよ?レアスキルも付いてるしね。

空戦ができなくて誘導制御型魔法が全然出来ないけど、それ以外なら母上に迫る勢いだぜ!!

 

―――いまだ勝てないけど…ハァ。

 

……………………

 

…………………

 

………………

 

さて、今日母上に有無を言わさず連れてこられたのは、母上の部隊の訓練している施設だ。

門で母上が何か許可証の様なモノを見せて一発で入る事が出来た。

 

一応突っ込むけどココ軍事施設だよな?なんで家族とは言えボディチャックしないの?

危機管理に問題無く無い?まぁ面倒臭くなくていいけどさ。

 

まぁそんなことがあったが、今は母上の後について施設内を移動している。

なんせ始めて来たところだからな。金魚のフンをしないと迷子になっちゃうしね。

そんなこんなでPXに連れてこられたんだが――――――

 

「敬礼ッ!」

≪―――ザッ!≫

 

―――――母上がPXに入った事に気が付いた隊員の一人が号令をかけた途端、屈強の男たちが一糸乱れぬ動作で一斉に敬礼を行った。

は、迫力がすげぇ。驚いて心臓が飛び出るかと思ったぜ……顔には出ないけどな。

 

「楽にしろ、今日の私は非番だ。いちいち敬礼は必要ない」

≪―――ホッ≫

おお、いきなり安堵の空気がッ!?――――つーかどんだけ恐れられてんだウチの母上は?

その後はまぁやや緊張している様だったが、隊員たちも各々食事に戻ったりゲームに興じたりしている。

そんな中恐らく母上の副官と思われる人が、俺の方にちらちら視線を向けながら母上と何か話している。

俺?目立たないように母上の後ろで黙って突っ立てたよ?だってこんなとこで目立ちたくないしね。

まぁそう言う訳で置物の如く立っていただけの筈……だったんだが――――――

 

『フェンちゃん♪準備良い?』

「………問題無し…です」

 

――――――何故か気が付けば、模擬戦用ホログラム環境シミュレーターにいます。

 

まぁアレだ、本編のストライカーズに出て来た模擬戦用のアレのちょい荒いヤツみたいな感じ?

実体が無いから別モンだけどね…しかし母上も酔狂な人だな。

見学だけかと思ってたんだが、母上フェンちゃんがんばってね!とか言って素敵な笑みを浮かべながら、いきなり模擬戦に参加させやがった。

あの時副官と話していたのはコレの為だったらしい。

 

しかも部隊のみなさん対俺………幾らなんでも戦力違いすぎないか?いやマジでビビったよ?

だって相手は現職の魔導師さん、しかも見た目叩き上げの鬼軍曹って感じのおっさんだ。

対する俺は最近やっとこさデバイスを扱えるようになったペーペーの幼児ですぜ?

 

ほら相手も戸惑ってる……ってあれ?何でデバイス向けて臨戦態勢?

えっ!?【ラーダー隊長には逆らえません!ガンホーの精神です!!嬢ちゃん覚悟してくれ】

…だって?だ・か・ら!お前はどこの海兵隊だ!!大体俺は男だ!!女顔だけど男なんだッ!!

 

 

「…ヴィズ」

『Yes,マスター…セットアップ』

 

とりあえず俺もデバイスを起動して装甲を展開、シミュレーター室に白いヴァンツァーが顕現した。

 

「レールブラスター………フォックス2」

『ファイア』

 

―――で、手加減する余裕もないから(怖かったんだよぅ)手に持ったヴィズを至近距離で乱射しちゃった。

 

 

――――ヴィズには基本兵装として同名のマシンガン型の兵装が取り付けてある。

コレには新しくつけた魔力チェンバーのカートリッジ機能により、俺の魔力を薬室内で圧縮して高圧魔力弾を形成。

その魔力弾に更に処理を施して障壁を突破できるように多重弾殻弾が使えるように術式を組むことに成功したのだ。

 

更に俺は魔力弾の誘導が出来ない為、だったら弾の初速を高められるだけ高めるればいいんじゃない?と考えた。

基本はフォトンバレットだが術式プログラムをやや変更し、初速を高められるだけ高めたが、希望よか遅かったので、

薬室内で魔力を爆発させ装薬にし、さらにバレル部分に電位差を発生させ磁場の相互作用を作りだす事でレールガン化

させることに成功したのだ……ある意味すごくね?

 

まぁ何故かその際に、魔力弾は電気抵抗である程度プラズマ化するため、属性変換もついたのは予想外だった。

しかもだ、初速が毎秒3,400km位になって、照準もヘルメット内のHUDに表示されるから、余程の事がない限りはずさない。

 

更に、この間やっと試作品から正式なモノとして完成した、箱型マガジン魔力チェンバーMTS-40。

それにに魔力をあらかじめチャージしておくことで、すぐに発射+連射可能。

威力も一発当たりB+からA-のあたりの弾を連射すっから…うん、普通は耐えられないし弾足が早いから避けられない。

 

――――白い悪魔さんに効くかはしらんが…。

あ、ちなみに母上には避けられたよ?何でも銃口を見れば予測できるとか……ホントに人間かあんた?

 

 

さて話を戻そう。俺はコイツを使い、始めての他人との模擬線で緊張したのか、つい連射しちまったんだけど……。

至近距離だったから、俺の相手をした魔導師のラウンドシールドを貫通して、おっちゃんをノックダウンさせちまった。

 

―――始まって1分もたってない…非殺傷設定じゃなかったら相手ミンチだぞ?くわばらくわばら…

 

でもさすがに鍛えてるだけあって、おっちゃんはすぐに気がついた。

だけど、母上から後で特別訓練入れてやるって言われて青ざめてた。つーかマジ泣きしてた。

まぁアノ特別訓練は人生観変わるモンなぁ~、なんかご愁傷様。

 

そんでこれで終わりかと思った………だがソレは甘かった。

母上、今度は部隊全員vs俺…とか言って、俺が無口なのをいい事に了承も取らずいきなり始めちまいやがったのだ!

 

『負けたら特別訓練…』とブツブツ言ってる筋骨隆々の男たちが迫ってくるんだぜ?ありゃ恐怖以外の何物でもないよ。

仕方ないからヴィズの機能“ローラーダッシュ”で連中から一気に後退して距離を引き離し、

俺が作った兵装デバイスの一つM82A1を起動させた。

この名前…わかる人にはわかるが…実はこれ俺の世界に実在する対物狙撃銃のバレットM82をモデルにしている。

 

―――――なんかさ、小さい子供がおっきい獲物持ってる絵って映えない?

 

口径は本物と同じ12,7mm、こだわりってやつだね!ちなみに魔力カートリッジ装弾数はちょっとお得な14+1発。(本物は10+1発)

ヴィズと同じく魔力弾を使用し、口径がデカイ分高威力でちょっとした砲撃並み、一般のバリアジャケット位なら掠っただけでも破壊可能さ!

 

その分燃費が悪いけど…なんせ一発当たりの魔力消費がヴィズの2,5発分に相当するからね…。

何かに当たると、あたり巻き込んで爆発するけど、長期戦に向かないのが悩みかな。

 

「M82A1起動……術式はレールブラスター」

『了解』

 

んでこのM82A1片手に連中から十分距離をとったところで、追っかけてきた連中に目がけて―――

 

「フォックス3」

『ファイア』

≪ドウッドウッドウッ――――――≫

 

―――――遮蔽物に隠れながら、15発全部ぶっ放した!

 

 

「え?攻撃?ぐわぁッ!」

「散開…散開しろッ!このままじゃ全めt」

≪――――ドドドドドーーーーんッ!!!!≫

「「「ギャーッ!!」」」

 

 

流石に遠距離から高威力の狙撃を受けるとは予想していなかったらしく、相手がガキだからと油断してたのもあり、面白いくらいに弾に当たる。

マガジンの魔力使いきったけど、交換する暇もないと判断した俺は、すぐにヴィズにエリアサーチをおこなってもらった。

 

――――そしたら部隊の半分近くが魔力爆発に巻き込まれてて気絶してやがんの!びっくらこいたよ?!

 

で、その結果……残りの連中を怒らせちまった。

 

「喰らえッ!怒りのバーストショットッ!!」

 

―――近づくのは危険と判断したヤツが砲撃魔法を撃ってきたり。

 

「リングバインドッ!」

 

―――逆に近づいてきてバインドで捕まえようとしてくるヤツがいた。

 

「貫けッ!ストライクブレードッ!!」

 

子供相手に本気で魔力斬撃を繰り出してきたヤツも居た……おまけに連携してくんの。

正直、大人げねぇぇぇぇ!と思ったけど、何とか全員ノしたところで模擬戦は終わった。

 

 

――――とりあえず、今回ので学んだのは近距離の武装が無いとキツイって事。何度か懐に入り込まれた時は本気で焦った。

 

ヴィズが張るプロテクションが、幾重にも重ねられている多層構造障壁だったから、

相手の魔力刃防げたけど、只のプロテクションとかだったら普通に抜かれてた。

8層ある障壁の内、第3層まで刃が届いたからな…さすがは現役ってとこか。

 

――――銃だと剣の斬撃は防げないし…此方としても近接戦の対抗手段として近距離兵装の追加を考えさせられるいい機会だった。

 

「お疲れ様フェンちゃん、でも驚いたわ。まさかウチの部隊に勝っちゃうなんて…」

「ギリギリ…だったし…手加減されてたから…」

 

――――流石に母上もここまで出来るとは思ってなかったのか驚いてた。

せいぜい、ニ三人倒す程度だと思ったんだろう、予想を裏切ってわるいね。

 

「そうねぇ、でも私手加減する様には命令して無かったんだけど……あとで全員特別訓練ね♪」

「「「「N,Nooooo-----!!!」」」」

 

で、5歳児に倒された部隊の人たちは、全員特訓と言う名の地獄に旅立って行った……BGMはドナドナだ。

 

そして、俺はこの日からちょくちょくこの人たちの所に行くことになった。

実戦積んでる人の動きは参考になるしね。

 

―――――かくして俺は母上の部隊のマスコットになるのでありました。

 

「これで……いいのかな?」

『私はマスターについてきます。』

 

 

ありがとよ…ヴィズ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「うそ…だろ…」

 

 

 

―――転生か?第5話―――

 

 

 

やぁ俺は今、平穏は長続きしないことを噛み締めてるよ…。

アレから2年たって、俺が7歳になった時だった。戦争が起こった。U,S,Nから海を挟んだ位置にあるO,C,Uが、海の真ん中にある大きな火山島の所有権を巡って勃発したらしく、相手の国がとった軍事的挑発の制裁を行ったら、向こうが国境を越えてこっちの街をいくつか占領したらしい。

同時多発的に国境を越えて攻める電撃戦だったらしく、随分と前から準備を進めていたらしいOCUは一気に国境を越えて侵攻した。戦線は拡大し食い止めるUSN側が必死の抵抗を見せた事で、現在両陣営は膠着状態となり両国とも現在本国からの援軍の準備を進めているんだそうな。

 たまたまテレビをつけたところ、無名のカメラマンが撮影したという件の火山島での先端が開かれた映像が公開され、都市にある高層ビル群に一発の空対地ミサイルが突っ込み、あれよあれよという内に瓦礫と粉じんとなって崩れ落ちる光景が映っていた。

 

――うん、コレ聞いた時点で俺は思ったね。フ○ント・ミッションだってな。

 

島の名前がもろハフマン島だった。人型機動兵器ヴァンツァーが出てこないだけで状況ほぼ同じだし、俺のデバイスの名前からして何らかの意図を感じるのは気のせいか?

ちなみにこの戦争の名前は第一次ハフマン紛争なんだそうで…やっぱりな。

 

 

―――でだみんな…俺の両親軍属だって覚えてるか?

 

 

ハイそうです。お察しの通り軍の上級士官である我が両親は、先月から前線へと赴任していきました。

つまり我が家族は、戦争の所為で離ればなれとなったって訳だ。

前世で良くテレビとかで、紛争地帯の実況とか見てたから、今回もその程度でしかないだろうって高括ってた。

 

でもあれだね…家族が戦争に行ってしまうってのは、ココまで不安なモノなんだな。

母上の部隊の連中も、前線に行っちまったそうだし、あの濃いメンツが見れないのも寂しい。

まぁ父上はともかく、母上が落とされるところは想像がつかないけど……でも心配だ。

 

 

―――――主に俺の命がなッ!!なんでかって?決まってるだろう?俺も戦線に送られる可能性があるからだよッ!冗談抜きでなッ!!

 

 

最近、風の噂で軍の高官の子供たちが、次々と軍学校へ突っ込まれていると聞いた。

良くも悪くも、この世界も魔法第一主義が蔓延していたりする……まぁ解るだろ?

 

要するに資質のある子供は、年齢を問わず戦争させる為に教育を施されて前線に送られる可能性があるって訳ッ!

おまけに軍の高官の子供たちならば、プロパガンダにもなるんだからな。一石二鳥ってわけだ。

 

そして最近、俺の家の近辺において、不審な人物の反応をヴィズの高感度センサーが探知したりした。

―――――ヴィズには父上の部屋にあったかなり高精度なセンサーを搭載したから、探知出来たけど普通のデバイスなら探知できないくらいの隠ぺいの上手さだった。

 

ちなみにフリーの魔導師でココまで隠ぺいできる人はそうはいない。

それに俺にフリーの魔導師が目を付ける理由も無い……で、導かれる答えは……。

――――軍の人間――――と、言う訳だ。

 

 

うん、間違いなく俺狙われているね。

 

 

コレはヤバい事になるかもしれないっていう嫌な予感がしたから、あいた時間は全て自主訓練にあてた。

というか十中八苦、俺は多分軍にしょっ引かれるだろうから、かなり鬼気迫るくらいのレベルでやった。

 

魔力の成長度合いはまだまだ延びるはずだけど、手っ取り早く最大値を上げる為に、気絶するギリギリまで魔力行使した。

魔力を多く含むと言われる食物を食い、逆に呑まず食わずで、真っ暗な洞窟をさまよった。

 

正直、数撃ちゃ当たる方式で本当に上がるか微妙だったが、洞窟での臨死体感で結構最大値は増えた。

やっぱ死を擬似的に体感するだけでも違うのだろう…死に対する恐れが薄くなり、精神の揺らぎが少なくなる。

生き残る為だと自分に言い聞かせココまでやったけど……ホント今まで良く発狂しなかったな。

 

下手すら廃人だってのになぁ…まぁ死にたくは無かったから仕方ないんだけどさ……発狂してた方が良かったか?

精神患者認定されれば表向き戦場に放り込まれることも……いや案外捨て駒にされたりして……。

それは洒落にならんのぅ……。

 

 

―――――まぁ他にも訓練では、魔力制御を上げる為に魔力スフィアを造れるだけ造ったりした。

 

 

少しは進歩があったらしく、今んとこ10機前後を身体の周りに浮かべて置くの事が出来る様にはなった。

まぁ固定砲台でしかないんだけどな…でもそれを地雷みたいに遠隔で設置とか出来るようになったし、ソレの起動も遠距離で出来る。

遠隔誘導こそ出来ないけど、それなりに面白い事は出来そうだ―――でもなぁ、使って見たかったな……ファン○ル。

 

後は…そうだな…ヴィズの強化も行ったな。新しいデバイスも何個か作り、出来が良いのはヴィズに組み込んだりしたんだ。

それと格納領域を増設したり、ヴィズ用の箱型マガジン魔力チェンバーも量産し、その他スペア部品も幾つか作り上げた。

ヴィズの人格AIにも戦略シミュレーションが組めるよう、システムを構築し直したし、新しく魔法も登録した。

 

どれだけ怖がりなんだと思うかも知れないけど、殺傷設定の魔法ってのは冗談抜きで人間を消し飛ばせるからな。

用意しておく事に越したことは無いって……うん。

 

――――後、驚いた事があった、実はこの戦争に時空管理局が参戦しているらしい。つーか居たのね管理局…。

 

母上の部隊が前線に出る前に、母上の副官さんから聞いた話何だが、何でも以前から次元犯罪者を追ってこの世界にまで来ていたらしい。

――――で、近年その犯罪組織が相手の国に潜んで軍の研究に協力していることがわかったらしく、それを捕らえる為にこっちに協力を申し出た…らしい。

 

人伝に聞いた事だったから正確なところは分らんが、多分概ねあってる。

あいつら正義感の塊みたいな連中だからな。敵の敵は味方ってか?

まぁ、きっといい人材がいたらスカウトする気とかもあるんだろうけどな…万年人手不足だし。

 

しっかし管理局ねぇ~、この世界が管理外世界の筈なのにデバイスがあったのはそう言う訳か。

次元犯罪者がデバイスや魔法のノウハウを広めたのね…でそれに対抗する為に管理局も来た。

でもまぁアチラさんとしても、火種は欲しく無いんだろう。表向き活動していないのは…。

まぁこの世界火種だらけだしね。

 

そう言えば、今は原作の前なんだろうか?後なんだろうか?

デバイスや魔法の感じから、原作よか未来だとは考えられねェ。

かと言ってSSとかにあった古代ベルカ時代という訳でもないし。

う~ん…解らん。

 

こういった場合原作に介入したくないと言っても介入させられるって言うのが定石だし、介入しようとしても空回りするのもデフォだよなぁ。

ならば、俺が出来る事はただ一つッ!!!――――――流れに身を任せてみよう。

 

え?何かしろ?嫌だぜそんなん。面倒臭い。まぁ二度目の人生楽しむ為には手段は選ばないけどね。

どうせ遅かれ早かれ、戦争に巻き込まれる事は目に見えているし、巻き込まれなかったならソレで良い。

とりあえず生きれれば良いのだ。幸いなことに母上から生きる為の技術は全て習得させてもらったしな。

――――――とりあえず覚悟だけは決めておこう…いろいろと。

 

……………………

 

…………………

 

………………

 

数週間後、ヴィズの強化もひと段落させ、取り合えず魔法の訓練に精を出していたその日。

 

――――≪ピンポーン≫

『マスター…“例”のお客さんです』

「ん…解った」

『ちなみに“何時も来ていたヒト”でもあるみたいですよ?』

「そうか…」

 

ついに、運命の時が動き出す……なんてな。

 

≪ガチャ…≫

「どちら様…ですか?」

「こんにちは、ココはラーダー夫妻の家で良いかな?」

「はい、そうですが…アナタは…?」

「あ、紹介が遅れたね?USN軍人事部所属のエリカ・タスト少尉です。よろしくね?」

「はい…どうも」

 

玄関に立っていたのは…人懐こそうな笑みを浮かべ、いかにも子供が好きですと言う仮面をかぶった女性…。

彼女は俺を見ながら、自称USN軍の人事部に所属するエリカ少尉だと言ってきた。

 

―――だが俺は知っている。この一カ月程、この近辺を嗅ぎ廻っていたのは彼女であると言う事を…。

なんせヴィズがとらえた魔力パターンと完璧に一致するからな……少し位隠せよ。

 

「……で、御用件は?」

「うーん、とりあえず家に入れて貰っても良いかな?ココじゃ喋れない事だし」

「知らない人は…家には上げられないのです…が?」

「でもねぇ?ここじゃ話せないのよ」

 

まるで駄々っ子をあやすかのような口ぶり…うあ、ウゼー。

それにこのままじゃ話が進まんなぁ……しゃーない。

 

「ふぅ…とりあえず…客間にどうぞ…両親は前線に居るので留守ですが…」

「ええ、ありがと♪」

 

――――勝手知ったる家の如く、普通に客間に向かうエリカ少尉。う~ん幾らなんでも図々しいだろソレ、まさか素なのか?

 

 

 

≪カチャ――≫

「とりあえず…お茶をどうぞ…」

「あら、気が効くのね?ありがとう」

 

ホントはブブ漬け出したいんだけどなッ!この世界じゃ通じないだろうけど…。

しばらくお互いに無言が続いた後、俺はとりあえず要件を聞く事にする。

まぁ…大体予想はついてるんだけどな。

 

「―――――で、本題は何です」

「あら、いい茶葉…ん?あ、そうそう要件ね?じゃあハイこれ♪」

 

彼女はそう言うと、まるで回覧板を渡すかのような手軽さで、書類を渡してきた。

中身は――――

 

「―――非常徴兵令…特別召集令状…ですか?」

「ええそうよ?君は国の為に闘う魔導師に選ばれたのよ?」

「選ばれた…ね」

 

ふーん、そう…そうやってジワジワと自分からやるよう仕向ける訳なんだ…悪どいねぇ。

 

「そう言う事、まぁ2~3日くらい経った後に出せばいいからね?良く考え「いいえ…今書きますよ?」……あら、どうして?」

「どうせ、この特別召集令状…拒否権は無いでしょ?この間から…監視してたエリカさん」

「ふぅん、バレていたの?」

「解らいでか…というか…ワザとやっているでしょ?」

 

この書類は普通の召集令状とは違う……特別製の召集令状だ。

コレが出たら最後、こちらに拒否権なんてモノは存在せず、もし拒否しても強制的に連れて行くだけの癖に…この狸が。

 

俺がその旨を説明すると、途端に彼女の表情が子供好きから軍人のモノへと変化していく。

ふーん、さっきのはやっぱり演技か……てことは、こっちが素だな?

 

「ワザと…ね。ところでアナタはいつ頃から気が付いていたの?監視されていたのを?」

「一カ月程前…ですかね?まさか監視していた本人が来るとは…こちらとしても予想外でしたが…」

「随分と鋭いのね?」

「親に…仕込まれましたから…」

 

正確にはヴィズの高感度センサーのお陰だがな。

 

「ふふ、探知能力も優秀、魔力も高い…あとは駆け引きを覚えればそれなりに優秀な士官になれるわね。合ー格よ?」

「合格…?」

「ええ合格、そこまで鋭い子なんて今までそうはいなかった。私がそう報告するからアナタは短期教育プログラムを終えたら尉官待遇で赴任出来る」

 

わーお、流石魔法世界。魔法第一主義万歳様々だね。

つまりコレはテストの一環だった訳か、監視していた存在を見抜ければ、特に優秀な個体として評価し、余計な手間を省く。

確かに…これは随分と効率のいい事で―――――

 

「それじゃあ、早速行きましょうか?フェン・ラーダー君?」

「はぁ…お早いですね…」

「戦線は緊迫している。こんなことで本来は時間をつぶせないのよ。それに解っているなら準備も終わっているんでしょ?」

 

―――わぉ、鋭いこって…というか監視してたから気付いてたんだろ?

 

「アイマム、10分ください」

「8分でお願い」

「厳しい事…で」

 

荷物を取りに二階へあがる…ふぅ、とうとう来ちまった。

両親が両親だし、俺の魔導師ランクもデータで持っているだろうから避けられない事かと思ってたけど……。

あーーーーーー死にたくねェーよー。

 

『マスター』

「ん?何?」

『何故そこまで抵抗も無しに従っているのですか?』

「ん、そうね……逆らっても意味が無い……からかな?」

 

なんせ命令してるのが国家だからな、一個人が逆らえるわけがない。

 

『マスターは常日頃死にたくないとか戦争は嫌とおっしゃっていたじゃないですか?嫌なら逃げれば良いのでは?』

「そうしたいのも…山々なんだけど…ね」

 

泡良く逃げたとしても、この国にいる以上絶対に捕まるし、海外になんて逃げるルートなんて戦争が始まった段階でアウトだ。

それに国家の意志に背いたなんて判断されたら、この国の暗~い部分に連れてかれる可能性もあるしね。

それも事故死に見せかけて……とかさ。

 

「――――流石に…そう言うのは遠慮したい」

 

それならば、普通に国に従順なフリをして、戦線に行った方がずっとマシだ。

戦いなら、これまでの経験で何とかなる可能性はある。

だが、もし国家に背いたとかで暗殺やらに処されるとしたら、俺にソレを防ぐ手立てなんて無い。

 

『しかし…戦争に行けば…』

「うん…確実に相手を…殺す事になる…だろうね」

 

――――覚悟はしている……訳が無い。俺は元は平和な国日本生まれだぞ?人を殺す覚悟なんて……ムリだ。

だがそれでもやらなきゃならん……生き残る為ならな。

 

「それに…断ると両親に迷惑がかかる…とっくに逃げ場なんて無い…」

『……私はデバイスです。ですので上手い言葉が出てきません…でも、幾らなんでもコレは…』

「言うな…ヴィズ」

『……了解』

 

ヴィズはそう言うと黙りこんでしまった―――随分と優しい子に育ってくれたようだな。 

ふふ、しかし戦争か…戦争なんて対岸の火事位にしか思って無かったのに…な。

まさか自分がそれに行く事になるなんて夢にも思わなかったぜ。

 

しかも転生したリリカルな魔法がある世界でなんてな……笑っちまうぜ。

―――――精々死なないように……敵は倒すしかない……か。

厄介な世界に転生しちまったなぁ…魔法使えると浮かれてた前の自分を叱りたいぜ。

 

 

俺はやるせない思いのまま、準備はしていた荷物を手に取り、そのまま我が家を後にした。

 

 

まさか、もう二度とこの家に戻れなくなるなんて……このときの俺は知るよしも無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「貴様の口から垂れる言葉の最初と最後にサーをつけろー」

 

 

 

―――――転生か?第5,5話―――――-

 

 

 

 

いようみんな元気か?俺は今――――

 

「どうしたクソ虫どもがッ!自分よりもはるかに小さなガキに負けやがってッ!!!それでも兵士かッ!!!」

「「「「サー!申し訳ありませんでした!サー!」」」」

「全員もう10周追加だッ!あと声が小さいぞこのなんじゃく者どもめッ!ジジイのフ○○クの方がまだ声がでかいぞッ!」

「「「「サーイェッサーッ!!!」」」」

 

――――フリーダム基地軍学校にて鬼軍曹からシバかれているよ。まぁ最も母上程じゃ無いから物足りない位なんだがな。

 

「走れぇッ!!そして声をあげて歌えッ!!」

「「「「~♪♪」」」」

 

………この走りながらエロ歌を歌うって言うのは、軍隊でのセオリーなんだろうか?

正直、子供の教育にはすこぶる悪いよなぁ。

俺よか10歳は年上の連中が、軍隊の過酷な洗礼を受けているのを横目に、俺は自主トレとして魔力強化をしていた。

 

―――――まったく、面倒臭い…。

 

……………………

 

…………………

 

………………

 

「ラーダー訓練兵」

「ハッ――なんでしょうか?」

 

いつものように他の訓練生が走り終わるまで、マルチタスクを用いて魔法で浮かびながら瞑想をしていると、教官の一人が話しかけてきた。

 

「どうだ?訓練は退屈か?」

 

そう問いかけるのはワイズ教官……この軍学校での最古参の教官の一人だ。

フルネームはジョナサン・ワイズマンと言い、卒業した訓練兵たちからはその真摯な姿勢と真面目な教導から“親父さん”と親しまれている

 

「……問題ありません。」

「そうか…」

 

問題が無い訳じゃない……だが、俺はどっちにしろ逃げられないのだから、鍛えられるだけ鍛えておかないといけないのだ。

この世界に来て7年と少し……どっちにしろ、まだ死ぬのには早すぎる。

 

「貴様は夜中に自主訓練を行っているそうだな?」

「……いけないでしょうか?」

「いや、俺にも経験がある」

 

そう言うと彼は自嘲気味にクククと笑った。

そして再び沈黙……BGMには訓練兵たちの歌が流れている。

 

「貴様は…」

「ハッ…」

「貴様は…何故そこまで頑張る?」

「……質問の意味が…理解しかねます」

 

――――俺がココに聞いた理由、知らない訳は無いだろう。

 

「質問の仕方が悪かったな……まぁアレだ?貴様の自主訓練はだ。我々からしたら少し度が過ぎている。……ある意味異常だと言っても良い」

「そうです…ね」

「その事を踏まえてだ。なぜ貴様はそこまで頑張る?自分自身を苛める?もしやとは思うが……」

「………………別に自傷行為という訳ではないので…安心してください。そうですね……自主訓練にあえて理由をつけるならば……」

「―――ならば?」

「――――生き残る…為です」

 

いや真面目な話、本当にそれが理由なんですワイズ教官。

―――――正直ね、マジで死にたくないんスよ…俺は。

 

「後は…臭い話ですが、家族を守りたい…その為の力が欲しい…それだけです」

「いや、いい心がけだと俺は思う。」

「そう…ですか」

「ああ」

「「…………」」

 

再び流れる沈黙――――き、気まずい(汗)

 

「最後に同じ事を聞くようだが、生き残りたいんだな?死にたくは無いんだな?」

「??はい…そうですが?」

「その為なら、どこまでもヤル覚悟もあるんだな?」

「はい」

 

――――んと、教官は何が言いたいんだ?

 

「そうか…まぁ俺が聞きたかったのはそれだけだ。訓練に戻ると良い」

「ハッ――失礼します」

≪ザッ≫

 

立ち去るワイズ教官を敬礼をして見送り、俺は訓練に戻った。

 

……………………

 

…………………

 

………………

 

――――数日後―――――

 

俺は訓練の途中、いきなり呼び出しを受けた。はて?特に問題がある行動はしていなかった筈だが?

その事を不思議に思いながら、教官待機室の扉をノックした。

 

「―――誰だ?」

「フェン・ラーダー訓練兵…です」

「ん、入れ。」

「……失礼します」

 

部屋に入ると、ワイズ教官を含め複数の教官達が部屋にいた。

―――というかアンタら、他の訓練兵の訓練は?

 

「短答直入で言う、貴様は他の訓練兵との訓練から離れ我々が行う特別訓練に参加させる。なお、拒否権は無い。」

 

え?――――死亡フラグ?

 

「質問が…有ります」

「許可しよう」

「自分は何か…失態を犯しましたでしょうか?」

 

なるべく怒られないように、言われた事は全部平均よりも高めにクリアしたのですが?

何故こんないじめの様な事になるんですか?嫌マジで…。

 

「逆だ。貴様は訓練で失態を犯した事がない…むしろ優秀な訓練兵だ。」

「でしたら…」

「だが…優秀すぎる。正直貴様の実力はとっくに訓練兵のソレを逸脱している。このままでは他の訓練兵たちの士気に影響が出る…いや既に出始めている」

 

―――あーそう言えばココ最近なんか視線感じてたのはその所為か?いきなり闇打ちに会いそうになったのもソレか…ってヤバいじゃんッ!!

 

ん?闇打ちされて大丈夫だったのかって?大丈夫だったよ?じゃなかったらココにいないモン。

俺母上の訓練のタマモノなのか敵意とか殺気とかが解るようになってさ?お陰で相手が仕掛けてきた時も何とか撃退できたんだ。

とりあえず襲ってきたバカはMP(ミリタリーポリス)に引き取ってもらったけどね……ボロボロにして。

――――閑話休題。

 

「―――まぁそう言う訳だから諦めろ?」

「……イェッサー」

 

別に良いけどね、年齢が年齢だから友達とかなんて出来なかったし……言ってて哀しいなコレ。

 

「話は以上だ。下がっていいぞ」

「ハッ!――――失礼しました。」

 

カッと靴が鳴るくらいの敬礼をして、俺は教官待機室を出た。

 

≪カツカツカツ……≫

 

一人寂しく廊下を歩く音を聞きながら自重する俺、はは…ホントお笑いモンだ…。

まさか、やり過ぎで余計に目をつけられる羽目になるとはなぁ。

―――でもさ…そうやって訓練にでも打ち込んで無いと、不安で押しつぶされそうだったからな。

 

 

「ちょっといいか?ラーダー」

「…ワイズ教官」

「敬礼はいい」

「…了解」

 

突然声をかけられ後ろを向くと、親父さんが立っていた。

一応軍施設内なので敬礼は欠かさない……のが普通なんだが、このヒトはそう言うのを嫌う様で。

 

「とりあえず、コイツを返しておくぞ?」

「え?あ…」

 

思わず驚いて変な声が出ちまったい。

なんせ手渡されたのは―――――

 

『マスター!お久しぶりです!』

「ヴィズッ!」

 

――――ココに来る時に、訓練兵には早いと言われ持っていかれた、ヴィズだったのだから。

 

「どうして…」

「なに、どうせ貴様はココを出たら尉官として着任させられるんだ。尉官は他の訓練兵と違って自分専用のデバイスを持つ事が許可されるからな?予定を繰り上げたにすぎん」

「しかし…」

「それにだ。俺達からのワン・トゥー・マンの訓練を受ける事になるだろう?普通のじゃあ実力を発揮する前に落とされる。」

 

―――そう言えばこのヒト、今は実戦を退いて教官職してるとはいえ、若いころは歩く災害とか呼ばれてた人だっけ?他の教官もなんか二つ名付きだった様な……ヤバいかも知んない。

 

「―――まぁこちらの楽しみを増やしただけにすぎんから貴様は気にしなくていい。」

「…………(唖然)」

「ん―――もう時間か?それじゃ俺は訓練に戻るからな?貴様の特別訓練は明日からだが…」

 

ワイズ教官は俺に視線を向けると、ワザと二ヤリとした悪戯を企むかの様な笑みを浮かべ―――。

 

「覚悟しておくことだな?ラーダー訓練兵?」

「ッ!―――サーイエッサーッ!!!」

 

―――プレッシャーと不安を煽ってきた……教官、アナタ意外とSなんですね?

教官は言う事は言ったという表情を浮かべると、そのまま廊下の角を曲がり見えなくなった。

 

「……(はぁ~)」

『溜息なんて幸せが逃げちゃいますよ?』

「ほっとけ…」

 

何だか余計めんどくさい事が起こりそうな予感がして溜息をつく俺。

あーもう、優等生ですまそうと思っただけなのになぁ。

夜中の鍛錬だって、母上から言われてたのを欠かさずやってただけだし…。

 

あ、でも…いままで母上の訓練を基準で考えてたけど……

アレって結構常人には異常なレベルだったり?

 

『今更何言ってるんですか?』

「……地の文に突っ込むな」

 

あはは、やっぱりそうだよなぁ~コイツはうっかりだ。

――――ちきしょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フルボッコ?そんなの生ぬるいッ!!まずは地獄を見てこい!」

 

 

 

 

――――転生か?第5,6話――――

 

 

 

 

――――フリーダム基地 第4訓練場――――

 

『熱源接近、接敵まで20秒』

「―――チッ…アルアッソー展開…術式レールブラスター準備」

『了解、アルアッソーモード――――!ッ敵の反応ロストッ!』

「あわてるな…必ず痕跡がある…ソレをさがせ…」

『了解』

 

廃ビルの中に入ったか?イヤ以前は地下鉄の構内に隠れていたな……

しかし“アノ人”が同じ事をするとは考えられない。

下じゃ無いなら……まさかッ!?

 

『上空魔力弾接近ッ!自動障壁展開』

≪ズガガガンンッ――――≫

「くッ!…レールブラスター!フォックス2」

 

射撃地点と思われる所を狙い、魔法を放つが――――

 

『反応ロスト――敵未だ顕在』

「広い空間まで…後退する…策敵レベル4で起動」

『了k――ッ!!ディレイバインドの反応多数!!トラップも検知!そんな一体どうやって?!』

「無駄口を叩くなヴィズ…なるべくトラップの少ないルートを検索」

『り、了解―――ルートをHUD上に表示します』

 

――――姿が見えない相手に翻弄される……畜生、忌々しい。

 

『後方警戒!障壁展開ッ!!』

≪ズガガガッ!!≫

「…ぐぅ!」

 

クソッ!敵は一人な筈なのに何でこうもいろんな方向から攻撃が来るんだよッ!!

 

「はぁ…はぁ…」

『マスター、バイタルに異常が見られ…右から魔力弾ッ!』

「またか…くッ!」

『障壁展開効率60%に低下――コレ以上は危険と判断します』

 

ええい…コレが実戦経験者とそうでない者の違いってヤツなのかッ!?

魔力量も技量も攻撃も防御も速さも全て優っている筈なのに!!

 

「姿がみえない…厄介だな…」

『魔力隠ぺいも完璧ですね。あちらが攻撃してこないと位置の特定も出来ませんし…』

「さすがは…ワイズ教官か…」

 

経験というのがいかに大事なのかがホント良く解る……しかも容赦がない。

ヴィズの高感度センサーすら騙す隠ぺい能力といい、どうやっているのか不明な全方位からの同時攻撃といい、伊達に教官では無いって事か。

 

『今度は左に魔力反応!』

「毎回…やられるかッ!」

 

俺は周りにあるトラップに注意を払いつつ、なるべくトラップが無い所を走る。

そう“無い所”を…そして――――

 

≪ブン≫

「ディレイ…バインドだと?」

『バインドブレイク開始!ブレイクまで10秒』

 

―――――巧妙に隠された“罠”に捕まった。クソッ!逃げ道に罠を置くのは常識じゃないかッ!

 

「そこまで、貴様は“戦死”だ。ラーダー訓練兵」

「……イエッサー」

 

首筋に充てられる小さな魔力刃、ナイフ程度の魔力刃だが、人を殺すのに大きい刃物は必要ない。

幾ら小さな魔力刃でも、それなりの出力と首周りの関節部分を狙われたら、俺のバリアアーマーも貫通する事だろう…その結果はデッドだ。

それに今まで姿が全く見えなかった教官が姿を自ら見せた時点で、俺の敗北は決定した訳だしな。

 

 

 

 

「今日の模擬戦はココまでだ。貴様はセンサーに頼り過ぎだ。

もっと全体を見て流れを掴まんと死ぬぞ?気配の一つくらい察知できるようになれ」

「…了解」

 

無茶言うなよ…大体アンタ気配消してるじゃないか…どうやって察知するんだ?

まぁ考えてもしょうがないだろうけど…。

 

「何が悪かったのかをレポートにして明日までに提出しておけ、シャワー浴びたら今度は座学だ」

「了解」

「では解散」

 

―――――こうして俺の負けた模擬戦の数が二桁を超えた。ちくせう。

 

***

 

Sideジョナサン・ワイズマン

 

今日も教え子を扱き、模擬戦の報告書を自室でまとめる作業を行う。

俺は教えるのは生き残る為の技術……そして効率の良い殺し方だ。

決して褒められる仕事ではあるまい、言いかえれば人殺しを教育しているのだからな。

 

だが、前線にてその若い命が少しでも長く生きられる様に、扱き罵倒し慢心を砕いてやる…

そうして一人前の兵士を作り上げるのが、俺の仕事…そう思っていた。

 

――――特例として設けられた短期魔導師育成プログラム…ソレを受けるのはたった一人。

これまた特例で配属された特殊訓練兵フェン・ラーダー…若干7歳の子供だ。

………いくら特例でもコレは無いんじゃないだろうか?正直最初は上の正気を疑った。

 

まぁもっとも、ラーダーの実力を見てソレは無くなったがな。

はっきり言えば、異常…この言葉が似合う…いやバケモノの方が正確か。

 

俺が思っている事では無いが、彼の同期の訓練兵や教官達の一部がそう呼んでいたの聞いた。

もちろんそんな輩にはお灸を据えておいたがな…蔭口はみっともない。

 

――――だが一方で、彼らがそう口にするのも解ると言うのが本音だ。

戦い続けて30年前、線を退いて10年、かれこれ40年も軍に居た俺だが、あんな教え子は初めてだ。

確かに7歳児に軍の魔導師訓練をさせる酔狂な輩はそうはいないだろうが…まぁソレはともかくとしてだ…。

 

俺達USN軍の魔導師は通常の魔導師とは訓練の密度、質、量、全てが通常のソレを上回る。

当然、訓練について来れず、脱落するモノ達も存在する…

だがラーダーは脱落どころか、他の訓練兵を大きく引き離す成績を訓練で修めている。

 

―――――兎に角成長が早いのだラーダーは。

 

初めてやる訓練ですらソツなくこなし、その次からは必ず今までの成績を塗り替える。

他の訓練兵が寝静まった夜中に自主練習をいれ、更なる高みを目指す。

 

 

だが――――正直に言おう……まだ早すぎる、早すぎる筈なんだ。

 

 

魔導師の子供は早熟であると言える。

親がそうであるし、マルチタスクなどの並列処理を覚えた子供は、

様々な思考を同時に処理できるようになる為、心の成長が早い。

 

だがそうだとしても、ラーダーのそれは幾らなんでも早い…だから異常なのだ。

まるで大人が子供の皮をかぶっているかの様な錯覚すら覚える。

 

そして何より、俺達を困惑させるのは、どんなに苦しい訓練ですら顔色一つ。

表情をまったく崩さないと言う事だ。

何か精神的なショックがきっかけで、無表情になる子供は職業柄見たことがある。

 

しかしラーダーのソレは、そう言ったのでは無く…。

自ら望んでそうなったと言う、所謂兵士のソレに近い。

 

何故彼はそこまで自分をいじめるのか?―――正直俺には理解が出来ない。

まるで怯えるかの様に訓練に打ち込む様は、悲しみすらおぼえるくらいだ。

 

だが、残念なことにこれらの事を俺達教官職に就く者は、上へと報告しなければならない。

そしてその所為で……彼は特例の短期魔導師育成プログラムと称した、実験に放り込まれることとなった。

 

――――――現在、前線は膠着状態を維持している。

 

世論は戦争賛成派が大多数ではあるものの、時間が長引けば当然ながら、

敗戦ムードが高まる事による反対派の運動が活発になる。

別にそれは良い、こちらとしても大事な教え子たちが戦争で散るのは勘弁してほしいのだから…。

―――――だが問題はだ、それに応じた過激派がテロを行ったりした時だ。

上層部としては短期決戦が望ましい、なので使える戦力はドンドン前線へと送り込みたいのが、心情なのだろう。

勿論、人の道を踏み外したとしても…だ。

 

―――――ラーダーが唯一このプログラムを受けているのはそう言う訳だ。

 

このプログラムは正直、彼の為に造られた訓練なのだ。

魔法の才能さえあれば、どんな年齢の子供でも戦場において活躍が出来ると言う事を証明する…。

それがこのプログラムの裏側である。

 

今までは最低でも15歳を超えていない子供は前線には送らず、後方勤務が殆どであった。

だが、恐らくラーダーはいきなり前線へと配属される事が、すでに決定している。

 

たとえ死んだとしても、一般にはすぐにはバレない訳だし戦争のドサクサという事で処理できる。

逆に功績をあげれば、それは軍の功績となる訳だ……おまけとして少年魔導師部隊というモノが作られるのだが…。

人の死を数値でしか見れなくなった上層部連中には、そう言った事は関係ないのだろう。

 

 

―――――彼は優秀だ。

経験さえ積めば、すぐに俺を追い越せる程の逸材だ。

こんな大人の事情で起こったくだらない戦争で散って良い命では無い。

 

だからこそ、俺は今まで経験した全ての技術を、ラーダーに教え込む。

血反吐を吐こうが、泣き言を言おうがやらせる…と言っても普通に付いてきてるのだが…まぁいい。

とにかくだ、俺に出来ることは、あいつが死なない様に、教えられる全てを教えると言う事に他ならない。

 

―――――例えその結果、あいつの心に大きな傷を作る事になろうとも…死なせはせん。

 

 

 

俺が出来る事は殺し方を教える事………ただそれだけなのだから。

 

 

 

Sideフェン

 

死ぬ…マジで死ぬ…なんなんじゃこの短期魔導師育成プログラムっちゅうのは?

実戦形式の模擬戦に次ぐ模擬戦、ワイズ教官以外の教官は倒したけど、それでもきついぞコン畜生。

座学に居たっては………戦略ってなんですか?美味しいんですか?

 

俺7歳だぜ?お前ら人の皮を被った鬼かいな?幾らなんでも苛めすぎやと思うで?

それでも自主トレを欠かさない俺は…もう手遅れなのかな?まぁいいけど…。

 

しっかし今日の模擬戦もワイズ教官には勝てなかったなぁ。

“見えなければ、どうという事はない”を実戦で見せてくれたもんなぁ…え?字が違う?いや違わないよ?

 

なんせ姿が見えないタネは、ミラージュハイドとかいう光学迷彩魔法。

それと自身の魔力操作の上手さだもんなぁ。

ミラージュハイドで姿隠して、そこら辺じゅうに設置型術式を同じくミラージュハイドで隠して回るっていう単純なもんだし。

まぁイメージできない人は、そこら辺じゅうに見えない地雷が設置された様なもんだと思ってくれ。

 

しかし、タネさえ解れば単純なもんだけど、魔道師からしたら相当厄介な人だよ。

相当の熟練者か魔力探知に長けた魔導師じゃないと、見破れないレベルの隠匿魔法だぜ?

俺も段々感覚を掴んで、徐々に察知出来る様になったけど、初見の奴ならムリだ。

 

というか、設置式術式+隠匿魔法はヤバいコンボだろ…見ただけじゃ探知出来ねぇし。

辺りに魔力素子が充満していたら、幾ら魔力探知に長けた魔導師でも、発見しずらいしな。

ようやく発見したかと思ったら、気が付いたらあの世だなんて笑えネェ…マジで。

 

俺は夕飯がわりのレーションをほう張りながら、そんな事が出来る教官の事思い溜息をついた。

で、夜の訓練の為に次の教官の所へと足を運んだ。

ああ、さっきのとは違う意味で疲れる訓練か…鬱だぜ。

 

………………………

 

……………………

 

…………………

 

「お、来ましたねフェン君」

「はい…ソフィア教官」

「ふふ~ん♪まえも言いましたが教官は要りませんよ?」

「いえ…一応規則ですから…」

 

フレンドリーな態度で接してくる。教官団の中でも珍しく、唯一の女性の教官である彼女。

ニコニコと笑みを絶やさない彼女は……正直苦手である。

 

「では、いつも通りまずは運動をしましょうか?」

「はい」

 

そう言ってゴム製のナイフを2本投げ渡してくる…とは言うモノの実質山刀なみの大きさだが…。

―――――そう、彼女は珍しく近接攻撃が主体の魔導師なのだ。

 

ナイフを受け取った瞬間、途端に構えを取る。この運動に合図などは無く、いきなり始まる為だ。

身体強化魔法で身体を強化し、間合いを計って、懐に入り込む為に距離を詰める。

―――――というか身体強化以外使ってはいけないのが暗黙のルールだ。

 

俺は横一線にナイフを振るう、だがソフィア教官が一歩下がった事で、そのナイフは相手に触れることなく虚しく空を切った。

俺は攻撃の手を緩めず、返し刃でもう一度薙ぎ払うかのように斬る…当るかと思った瞬間、彼女が視界から消えた。

 

「!?」

「下です」

 

下を見ればしゃがみこんだ彼女が居た。そして俺の首にはゴム製のナイフ…ちっ1死亡だな。

 

「大ぶりはNGです」

≪シュッ!≫

 

無駄のない動作で繰り出されたナイフは、まるで生き物のように、俺の胴体を切りつける。

反撃のため袈裟切りを返したが、あっさりと避けられさっき斬られた場所と同じところを切りつけられた。

 

「アツッ…」

「ほら無駄が多いですよ?」

 

ゴムがこすれて熱くなりつい声を出してしまう。

今度は太ももにナイフが当てられた、コレも動けなくなると言う意味で1死亡だ。

 

「例え必殺にならなくても…」

≪ススッ≫

「浅からろうが何度も斬りつければいいのです」

 

テンションが上がってきたのか、手首足首同時に斬られた……つか見えねぇよ。

 

「特に手足は動きを制限させるのに有効です。」

 

確かに人間ってのは手足怪我すると、かなり動きが制限されるモンな。

そんな事を考えつつ、2本のナイフで連続して斬りかかる。

 

「そう、軽くても当れば良い…当らない刃物は怖く無い」

「―――――ッ」

 

そう言いつつも未だに一太刀も当らない教官に、俺は左のナイフを投げつけた。

 

「はずれ、今のタイミングは悪くはないけど必殺じゃない…必殺というのは…」

 

ソフィア教官はいきなり体制を崩して、視界から掻き消えるかの様に動く。

重心が一気に下がった事で、腰の入った一撃が―――――

 

「地面をはうように…」

≪ボッ!≫

「入れるのです」

 

―――――俺の鳩尾よりかちょっとした…胃袋か肝臓辺りに当った。イテェ…。

 

「ケホッ…」

「予想だにしない動きで相手を止めるのも、ナイフの奥義の一つです」

 

そういうと彼女はどこかハ虫類を思わせる笑みを浮かべる……ぐぅ、やっぱり苦手だ。

 

「はい、じゃあいつものように死んでしまったフェン君は、PXで私にデザートを奢る事。良いですね?」

「…アイマム」

 

はぁ、コレだモンなぁ…物凄く強いけど、どこかカラっとした態度。

まぁコレが意外と人気があるそうな…奢らされる俺はたまったモノではないが…。

絶対いつか俺が勝って奢らせてやるモンなッ!!―――永遠にムリな気がしてきた。

 

「さて、今日も動きの確認をした後、組み手やりますよ。さっきみたいに手加減はしませんからね」

「了解」

 

 

―――――というか、さっきのですら手加減されてるんだもんなぁ。

 

 

ソフィア教官の魔導師資質…彼女自体の総合魔導師ランクはC+…正直一般兵よりも低い。

使える魔法も高密度だけど小さな魔力刃が造れる程度……だけど彼女は室内戦闘においては無敵を誇る。

少ない魔力で“どうすれば相手を制する事が出来るのか”を極めた完成系がこのヒトであると言ってもいい。

 

魔法第一主義が蔓延しているこの世界で、一時期少佐にまで上り詰めた実力を持っているのだ。

つーか勝てねぇよ…ホント容赦しないし…姉御肌だし。

 

まぁココまで来るのに、血反吐を吐くと言うのも生易しく見える程の訓練と経験を積んでいるのだ。

幾らチート性能を持つ俺でも、このヒトに勝つのには時間が掛かる…。

というか、もしかしたら近接戦闘では勝てないかもしれない。

つーかUSN軍内でも、近接戦闘のみで一対一なら、彼女に勝てる人間はいないと思う。

 

そもそもどうして俺が彼女から近接戦闘を教わっているのか?

ソレは俺も魔力刃を使った近接戦闘の魔法を持っていた所為だ。

 

ココに来る直前に造って入れた術式なんだけど、ソレをワイズ教官に見られて……。

気が付いたら彼女との近接戦闘訓練がプログラムに組み込まれてたって訳。

 

まぁ近接戦闘用魔法持っていても、肝心の使い手が扱えませんじゃ話にならないモンなぁ。

魔力刃とはいえ刃物は刃物、こうして昔ながらの近接戦闘訓練や組み手の方が、身体がなじみやすいのだ。

 

なんか着々と最強魔導戦士育成計画が進んでいる様な気がするけど……気にしたら負けだよね♪

まぁ心技体全てが強くなれば戦場で死ぬ確率は減る事だろうから反対はしないけどね。

 

―――――とりあえず。

 

「死なないよう…頑張らな…」

『マスター?』

「ん、何でも…無い」

 

何としても生き残らなければ……うん。

 

 

 

 

「Amenってか?」

 


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