【旧バージョン】QOLのさらし場所   作:QOL

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【旧バージョン】何時の間にか無限航路 第五章+第六章

■ラッツィオ編・第五章■

 

 ついに念願かなって辺境宙域から飛び立つぞー!

 

 ころしてでも つれもどす (某禿

 

 げー、でらこんだ!?

 

―――以上、前回のあらすじを三行でお送りしました。

 

 

 無限航路の世界に来て主人公に憑依してしまった俺は、実際の宇宙を見て回りたくてフネを建造し、戦艦まで作って領主をフルボッコにした後、ボイドゲートと呼ばれる十数kmはありそうな空間直結門を使った人生初のワープを体験した。SFと言えばワープ、ワープと言えばSFである。

 

んで、原作ゲームでは詳しい描写がなかった為、某宇宙戦艦みたく女性スケスケワープになるかも、とワクテカな思いでトスカ姐さんの方を見ていたのだが―――

 

「ボイドゲート抜けました。エルメッツァ・ラッツィオに入ります」

 

―――ゲート通過時間…体感だと一秒にも満たないなんて…ショックorz

 

「ユーリ、なに打ちひしがれてんだい?」

 

 そりゃトスカ姐さん。女性の裸云々は冗談だったとしても、こっちにしてみりゃ初めてのワープみたいなもんだったのに、実感がわかないほど短いとくれば泣きたくもなりまさぁ。

まぁ何時までも落ち込んでるとうざい事この上ないので、泣きたい心を隠しながらも何でもありませんと普通の顔をする。ユーリくんのポーカーフェイスだぜ。

うう、でも心の中では浪漫何処へ行ったぁ!と叫ぶぜ。ちくしょうめー。

 

「なんでもないッス。それよりも各班異常は無いスか?」

「全部署、異常はありません」

 

ふむふむ、全部署異常無しとは重畳よ。

ま、ゲートに限って言えばここ数百年事故は発生していないらしいから別に気にする必要はない……ないんだが、こちとら貧乏性なので、ついつい心配しちゃうのがユーリクオリティである。

とにかくココから一番近い星に向かって情報収集をして金稼ぎと洒落こむ事にしよう。もうそろそろ今の単艦特攻(ぶっこみ使用、四炉死苦みたいな?)状態を解除して、僚艦二隻を加えた艦隊を組みたい。

前衛中衛後衛、それが無理でもせめて前衛と後衛に分けて役割分担出来れば不用意に突っ込む必要は無くなる筈。まぁ、その前に進路を決めなきゃな。

 

「えーと、この近辺で一番近い星は何処っスかね?」

「そうだねぇ、順当な航路で行けば二つ。ラッツィオかポポスだね。近さでいくならポポスが一番近いかな?」

「そこはなにか珍しいモンあるッスか?」

「ないね。しいて言うならモジュール設計会社が置かれてる位か」

 

 それ以外はロウズとどっこいどっこいなド田舎とはトスカさんの談。でもゲートからの距離を考えるならばポポスが一番近いそうな。

よしポポスに行こう。京都に行こう的なノリで。こっから宙図上だと結構近いし…そう思い指示を出そうとした矢先、俺の視界を内線の空間モニターが遮った。

 

『こちら厨房!大変です艦長!チェルシーさんが倒れました!』

 

モニターに大画面で映る厨房責任者のタムラさんがひどく慌てた様子で連絡を入れてきた。チェルシーがいきなり倒れた?新しい宙域に来た矢先に?え?なにそれ怖い。

 

 

 

***

 

 

「艦長、目的地はどうしますか?」

「う~ん、そうッスねぇ…」

 

 現在、惑星ポポスから少し離れた位置にある航路上に俺達は来ていた。補給も終えて情報も仕入れたので、今は交易品をコンテナに積み込んでどの星に行こうかとブリッジのメインモニターに航路図を映して、それを見ながら相談の真っ最中である。いやーホント宇宙は広いね。片道何日掛かることやら…。

ん?チェルシーはどうしたって?いや別に身体には何ともなかったみたいよ?今は医務室で精神的な過労と診断されてそのまま眠っていらっしゃいまする。どうも原作関連の設定の所為でボイドゲートを通過する際に彼女の精神への負荷が増大するらしく、その影響で倒れちゃったようなのだ。

なんですぐに駆け付けないか?俺に医療の心得は無いんですよ。

 

それはともかく、本当なら俺にも多少なりともゲート通過時に影響が出る筈なんだが、憑依の影響なのかなんも感じなかった。そんな訳で元気な俺はもちろん彼女の見舞いにも行きました……けど、やっぱりと言うべきか、彼女の俺に対する依存度がハネ上がっていたのには辟易した。

可愛い子に懐かれるのは悪い気はしないけど、精神操作されてヤンデレ度合いが上がったのはいただけない。しょうがないのでしばらく直接会うのを控えたいと思っている。時間が解決してくれるのを祈るしかない。

まぁ彼女がいる部署はどうやっても他人と接しなければならない場所だからな。頑なに依存があっても他者とのふれあいがあれば良くも悪くも変わるもんだ。おまけに厨房は日常生活の中で一番忙しい部署でもある。数百名の胃袋を預かる場所だから、俺に依存しようにも忙しさで次第に忘れるだろう。

多分、きっと……めいびー。

 

 それはともかくとして、この妹君が倒れた事件以外は特に問題も起きず、アバリスは無事に惑星ポポスに入港した。人口77億人程の中堅規模を誇る惑星のポポスはトスカ姐さんの言った通りモジュール設計社以外にこれといった特徴はなかった。しかし77億とか…前の世界での総人口と変わんねぇじゃん。宇宙規模ってマジパネエ。

んで、とりあえずポポスにも通商管理局が運営する0Gドッグ御用達の酒場が設置されているので、そこに寄って情報を仕入れられたのは重畳だった。やっぱりね、ごり押しだけじゃ限界があるからね。時代は情報戦ですよ………ごり押ししてこっち来た人間の言う事じゃねぇな。あはは。

 

まぁとにかく仕入れた情報の中で目に着いたのは、この宙域の海賊被害の多さだった。辺境ロウズと違いこの宙域、エルメッツァ・ラッツィオはゲート一つ越えたところに中央政府のあるエルメッツァ中央がある中央と各辺境宙域を繋ぐ中継点のような位置にある。それらを狙う海賊もまた多く出没するのだろう。

富があれば群がろうとするのは盗賊の理なりとは誰が言ったか。そういった事からポポスの宇宙港では海賊被害の注意が促されており、警備も結構きつめになっていた。それだけ海賊被害が大きいという事なんだろう。

そして二日後、大体の周辺情報を仕入れ終わり、俺達は再び星の海を渡る為に航路へと復帰すると、お次はどの星に行こうか相談していた。

 

≪ズズーンッ!!≫

「な?!ウアッ!≪ゴンッ≫ぐえッ!」

 

―――そんな矢先、いきなり衝撃がフネを襲った。

 

驚くべき事に慣性制御がきっちりされているブリッジが揺れる程の衝撃である。不幸な事に、その時の俺は航路図をよく見ようと身を乗り出し中腰の体勢だったので、その衝撃で頭を艦長席のコンソールに打ちつけていた。超いてぇ。

 

「くっ…攻撃?―――ミドリ!損害報告をっ!それからレーダー!エコー!アンタなにを見てたんだい!?」

「右舷側に被弾、損傷軽微なれど損害不明。APFが減衰していない事からミサイルか実体弾と思われます」

『こちら整備班室!どうしたブリッジ!何があった!』

 

 整備班を筆頭に、各部署から先程の振動はなんなのかの問い合わせがブリッジに殺到する。混乱が混乱を呼び、このままじゃ指揮ができねぇ。こうなりゃ仕方がねぇ。

 

「ちょっ!艦長怪我してるぞ!?」

「なにぃ!?ユーリ!」

「……スゥゥゥぅ――」

 

何か周りが心配そうにしていたが、俺はそんな事気にせずに痛む頭を押さえながら息を思いっきり吸い込んでいた。吸った後は、解放するのみ。

 

「――全員、落ち付けええええっ!!」

「「「…ッ!?」」」

 

 そして思いっきり息を吐き出して大声を上げ、周囲を黙らせる。

なにこれ気持ちいぃ!ってふざけてる場合じゃなかった。

 

「ミドリさんはちゃんとした損害を調べいッ!ケセイヤさんはその情報を元にダメコン班を!エコーさんは目を皿にして策敵!急がないと次が来るッス!全艦戦闘配備だっ!」

 

 ブリッジクルーが沈黙して混乱が止まっている間に矢継ぎ早に指示を下した。腐っても船乗りなクルー達は混乱こそしていたが、俺の下した指示に了解を返すと各々自分の仕事を開始する。ふひー、こういうのはまだ慣れてないからこっちも冷や汗もんだ。大声あげたら逆に混乱が加速したら、寿命がマッハでピンチだぜ。

 

「サナダ!外板センサーのログを洗え!命中した時の角度でどこから攻撃されたかを調べるんだ!」

「了解した。副長」

 

 一方のトスカ姐さんも混乱から復帰すると、すぐに俺の指示の後に続いてフォローをいれてくれた。確かに攻撃された時の角度が判れば撃ってきたヤツの大体の位置は特定出来る。大体の目星が付いたらそのあたりをレーダーとセンサーで徹底的にスキャンすれば隠れていてもすぐに発見できる。

そうなりゃ、火力チートなこっちが勝つる!よっしゃ、早く解析をお願いします!

 

「アンノウン、攻撃第二波が接近~!」

「飛来数6、形状からしてミサイルと思われます。到達まであと60秒」

「急速降下しつつ面舵一杯!ミサイルに対しEA(電子攻撃)出力最大ッス!」

「バウスラスター出力一杯!噴射10秒!おちるぞー!!」

 

 と思ったが、再び迫る攻撃に指示を変更する。指示により回避運動に入ったアバリスは、艦首部に搭載された140ものアポジモーターが生み出す強大なキック力により、1000mクラスの巨体を瞬時に降下させつつ、バウスラスターによって右に舵を取る。

重力井戸のお陰で乗ってる俺達がGで潰れる事はないが、それでも身体にかかる力を感じる為、思わずイスの肘掛を掴んで踏ん張った。このハイ・マニューバと強力な軍用ジャミングにより、命中コースだったミサイルの誘導性が低下し、4発の回避に成功した。戦艦の癖に素早いヤツである。

 

「おくれて2発、命中コース、避け切れません」

「総員耐ショック。衝撃に備えろッス」

≪―――ドドーン!!≫

 

だが遅れて残り2発が船体中央部胴体に命中した。命中した本数が初撃よりすくないからか若干軽いが、それでも身体の芯に重く響くような衝撃がブリッジまで届く。謎の敵さん、どうやらミサイルに結構強力な弾頭を積んでいるらしい。

 

「右舷胴体部、第一装甲板に着弾、装甲に亀裂発生。航行に支障はありません」

「サナダさん!」

「……ふむ、先程と今の攻撃が命中した角度から考えると……あのデブリの密集した辺りからだ。機関を最低限にまで絞っているから普通のセンサーじゃ気付けないのも無理はない」

「そうか!だから発見が遅れたのか!」

「デブリに隠れていたならレーダーじゃわかんないッス!」

 

 宇宙のゴミ、デブリ。何処からか流されてきた宇宙船や人工衛星の残骸、岩質の小天体等が集まったそこは雑多過ぎてレーダーやセンサーが効き辛い。ならば、と俺は砲雷班長に顔を向けた。

 

「ぶっ放せストール!デブリに隠れるバカを引き摺り出せッス!」

「合点だっ!第一、第二主砲照準!てーぃ!」

≪―――ギュイン、バシュゥゥ!!≫

 

俺の指示にアバリス上甲板のレーザー砲が起動し、グルンとフレキシブルに稼働すると、その砲門をデブリ帯に向けてレーザーを照射した。そして照射されるレーザーが岩塊をものともせず突き進み、そのままデブリを吹き飛ばしていく。

 

「レーザー連続発射!邪魔なデブリを吹き飛ばせッス!」

 

連射、連射、連射。凝集光の嵐が邪魔なゴミを吹き飛ばしていく。強力な出力を持つアバリスの砲撃を前にデブリが耐えられる訳も無く、物の数秒でデブリが砲撃で消えさった。

 

「敵影を感知ー!数は4隻!水雷艇の他駆逐艦が一隻ーっ!」

「艦首識別は…ガラーナ級駆逐艦1、ジャンゴ級2、フランコ級1…データ照合、スカーバレル海賊団です」

 

 そして、開けた空間に現れたのは小規模な艦隊だった。ロウズ警備艦隊でおなじみの水雷艇レベッカ級の同型艦で、ミサイル装備に換装してあるフランコ級。その改良艦で少し口径がUPした軸線対艦レーザー砲をニ門装備しているジャンゴ級。そしてその水雷艇達の倍の大きさを誇る、今回初めて遭遇する駆逐艦のガラーナ級であった。

 ガラーナ級はラッツィオ方面で活動する海賊団、ポポスで警告が出ていたスカーバレル海賊団が独自に改造を加えたカスタム駆逐艦で、武装は小型連装レーザー砲をニ基上甲板に装備し、艦首部にミサイル及びレーザー砲を搭載出来るフネらしい。すでに何度も民間のフネを襲撃しているらしく、貰ったデータには結構詳細が記録されていたので間違いないだろう。

 敵は、海賊だ。

 

「総員対艦隊戦用意っ!リーフッ!艦首を敵に向けるッス!」

「アイサー、ピッチ角度修正、30度回頭、艦を敵艦隊に向けるぜ!」

 

敵艦を発見した俺はすぐに艦首を敵の方向へと向けさせた。アバリスの兵装は主砲である稼働式の小型・中型レーザー砲を除くと、基本的には前方にしか攻撃出来ないからである。アバリスの兵装であるリフレクションレーザーカノンと軸線大型レーザー砲を最大限に生かすには、敵の方へ正面を向けなければならない。

 

「砲身冷却完了、次弾いけます」

「全砲門、敵前衛艦に照準ッ!発射ッス!」

「はいさ、ぽちってな!」

 

 再び敵艦に照準し、レーザーを発射する。だが相手はデブリの様に動かないモノではなく、こちらと同じく艦隊機動すなわちTACマニューバを使える宇宙船である。一斉射しただけの弾幕では命中せず、レーザーはむなしく霧散した。だがこれで良い。

 

「エネルギーブレッド消滅、敵マニューバパターンのデータ集積中」

「データは常時解析、それを元に各砲自由斉射っス」

 

 もとより一撃で命中とか贅沢は言わない。だって当たんないし。

 特に回避運動をお互いに取るから長丁場になるのは良くある事。それでも火器管制が凄く優秀(俺の時代に比べれば)だから、当てられなくはない。

 

「エネルギーブレッド敵前衛艦に命中。ジャンゴ級とフランゴ級、各一隻ずつ大破。残り2隻です」

「ガラーナ級ー、艦隊を引き連れて離脱を計っているみたいー」

「逃がすな!あたし達に攻撃を仕掛けた事を思い知らせてやれッ!」

「あのトスカさん…それ俺の台詞…」

「良しっポチっとな!」

「ちょっ!ストール?!」

 

逃げる敵艦に艦首が向けられる。艦首にあるのは勿論大型軸線砲……ニ度ネタは禁止だよな?まぁとにかく全ての兵装が発射され、ガラーナ級駆逐艦も轟沈したのだった。

 

「インフラトン反応、感知出来ず、辺りに敵反応無し」

「レーダーにも~反応無しだよ~」

「ふぅ、やれやれだ」

 

いやはや最初はびっくりしたが、返り打ちにしてやった。

流石はアバリス、何ともないぜ!あとは散らばった残骸を集めて売りに行くべ。

 

「ところでユーリ、あんた医務室行ってきな?」

「へ?何でッスか?」

「額から血がダラダラだよ。一度止血して洗った方が良い」

「え?……うわ、ホントだ。頭血がすげぇ」

「そういうところは見た目よりも派手に吹き出るからねぇ。ま、いない間は任せときな」

「うう、了解ッス。んじゃ任せたッスよ。トスカさん」

 

 

若干出過ぎの血に、貧血を起こしかけながら俺は医務室に行った。

つーかこんだけダラダラ流しながら指揮してたのかよ。そりゃ周りの人間も驚くわ。

とりあえず包帯巻かれる程度で済んだけど、怪我はイヤねぇ~ホント。

 

 

 

***

 

 

 

サド先生に額の傷を治療してもらい、ブリッジに戻る為に通路を歩いていた。

しっかし、アノ先生も豪快な治療するよなぁ…まさか酒をぶっかけられるとは思わなかった。

文句言ったらタダのアルコール消毒だから大丈夫って…。

まぁ腕は確かだからいいんだけどさ。

 

で、ブリッジに戻る為に通路を歩いていたんだけど―――

 

「おろ?トーロ?」

「ん?ユーリか…ってその頭どうしたんだ?」

「いや、さっきの戦闘でちょっと…というかトーロもなにしてんスか?」

 

医務室から帰る途中~、トーロ君に~出会った~…とまぁ、ネタに走るには程々にして。

 ブリッジに向かう途中でスタスタと歩いてくるトーロと遭遇した。どうやらウチのやり方に習い様々な部署を点々としているようだが、どうにも所在無さげといった感じをうける。というか元気が無いと言うべきか。

 はて?アバリスに乗り込んできた時の気迫はどうしたんだ?

 

「見てわかんねぇか?やることなくてブラブラしてたんだよ」

「おいおい、部署を色々回ったんじゃないッスか?なんか一つくらい――」

「それがなぁ、どうにもしっくりこなくてなぁ…このままじゃ前の職場と同じく倉庫で荷降ろしの作業員とかになりそうだぜ。折角の機会なのにそれじゃあなあ」

「ああ、確かに、ソイツはもったいない気もするッスね」

「だろう!やっぱりユーリは判ってくれるか!」

「まぁ、クルーの悩み聞くのも仕事の内――」

「こころのともよー!」

「くんなよるな近づくな抱きつこうとするな阿呆!」

 

テメェは某ガキ大将か!

それはさて置き、そう言えばこっち来てから色々あって、トーロの所属の事はすっかり忘れていた。だってむさい男より、可愛い妹君の方が大事だったし……、そうだ。折角ここでばったり出会ったのも何かの縁。どれ、一つ艦長さまが話を聞いてやろうじゃないか。

 

「……だからって背負い投げするのはどうかと思うぜ」

「ゼェ…ゼェ…、だったら少しは真面目にやれ。それはいいとしてお前最初は戦闘系を志望してたんじゃ無かったッスか?」

「うーん、いやそこも見学したんだけど、なんかちげぇんだよ。大砲で撃ちあうよりも、もっとこう直接というかな」

「ぶん殴り系?」

「そうそれ!俺は腕っ節程度しか自信ないしな!」

「えばれる事じゃないッス……でも、そう言えばそうッスね」

 

そう言えば、最初に出会った時は街の酒場でチンピラまがいだっけ。てことはやっぱりトーロはそれなりに腕っ節が強い?うーん、腕っ節が強いヤツが活躍できそうな部署なんて保安部くらいしかねぇな。でも保安部はまだ編成して無いんだよね。うーん。

 

「じゃあ、トーロ。保安部の部長でもやるッスか?」

「え?!いいのか?」

「冗談は言って無いッスよ、ただ…」

 

人員がまだ居ないッス。と言おうとしたんだが…

 

「よっしゃ!俺もようやく認められたって事だな!」

「あ~まぁ、そう考えても良いッス…(説明すんのもメンドイし)」

「じゃ俺頑張るぜ!ソレで俺はどこに行けばいい?」

「あ、まだ警備室のモジュール積んで無いんで、適当にしておいてくれッス」

「ええ~期待させといて、なんだよそりゃ」

「まぁまぁ、次の寄港地でドックがあったら積んでやるから気を落とさんとね」

 

その時に人員の編成もしとけばいいよな。うん。

 

「じゃ、俺はブリッジに行くッス」

「仕方ねぇ、自主鍛錬でもしてるかなぁ」

「空いてる部屋の重力調整を、重力井戸担当のミューズさんに頼めば通常の何倍かの重力で鍛えられるッスよ?」

「お、鍛錬らしくていいな。じゃさっそく頼んでみるぜ」

 

普通は重力井戸を使って鍛錬するなんて制御が難しいからしないんだけど、ミューズさんは何故か出来るからなぁ。ちなみに“とりあえず5倍の重力でいくか”とか言っていたトーロの言葉を俺は聞かなかったことにした。

 

 そして、余談であるが誰かが骨を折って医務室に運ばれたらしい。くわばらくわばら。

 

 

***

 

 

さて、その後はロウズでもやった様に敵の艦隊を狩ることに専念した一週間であった。別に奇襲で怪我をさせられた事を恨んだ訳じゃない。違うったら違うんだからネ?ボクは怒っていませんヨ?

とにかく、クルーが海賊の相手に慣れるくらいまでやったところ、海賊被害の規模が大きかったからか名声値が大いに上がり、現在の0Gランキングがそれなりに上昇。現在やっとこさ60位って所である。ランキングが上がると、それなりに便利なモジュールが貰えるのが地味に嬉しい。

ちなみにランキング60位までに貰えた艦船モジュールは、司令艦橋や航海艦橋や保安局、医務室にレーダー哨戒室に機関室に整備室にショップなど使える物から使わない物まで多岐にわたるので詳細は省く事にする。というか余程の事が無い限りモジュールを組み換えたくなかった。船内ルートが変わって迷うんだもん。

 

それはともかく、やっぱり戦艦は強いと感じる日々を送っている。特にここら辺の敵には苦労しないのが良いね!今日辺り頑張れば恐らくランキング50位に入れると思う。そういう訳で今日も宇宙のお掃除を兼ねた海賊狩りの真っ最中だったりする。

 

「敵、インフラトン反応拡散中、撃沈です」

「コレで通算、約800隻って所かい?」

 

ちなみに今回は捕獲を目的としていないので、結構敵さんが修理されて戻ってくる。

何か復讐に燃える海賊とか出てきそうだが、敵の乗組員を皆殺しにして全滅させたら名声が手に入らんから今はコレで良いのだ。有名になればなるほど強い装備を得られるが、その分敵も増えますよっと。世知辛いねぇ。

 

「アバリスをモジュールで強化したから、かなり強くはなってるッスね」

「設置費用が高額だったけど、その分性能は折り紙つきか」

『お~い艦長』

「あれ?アコーさん、どうしたッスか?」

『いやね、そろそろ物資の補充の為に寄港した方が良いと思ってね?』

「ありゃ、もうッスか?」

 

まぁそろそろ長旅が限界なのは解ってたけどね。

長く航海すれば疲労度も貯まるし、いい加減近場の星に寄港してクルー達に休暇とらせた方がいいと思ってたところだ。

 

『平常運航なら水も食糧も数日は持つが、ウチは…ほら宴会好きが多いからすぐに色々と足ん無くなるんだよね。いっぱい乗ってるしね』

「解ったッス。てな訳でミドリさん?」

「はい艦長。この宙域から一番近いのは、惑星ラッツィオです」

「そう言えばまだ行った事が無い惑星ッスね?トスカさん」

「ああ、今まではポポス周辺を巡ってたからね。ここら辺は初めてだ」

「じゃあちょうど良いッス。休暇も兼ねてラッツィオに寄港する事にするッス」

「了解ユーリ。―――リーフっ!」

「聞こえてぜ。もう航路の割り出しは終わったよ」

 

航海長であるリーフはそう言うとメインパネルに航路を表示する。

仕事速いねぇリーフさんは。

 

「それじゃ、アコーさん。そういう事何で…」

『了解だ艦長。それじゃあな』

「はいはい」

 

アコーさんとの通信を終えた後、それぞれの部署に半舷休息を言い渡した後。アバリスは一路惑星ラッツィオに進路を向けた。道中は稀に海賊が出るくらいで、事故などの突発的な問題が起こる等といった事無く進み、その日の内に惑星ラッツィオの軌道上に到達したのであった。

惑星ラッツィオに着いた僕たちは休暇を兼ねて惑星に降りて行く。久々の陸ということもあり、上陸希望者が大量に出たがその全てに上陸を許可した。アバリスの方は空間通商管理局のAIドロイド達に任せておける為、無人にしても大丈夫だからである。それに多分しばらく航海には出られないと思うしな…。

 

一週間近くも海賊との遭遇戦を繰り返していたアバリスの本格的整備を上陸ついでに行う話が整備班からあがり、それを許可したからだ。上陸希望者とは別の居残り組の多くがケセイヤさんを筆頭とする整備班達であり、機械に対する愛情は凄まじいモノがある。その彼らが居残るついでに整備も全て監督するらしい。

だから俺がアバリスを離れてすぐに、アバリスはC整備を兼ねて分解されちゃっていると思う。しかも連中、何やら秘密裏にごそごそと敵艦を破壊した時に出た廃材を利用して色々と趣味で機械類を造っているらしく、もしかしたら分解整備がてらアバリスに変な改造とか施しちゃうかも知れない。

 

でもまぁ、アバリスさえ壊さなきゃ俺は気にしない。むしろ性能が上がるならドンドンやってくれって感じである。というかケセイヤさんにはすでにそう伝えてあるので、整備班は遠慮しないだろう。好きな事が出来るならバン万歳な連中だからなぁ……帰ってきたらアバリスの面影が無くなってたら、ケセイヤさんはシバいておくかな。

それにしても1000m級でも分解整備が出来るドックってスゲェよな?

 

とにかくそういう訳で、俺はブリッジクルーとチェルシー、それにトーロを連れて惑星ラッツィオに降りたった。トーロは最近入れたモジュールのスポーツドームに入り浸っていた…と言うか引きこもってやがったが、そのまんまだと整備の時に邪魔になるから連れ出してくれと言われ引きづり出して連れて来た。

 まったく、まだ人員が居なくて役職だけの部署なのに張りきっちゃってまぁ。取らぬ狸の皮算用にならなきゃ良いんだがねぇ…。あ、部署をつくるの俺か。

 

 

―――それは置いておいて、とりあえず足を向けたのは0Gドック御用達の酒場であった。

 

基本的な岩石質の1G下の惑星はガス系惑星に比べれば小さいが、それでも地球と同じくらいの大きさはある。とうぜんそれだけ大きければ色んなショップやレジャー施設などが多々あるのであるが、実のところ私物の買い物とかでも無い限り、惑星で屯っていられるのは酒場だけだ。

いやね?下界のレジャーランドだと宇宙で働いている俺らにゃ緩すぎる訳で。でもって温泉やら女性クルーの味方のエステ何かは全部軌道エレベーターのタワーの中に収まっちまってて、余程の事がないかぎりお外に出る必要性を感じないのだ。例外は女性クルーの殆どにとって必須な化粧品などは置いて無いのですぐに町に消えて行ったけどね。

まぁ結局のところ、暇な連中は結局酒場に来るって訳なんさ。

 

「女将さん!とりあえずおすすめを頼むッス!あ、こっちの子にはジュースで」

「あいよ」

 

仲間引き連れ酒場に行く。ロープレだと仲間集めのチャンスだよな。そんな事考えつつ適当に注文を入れて空いている席に……ん?俺が頼んだのは勿論酒ですけど何か?法律が違うからお酒は二十歳になってからが無いから良いんだよ。それで体調崩してもあくまでも自己管理能力が無かったっていうシビアな世界だしな。

 だが妹君にはまだ飲ませない。いや正確には彼女が酒を飲みたがらないだけだが……味覚的に苦手なんだとさ。アルコール。美味しいのに…。

 

「ティータや、この皿を八番テーブルにはこんどくれ」

「はい、お母さん」

 

適当に酒を傾けながらくつろいでいると、視界の端に俺達と同年代の女の子が手伝っているのが見えた。どうやらここを切り盛りしている女将さんの娘らしく、この酒場は母親と娘の二人で運営しているらしい。

ふーむ、それは良いとして…はて?彼女を見た時に脳裏に何かを思い出しそうな…何だったけかな?

 

「―――ティータ?もしかして隣に住んでいた、ティータ・アグリノスか?」

「え、何であなた私の名前知ってるの?」

「おいおい俺の事忘れたのか?トーロだよトーロ。良く一緒に遊んだじゃねぇか!」

「あ、ああーっ!アンタはトーロっ!?」

 

そんな中、何やら店娘を凝視していたトーロが声をかけた。どうやら彼女とトーロと知り合いだったらしい。昔話に花を咲かせたいだろうから、しばらくそうっとしといてやるかな。

 

「おい、見ろよ…トーロの奴あんなカワイイコちゃんを引っかけやがった」

「何だって?―――まじ…かよ…。クッ!トーロの癖に!」

「あの野郎、アレはアレか?見せつけてやがんのか?」

「――〆サバ丸はどこにしまったっけ?」

 

でも、とりあえず物騒な目をしているクルー連中は連れていかないといけないな。

コレ艦長の業務ちゃうんやけど…まぁサービスだ。昔の友達との時間を楽しみたまえトーロ君。

 

 

***

 

 

■その後のユーリin0Gドッグ酒場(隅っこ)■

 

「艦長どいて……アイツ殺せない」

「そういう訳にもいかないなぁ……てか人の頭をかち割れそうなほど大きなそのジョッキを置けッス」

「〆サバ丸……ククク」

「刃物は洒落にならんからやめい!」

「退いてくれ艦長、俺達は殺んなきゃなんねぇ…俺達と同じ彼女無し達(ミナシゴ)の為にッ!」

「だから、昔馴染みに会ってるだけじゃないスか、そんなに目くじら立てんでも」

「艦長には彼女が居るからわからねぇんだ!俺達みたいに出会いが少ないチョンガーの悲しみが!俺達の心が解るかッ!!」

「「「そうだそうだ」」チェルシーさんをよこせー!」

「でもねぇ?―――というか彼女って誰の事ッスか?あとチェルシーは大事な妹やぞ!よこせとか言わんと自力でアタックせんか!」

「あ!トーロの奴おなごを連れてどっか行くぞ!?」

「なぬッ!?艦長ソコどけい!こんの“モヤシ”やろう」

「「「アッ!?」」」

「―――…………ククククッ」

「あ…ああ…ヤベ」

「あーそうかそうか………」

「バカ!お前なに禁句言ってんだ?!」

「貴様らは死んだ方がマシな口かな?かな?」

「おいオメェ!早く艦長に謝るんだッ!」

「か、艦長ごめ「小便は済ませたか?神さまへのお祈りは?部屋の隅でガタガタ震えて命乞いをする準備はOK?」――まいがっ!ちきしょー!」

「「「「俺らまで巻き込――ぎゃーー!!!」」」」

 

 

――――この後、数名がフネの医務室送りとなった。

 

 何かお酒が入ってたからついやっちゃったんだ。てへ。

 

***

 

 

酒場から引き揚げてエレベーターにて一泊し、アバリスの置いてあるドックに戻ってくると、既に整備も終わり補給物資の搬入も終えており、発進を待つばかりとなっていた。後は地上に降りた連中が帰ってくれば、そのまま発進可能な状態である。しかし一晩で整備を終えるとはジェバンニも吃驚な未来チートだぜ。それは良いとして、俺も発進準備の為に艦長席で色々とチェック項目を消化していた。

 

『おーい!ユーリ!居るか?』

「ん?どうかしたんスか?トーロ」

 

そんな時、トーロが携帯端末を使って、俺に直接通信をつないできた。

 

『えっとよ。酒場に女の子居ただろ?』

「ああ、トーロと話していた看板娘さんの事ッスか?」

『えっ見てたのか?』

「そりゃまぁ。あんなに堂々とナンパしてればねぇ?」

 

にやにやと笑みを浮かべながらそう言うと、困惑した顔で頬を掻くトーロ。まぁお前さんらのお陰で、俺はお邪魔虫たちの排除をしなけりゃならんかったんだがな。

 

『ナンパじゃねぇけど…そうか、じゃあ話は早ぇ、その娘フネに乗せるぜ?いいよな』

「え?ちょっとトーロッ!?―≪ブツッ≫―通信切りやがった…」

 

用件だけ言ってこっちの言い分を聞く前に通信を切るとか……あの野郎、いきなりなんだってんだ?絶対アイツ学校の通信簿に【人の話は良く聞きましょう】とか書かれるタイプだろ。つーか、あの娘の乗船許可、俺まだ出して無いんだけど……まぁ良いか、ちょうど生活班の方で人手が足り無かったしな。

クルーが足りないフネに貸し出されるAIドロイドもそこそこ性能は良いんだけど、やっぱ人間の方が受けが良いしね。しかしトーロとティータ。何処かで引っ掛かっていたが彼女も確か原作でクルーになる娘だった事を今思いだした。ヤバいな、ここ最近の濃い日常の所為かゲームに関する記憶が薄れるテンプレが起こってるぜ。

 

大筋はまだ大丈夫みたいだけど、この先どんどん忘れていきそうだ。そうなる前に外部記憶端末にでも記録しておくか?………いや、やっぱりいいや。誰かに見られたら困るし、忘れるならそれはそれで先の楽しみが増えるだろうしな。大体あのゲーム確かに沢山やったけど、詳細なイベントまで全部覚えてられっかてんだ。

それはともかくとして、女連れ込む新人クルーか……こりゃ小競り合い起こりそうだなぁ……なんか胃が痛くなりそ――いや既に痛い気がする。ううう。ストレスに備え、胃薬と頭痛薬を今度多めに買っておこうと決心した俺であった。

 

 

 

 

―――んで、一人黙々と仕事をしながら待つ事40分。しばらくして彼らはやって来た。

 

「オス、艦長。彼女がティータだ」

「よ、よろしくお願いします」

 

ティータを連れて来た彼は、俺に彼女を紹介して来た。

長身でスレンダーな身体付き、霞んだ桜色に近い髪色をしたロングヘアをたなびかせ、ブルーの瞳が困惑の光を宿しながらも俺を見据えている……でっていう。いや何と無く目の前に居るティータ嬢の姿を言語で表現してみたら自分のポエム力の無さに絶望した。

 

それはともかく、昨日酒場で見かけた時に見た、腰に巻くエプロンとキャミソールとロングパンツ姿から察するに、どうやら仕事中にトーロに連れて来られたっぽいね。だけどトーロよ。それは下手すると誘拐になってしまうぞ?

まぁそれはあとで酒場の女将さんに連絡を入れれば別にいい。

でもさ―――――

 

「トーロよ。出来ればこっちに連れてくる前に、一言でいいからクルーにするかどうかの判断ってヤツを俺に仰いでおいてほしかったんスけど?」

「硬い事言うなって、俺とお前の仲じゃん?それに俺も保安部部長になるしさ」

「………あくまで保安部は設立予定であって決定じゃないから、まだトーロは保安部部長(自称)だって事、忘れた訳じゃないッスよね?ね?」

「そーなのかー!?」

「え、え!?トーロ、アンタ話が全然違うじゃない!俺が一言いえば大丈夫とか言ってたのに!」

「いやね?ティータさんとやら。「ティータでいいです」……ティータよ。こっちもトーロがちゃんと連絡入れてくれればね?こんなに文句言わないんスよ。だけどそこの阿呆は酒場の看板娘連れてくるとしか言って無いんスよね。女連れ込みたかったのかどういうことなのかこっちも判断がつかなかったというか……」

「トーロのバカー!!」

「まて!ラリアットはやめグボッ!?」

 

 おおう、首元を狙い澄ました見事なラリアットがトーロに決まった。

 酒場の看板娘って見た目よりもカイリキー。

 

「うぐぐ、何故だユーリよ。俺は仲間じゃないのか?」

「仲間云々の前に、俺としては艦長の言う事を聞かないクルーの方が問題有るんだけど?」

「え、えっと!ゴメンナサイ艦長さん!このバカの所為で迷惑かけますっ」

 

ラリアットのダメージから数秒で回復したトーロは何故か堂々と……むしろ開き直って胸を張っている。そんなバカとは対照的に非常に申し訳なさそうに、そいで緊張気味のティータ嬢を見て俺は苦笑する。と言うかトーロが厚かまし過ぎるだけなのだ。彼女が気にする事じゃ無い。

 

「まぁ、なに、連れて来てしまった以上、今更帰れとは言わないッスよ」

 

頭を下げているティータに俺は手を振って止める様に言うと、彼らの顔に安堵の表情が浮かんだ。

 

「一応聞くんスけど、航路では海賊とか出るし普通に死ねる可能性があるんスけど大丈夫ッスか?」

「荒くれ者相手なら酒場で慣れてます。それにどうしても宇宙に出たいんです!」

「………判った。嘘はないみたいだし、とりあえずティータは生活班の方に廻ってくれッス」

「え、そんな簡単に部署まで決めても良いんですか?」

「いや、ウチは最近ロウズから出てきたばっかりで人員が足りないんスよ。一応ウチでは自分の適性が判るまで部署を転々として貰うのがルールなんスが、それよりもティータくんはアウトローな連中が集う酒場で切り盛りしてたんスよね?なら、生活班の方が都合がいいでしょ?」

「は、はい!よろしくお願いします!!」

「あと、この携帯端末を渡しておくッス。これがこのフネに乗る際の身分証代わりッスから」

 

俺は彼らが来る前に用意しておいた携帯通信機をティータに渡す。コレは通信やその他機能を備え、おまけにメールやらメモ帳やらゲームまで出来、財布にもなる。しかも、耐衝撃で宇宙空間でも完璧に動くし、この通信機に個人のデータを入力する事で、このフネの乗組員の証明となる。

しかも脳波コントロールできる……は鉄仮面の方じゃないので置いておいて、この通信機のいいところは、自分の艦の見取り図も入っているという親切設計なのだ……これを作ったヤツは儲かった事だろうなぁ、メッチャ便利だし。

 

彼女は俺から通信機を受け取ると、再度頭を下げた後、ブリッジから退出した。んで彼女に着いて行こうとするトーロを俺は呼びとめた。待て待て、まだ俺のバトルフェイズ…もとい、お前さんとの話は終わって無いぞ?

 

「さてトーロ君、お前さん報告義務を怠ったから――便所掃除一週間ッ!!!」

「えー!なんだよそりゃ!?」

「文句言うなッス!お前の所為で俺がどんだけ苦労する羽目になる事かッ!」

 

色々と他部署の折り合い付けるの大変なんだぞこの野郎ッ!今回だってティータがこっち来るまでにどこの部署が一番手が欲しいか調べたんだぞ!だれか人事部を作ってください!人事裁量権があるとはいえ色々と大変で切実デス!

俺の処罰に対しブー垂れるバカを視界から外すように努めつつ、俺は頭痛を感じる眉間を抑えて艦長席に深く座りなおした。

 

「はぁ、まったく。イベント盛りだくさんだなこの野郎……」

【お疲れ様です艦長】

「おお、誰だか知らないけど労いの言葉ありがとさんッス」

【いえいえ】

 

ん?ちょっと待て―――

 

「おいトーロさんや。お前さん今なんか言ったスか?」

「あーん?うんにゃ?と言うかお前誰に向かって返事返したんだ?」

「誰って……」

 

ちなみに、現在ブリッジには俺とトーロしかいません。

新しく整備と改造を加えたアバリスの各部署に皆顔を出しているからだ。

てことはですね。俺は一体“誰に”話しかけたんでせうか?

 

【あのう】≪ヴォン≫

「「わひゃっ!?」」

 

再び得体のしれない声がブリッジに響く。これは、まさか心霊現象!?

SF真っ盛りな世界でオカルトとかマジ勘弁ッスよ。ヤダー!

 

とにかく、いきなり知らない声が聞えたかと思うと、俺の背後に内線用の空間ウィンドウが展開された。どうやらそこから声がしていた様だ。びびび、ビビってたわけじゃないんだからネ!これでも艦長なんだから山のように動かないんだから勘違いしないでよね!

 

あれ?でも一体どこの誰だ?と言うか、このウィンドウ…何故にサウンドオンリー表示なの?

 微妙に怖いんだけど……。

 

「ええと、どなたさんッスか?」

【え、そんな……艦長が私をアバリスに乗せてくれたのに……】

 

Q,あなたは誰ですか?A,私のこと知らないんですか?

 どうしよう、問答が成立してないよ。というかトーロ、仲間を見る様な眼でこっちみんな!俺は少なくともお前みたいに行き成りクルーを連れてフネに乗せるような事はしとらんちゅーに。

 

「いや、と言うかこんな声の方に心当たりないんスけど?ちなみに何時頃乗船したんスか?」

【ええと、ついさっきです。いえ、正確には6時間程前には乗せられて、つい先ほど目が覚めたと言いますか……ハイ、そんな感じです】

「ちょっ、ちょっと待った!6時間前って言ったら、ちょうど整備班がフネの分解整備が終わって、ついでにモジュールの組み替えをしていた時間ッスよ?」

【ええ、ですからその時に乗りました】

「あーうー?余計に訳が解らんス!とりあえず顔を見て話したいから、サウンドオンリー表示をやめるッス!」

【いえ、あのう…お恥ずかしい事に、私には顔が無いもので】

 

は?顔が無い?おいおい、そんな筈……あ、まさか。

 

「もしかして何スけど、あなたは人間じゃ無い?」

【ええ、その通りです艦長】

「幽霊!?マジで!?」

「トーロうっさい!……アンタ、多分スけどドロイドかロボットか何かッスか?」

【厳密には違いますけど、広義的には合っているかと思います】

「なぁ、ユーリ、結局誰なんだコイツ?不審者だったっていうなら俺がつまみだして…」

「ああ、大丈夫っス。もうおおよそ見当がついたから」

 

俺が指示したモジュール入れ替え中に入り、つい先ほど目覚め、しかも人間じゃない。

ふふふ、ココまでヒントが出てきたんだから、もう解ったよ。ワトソンくん。

 

「ねぇ?アバリス」

【はい、艦長】

「え?アバリスって、このフネとおんなじ名前じゃねえか」

「同じ名前って言うか“そのもの”なんスけどね」

【その通りです。流石は艦長です】

 

 そう!この声の主はアバリスだったんだよ! ΩΩ Ω<ナ、ナンダッテー!!

 

「う~ん?そのものってなどういう事だ?俺には良くわかんねぇんだが?」

「何、簡単な答えッス。この声の主はアバリスに取り付けた新しいモジュールのコントロールユニット何スよ、トーロ君」

 

この声の正体は俺がモジュールを組みかえた際に新しく組み入れた新規モジュール。各所自動化を行い乗組員の人員削減…もとい必要数を減らせる便利システム。コントロールユニット、通称CUのAIであった。

そういえばモジュール設置の操作をした時、コンソールに『自律回路のON/OFF』って表示が現れたんだっけ。その時はなんの事なのか全然意味が解らなかったから、とりあえず何かの機能だろうと思ってONにしたけど、こういう意味だったのか。

しっかしまぁ、以前ロウズの軌道ステーションで初めてローカルエージェント見た時も流暢に受け答えするスゴイAI積んでた事に驚いたけど、まさか戦艦の管理AIにまで人工知能と人格を搭載できるなんて流石は未来だ。

しかもこれってある意味でオモ○カネじゃねぇか…胸が熱くなるな。

 

「ま、とにかくさっきから話しかけてきたのはコントロールユニットくんなんスよね?」

【はい艦長、私は確かにCUに搭載されている管理AIのインターフェイスです】

「あー、道理でこのフネそのモノって訳なのか」

「やっと気付いたッスかトーロ?ま、人件費が掛からない優秀なクルーが増えたと思えばいいッスよ」

「……そうだな、それじゃあこれからよろしくだぜ?アバリスさんよ」

【はいトーロ、よろしくお願いします】

 

ピョコンとウィンドウをトーロの前に出現させてそう答えるAIアバリス。しかし完璧な受け答えが出来るAIだね。インターフェイスが別格なんだろうか?まぁ人間サイズのアンドロイドですら結構個性豊かだったから、戦艦に乗せられるAIともなれば、それこそかなり高性能なんだろうな。きっと。

とりあえず、一人と一機の仲間が増えたし、これからも増えてくだろうなぁ。なんせ現状アバリスを動かしてるのって、人間クルーを除けば半分近くがレンタルした通商管理局謹製のAIドロイドだもん。CU入れたから、AIドロイドの数を減らせるだろうけど、それでもまだまだ足りない。

 

AIドロイドはメリットとして皆能力が一定で混乱とかしない完璧な水夫だけど、あくまでフネの運行に支障が無い程度の機能しかない。うーん簡単に言うと専門技能を持たない一般会社員みたいな?そうなると人間みたいに成長出来ない分、デメリットの方が目立つんだよねぇ。俺にはあいつ等の言語自体聞きとれないしな。

 

まぁ、まだ先は長いから?幾らでも人員を増やせばいいさ。

その内にな。

 

「それじゃアバリス、出港までにシステムのチェックと各部システムとの連動走査、それと……まぁ出来そうなことやっておいてくれッス」

【解りました艦長】

「うわぁ、もう使う気満々だよ。AI使いの荒い奴だな」

「トーロ無駄口叩いて無いでスポーツドームで訓練でもしてたらどうッスか?」

「へいへい。それじゃあなユーリ、アバリス」

 

そう言って、手をひらひらさせてトーロはブリッジを後にした。

 

「はぁ」

【お疲れ様です】

「うん、ありがとよアバリス」

【艦長のサポートも仕事です】

 

うう、AIに慰められる俺って一体?

そんな事考えつつも、出港の為の仕事に戻る俺であった。

 

 

 

■ラッツィオ編・第六章■

 

 

 

 

トーロがブリッジを去って、しばらくするとブリッジメンバーが帰ってきたので、新たな仲間のコントロールユニットの管制AIであるアバリスを紹介する事にした。俺がAIアバリスを呼びだして自己紹介を促し、とりあえずブリッジクルー全員にお目通しさせた。

当然、皆唖然しつつ困惑と懐疑の目を俺に向けた。どうも俺が皆を謀っていると思われてしまったらしい。俺はネタに走るけど皆をだましたりはしないのにと内心で少し落ち込んだが、いつもの事なのでユーリさんはクールにしておくぜ。目から流れ落ちるのは心の汗なのぜ。

 

それはともかく、コントロールユニットに人工知能が搭載されていると言う話は、どうやら殆どメンバーの認知外の事だったようで、かなり驚いた顔をされた。流石のトスカさんとかも知らなかったらしい。唯一の例外は、機械いじりが趣味でソレ方面の知識に明るい整備班ケセイヤさんと科学班のブレーンであるサナダさんは流石に知っていた。

でも、普通は人工知能の機能ってオミットするんだって。なんでかって言うと、人工知能には機能の高効率化を図る為に、学習機能が付いてるらしいんだけど、育て方を間違うと変な癖や性格になってしまうんだそうだ。有名な話では、0Gドックで商業もやっているヘイロ・アルタン氏のデルカント号がそうらしい。

サナダさんが語ってくれたそのデルカント号は、シャンクヤード級と呼ばれる巡洋艦クラスを改装した戦闘貨物船であった。そのデルカント号の人件費を安く使用と考えたアルタン氏はフネに件の人工知能搭載型CUを搭載したらしい。だが気が付けばAIの口調がべランめぇ調に変ってしまい、勝手に義理人情に目覚めたんだとか。

なんでもAIを任されたオペレーターが、大昔の映画を集めるのが趣味だったらしく、個人のフォルダに収まりきらなかった貴重な映像データを有ろうことかフネの共有データバンクの中に保管していたんだそうだ。ソレをAI が見て学習してしまい、世にも珍しいべランめぇ口調のAIがいるフネが出来あがったらしい。

 

それ以上に、このサイバネティクス極限期を終えた時代に、太古の映画が残っていると事にビックリだ。前世の皆さん、遠い未来の宇宙でも日本の文化は現存している様です。どんな時代に置いても娯楽とメディアってのは廃れる事が無いし、20世紀あたりなら記録媒体も沢山あるから残ってたんだろうなぁ。流石は文化大国日本(別名・オタクの国)ってか?

 

尚、余談であるがそのフネデルカント号のAIは、何と自分の気にいらない仕事を絶対にやらない上、実に喧嘩っ早いらしい。貨物を狙って襲って来た海賊船相手に操縦士のコントロールを勝手に奪って敵に体当りを仕掛けたのだそうだ。突然の事で慣性制御が追い付かなかったものだから、中の人間はたまったモンじゃ無い。

そう考えるとAI搭載型のC(コントロール)U(ユニット)も問題有りそうだな。育て方を誤ると、クルーの事を考えない実に恐ろしい人格が出来そうなので通常のコントロールユニットAIに人格搭載型は殆どいないってのもうなずける。間違えてドS仕様なAIに仕上がってしまったら……大抵の奴は胃袋が持たないだろう。

 

ちなみにうちのオペレーターのミドリさんはというと誰に対しても礼儀正しく、常に冷静を心がけるオペレーターの鏡みたいなクールビューティーである。彼女が特殊な趣味をもっているとかいう話は聞かないから、デラカント号みたいにはならないとは思う……多分ね。

 

***

 

 さぁ新たなる仲間を得た俺達が何をするか。それは―――

 

「―――敵前衛艦2隻大破、後衛艦は航行不能に陥った模様」

「EVA要員は、ジャンクの回収に当たるッス。アバリス、アームのサポートお願い」

【了解しましたです艦長】

 

―――今日もいつものように宇宙ゴミ清掃、海賊退治と来たもんだ。

 

コレが結構ボロイ商売になるんだから止められませんがな。

敵を倒してジャンク品を回収、それを仕分けして倉庫にしまっちゃおうねー。

 

「おつかれユーリ、なんか飲むかい?」

「あ、トスカさんおつかれッス、じゃあ水を頼むッス」

「あいよ…しかしあんたも頑張るねぇ」

 

渡されたボトルのキャップをひねり、中の水に口を付けた時、トスカ姐さんがそう呟いたのを聞いた俺は何がと疑問符を浮かべた。

 

「いやさ?普通の0Gドックだったら、自分のフネを持っただけで満足しちまうのが多いんだ。アンタみたいに0Gになってからでもがむしゃらに頑張るってのは何かよっぽどの目的があるのかと思っちまうよ」

【艦長みたいに頑張る人は珍しいのですか?】

「まぁ端的に言えばそうだね。それも若さかねぇ」

「トスカさん……それ、おばはんみた――すいません。口が過ぎましたお許しください美しいお姉さま」

「一度死ねばいいと思うよ?」

「あおん」

 

ギロヌ、美女の視線が突き刺さる。あいては死ぬ。

 

「スタンダップ!」

「いえっさー!」

 

 そして二秒後に復活する。目線の被害は主に俺です。

 

【あのう、何をしてらっしゃるんですか?】

「ん?タダのスキンシップだよ。なぁユーリ」

「え、ええ……(あの眼、マジで殺られるかと思ったZE)」

 

 女性に年齢関係の話題はタブーなのは未来も変わらないようである。

 

「それにしても、よもやあの時の青白い坊やが戦艦の艦長になるなんてねぇ」

「あー、それは自分でもビックリしてるッス」

「長い事打ち上げ屋をしてたが、アンタみたいなケースは…まぁ見たことないね。でも大抵は打ち上げの仕事を終えたらすぐに別れるから、そいつらの行く末を見た訳じゃないけど」

「あれ?そうなんスか?てっきりそれなりに長く居るものかと」

「そりも合わなきゃ好き勝手させてくれないヤツと仕事以外で長く居たいと思わないさ。中には少し優しくしてやったら勘違いしたバカが襲い掛かってくる事もあったしね」

「うわぁ、そいつらの末路が絵を見るように明らかっス」

「とうぜん。身ぐるみ剥いでドッカの星に放置してやったよ」

「身ぐるみとか、丸儲けッスね」

「全裸で何処まで生きられるかな」

「……怖ッ」

 

まったく、0Gドッグの女性は逞しいったらありゃしない。

でも、もしあの時トスカ姐さんのフネであるデイジーリップ号が、それ程酷く壊れていなかったら…ましてや応急修理もいらなくて資材を漁りに行かなかったら…俺は多分、バゼルナイツ級戦艦であるアバリスの設計図に出会うことはなかっただろう。

妹君のチェルシーも助けられず、駆逐艦一隻で精一杯の艦隊を組んでデラコンダと玉砕し、まだ見ぬ宇宙を夢想しながら、崩壊するブリッジの中で炎に包まれて己の無力を嘆いていたかもしれない…やだ、ちょっとカッコいいじゃない。

まぁ死にたくはないから実施はしないけど、とにかく全ては運とアバリス性能のお陰かな?ああ、あと個性的で愛すべきクルー達とのね。閉鎖されたロウズという環境に囚われ、その優秀な技能を埋没させていくしかなかった彼らと、ただ一隻で領主軍とやり合おうとした俺。命知らずここに極まれりって感じだな。

だが俺と彼らの望みは一つ、宇宙に出たいという事だった。同じ望みがあるからそこに仲間意識が芽生えたんだ。もう手放せないし手放す気もないぜ。

 

「これからも変わらずに仲良くしてきましょう」

「ああ、そうだね」

 

 てな訳で、ホイ握手っと。

 そしてそれを見ていたクルー達が急にヒソヒソとし始める。

 

「おいおい、艦長…まさか副長にまで手を伸ばす気か?」

「妹だけじゃ飽き足らない。そこには痺れも無いし、あこがれも無い…かな」

「若いのう」

「なんとも、見ていて飽きないものだ」

「でもでも~、アレは無いと思う~」

「……それには同意しますね。別に誰と付き合おうが関係は有りませんが、場所を考えて欲しいものです」

【うーん、人間って複雑ですね。あ、ジャンク回収が終了したのでEVA班を収容しました】

 

何とも辛口コメントのようです。友情の確認にそこまで言われなアカンのやろうか。

 

「し、仕事に戻るッス!」

「そ、そうだな」

 

なんとなくこっ恥ずかしくなったから、とりあえず仕事に逃げよう。こういったのは下手にうろたえると格好の標的にされる。Bekoolだ…あれ?BeCoolだっけ?ま、どっちでもいいぜ。トスカ姐さんもそう思ったらしく、そそくさと副長席で外のEVA班と連絡を取り合っている。うーん、なんか可愛いぞ。

でもそれを口に出したら、きっとさっきみたいに人が殺せそうな程睨まれそうだから言わない。宇宙を生き延びるには先の先を読む事が必要なのだ!……とにかく俺も仕事しよう。さぼっちゃいけないよ。うん。

 

「ん?艦長、レーダーに感あり~」

 

で、俺もコンソールを動かそうとしたその時であった。レーダーに反応があった。宇宙空間では隕石というか漂流する岩石とかデブリってのは珍しくはない。ないのであるが。

 

「ふむ………リーフ、ちょい針路変更、取舵30度ッス」

「アイアイサー」

 

 ちょいと動きを見れば、まぁ大体判る。操舵手のリーフに指示を送り、アバリスの進行方向を少しだけ変えて相手の軌道が変化するかを観察した。ただの漂流物なら特に変化は見られない筈であるが…。

 

「―――アンノウンも進行方向が変わります。人為的な物体の移動及び人工物の可能性あり」

「反応あり、スか……エコーさん、向かってくるヤツの大きさは?」

「レーダー最大レンジで測定ー、一番小さいのが120m~、最大450m~」

「センサーがインフラトン機関の反応を探知した。向かって来てるのはフネだぞ艦長」

「航宙識別シグナルは?」

「反応ありません。切っていると思われます」

「航路上での航宙識別を切る…完全な敵対行為…――トスカさん」

「ああ――全艦第ニ級戦闘配備!命令が出るまで自分の部署で待機してな!」

 

 敵かは不明…いや十中八九敵だろうけど…アンノウンの接近にあわただしくなるブリッジ。トスカ姐さんの方を向くと俺の意図を理解した彼女が即座に艦内に戦闘配備を敷いてくれた。機関出力が上がり、センサーの出力がさらに上がる中、戦闘システムの立ち上げがAIアバリスの補助を受けて数秒で完了する。

 航法システム・全周囲監視システム・インフラトン機関出力・火器管制・重力慣性制御・APFS、すべてオールグリーン。思わず花まるが空間ウィンドウに表示されるほどにパーフェクト――まさかの花の戦艦ネタをヤルとは、ハラショーだAIアバリスよ。

 

「機関出力上昇、エネルギー充填率100%」

「距離を一定に保つッス。両舷全速。それと主砲への回路を開け、砲雷撃戦用意!」

「主砲全自動射撃準備用意良し!軸線砲への閉鎖弁オープン!」

【各砲、各センサーと連動、修正誤差入力開始します】

「敵艦のインフラトン反応増大、高エネルギー探知」

【オートディフェンス作動、APFシールド出力アップ】

 

 そしてこちらが機関出力を上げた途端、アンノウンから凝集光のビームが発射された。

 

≪―――ズズーンッ≫

「「「ぐわっ!」」」

「「きゃっ!」」

【後部第3スラスター近辺、装甲板にレーザー砲撃が命中しました】

「APFシールドが正常作動したので損害は有りません…ですが、先ほどの揺れで、食器が割れたと、タムラさんから苦情が来てます」

 

ソレはどうでも良いッス。

 

「敵艦の位置は変わらず~!本艦より後方の~500の辺りにいます~!」

「敵艦を光学映像で捕えました。モニターに投影します」

「コイツは…」

 

モニターに映し出されたのは、今までの艦船に比べたら100mは大きなフネ。エネルギー量から考えて巡洋艦クラスのフネであった。そのフネは艦首に片刃の剣のような形をしたセンサーブレードを装備し、海上船のような中央船体からまるで蛇が鎌首をもたげているように設置された艦橋をそなえていた。

そして、その中央船体をサンドイッチするかのように、両舷に六角形の盾の様な形状をしたバルジがせり出しており、その楯状のバルジには前方に向けられた対艦砲と思わしき注射器のような形状をした軸線砲が装備されていた。楯状構造物は船体を挟んでいるので合わせて一対の大砲というかんじである。

 射程から考えると、どうやらこの巡洋艦がこちらを狙って攻撃してきたと見ていいだろう。

 

「艦種識別中………出ました。エルメッツァを中心に活動しているスカーバレル海賊団専用巡洋艦、オル・ドーネ級巡洋艦です」

「たしかオル・ドーネ級の基本設計はエルメッツァ政府軍から流出したサウザーン級巡洋艦からの流用だ。装甲と機動力に優れており接舷しての白兵戦が得意な戦法らしいよ」

「マジっすかトスカさん……なるほど設計思想が海賊船ってワケだ」

「ま、接舷して制圧した方が無傷でフネを奪える可能性が高いからね」

【敵艦の速力上昇、接近してきます】

「ふむ…艦長、どうやら敵艦は幾らか改造をしてあるようだ」

「そうなんスか?サナダさん」

「ああ、と言っても機動力と通信機能の強化を施してある程度みたいだがな。それでもここいらのレベルで考えれば大分早いフネのようだ」

 

そう…なのか?手元のサブモニターに映っている原型と殆ど変らないんだけど?つーか、なんで見ただけで解るんだろう?マッドの血筋?そんな事を考えながらも速度を上げて迫るオル・ドーネ級を前に、俺は各部署に迎撃指示を下そうとした。

 

「――……艦長、敵艦が交信を求めています」

「え?それって目の前のアレからッスか?」

「はい、敵艦からのコールです。どうしますか?」

 

 だがその時、何故か敵から通信が来た……あれ?デジャブを覚えるお(^ω^;)

 

「……解った。回線つないでくれッス」

「解りました。回線をつなぎます。――アバリス、信号出力の調整お願い」

【了解です】

 

ぶっ放して来ておいて、一体なんの為に通信を入れてきたのか理由を知りたかった俺は、恐らくスカーバレル海賊団のフネからと思われる通信を受ける事にした。少しだけジャミング出力がされていたので、回線をつなぐ時にしばらくモニターにはノイズが映っていたが、ジャミングを止めた事で徐々に映像が形になっていく。

映ったのは、大体50歳くらいの男性だった……何だ男か。

 

『よう、俺はスカーバレル海賊団のディゴだ。さいしょは大型輸送船(カモ)かと思ったんだが、手前ェあれか?ココ最近ウチの部下を沈めて回ってるっていう噂の大型戦艦か?』

「噂?」

『海賊と見るやいなや見境なしに襲い掛かって尻の毛まで引っこ抜いて行く大型戦艦を持った連中がいるっていう噂だ』

「あー、なんか身に覚えがあり過ぎるというか…」

『噂は本当だったか…ならば部下の敵討ちを兼ねて今度はお前が身ぐるみ剥がされる番だ!≪ブツ≫』

「通信、一方的に切られました」

 

なんか取りつく島も無く通信切られたな。

というか……

 

「身ぐるみ剥ぐね…海賊は海賊って事か…つーか通信入れて置いて、こっちの話聞かないのはどう何スかね」

「ユーリ、向こうと戦闘に入るよ」

「わかってるッス…これより戦闘に入る!」

「聞いたねお前ら?艦首を敵艦に向けろ!」

「アイサー、方位転換、艦首を敵艦に向けます」

「EA・EP作動開始、レーダー撹乱波発信!」

 

フネの両舷に設置されたスラスターが稼働してフネの針路を変更する。

敵さんの居る方向に向きを合わせてフネを停止させた。

 

「微速前進ッス」

「微速前進、ヨーソロ」

「敵、出力上昇を確認。コレは……全砲一斉射です」

「回避っス!」

 

敵艦隊からの全砲射撃を前に、アバリスは1300mの巨体が軋むのを無視して、限界機動で攻撃を回避した。回避運動を取るごとに発生する強烈なGを、重力井戸(グラビティ・ウェル)のAIアバリスのサポートによる調整を使い中和する事で、船内の人間がギリギリ耐えきれるくらいのGにまで落している。

 尚、もしも重力井戸の恩恵が無ければ潰れたトマトより酷い事になっていただろう。……想像したら気持ち悪くなった、オエ。

 

≪ズシューン…≫

「回避成功、次の攻撃までの予測インターバル、約120秒」

【前面装甲板に被弾、APFS作動により損害無し。APFS減衰率12%。センサーに問題無し】

「こちらも反撃するッス!」

「ポチっとな!」

 

艦首大型軸線レーザー砲、及び上部甲板の旋廻式小型レーザー砲と中型レーザー砲がグリンと稼働すると、ロックオンした標的に向けて放たれた。反撃の光弾は宙域を横断して敵艦隊に迫り―――

 

「エネルギーブレッド、大型と中型は回避されました」

 

―――まだ距離があったからなのか、命中弾はなかった。

 

「射撃諸元を再入力ッス。次は当てる」

「艦長~!大変っ!」

「どうしたッス?!」

「本艦の右舷と左舷方向から~敵艦が急速接近~!!数はジャンゴ4、ゼラーナ2!」

「挟撃されましたね」

 

どうやら、目の前の巡洋艦は囮だったらしい。このフネの兵装だと構造的に中型レーザーしか、横の敵に攻撃が出来ない。最大限の弾幕を張るにはどっちかに回頭するしかないが、片方に向いている間にもう片方が襲い掛かってくることは明白じゃねぇか!

 

―――クソ!艦隊を組んでおけばこんなことには!

 

【敵、戦闘出力を出しています】

「敵艦発砲」

「耐ショック用意!」

≪ゴガガガン!!≫

「「「ぐわっ!」」」

「「ッ」」

「左舷第2空間ソナー、及び右舷第5シールドジェネレーターに被害発生、ダメコン班を向かわせました」

【APFSにより攻撃は減衰、シールド出力70%にまで低下】

 

 バカスカと数に物を言わせ攻撃される。こちとら戦艦なので耐久力に定評があるが、攻撃されればされるほど壊れて修理に手間を食う事になる。

クソ、とにかく反撃しなければ!

 

≪ズズーンッ!≫

「うわったっ!?損害報告!」

【上甲板第一第二主砲塔損傷、ターレットをやられて動きません!】

 

 だがその時、連続した敵の攻撃によりAPFSが減衰したその一瞬を突いて、運悪く飛びこんだレーザーがAPFSを貫通して小型中型レーザー主砲塔に損害を出した。レーザー砲自体は無事であったが、基部のターレット部分に高エネルギーが当たった事で電子制御的な問題が発生し、ブリッジからの操作を受け付けない状態になった。

 

「全速後退ッス!リーフさん!艦内の事は気にしなくて良いから思いっきり動かして回避して!」

「ちょっ艦長!そんなことすれば!」

「Gで怪我するのと!砲撃で消し炭にされるのとどっちが良いッスか!?…大丈夫、」

「ぐ、了解!」

 

マズイマズイぞ!こん畜生!このままじゃマジでヤバいぜ!

ああ、もう!デフレクターとかも積んどけば良かった!ないよりマシになるんだもん!

 

「アバリス!敵の射線を予想できるッスか?」

【ちょっとお待ちを……出来ます!レーダー上に表示します】

「リーフさん!その射線にかぶらない様にフネを動かしてくれッス!」

「わかったやってみる!」

 

コレで少しは時間が稼げるはずだ!

 

「ストールさんは中型レーザーで反撃!沈めなくて良いッス!相手に撃たせない様にするッス!」

「アイサー艦長!だが倒してしまっても構わんのだろう?」

 

ちょっ!おま!何処でそのネタ仕入れた?!

 

「構わん!出来るならやっちまえ!ッス!」

「了解した、艦長…ん?」

「ストール、どうかしたか?」

「いや、火器管制に割り込みが…?」

 

おいおい、そんな訳…ってホントだ。

こっち(艦長席)からでも確認できる。

 

「アバリス、どうなってるッス?」

【ちょっとお待ちを……解析完了。火器管制の一部に謎のバイパスが出来てる】

【しかもごく最近作られたものです。バイパス先は…】

 

その時だった。いきなりガコンという音が、艦何に響いたのは。

 

「い、今の音は?」

「か、艦長!あれッ!」

「何ス…なんだぁ?!」

 

俺が見たのは、上部甲板の大エアロックが開き、

中から何かがせりあがって来たところだった。

 

【……バイパス先は、第一倉庫】

 

そうアバリスが小さく言った事に気が付かなかった。

と言うか、誰だ戦闘中に?

 

『ふっふっふ…』

【戦闘中です。通信は後にしてくださいケセイヤさん】

『あっ!こら人がせっかく演出してるって言うのに!』

「何やってるケセイヤ!今は戦闘中なんだよ!?」

「と言うか、セイヤさん。ダメコン室は?」

 

班長が戦闘中に抜け出たらアカンやろ?

 

『ああ、副班長に巻かせてあるから大丈夫だ。それよりも…』

 

通信のパネルに映ったケセイヤさんは、宇宙服を着ている。

どうやら、艦内だけど空気が無い所に居るらしい。

ま、まさか――――

 

『こんな事もあろうかとぉッ!今まで倒した敵船から拝借した兵器で、旋廻式砲を作って置いたぜ!!』

 

や、やっぱりッ!!

 

「くッ!その台詞は私のだ…」

 

いやいやサナダさん、何対抗意識燃やしてるんだよ。

てか、もしかして――――

 

「あの配線がむき出しの、どこかガトリング砲みたいなアレがッスか?」

『おう!合間に作ってたから、外装まで手が回らんかったが、ちゃんと使えるぞ?』

「艦長~、敵艦接近してくる~!」

「ッ!追及は後にするッス。本当に使えるッスか?」

『おうよ!』

 

ケセイヤさんは、そう言うと凄く良い笑みを浮かべ、サムズアップした。

それは何かをやり遂げた漢の顔であった。

 

「解ったッス。それなら、ストール!アバリス!」

「ああ、火器管制に本リンクさせてる!」

【サポート既にしてます!使用可能まで、後20秒】

 

流石にバイパス回路だけじゃ、高速で動く敵さんにあてるのは難しい。

そして話を聞いていた彼らは、既にセッティングを開始していた。

 

「よしッ!コレで使える!」

「直ちに発射ッ!目標右舷、敵前衛一番艦!!」

「了解!発射!」

 

≪ドドドドシューンッ!!≫

 

甲板からブリッジまでは大分距離があると言うのに、艦内に冷却機の音が響き渡る。

未完成故に消音機が設置されていない所為だろうが、むしろこの音が頼もしく感じられる。

だが、正規の装備じゃないソレが敵に効くのか?という一瞬感じた疑問は、次の瞬間晴れていた。

 

配線丸出しの、無骨で未完成な砲から放たれたのは、まさに弾幕。

さながらガトリングキャノンとでも言えばいいのだろうか?

未完成故に、貫通性を持たせるより、面での制圧力を強化したって所か。

 

撃つたびに銃身がブレ、射線がずれるのだが、むしろそれが面制圧力を高める結果を出している。

放たれた弾幕は、敵前衛一番艦のみならず、横に居た前衛ニ番艦にも掃射される。

 

大小様々なレーザー砲を寄せ集めて作ったガトリングキャノン(仮)は、

レーザーの波長に合わせて防御するAPFシールドに揺らぎを起して減退させ、

ジェネレーターに過剰な負荷を引き起し、オーバーロードさせてしまうのだろう。

 

前衛にいた2隻は、弾幕の嵐によって、シールドの限界値を越えてしまいそのまま爆散。

辺りに残骸が散らばって行った。

 

「す、すげぇ」

 

誰かがそうつぶやくのが聞こえた。

俺もそう思う。敵さんも驚いている様だ。

良し!この隙に!

 

「う、右舷の敵2隻の撃沈を確認」

「とりあえず全速後退!エネルギーをチャージするッス!」

「ア、アイサー!全速後退!」

【エネルギーコンデンサーにチャージ開始、甲板臨時旋廻砲、再度使用可能まで後120秒】

 

後退し、エネルギーが貯まり次第、このまま一気に突破しようと考えていた。

だが――――――

 

「こ、後方より接近する艦影多数~!艦隊です~!」

「海賊か?」

「わ、解りません~!スキャン結果からすると、海賊では無いみたいですけど~」

 

どこの艦隊だ?こんな戦闘宙域に来るなんて……まさか。

 

「アバリス!背後の艦隊はデーターベースに該当するのは無いッスか?!」

【しばしお待ちください………該当あり、ラッツィオ軍基地所属のオムス艦隊です】

「ラッツィオ軍基地?まさか後ろの艦隊はエルメッツァ中央政府軍かい?!」

「知ってるスか?トスカさん」

 

俺が聞こうとした瞬間。

 

【後方の正体不明艦隊より、インフラトン反応の増大を確認】

「なッ!?まさかあいつ等俺達ごと巻きこんで撃つ気か?!」

「エネルギー尚も増大!砲門開口、発射されます!」

「か、回避をッ!」

「だ、ダメだ!もう間に合わねぇ!」

 

なんてことだ…まさか、俺はこんな所で終わるのか?

俺達は背後の艦隊から放たれるであろう、レーザーにより粒子に還るのか?

 

 

そう誰もが絶望する中――――――

 

 

空間モニターに映る背後の艦隊から―――――

 

 

画面が白くなるほどのレーザーが発射された―――――

 

 

 

「…エネルギーブレット、本艦到達まで……あと10秒」

 

 

 

オペ子のミドリさんの呟きが聞こえる…どう見ても避けられない。

幾らこのフネのAPFシールドの強度が高くても、背後の艦隊はかなりの規模だ。

しかも、大半が恐らく軍用の駆逐艦クラスか巡洋艦クラス。

 

ロウズ警備隊連中のレーザー砲とは訳が違う、高出力のレーザーを装備しているだろう。

喰らえば、さっき敵に起こった様にジェネレーターがオーバーロードを起して、此方がボン。

そして着弾の直前、覚悟を決めた俺は思わず目を瞑ってしまった。

 

 

………

 

 

…………

 

 

……………

 

 

………………

 

 

…………………?

 

 

「あ、あれ?衝撃が来ない??」

「エ、エネルギーブレット、本艦を通過しました」

「な、何だって?!」

 

どうなってるんだ?一体?

 

「エネルギーブレッド、本艦を通過して海賊たちに向かいます!」

「これは…助けられたって事…なのか?」

 

それにしては、やり方が強引な気もしないでも無いんだが…。

通過したエネルギーブレッドは、前方のオル・ドーネ級以外を薙ぎ払ってしまった。

目の前の巡洋艦は、ちょうど此方の陰になっていたらしく、レーザーの直撃を免れたのだ。

 

「前方の海賊船!撤退を開始しました!」

「流石に不利だと考えたか…海賊にしちゃ冷静な指揮官だねぇ」

「そうッスね…機関出力上げ!此方も撤退する!!」

 

全速を出して逃げて行く海賊船を見ながらも、俺は後ろの艦隊から逃げる算段を考えていた。

一応海賊を蹴散らしてくれたものの、何の警告も無くこちらゴト撃ったんだ。

最悪の事態まで、警戒しておくに越したことは無い。

 

「艦長!後方のオムス艦隊から通信が来ました!」

「…………とりあえず機関出力は維持、兵装へのエネルギーはカットするッス」

「逃げる準備を怠らないように各部署に通達しておきな」

「アイサー」

 

こうしてアバリスは、エルメッツァ中央政府軍との初めてのコンタクトを取ることになる。

あ~、もうめんどくさそうな感じがするぜ。軍人とかの相手はめんどくさそうだよなぁ。

大事なことなので二度言ったぜ。

 

【通信を繋げます。戦闘の影響で、映像が少しばかり歪みます】

「メインパネルに投影」

 

パネルに映し出されたのは……………なんかピカソの絵みたいになった映像。

 

「…プッ(ちょっと、流石にコレは無いんじゃないスか?)」

「(ノイズキャンセラーを最大にしてコレなんです。もっと近づかないとコレ以上は無理です)」

『こちらはエルメッツァ政府軍所属、オムス・ウェル中佐だ』

 

おっと、音声はきちんと入るのか。

こっちもきちんと返さないと……。

 

「こちらは0Gドックのユーリです。先ほどは危ない所をどうも…」

 

一応、結果的に助けられたんだし、お礼の一言は言っておかないとまずいだろう。

……あんな助けられ方は二度とゴメンだけどな。

 

『いや、こちらもたまたま近くを通りかかっただけだ。

我々の仕事は本来海賊等の脅威から航路を守ることにある。君たちが気にする必要はない』

「そうですか。ですがそれでも、其方の行動によって助けられたことは事実。感謝を…」

『うむ、気持ちは受け取っておこう。ところで、何故君たちは海賊に襲われたのかね?』

「お恥ずかしながら、最近我々は海賊のフネばかりを狩っておりまして」

『ふむ、罠にはめれらたと?』

「その通りです」

 

ケッ!面倒臭い。何でこんな話し方せにゃアカンのや?

早い所終わらせて、普段の喋り方に戻したいぜ。

 

「まぁ、こちらも無事でしたので、我々はこれにて…」

『いや、少しばかり事情を聞きたい』

「…は?」

『私はしばらくラッツィオ軍基地に居る。二日後に来てくれ。以上だ』

「え?ちょっ!」

「通信切られました」

 

おいおい、こっちは行くとも何とも言ってねぇぞ?

なんつーか、失礼つーか、傍若無人つーか…。

 

「オムス艦隊、この宙域を離脱していきます」

「………一度ラッツィオにもどるッス。コンディションはイエローを維持」

「アイサー」

 

とりあえず寄港の指示を出した俺は、後ろに控えるトスカ姐さんに振りかえった。

 

「はぁ、どうしましょうトスカさん?」

「まぁ、軍の連中との中が悪くなるのは避けたいねぇ」

 

てことは…やっぱいかなアカンか?

 

「面倒クセぇ…」

「しかたないさ、コレも艦長のお仕事お仕事…ってね」

「………交代しないッスか?トスカさん」

「今更遅いわ。覚悟決めて会いに行くんだよ」

「へ~い」

 

ああもう、一応連中はここら辺の、複数の宇宙島を牛耳っている政府の人間だ。

下手に関係をこじらせたら、一介の0Gドックでしかない俺が勝てるわきゃねぇだろ。

 

「一応今後の予定、ラッツィオで補給したら、そのままラッツィオ軍基地に向かうッス」

 

一応誤解が無いように言っておくけど、ラッツィオ軍基地は惑星ラッツィオのお隣の星だ。

名前もそのまんまラッツィオ軍基地って名前である…………軍人しかおらんのやろうか?

とりあえず、アバリスは一路、惑星ラッツィオに舵を切った。

 

***

 

「――――それで、あんなに揺れてたんだ?」

「そうなんだよチェルシー」

 

俺は昼飯を食べに、食堂に赴いていた。

何故かちょうど休憩に入ったと言うチェルシーも隣に座っている。

 

「…………」

「?どうしたのユーリ」

「……うんにゃ、何でもない」

 

もっとも、此方の様子をカウンターからニヤニヤ覗いているタムラさんを見れば、

なぜチェルシーが休憩時間なのかが、すぐに理解できた。

まぁ言わぬが花ってヤツだから何にも言わんが…。

 

「全く、何故にあいつらんとこ出頭せなアカンねん…俺善良な一般0Gドックだぜ?」

「んー、海賊さん達を狩っている時点で、一般とは程遠いんじゃないかな?」

「そうかな?」

「うん」

 

まぁね、普通の0G達は主に輸送業中心だもんね。

 

「ねぇユーリ、無茶しないでね?」

「だいじょーぶ、むちゅ……」

 

噛んだ。

 

「む、無茶はしない。うん」

「フフ、なら良し、だよ」

 

わ、笑われた…恥ずかしいな、おい。

しかし、彼女も良く笑顔を見せる様になって来たなぁ。俺的良い女ポイント10点upだわ。

頑張って、彼女と良く会話して、仲間に溶け込めるよう配慮した甲斐があるわ

ま、ウチのクルー連中に、嫌なヤツは居ないとだろうけどさ。

 

俺自身、良くクルーと一緒に、他愛ないお喋りをする。

そうやって、艦長自ら話しかけて、艦長とクルーっていう垣根を作らないようにしてるんだ。

 

「なにか飲む?」

「ああ、頼むよ」

 

 

――――――とりあえず、まだ休み中なので、兄妹水入らずでのほほんとしていた。

 

 

若干、厨房の方から、俺も若いころはだとか、青春ねとか言う声が聞こえたけど、気にしない。

気にしたら最後、ネタにされることが解っているからな。

でもなぁ、一応兄妹だって言って有るのになぁ、そこら辺倫理観どうなってんだこのフネ?

 

「なぁチェルシー」

「なに?」

「平和って…いいよなぁ」

「そうね」

 

そしてお茶をズズッと啜る俺。

まぁお茶って言っても紅茶みたいな奴だけどね。味も似てるし。

 

「ところで、ズズ…、どうよ?いい加減生活には慣れたかい?」

「うん、仕事は解りやすいし、何より皆優しいの。良い人たちばかりね」

「はは(半分は僕と君をくっ付け隊の人達だけどね)」

 

何気に会員が増えたらしい。清純派な恋が皆お好みなんだそうで…。

え?どうやって調べた?ウチにはアバリス君という優秀なAI君が味方なモンでね。うん。

プライバシーの侵害?そこはホラ、艦長権限ってヤツだからいいの。

 

「何よりあたたかいわ。このフネは」

「そうなるように、苦労した甲斐があったッスねぇ」

 

まぁ乗組員の人間が、まさかあそこまでキャラが濃い連中とは思わなかったけど…。

この俺ですら把握しきれない連中だもんなぁ。

 

「あ!そうそう、私また料理教えてもらったんだよ?」

「タムラさんに?じゃ、またいつか食べさせてもらいたいモンだねぇ、うん」

「ユーリが言ってくれれば、いつでも良いよ?」

「はは、俺の業務も忙しいからな。でも、ちゃんと食わせてくれよ?」

「うん、約束だよ」

 

ちゃっちゃらー、チェルシーはB級グルメを覚えた・・・ってな。まぁウソだが。

 

「さてと、このあったかいフネを守る為に、お兄ちゃんまた頑張ろうかね」

「うん、無茶しない様に頑張ってね?」

「これはまた難しい注文だ…だが、やる価値はある。それじゃまたな」

「うん、またね」

 

エセ紳士風を気取った俺は、そのまま食堂を後にした。

そして戦艦アバリスはラッツィオでの補給を終え、ラッツィオ軍基地へと向かった。

 

 

 

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