フィオ・ローレアの自己肯定
私はフィオ・ローレア。
ちょっと前までの私は現実で仕事に嫌気が差してしまい、家でひきこもるような生活をしていました。
でもこのまま家で引きこもっていても駄目な事は理解してはいても、根暗な性格もあってたとえ仕事をしても長続きしなかったのです。
でも今は違います。
「はい、こちらガレリーナ・ゲーム販売所です」
今日も受付対応している私ですが、最近は慣れてきたので落ち着いて答えられます。
「もしもし? コントローラーの事で確認したいんだけどいいかしら?」
「はい、どうぞ」
「うちの子がね、外で友達と遊んでた時に落としちゃった衝撃で、コントローラーが壊れちゃったようなのよ。魔法で直そうにも、私の魔力じゃ直せなくて。
どうすればいいかしら? やっぱり新しく買いなおさないと駄目?」
これはよくある問い合わせの1つです。
やはりスウィッツはお子さんが使うことが多い玩具なので、乱暴に扱ったりすることもあるようなので精密機械であるスウィッツをどこかにぶつけたりするのです。
これが他のマルデアの会社なら買い替えてもらうところでしょうが、うちの場合は違います。
「大丈夫です。それでしたら購入時に購入証明書を受け取られているでしょうから、それを持って販売店で壊れた現物と交換をお願いしていただけますでしょうか?
もし購入証明書が無ければガレリーナ社に送っていただければ、無償交換させていただきますよ」
「あら。サービスいいのね。それは有難いわ。買い替えようとしたらコントローラーは30ベルくらいするみたいだし」
この無償交換サービスはリナさんが地球と交渉済みの契約らしい。
精密機械というのは元々が壊れやすい代物だ。
しかし、スウィッツは地球産でありマルデアでは代用品を用意することも出来ない。
魔法で修理しようにも、きちんとした原因も分からずに直してしまえば、もう一度壊れた時には元に戻せない可能性もある。
ならば正式に修理して返却しようにも、そうなるとリナさんが地球に持って行って地球側が直に対応してくれたとしても、余りにも時間がかかり過ぎる。
かといってマルデアの人間に地球の品を修理するなんて、やる気があったとしてもノウハウを教える機会が無い。
ならば、今はマルデアの大事なお客様を待たすくらいなら無償交換することで、引き続きゲームを楽しんでもらえるようにとの事だそうだ。
「はい、なのでご足労おかけいたしますが新品と交換できますのでご安心ください」
「分かったわ。証明書はあったはずだからお店に頼んでみるわ」
「ありがとうございます。もしお子様が外で遊ぶことが多いようであれば専用のケースや外出中でも充電可能な機器もありますので、ご一考いただければ幸いです」
「なるほど。お店で現物見て考えてみるわ。ありがと」
そう言ってお客様からの連絡は途切れる。
「……ふ~慣れてはきましたが、やっぱり緊張します~」
こうやってきちんとお話ができるお客様ならいいんですよ。
最初の頃は泣きたかった。
リナさんが地球に行かないとスウィッツは再入荷できないから、問い合わせでスウィッツの入荷時期とか次回作とかの正式な日程は不明瞭になる。
なので、それを問い合わせる人に答えたら、具体的に応えれられない事に対して怒る人も結構いたのだから。
他にも普通では考えないようなプレイ方法を思いついて、その方法で上手くいかないからって、問い合わせで振られても対応できませんよー。
あ、次の問い合わせ。
「はい、こちらガレリーナ・ゲーム販売所です」
「もしもし? マルオワールドの事で教えてほしいんだけど」
攻略?
「はい、どうぞ」
「幽霊なのに、何でブロックでダメージ与えられるの? 実体無いのにぶつけられるって変でしょ」
……面倒くさい問い合わせが来ました。
まあ確かにそうなんですけどね。マルオの世界では顔合わせると止まって、後ろ向くと襲ってくる幽霊がいます。
可愛らしいですが、そのでっかいのがボスとして登場する時にブロックを三回ぶつける事で倒せる設定です。
正直なところ、何でそれで倒せるの? って言われたら仕様ですとしか答えようが無いんですよ。
だってそういう設定にしてるんですから。
「マルオはゲーム内だと色んなものを掴んだり投げられるので、幽霊に対しても対抗策を持っているんです」
「つまり霊的能力も持ち合わせてる?」
「かもしれません。マルオは防御力こそ低いですが様々な対抗策を持っているのも魅力です」
「なるほど、マルオは色んな方法で敵を撃退してるからなあ」
その分、操作をミスるとあっという間に死ぬのもマルオなんですけどね。
「それとなんだけど、次の新作情報ってまだ? 特にグラディアスみたいなシューティングゲームをまた遊びたいんだけど」
メモメモ。
「申し訳ありません。新作情報はしかるべき時に公開させていただいておりまして」
「むう。また遊びたいから要望にあげといてよ。あんなグロテスクな宇宙の敵は何度でも倒したいんだ」
「承知しました。社内でグラディアス希望という意見を共有させておきます」
「よろしくねー。まあそれはともかくゲーム楽しいぜ!」
そして通話が切れる。
とりあえず先程のお客様からの要望はメモしておいたので、メソラさんのデバイスへ送信。
メソラさんは会計係ですが、こういう要望とかも綺麗にまとめてくれるので、これを次回の会議とかで役立ててくれます。
でも最近はお客様も多くなってきたことで、1人で纏めるには時間が足りないと言う事で私も手伝っています。
それと地球側もマルデアゲーマーの要望は是非知りたいとのことで、簡単にでもいいからゲーマー達の声を教えてほしいらしい。
私にはよくわからないが、地球側はリナさんが持っていく貿易品が喉から手が出るほど欲しいようだ。
私達マルデアからすれば、何処でも買える魔石と縮小ボックスなのになあ。
でも反対にこんなに面白い物作れるのに、どうして喧嘩してるんだろうなあと思う。
喧嘩するよりゲームするほうがよっぽど楽しいのに。
就業後は私はいつも皆と会社でも持ち出し不可の未翻訳ソフトで遊んでいると、皆楽しそうにしながら騒ぐので猶更そう思ってしまいます。
ちなみに最近サニアさんは最早翻訳機無しでプレイ出来てるようです。
初めて見た時はダークソウラだったので、少しだけ翻訳すればプレイに支障なかったそうです。
今ではリナさんがクリア済みになってるfainal7のリメイク版さえも、
「早く続き作りなさいよ。スク・ウェニ」
と呟いてたのを知ってます。
その後、続きを知りたいために旧作を普通にプレイしてましたからね。
しかも攻略本広げて、取りこぼしが無いようにするという徹底ぶり。
勿論、マルデア語で翻訳済みで遊ぶのが一番楽しそうにしてます。やはり自分が慣れ親しんでる言語じゃないと感動しにくいですからね。
とはいっても、私も何だかんだで未翻訳ソフトでも遊べるようになっています。
モム鉄なんか各地方の特産品とかも覚えてるし、カードの効果も理解してるので、最近はびりになることも少なくなりました。
とはいえ、それは大概サニアさんが基本的に常に1位を独走しようとして、突出するから皆に上手い事たかられてるせいなんですけどね。
サニアさん頭いいのに、ゲームだと何故か短絡的思考になることが多いんです。
でも、その分行動力にも溢れていて、私じゃ言えない・出来ない事もあっさりと成し遂げる事もあるので、羨ましいと思うことも。
反対にガレナ社長だと、思慮深い事もあって物事を確実に進めていくから頼りになります。
そしてリナさん。
私達マルデア人にとって、地球は一生関わることが無いと思ってたところに、たった一人で飛び込んでいき、色んな地球人と接する度胸と挑戦に尊敬します。
自分より年下の女の子がマルデアで誰一人としてやらないことを、平然とやってのけたんです。
でも普段の彼女は大変なはずなのに、ニコニコと本当に心から楽しそうにしている。
才能とか、環境だとかじゃなく、ただ自分がやりたいからやってる。
だけど、それで周りを笑顔にしてくれているリナさん。
そんなリナさんを羨ましいと思う気持ちは今もあります。
でも、そのおかげで変われた自分もいます。
私の家族は、今の私を見て安心した。明るくなった。笑顔が見れるようになったと。
そう言ってくれるようになったんです。ガレリーナ社に勤める前は腫れもの扱いになりかけていた。
今考えれば面接の時の私は本当に運が良かったんでしょう。
あんな答弁で採用してくれたんですから。
確かにガレリーナ社は他の会社とは企業の成り立ちは違うけど、私はこの会社が大好きです。
だから私なりにこの会社で頑張っていきます。
でも地球に一緒に行くか? と言われたらお断りします。リナさんは身を護れますけど私は無理ですからね!
最初は周辺機器の話にしようとしたら、いつの間にかフィオの自己肯定話になっていた。