タワーディフェンスとかダンジョン防衛のゲームって難しいけど楽しい。
オスロ移動後、私は早速ノルウェーの首相と会談だ。
ノルウェー政府も私の訪問タイミングがある程度ずれる事は予測していたようで、私が到着したらいつでも会談出来るように準備してくれていた。
「マルデリタ嬢初めまして。
トロルの舌の観光は楽しまれたようですね。この後もトロムソのオーロラ観光で滞在予定と聞いています。
我が国の自然を堪能していただけるようで、国民の一人として嬉しい限りです」
「こちらこそ、歓迎して下さりありがとうございます。
少ないですが縮小ボックスお受け取り下さい」
そうして私は20個の縮小ボックスを進呈する。
どこの国も喜んでくれるので、私としては本当に縮小ボックスの存在がありがたいよ。
「ありがたく頂戴します。
大事に使わせていただきます」
ここら辺はどの国でも同じような会談だが、何回やっても神経使うね。
「それと後程よろしければ我が国が誇るサーモンをご賞味ください。
最高級をご用意していますので、お二人の口に合えば幸いです」
「おお、どんな味?」
フェルも地球で出してくれるご飯が美味しいのを理解してるから、すぐに興味を示す。
「定番だと焼いて食べますが、まず舌触りですな。
サーモンは他の魚より油のノリが良いです。他にも生で食べるカルパッチョに塩コショウでシンプルにステーキにして食べると絶品です」
「美味そう」
首相の言葉にフェルが涎をたらしそうだ。
「他にも山羊の乳で作った甘いチーズになるブルノスト。
トナカイステーキなどもご賞味するといいですよ。
後程、食事の時にお出しするように指示しておきます」
「ありがとうございます。とても楽しみです」
うん、もう私とフェルが食いしん坊扱いされてるのかもしれない。
ただ、食文化というのは国の代表的な扱いになる。
そう考えると、私はきちんと親善大使やってるはずである。
その後、無事にノルウェー首相との会談を終わらせることが出来た。
ニュースでも勿論報道されたようで、トロルの舌に注目がされているようだが、危険な場所でもあるので注意を呼び掛けているそうだ。
さて、一応ノルウェーでのメイン予定であるトロムソへ出発だ。
マリアさんとジャックさんはトロムソで合流予定で、今日と明日で二泊する。
そうすればオーロラを見るチャンスは二日あるし、北極圏を体感できる。
とはいっても、明日の深夜はジェット機の中で寝てるけどね!
プライベートジェット機を使わせてくれてるので、オーロラ堪能できたら。もしくは見れない場合の時間制限もある。
そしてオゾン修復計画を実行するなら、やはり魔法を使う場所はオゾンホールに出来るだけ近い場所。
北極と南極になるのだから。
そうなると極寒の大地の中で活動するということになるので、正直未知の世界としか言いようが無い。
極寒の寒さで行動する環境は体感しなければ実感出来ないだろう。
私もまだ心の準備は整ってないので、あくまでも観光気分にもなるからこそトロムソを選んだ。
実際オーロラの映像はテレビで何度も見たことあるけど、見る度に自然の神秘に感動する。
こうやって考えると、その気になれば色んな神秘や建造物を見に行き放題なんだけど行く機会をどう作るかだ。
思いつくのは中国の九寨溝・モンゴルの大草原・オーストラリアのエアーズロック・日本の松本城・ドイツのノイシュバンシュタイン城などなど。
ゲームの舞台設定のモデルになってるのもあるから、マルデアの人達に紹介するのもいいかもしれない。
実際、今回の予定の1つとして洋館を撮影していく計画もある。
何でかというと、洋館を舞台にしたゲームって結構多いんだよね。
ホラーゲームだと定番だし、主人公の居住地やゲーム本拠地として登場することが多い。
しかし、マルデアの人にとっては住宅とは理解できても、洋館を見たことも無いのだからゲームで舞台として登場しても馴染まないと思われる。
なので、事前に紹介することであやふやでも洋館をイメージできるようにしたかったりする。
実際問題、今後のゲームで現代を舞台にした作品や歴史ゲーとかになると、地球の簡単な常識とかを覚えてもらわないと、プレイに支障が出る可能性も有り得るのだ。
バイア・クロッキータワー・三国無敗などなど。
まあ、うちの会社の人達はあっさりと理解して、ゲーム楽しんでるんだけどね!
さてと、飛行機で移動するわけだがオスロからトロムソだと2時間くらいになる。
到着する頃には夜になってるから、上手くいけばオーロラと遭遇できるかな?
「大使。
天候を確認しますと、トロムソは明日は晴天のようです。
オーロラを見れる可能性は高いと思われます」
飛行機の中で接待役の人が調べてくれたようだ。
「それは良かったです。教えてくれてありがとうございます」
「それと宜しければですが、明日の日中に犬ぞり体験はいかがでしょうか?
トナカイぞりもできますし、他にもフィヨルド観光もご希望であれば準備いたします」
う、そっちもちょっと心惹かれる。
「他にはノルウェージャンフォレストキャットという猫との触れ合い。
夏であればノールカップにご案内して、沈まない太陽をお見せすることも出来ましたが」
……聞いてると全部見ていきたいなあと思ってしまう。
「個人としてはフロム鉄道も素晴らしいものがあります。
景色は勿論ですが、標高897mのミュルダール駅と標高2mのフロム鉄道を結ぶ全長20kmの急勾配鉄道を1時間かけて楽しめます」
の、乗ってみたい。
ちょっとくらいなら予定ずらしてもいいかなと思ってしまうが、国連の予定を狂わせちゃうので駄目だ駄目だ。
でも覚えておこう。またの機会があれば是非観光してみたいと思うのであった。
ちなみにフェルはというと、
「うまうま」
用意された甘味を存分に味わっていた。
う~む、フェルクルという種族に太るという概念はあるのだろうか?
女王様達との会合時でも、年寄りは普通にいたけど太ってる子は見当たらなかったからなあ。
とりあえず、今日はトロムソでゆっくりさせてもらおう。
口実にしてるとはいえ、オーロラは是非見たいし。
そうして、飛行機で2時間ほどしてトロムソに到着だ。
「ほわあああ。これが北極圏……」
景色としては、雪国と変わらないけど、北極圏という場所だと思えば、また違った感動になる。
「大使、今日のところは用意したホテルの方へどうぞ。
オーロラが確認できましたら、すぐにお知らせいたします」
「ありがとうございます。でも自然が相手ですから見れない可能性も理解してますから」
念の為、見れなかった場合の事を考えて一言言っておく。
人によっては責任感じちゃうかもしれないからね。
「ご飯?」
「まだ食べれるの?」
この子の食欲どうなってんだろ。
甘いお菓子を二個も食べたというのに。
「甘味とご飯は別」
私が言うのもなんだけど、この子私より本当に地球のグルメ堪能してるなあ。
ある意味力抜けるから、お仕事で無意識に気を張る私の心を緩めてくれてるのかもしれない。
……そう思っておこう。
そうして、訪問当日はオーロラが出現することが無く、そのままホテルでサーモンを食べてのんびりするのだった。
翌日、布団の中でフェルと一緒にぬくぬくしてると、起床の時間によって目覚ましが鳴る。
「リナ嬢、朝だぜ~」
ドア越しに聞こえてくるのは、ジャックさんの声。
「うにゅう」
「ん~」
フェルも私も布団の中が気持ちよすぎて、布団の誘惑に身をゆだねたいところである。
でも、さすがに大使としての立場もあるので、布団の魔力に抗って上半身を起こす。
「おはよ~ございます」
「はよう」
のそのそと動いて、ドアの鍵を開ける。
「……可愛いわねえ。二人とも」
マリアさんもいたようで、私とフェルの寝起き姿に感想を言ってくれる。
「あ~、リナ嬢。とりあえず着替えてくれ。
朝食は既に準備できてるし、聞く限りだと今日はオーロラ見れる可能性高いらしいぞ」
「おお、本当ですか」
ジャックさんの朗報に頭が覚醒しだす。
そうと決まれば、お仕事モードに切り替えないと。
とはいっても、今日は完全に観光客だ。犬ぞり体験させてもらう予定なので、太陽の光の反射を防ぐ為にサングラスが必須。
フェルにも必要か分からないけど、一応用意してくれてるらしい。
その後、しっかりと朝食を堪能して、早速犬ぞり体験!
「大使、この子達が今日頑張ってくれる犬達です」
「ウォン!」
10頭のシベリアンハスキーが私とフェルにお辞儀するかのように吠える。
同時に興味シンシンに、私とフェルを見つめているが、訓練が行き届いてるのだろう。
きちんとお座りして、行儀よく待機している。
「とても賢いんですね」
「はい、ですがこの子達は人懐っこいですから、許可した瞬間に甘えてきますよ」
それはそれで可愛いなあ。
しかも、寒い地域だから毛が凄いもふもふしてて、凄い触りたい気分になる。
「撫でたいんですが大丈夫でしょうか?」
「どうぞ。この子の毛は特に触り心地がいいですよ」
案内の人が勧める子を撫でてみると、凄く気持ちいい。
ふかふかであったかくて、手に馴染むけど滑らかな手触り。
「実は昨日の間に、ブラッシングを念入りにしておいたのです。
他の子達も良ければ撫でてあげてください。喜びますよ」
無論である。撫でてると尻尾をぶんぶん振ってるからご機嫌になってくれているのだから。
「ふおおおお」
そしてフェルはというと、小さい体を活かして全身を毛に埋めていた。
あ~いいなあ。
多頭飼いしてる人じゃないと体験できない、全身もふもふだ。
とりあえず撮影しておくか。
マルデアの皆に話すいいネタになるなあ。
そうしてると、他の犬達も撫でろと言わんばかりに私の周囲を囲んでいく。
もう抱き着こう。可愛いよ。
結果、暫くの間私とフェルは犬達と戯れることとなり、犬ぞり体験の時間が少しずれてしまう。
その後は予定通り体験するのだが、走っている最中にリーダー犬が足を怪我してしまう。
雪の上だし、氷点下だから凍ったところもあるので、偶々そういう場所を踏んでしまうと怪我することもあるそうな。
まあ、そこは私の出番で怪我をした犬を魔法で治療だ。
「癒しよ」
魔石を使うほどでもないので、私の魔力で怪我した足はみるみる回復する。
ほんの数秒で完治すると、リーダー犬は驚いた様子で自分の足を見ている。
そして治った事が理解できると、私が反応する前に私の顔を思いっきり舐めまわす。
「わわわわ」
喜んでくれてるのは分かるけど、顔がべたべたに~。
「きゃはははは。リナべたべた」
フェルは慌てる私を見て楽しんでいた。
そんなこんなで舐めまわされた顔を拭きながら、犬ぞり体験は終了するのだった。
ただ、その後リーダー犬の子犬を見せてもらう。
小っちゃくてよたよたしながら歩く姿は物凄く愛らしく、抱っこすると興味深そうに鼻をひくひくさせる。
そして良ければ名前を付けてくれと言われたので、雌だったこともあり、チュビという名前を付けてあげた。
……前世で読んだ少女漫画を思い出したからだけどね。
あれ、普通に男の子でも楽しめたし。
お昼になればトナカイステーキに舌鼓をうち、また動画配信で先程の犬ぞり体験を語ってみたりしながら、トロムソの町を撮影していく。
そして15時。
トロムソの町は既にもう暗くなってくる。
これは極夜といって、トロムソだと太陽が殆ど出てこない時期だそうだ。
なので、この時間帯以降は運が良ければ、オーロラに出会えるのだ。
「大使、オーロラが出たらお知らせしますので、ホテルでお待ちください。
地元民の私は慣れてるので大丈夫ですが、長時間マイナス気温の中で待つのは大変ですから」
外で待とうと思っていたが、案内の人が気をきかしてくれる。
「そのほうがいいわね。明日は会談予定だしそれが終われば日本なんだから、体調管理の為にもホテルで待っている方がいいわ」
マリアさんも案内の人の言葉に同調する。
本当は長時間の寒さもオゾン修復計画の為に体験しておくべきだろう。
でも体調管理は大事だし、今後の予定は結構過密だったりする。
なら甘えさせてもらおう。
「ありがとうございます。では部屋で少しゆっくりしていますね」
そうして私はホテルに戻って休憩する。
暫くすると、
「大使! オーロラです!」
「すぐ行きます!」
運よくオーロラが出現してくれたのだ。
私とフェルは直に外出し、夜空を見上げてみれば。
「ほああああああああ!」
「なんじゃこりゃあああ!?」
二人して驚きの声を上げながら、オーロラを肉眼で見る事が出来たのだ。
「綺麗、そして神秘的です」
「緑色とピンク色。不思議ねえ」
私の言葉にマリアさんもオーロラを見つめている。
「オーロラは大気の組成で色が変化します。
大体上空90キロでピンク色。100キロで緑色になります。200キロだと赤色です」
案内の人が説明してくれているが、皆オーロラに釘付けだ。
「マルデアでもオーロラは見れるかねえ?」
ジャックさんが呟く。
「う~ん、マルデアでは調べたことなかったですね。
あっちはあっちで忙しくて」
「ワープがあればすぐ行けるんじゃないの?」
「時間はともかく、長距離になればなるほど金額かかるんです」
「……理解できるんだけど、なんか夢壊れた気分だわ」
そんな会話しながら、私はオーロラを撮影する。
また地球の人達もそんな私達を撮影していて、後日放送するそうな。
そうして暫くの間、私達はオーロラを堪能するのだった。
いつか、この景色を見る為にマルデアの人達が現地に訪問する日が来るのだろうか?
ふと、そんな事が頭の片隅によぎりながらも、私はそんな未来になるようにしていこうと思うのだった。
改めて原作の訪問イベントを見ると、あかいさんはよくあんなに一期一会を各国で上手い事書くなあと感心します。
私? このお話書くためにネットで調べてましたよ。