でも全部は語ってません。
そしてリナ視点でこういう暗いお話入れる気は無いです。
スカールさん側だからこそ、語れる内容でもあります。
これ一般公開してたら多分また炎上してただろうなあ。
Side:スカール
マルデリタ嬢は会談後、すぐに彼女は日本へ発った。
そして私は上司に報告すべく、上司の執務室で秘密裏に会談している。
「少し危うかったかもしれんな」
「ええ、ですが幸いリナ嬢には勘づかれていないでしょう」
私と上司は上手く話しを逸らすことが出来て、胸をなでおろしていた。
「ソーシャルネットワークゲームなど、マルデアに輸出するわけにはいかんからな」
上司の言葉に、私は同意する。
「はい、あれを現状のまま輸出などすれば、星間貿易を潰すどころか外交さえ出来なくなる可能性があるのですから」
それは国連に加盟している、各国の代表全てが全会一致で可決することである。
「まったく、今までゲーム経済など注視してなかったツケだな。
あのようなシステムをまかり通らせていたとは」
「同意です。
ですが、ある意味しょうがなかったとも言えます。
私達の年代くらいでないと、国策や法律改正に直接関わる事が無いのです。
そして、現代のゲーム経済に詳しくなければ、そもそも議題にさえ上がりません」
「他に議論すべき議題はいくらでもある。
正直、星間貿易前などゲームの経済システムに一昼夜の時間を使うなど想像もしていなかったよ」
実際リナ嬢がゲームを貿易対象に選ばなければ、私はゲームにもう触れる事はなかったであろう。
ゲームというものはあくまでも若い時の娯楽品という意識だったのだから。
「結果、今のソーシャルネットワークゲームの悪習は現代の常識となってしまった」
「ですが、我々はその悪習を断ち切るために動いています。
但し、ルートボックスもしくはガチャというシステムを排除するには、まだ時間が必要です。
現在は情報操作をすることで、元からある悪徳商売というイメージを広げさせております。
また報道においても、実際にやらかしたことなどを掲載させました。
マルデアでオンラインが用意できないのがある意味幸いでした。
もしオンラインがすぐに用意できていれば、またリナ嬢がソーシャルネットワークゲームに目を向けていたらと考えると、ぞっとします」
「星間貿易は短期的な考えは絶対にしてはいかん。
常に長期的な視点で平和的で誠実な貿易と外交が不可欠だというのに、マルデアに不和を齎すような可能性があるものなど輸出できるものか!」
上司の考えは正しい。
だが、国民達の中にはソシャゲがいつ輸出されるか楽しみにしている者たちもいる。
しかしはっきり言おう。
今までと同様に地球の常識が通用すると思うな、と。
「最短でも1年以上の時間が必要になるだろう。
その間に大半の企業は撤退の方針になるだろうが、大手の場合はゲームだけでなくアニメやイベントにして賑わせている。
そう簡単にはガチャシステムをやめようとはしないだろうし、顧客にも影響は出るだろうからな」
「ですが、急がねばなりません。
リナ嬢としか我々は星間貿易が出来ないのです。
もし本気でお願いされたら、我々は断ることが出来ないでしょう。それで彼女が星間貿易を取りやめる可能性も有り得るのですから」
今更星間貿易が無くなる?
冗談じゃない。
最早星間貿易は地球の希望になっているのだ。
もしここで星間貿易が無くなり、マルデアとの外交が途切れる事となれば、地球全体で暴動が起きてもおかしくないと政府は判断している。
そして国連もアメリカ政府も、また聡い者達は口には出さないがリナ・マルデリタ嬢を奇跡の存在と認識している。
彼女がいたからこそ、地球はマルデアとの外交が出来るようになった。
彼女がいたからこそ、地球は星間貿易が出来るようになった。
彼女が協力的だからこそ、地球は明るい未来を夢見る事が出来るようになった。
もし、彼女がいなければ地球は何も知らないまま、遠い未来に昔の黒船のようにマルデアと無理矢理外交しようとして、マルデアを怒らす事態もあったかもしれないのだ。
それを考えるだけでスカールは背筋に冷たいものが入ってくる。
「……今もマルデリタ嬢以外とはまともに連絡出来ていないのだ。
マルデア政府宛にこれまでの感謝を何度も送ったが反応はない。
ゲーム関連で翻訳に関しての連絡はマルデリタ嬢経由であるし、もうすぐ星間貿易開始から2年が経つというのに訪問してくるのは彼女とフェルクルだけだ」
「ええ、最初の通信でマルデリタ嬢は自分以外の人は交流を嫌がってると書かれていました。
そして、今もそれは変わりません。
これは相当根深いかと思われます」
私も心労が酷いが、上司も最近は疲労が隠せていない。
だが、対応策は産まれてこない。
いくら対話する為のボールを投げても、マルデリタ嬢以外誰も受け止めようとしてくれない。
せめてどんな内容でも投げてくれれば対処しようもあるが、何も返ってこなければ私達はどうしようもできない。
「マルデリタ嬢も分かっているのだろう。
だから言葉には出さないが、護衛の二人も配慮している。
おかげでマルデリタ嬢もフェルクルも好意的なのは嬉しい限りだ」
「ですが安穏とはしていられません。
輸出してきたゲーム会社は信用できますが、地球側の経済はそろそろ悪だくみを計画しているようです。
……マルデアという星の科学力や経済力を正確に理解すれば、私達の外交がどれだけ念入りに計画されているか分かるというのに」
「スカール君。
責任を負わないものの考えなど、そんなものだろう?
私達はそれも込みで仕事を行っているんだから」
頭が痛い。
この年までに様々な事を経験してきて、仕事でもあるからこそ割り切りや暴力を背景にした外交もしたことはある。
それに対して、どこか麻痺した感覚を持っていたことも自覚出来ていた。
だからこそマルデリタ嬢との外交は、ある意味心が優しくなれるのだ。
正直で誠実で、お互いが気持ちよくなれる外交を心掛ける。
そんな外交が他にあるだろうか?
どうしてもどこかで腹黒くなったり、自分に有利な条件を少しでも引き釣り出そうとしてきたこともある。
青臭い感情を持っていた頃に憧れていた外交を、マルデリタ嬢は思い出させてくれた。
しかし、そんな外交でも不安になることはあり、課題もあるが一緒に乗り越えていこうとするマルデリタ嬢に私は感謝するしかない。
であるからこそ、私は全力で今のソーシャルネットワークゲームの常識となっているゲーム経済をぶち壊すことを決めている。
地球の為、星間貿易の為、そして何よりもゲームを心から楽しんでくれているマルデリタ嬢の為にも。
「そして魔石運用についてだが」
「……自白に関しての使用ですか。
納得は出来ますし、立場としては理解いたします。
ですが、マルデリタ嬢には絶対に知られないようにお願い致します」
「ああ。使う時の対象は最早人権など喪失するような犯罪者だ。
名目は医療実験とする予定だし、書類の改ざんは事前に作成しておく」
そう、こちらこそが魔石運用の本命である。
国家として捕まえたい犯罪者というのはずる賢い奴等ばかりで、犯罪をした証拠など殆ど残さないし自分が直接行うことは殆ど無い。
その為、最終的には自白剤・拷問による表に出せないようなやり方で、犯罪履歴を炙り出したりもする。
だが、あくまでもそれの確実性は低く、時間もかかり過ぎる。
しかし魔石を使えば、問答無用で自白を強制させることも可能ではないか?
そのような理論が提出されたことにより、慎重な議論を何度も重ねたうえで実証をしてみようということになったのだ。
例えば、麻薬組織の主犯格。
例えば、世界的テロリスト達。
例えば、社会的地位を隠れ蓑にしながらの政治的犯罪者などなど。
動かぬ証拠が無ければ逮捕どころか、容疑者にさえできない輩は地球には山ほどいる。
そんな奴等は通常の自白など通用しないからこそ不用意に捕まえれない。
だからこそ、魔石が使えたならば検挙率は跳ね上がるだろう。
主犯格を捕まえると言う事は、末端にまで影響を及ぼすことが出来るのだから。
これも地球の未来の為ではあろう。だが手放しに褒められるやり方ではない。
だけど私は必要だと考える。
どこかで人間の嫌な部分も引き受ける人もいるからこそ、世界は成り立っていると知っているから。
「人間……らしく……か」
「歴史は常に見えない部分だらけさ」
それでも私達は生きている。
紡がれていく未来を夢見ながら。
物語の中の謎はあくまでも、物語で語る。
ただそれがいつになるかは書く時に必要な場面です。
私はそういう考えです。